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全てが新しい異世界にて -fast life-  作者: 鰹節
第二章 英雄大国 ストロガノン
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道中にて

 

「馬には何度も乗っていたが、これは・・・すごいな。」


 駆ける馬の背中に乗っているロウはそう感じていた。


 元の世界の馬とは比べ物にならない速度で、そんな速度が出ているのも関わらず乗っているロウには揺れがほとんどない。


「まったくじゃ、儂も何度か乗ったことはるがここまでのは初めてだ。」


 赤い馬の横を走るフェザーが乗る白い綺麗な馬も、鬣を靡かせながら駆けているその姿は暗い道を照らす小さな明かりに照らされて幻想的な姿を見せていた。


「それにしても便利なもんだな、その明かり。」


「そうじゃろ? これは儂が持つ中でもかなりの一品でな、暗い道を進むときはこいつが便利なんだよ。」


 門を抜ける前にフェザーが取り出したそれは、球状の石と棒がつながったマイクみたいなものでロウは最初それがおもちゃか何かだと思ったのだ。


 棒状の部分を持ってくっついている球体を投げるようにして振り、離れた球体がフェザーの頭上に浮かんでそのまま明かりとしての役割を果たしていた。


 どれだけ早く移動してもその球体はフェザーの頭上からズレることは無く、一定の高さを保って動いている。


「両手が使えん時とかこいつを重宝するな。・・・それはそうと、そろそろ話してもええやろ。何で姫様の護衛なんぞ引き受けたんじゃ?」


「・・実は今、俺は微妙な立場に置かれていてね。あの事件の主犯のような奴が、もしかしたら他にも潜んでいる奴がいる可能性が出てきて、その調査を頼まれたんだ。」


「ロウも他人事じゃないから引き受けたんは分かるが・・何で護衛なんじゃ?」


「その依頼をしてきたのは三人で、そいつらは俺が引き受ける代わりとしてそいつにしかできない報酬を提供してきたんだ。」


 フェザーは静かにロウの話に耳を傾けている。駆ける馬の足音が響く中、ロウは続ける。


「一人は王宮の特権、一人は国からの優遇、そして一人は世界に対する融通だ。」


「何じゃ、その報酬は! 頭おかしいやろ、何じゃ世界て!」


「あぁ、その通りだ。前者二人に関しては結構使いやすいものを提示してくれた、あの寮の修復もこの特権を使用しての結果だよ。」


「・・・・・。」


「もう分かってるとは思うけど、その世界に対する融通を提示してきたのはクロエだ。正直断ってもよかったんだが、今後のことを考えると断らないほうが良い。報酬の確認をとることはできないし、とるべきではない」


 そんなことがバレたりしたらあの国は終わりだ。せっかくできた居場所を消すことにつながる可能性がある、そうなれば被害は尋常じゃなくなるし下手すれば国同士の戦争になりかねない。


「結論から言って、言葉は悪いがキリエは『人質』みたいなもんだ。」


「人質!?」


「勘違いすんな! 傷つけたりとかそんな気は無い。ただ傍に置いときたかったってだけだ。」


「・・・置いておきたかった?」


「あの事件ではキリエを殺すことが締めくくりだと言っていた。だとすれば、キリエを再び襲ってくる可能性はあるからな。」


 遠くを見つめるロウの顔を見ていたフェザーは視線を正面に向ける。今の話を聞いて何を思ったのかはフェザーにしか分からない。


「・・・ロウも大変じゃな。」


「今に始まったことじゃないさ。」


 それから二人の間には沈黙が訪れる。大地を蹴る蹄の音と風を切る音が耳に語り掛けてくる中、異音が紛れ込む。


「・・・・。」


「・・・・。」


 なにかの雄たけびのようなその音を聞うと、二人は顔を見合わせて周囲を見渡す。速度を落として頭上に輝く明かりを広範囲照らせるように調整すると、目の前にいきなり影が現れた。


「うわ!」


 慌てて手綱を繰り急停止する。いきなりのことで意表を突かれた二人が、その影の方に目を向けると・・


「・・女?」


 弓を持って茶色いマントに身を包んだその少女は深い紺色の短い髪で、ところどころ怪我していることが分かる。


「・・いたた、こんなとこで転んでる場合じゃないのに。」


「おい、大丈夫か?」


 近くにいたロウとフェザーに今気が付いたようで、慌てて飛び起きるが足をひねったらしくすぐに転んでしまった。


「何なんですか、あなたたちは! こんな時間になにやってるんですか!」


「・・その言葉そのまんま返したいけど、答えるんならちょっと人を待たせてるからスティーブルへ向かってる最中だ。」


「早く引き返しなさい! 今はこの先に行ってはいけないの!」


「何で?」


「ルルッス・ウィルスが現れたのよ!」


「はぁ! あいつがか! こうしちゃおれん、ロウ急ぐぞ!」


 その少女の言葉を聞くなり慌てて馬に飛び乗るフェザーを見て、何がそんなに焦ることなのかがロウはいまいち分からない。


「何だってんだ、いったい。どうした?」


「詳しい話は向かいながら話す、はよ乗れ!」


 このあたりに詳しいフェザーがあそこまで慌てているのだからきっと余程のことなのだろう。少女を掴んでフェザーに放るとロウもそのまま馬に飛び乗った。


「きゃあ!」


 少女の声をきっかけに二匹の馬は再び駆けだして、スティーブルへと急いだ。


 ◇◇◇ ◇◇◇


「下ろしなさいってば! まだやることが残ってるのに!」


 フェザーの足の上で暴れる少女を抑える。


「ええい、大人しくせんか! 落ちたらどうする!」


「・・やることってなんだ?」


「引き連れてくる『ウィルス』の討伐に決まってるじゃない!」


「あいつらのことか?」


 指差した先に全員が後ろを振り返ると、黒い狼の群れが迫っていた。それを見た少女の顔がみるみる青く染まっていく。


「なぁ、フェザー確かルールがどうの言ってたけど・・・それって?」


「・・スティーブルの町の近くに現れる野獣は皆呪いを持っていてな、協会の町のスティーブルが作る武器じゃないと呪いが広がるって話じゃ。」


「じゃぁ、その武器を使うってことがルールって訳か。・・おい、お前。」


「フィル! フィル・ラグナーって名前があるの! お前じゃない!」


 呆気に取られていたフィルはロウの呼びかけに正気に戻る。戻っていきなり怒鳴る辺り、結構太い神経をしていそうだ。


「フィル、持っている弓はそうなのか?」


「そう、だけど・・・・無理だよ。移動しながらあいつらに当てるなんてそんなの、できっこないよ。」


 強気に話していたフィルの言葉は尻すぼみしていく。最後はギリギリ聞こえる程度の大きさだった。


「さっきまでの強気はどうしたんだよ。アイツら片付けるからそれ貸してくれ。」


「できるわけ無い! あいつらは賢いし、速い。それがあんなに来てるんだもん、どうしようもないよ」


「やってもないのに出来ないって分かるのか?」


「・・・それは」


 ロウの言葉と視線に押し黙り、そのまま沈黙してしまったフィルにロウは話しかける。


「フィルの言う通りそれが出来なくて、結果が同じになるならあがいてみるのも面白いんじゃないか? ・・・頼む、貸してくれ。」


 ロウの祈るような声を聞くと、少し逡巡した後弓矢を外してロウに渡してきた。


「絶対、無理だって。」


「やってみなきゃ分からないだろ?」


「・・・・できるのか?」


「じゃなきゃ『死神』なんて呼ばれなかったさ。速度落としてあいつら誘いこもう、フェザー悪いけど死角埋めてくれるか?」


「任しとけ」


 ロウの準備が整い後ろを見て、矢の数と迫っているウィルスの数を確認する。


 手に触れる矢の数は『8』、後ろに見える数も『8』で一本も外すことが出来ない。


 深く息を吐いて落ち着かせるとフェザーの方に合図を出して、速度を落とす。


「頼むぞ」


 ロウがお願いに答えるかのように、赤い馬は大きく鼻を鳴らした。


 フェザーたちの乗る馬より少し下がり気味の位置に来ると、先行している二匹が赤い馬に飛び掛かってくる。


「ふっ!」


 鐙に足を引っかけて絶妙なバランスで体を固定すると手に持った矢を二匹の眉間めがけて放った。


 空中にいる二匹は避けることができずに矢が刺さり、そのまま置き去りにされた。


「よし」


 弓の腕が衰えていないことを確認したロウは、一本矢を追加で取り出した。


 先行していた二匹が撃ち落とされたことで残りの六匹はとびかかることなくロウの馬の周囲に散らばる。


「・・こいつらかなり賢いな、狩りを分かってやがる。・・・フェザー」


「応とも! そっちに二匹と少し後ろに一だ。」


 明かりのの及ばないギリギリに隠れた六匹は、今のロウからはどこにいるの分からない。しかし、夜目が効くらしいフェザーは暗がりでもうっすらと感じることが出来るらしい。


「三・二・一!」


 フェザーの掛け声と同時に辺りを照らす光が強くなる。ギリギリに隠れていたウィルスたちは、突然自らの姿がさらされたことに驚いたようで行動に乱れが生じる。


 その隙を逃すロウではない。姿が見えると同時に教えられた場所にいることを確認すると、放たれた矢は並走する二匹の頭を貫いた。


「ガルルウアアァアア!」 


 斜め後ろから飛んできた一匹に焦ることも無く、足を手綱にひっかけて体をズラして躱す。馬の横腹に座るような格好で、飛び越えるウィルスの心臓を打ち抜いた。


 そのまま地面に叩き付けられて動くことは無かった。フェザーの手を借りて座りなおすと、残りの三匹を探し始めた。


「・・どこだ?」


 どれだけ辺りを見回しても見つからない。


「・・・逃げたな、こりゃぁ。」


 フェザーもロウと同じく辺りを探し、明かりも大きくしたが残りのウィルスの姿を見つけることはできなかった。


「・・・すごい」


「な? 無理じゃなかっただろ?」


 まさか逆転できるとは思っていなかったようで、フィルは呆気にとられたままの表情から動かない。


「もうすぐじゃ、速度上げるぞ。ロウ」


「あぁ、さっさと行こう。」


 朝日が顔を見せて始めており、再び速度を上げてスティーブルへとつながる道を駆け抜けた。


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