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全てが新しい異世界にて -fast life-  作者: 鰹節
第三章 交易公国 ファブログライン
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深まる謎

 

「ふいー、お腹いっぱい。」


「食べ過ぎだよフィル、その体のどこにあれだけの量が入ったのやら。」


 ホテルの中にあるレストランから部屋へと戻っている最中で、程よい満腹感と幸福感に包まれており皆笑顔だ。


「そんなことないよ、リウ達が遠慮して食べないから代わりに食べてあげただけじゃない。」


 このホテルのレストランは上層と下層にそれぞれ分かれており、並んでいる店も違う。


 高すぎる料理は食べにくいという考えが一致し、キリエも高すぎる料理より庶民的な料理が良いとの言葉により下層へと足を運んだ。


 ホテルの中であるハズなのだが、立ち並ぶ店は一つの階層を丸ごと埋め尽くすほどの数があり、街中の商店街のような様相となっていた。


「あれだけ食べると少し甘いものが欲しくなりますね。」


 港が近いために魚が新鮮というリウの言葉から、選んだのはそこそこ客が多い魚料理の店。


 店の中に入って分かったのだが、このホテルの中にある店は全て個室となっているようで、案内された席も完全に隔離された部屋だった。


 特にここが不思議という物は無く、この店の黒い外観と同じ黒で統一された部屋で随分オシャレな雰囲気が流れている。


「ちょっと分かります。口直しとは言いませんが、少しさっぱりできる物が食べたいかな。」


「何の話? 私も食べる!」


「フィルまだ食べるの? いい加減にしとかないと太っちゃうよ。」


「大丈夫、リウと違ってまだ成長するから。」


「どうゆう意味かな! 私はまだ二十一だ!」


 リレーションと呼ばれるエレベーターみたいな装置前でそんな話をしつつ、元の部屋へと帰っていった。


 ◇◇◇ ◇◇◇


「フェザー、そろそろ」


「・・・了解じゃ。」


 日は落ちて月が辺りを照らす中、ロウは椅子に座っているフェザーにそう切り出した。


 フェザーの方も特に反論するでもなく、待ってましたと言わんばかりに大きく背伸びをして、玄関へと向かうロウの後に続いて歩き出す。


「ロウ、こんな時間に出かけるの?」


「少し話を聞いてくる。そんなに時間はかからないから、行ってくるよ。」


 声を掛けてきたリウそう話して先に外に出たフェザーの後を追おうとロウも玄関に手を掛ける。


「・・・行ってらっしゃい。」


 掛けられた声に振り返るとキリエが不安そうな顔をしてロウの方へと手を向けていた。


「行ってきます。」


 そう返して扉を開けて記憶を頼りにあの時の場所へと急いだ。


 ◇◇◇ ◇◇◇


 街灯だけがこの暗闇を照らす明かりとなっており、二人はその暗闇の中を歩きまわる。


「ロウ、ほんまにこの場所で合っとるんか? なんや人がいなくなり始めたぞ。」


「問題ないよ。あの時もこんな感じだった。」


 不意にいなくった暗い中を歩きまわる住人達、街灯がいきわたりにくいこの場所はしっかりと覚えている。


「あと少し歩いて、・・・・・振り返る。」


 記憶と同じ場所で同じようにして振り返ると、後についてきていたフェザーのさらに後ろに小さな人影が見える。


「会えなかったらどうしようかと思ったよ、久しぶりだな爺さん。」


「・・・随分と遅い到着じゃな、待ちくたびれたぞ。」


「なんじゃ? 誰かおるんか・・・!」


 その会話に振り返ったフェザーは見るからに動揺しはじめ、声を掛けるが一向に返事が無い。


 フェザーの正面に周るとその爺さんを凝視したまま、動きが止まっていることが分かり、


「・・・こいつは、・・・まさか」


 なんて呟いている言葉が聞こえてくる。


「おい、爺なんかしたのか?」


「いや何もしとらんよ。見たところ特に魔法に掛かった気配も無いが・・・」


 フェザーの態度の変化にロウはその爺さんへ敵意を向けるが、その爺さんは本当に心当たりが無いらしく顎に手を当てて事態を理解しようとしている。


「・・・副将、殿であらせられますか?」


「副将? 何を言うとるんじゃ、儂は・・・、待て、まさかお主大戦で?」


「そうです、『疾風かぜ』という言葉は覚えてはおられませんか?」


「フェザー! お主、ホントにフェザーなのか?」


「はい、そうです! そのフェザーです、生きておられたのですね。・・・本当に良かった。」


 涙ぐむ二人についていけず、ロウは一人で佇む他にない。そのまま流れそうな空気を割って間に入る。


「・・・説明しろ、二人は知り合いか?」


「うむ、大戦の頃に儂らは同じ部隊に所属しとったんじゃ。」


「この方は部隊を纏める副官として存在しておられ、儂は一兵士だったんじゃ。」


 そこからは懐かしい話を引き出しながら長くなったので、割愛。


 要約すると、この二人は人間と魔族の戦争での知り合いとなるらしい。


 クロエの部隊を筆頭に、『力』『愛』『正』『先』『無』という意味を持つ言葉を与えられている部隊が存在しており、その中の『力』の部隊の指揮官と部下というくくりになる。


『力』の部隊は〈制天平世 孫悟空〉という頭領の下で、右腕となる〈力のマンジュ〉と、左腕となる〈計のセンジュ〉のトップが治めていた。


 数ある部隊の中で断トツの戦力を持ったこの部隊は、クロエの神将部隊に匹敵する無類の強さを誇っていたようだ。


「計のセンジュ、知り合いってことはまさかあの鍛冶屋。」


「うむ、何を隠そうあそこはマンジュの隠居先じゃ。」


 視線や風格だけでなく、冷たく刺さったまま消えないあの強者の殺気を浴びた時点で只物ではないというのは分かっていたが・・・


「神将部隊に匹敵ね。あんたら三人とあの七人と同じぐらいとは、化け物ばかりだな。」


「あの時代は化け物しかおらなんだよ。・・それはそうと、聞きたいことがあるんじゃないのか?」


 その一言で思い出話は終わり、ロウの目的の話へと移り変わる。懐から抜いたナイフを見つめ、意を決した表情で目の前のセンジュへと投げかける。


「実について知っていること、ドレッドノートについて、この世界と俺がここに連れてこられた理由。・・・まさか知らないとは言わないよな。」


「・・・それは誰から聞いた?」


「聞いたもくそもあるか、マンジュがあんたなら何か知ってるみたいなこと言ってたから、こうして聞いてるんじゃないか。・・・話せよ、何を知ってるんだ。」


 相変わらず座布団に座ったままの小さな姿で俯く。そのまま動きが無くなり、どうしたものかと疑問に思うが次の瞬間大声と共に勢いよく起き上がった。


「まさかまさかまさか! お主がそうだというのか! 待ったぞ、儂は十年待った!ようやく謎へと至ることが出来る!」


「・・・はい?」


「あの時の事は謝罪しよう。まさか儂の方からお主に願い出ることになろうとは、うれしい誤算じゃったよ。」


 座っていた座布団ごとロウの目の高さまで浮き上がり、そう頭を下げてくる意味が理解できない。


「フェザー、説明できるか?」


「いや、無理じゃ。少なくともこの方は何か嬉しいことがあると、回りがいまいち見えなくなることがあるのは知っとるが、理由までは分からん。」


「というわけでじゃ!」


 くるくると回ることを止めてロウの目前まで近づいてきて、頭を下げるとともにお願いをしてきたのだ。


「儂を主らの仲間に入れてくれ!」


「断る」


 即答だった。反論する間が起きないほどに即答で回答した。その答えが予想外だったのか、目の前のセンジュは愕然とした表情を浮かべるも、すぐに反論してくる。


「な、何でじゃ! 儂が無償で力を貸すと言っとるんじゃぞ!」


「阿保か! 目的も理由も何も知らない奴を近くに置いとく訳ないだろうが! なに入れてくれて当然みたいに話してんだ、お前!」


「お主こそ何言うとるんじゃ、マンジュから儂を仲間に入れるように言われんかったのか! そうゆう約束じゃったじゃろうに!」


「まぁ、待て二人とも。なんか噛みあっとらんぞ、言い分を聞こうじゃないかロウ。」


 言い争いをする二人を諫め、互いに落ち着いて話をしようと深呼吸をする。


「俺はセンジュから何か聞けると、あの鍛冶屋のマンジュから話を聞いてきたんだ。だからこうして聞きに来た。」


「儂はいづれ来る『解放者』と一緒に世界の謎を解く約束じゃったんじゃ。」


「約束とは?」


「マンジュじゃよ、あやつがそう図ってくれると約束したんじゃよ。」


 ロウは頭が痛くなるを感じて眉間に手を当てる。全く考えもしなかった方向に話が流れ、思っていた結末とは違うものになることを予感した。


「・・・『解放者』ってのは?」


「分からぬよ。ただいづれ来る『解放者』と一緒に世界の謎を解こうと思っとったんじゃが・・」


 結論として分かることは何も無い。それどころかさらに問題が発生してしまい、謎が増えてしまった。


「何も知らないのか? マンジュは何か知っている口ぶりだったのに?」


「奴はドレッドノートから何か聞いとったからな、それで何か知っとるんじゃろ。儂はそれを聞かずに自分で考える道を選んだだけの話じゃよ。」


「ドレッドノートを知ってるのか!」


「知っとるも何も、奴は元々神将部隊を率いていた奴じゃったからな。数多くの武勲を立てて、知らぬものは居らんほどの英雄じゃよ。」


 諦めモードに入ってたロウに、頭から冷水を掛けられたように目が覚める。


「何だって! それじゃ、クロエについては?」


「あ奴はドレッドノートの一番の部下じゃ、どこに行くにもついていっとったの。」


「部下・・・。神将を率いていた・・・待て、変だ。神将たちは皆知らないと言ってたんだぞ、率いていたなら誰かしら知っているんじゃないのか?」


「そう、そこがまず一つの謎じゃ。」


「はぁ?」


 いまいち自分のペースに持ち込めないロウは、止まることない謎の連鎖に頭がパンクしそうになっていた。


「『ドレッドノート』という名前はある日を境に、皆が一斉に忘れてしもうたんじゃ。おかしいじゃろ、全員じゃぞ? 部下も家族も全員が一斉に忘れたんじゃ。」


「覚えてんじゃないか、あんたは。忘れたって言われても説得力が・・・・・・。」


 目の前のセンジュが皆が忘れたと言い張るも、その言葉の根拠がないと切り捨てようした言葉が止まる。


「・・・フェザー、『ドレッドノート・モルゴーン』、聞いたことは無いか?」


「・・・無いな。それにロウ達は一体誰の話をしとったんか分からんのじゃが。」


「こうゆうことじゃよ。あの大戦で先頭に立って行動していた奴のことを、一斉に忘れる。これが謎じゃなくて一体なんじゃというんじゃ。」


 フェザーからの返事に何も言えない。センジュの言い分が肯定されてしまったからだ。


「こんなことが起きる世界を調べたいと思うのは自然なことじゃろ? ドレッドノートは話を持ち掛けてきたが、儂はそれを拒んで自分で考えるという選択を取ったまでのこと。」


 謎が解決するどころかさらに増えてしまった。この様子だとさらになる多くの謎が潜んでいるのは、ほとんど間違いないだろう。


「それでどうするんじゃ、儂を仲間に入れてくれんのか?」


 パンク寸前の頭を振って必死に考えを巡らし、どう行動するのが良いのかを思考する。


 目の前のセンジュという爺さん力になるのは間違いないだろうが、怪しいと思うところがぬぐいきれない。そして出した結論は・・


「・・・保留だ。」


 そう答えるのが精いっぱいだった。


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