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全てが新しい異世界にて -fast life-  作者: 鰹節
第二章 英雄大国 ストロガノン
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祭典前日 後編

 

「『次』について考えるときに必要になってくるのは、今までの事件で敵は何がしたいのかってとこだろう」


 周囲の目がロウに向けられる中、最初にそう切り出した。


「まず殺人事件だ。結論から言うとおそらく人員の増強が一番の目的だと思う。」


「人員の増強? なぜだ、そんなことしてもそいつらが不利になるだけだろう。」


「いや、それがそうとも言えないんだ。」


 聞いてきたロベルトはロウの回答に怪訝な顔を見せる。それは他も同じようで、ただ一人だけ話を理解したようであるシュロロが言葉を挟んできた。


「・・キリエ様の暗殺か」


「話を飛ばすんじゃない、周りが理解してないだろうが。・・ったく。順番に説明しよう。」


 咳ばらいを挟んで再び説明に戻る。


「さっきロベルトも言っていたように、警備の人員の増強がされたら相手からしたらそれは行動しずらくなるだけだろう。

 けど、忘れてないか? 俺が特定した犯人は兵士の可能性があるって言うことを。」


「だとしてもさ、結局それは不利になるんじゃないの? 犯人からしたら見られる可能性が出てくるわけだしさ。」


「・・・それは犯人が一人の場合だろ?」


 その言葉に質問を重ねてきたリウの表情が凍り付く。


「おそらく、連続事件の犯人は同一人物なのは間違いない。死体から感じたあのレベルの狂気をもっている奴が、そうたくさんいるとは思いたくないからな。

 俺が言いたいのは、その犯行を手助けしている兵士の数が増える可能性があるってことで、

 何かしらの事件が起こりやすい状況を作り出すことにつながるかもしれないってこと。」


 その場にいる一同が声を出せない中、トールが声を絞り出すようにしてロウに問いを発する。


「・・姫様の警備が増えると暗殺の危険も同じだけ増えるってことか。」


「そういうことだ。この脅迫じみた手紙は今までに何通も送られてきてんだろ?」


「・・そうだ。ロウの予想通りだとすれば今まで何もなかったのは、」


 言葉を失ったロベルトの続きをロウが語りだす。


「あぁ、やらなかったんじゃない。できなかったんだ。だからこその今回の手紙は相手もかなり本気だろうと予想できる。・・ま、あくまで予想だけどな。」


「ただの予想にしては随分と頷けるところが多い。

 その予想は大体当たっていると俺は思うが、それでお前はどうするというのだ? まさか警備を無くせ、とは言うまい?」


「明日の予定だが、スピーチが終わり次第次のパレードとやらの準備があるんだろ? その時の移動を何かの乗り物に乗るんじゃなくて姫様本人に移動してもらいたい。」


「ロウの話の通りだとするなら、危なくない? だって外にいる警備が殺しにかかる可能性があるんでしょ?」


「いや、逆だ。狭い密室の中で襲われるより外で襲われた方が逃亡できる可能性が大きい。だからこそ乗り物に乗ってほしくないんだが・・・。」


「何とかしよう。」


 そう頼もしい言葉を告げたのはここまで、ある程度理解していたであろうシュロロだった。


「だとすると、警備にも神将をつける必要があるか。」


「いや、それはやめて欲しい。」


 行きつくハズの答えに否定の意志を見せたロウに全員が不信感を抱いたようで、ロウを見つめる視線が鋭いものに変わる。

 それに気づいたロウは両手を上げてそんな意志は無いことをしめす。


「・・違う、誤解すんな。神将なんて奴が警護に回った場合、犯人が行動を起こさない可能性がある。

 そうなった場合、最悪犯人を捕まえることが出来なくなるかもしれないんだ。」


「じゃぁ、どうするのサ?」


「ここにちょうどいいのが二人、いるじゃないか。」


 そう言って隣にいるフェザーの肩を叩く。今までのお返しとしてロウから下ら強めに叩いたはずだが、フェザーの方は意にも介していない。


「なんで?」


 首をかしげるリウにロウは考えを告げる。


「幸いにも俺たちは死んだことになってる。警備は予定通り続けてもらって、俺たちが離れたところから見張ってればいい。」


「儂は問題ないぞ」


 ロウの方に明るい視線を向けてくるその表情が、かなり頼もしい。肯定の言葉をもらえたことに安堵の息を漏らしつつ視線を手-ブルの方に戻す。


「二人だけでほんとに大丈夫なノ? 心配しかないんだけド。」


 皆が思っていることをソルドールが口に出す。それはロウも少し考えていたことで、


「大丈夫! とは言い切れない。相手の規模が分かってない以上、二人だけでは不安が大きい。だから俺としてはあと一人程ついてきて欲しいと思ってる。」


「じゃぁ、あたしが行こうカ!」


「・・ソルドール様がですか? これまでの話の流れだと、敵にこちらが怪しい行動を悟られてはいけないというのは分かってますよね。」


「だからこそじゃないカ! あたしはあくまで町の見回りに向かった結果、襲われる姫様を発見しタ!

 これほど怪しくない流れは完璧じゃないカ!」


 ソルドールの考え方は説得力があるもので、なるほどとほぼ全員が頷いた。

 自信満々の表情を見せてくるソルドールから、ロウは視線を逸らしてシュロロの方を向く。


「俺としてはシュロロに来てもらいたいと考えてる。」


「えー、どうしテ! よりにもよってヘッポコ? 私じゃ不満なノ!」


「いや、不満とかそういうわけじゃない。相手は妖精フェアリーで、あんたらでも知らないエアの使い方をしている可能性があるってこと。

 シュロロはこの国一番のエアの使い手なんだろ? もし妖精フェアリーがあんたらの知らない力を振るってきた場合、こいつなら対応できると思ったからだ。」


「なるほど、理には適っているな。・・・フッ、良いだろう。お前の言葉に従うのは勘に障るが、断る理由は無いからな。」


 シュロロが認めた時点で、ソルドールの表情は暗い絶望の表情を見せていた。


「そんナ・・・。せっかく楽しめると思ったの二・・・。」


「・・・それは事件をですか? それとも祭りですか?」


 ロベルトの言葉に何も言わないソルドールを見つめていると、部屋の扉が開いて入ってきたのはあの浴衣の女性だった。


「お話の途中失礼します。お食事の用意が出来ましたので、皆さま息抜きにでもお召し上がりになって下さい」


 その言葉で話し合いは一時中断されることになった。  



 ◇◇◇ ◇◇◇



 ロウが話した内容にキリエは何も言うことが出来ないでいる。走る音だけが耳に聞こえる中でロウは言葉をつなげる。


「・・てなことを推理して今に至る。本当なら裏道に入った時点で、助けに行けるはずだったんだけど行けなくて悪かったな。」


 突然の謝罪に我に返ったキリエは頭を振って思考を切り替える。


「何かあったんですか?」


「王宮が襲撃されたんだ。」


「王宮がですか!」


「あぁ。それで俺たちは王宮の方に移動した隙をつかれて、あんたのところに向かうのが遅れちまった。いらない怪我させたのは謝るよ。」


 次から次へと報告される内容は、どれもキリエからしたらあまりにも現実離れしていていまいち実感がわかない。

 しかし、足のかすかな痛みがその実感を現実のものとして叩き付けてくる。


「・・王宮の方に向かったというならどうして私のもとに来れたのですか? 

 もしあなたの言う通り王宮が襲われたのならば、こちらに気づくことは無さそうなのですが。」


 当然の疑問だろう。目の前に国を揺るがしかねない異常があったのならば、裏で静かに行われていたキリエ襲撃に気づくことは無いはずだ。


「それは、」


 いきなりロウの言葉が途中で止まる。さらには話している最中でも止まることの無かった足を止めて後ろを振り返る。

 キリエも同様に後ろを振り返るがそこには薄暗く照らされた通路があるだけで、特に変わった様子は無いように見えるが・・・


「まずいな・・」


「え?」


 そう呟くとさらに速度を上げて移動を開始した。

 何が起きているのか理解できないキリエはロウの背中でただ揺れるだけで、状況においつけない。


「どうしたんですか?」


「・・何か来てる。後ろ何か見えないか?」


 顔は真剣そのもので、焦りが少し見えているように思う。


「後ろ?」


 言われた通りに後ろを振り返ると、うっすらと後方に何かの影が見える。

 よく目を凝らして注視してみると複数の狗のようなものがこちらに向かって走ってきているのが見えた。


「何ですか、あれ!」


「ちっ!」


 キリエの焦った声で疑心は確信に代わり、先ほどまで全く乱れていなかった行きがここに来て少し荒れてきたように思う。

 速度を上げて走るも犬との距離は広がるどころかさらに縮まっているように感じる。

 出口までの距離はもうすぐだとは思うのだが、一向に変化のない道はそれだけでこちらの精神をそいでいく。


 追いかけてくる犬との距離はかなり近づき、もう目で確認できるまで近くなっている。

 その犬は頭と目が二つの奇妙な狗だ。それぞれの頭に一つだけついている目がこちらを凝視している。


「・・見えた。」


 そのロウの声に前方を見ると、前に出口と思われるような明るい場所が視界にはいると同時にその光の中に転がり込んだ。


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