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全てが新しい異世界にて -fast life-  作者: 鰹節
第二章 英雄大国 ストロガノン
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祭典前日 前編

 

 入り口に入った後、後方から激しい音が聞こえた。どうやら二人が戦い始めたらしく、まるで目の前で戦っているかのような強い衝撃がロウを襲う。


「・・・どんな戦い方してんだ、あいつら」


 通常ならば周囲に意識を向ける余裕はない。だが、今はシュロロから肉体強化の力を掛けられているから、いつもより各段に速い速度で移動ができている。さらには肉体強化のおまけで体力も強化されているらしく、体の方は全く疲れていない。


「・・ねぇ、聞いてもいい?」


「何を?」


 シュロロから保険として渡された、脇差より少し短いサイズの剣を使ってキリエをおぶさっている。先ほどの部屋から少し行ったところで、背中の方から声がする。


「今起きてる状況について教えて欲しいんですけど・・・」


「・・そうだな、今のうちに話しておこう。とりあえず、今の現状についてだ。今は、やっと反撃に転じられたところで、これからの行動でどれだけ敵に迫れるかが変わってくる。」


「反撃?」


 ◇◇◇ ◇◇◇


 祭典前日に遡る。


「反撃って、事件のこと解決できたのか?」


「・・半分ってとこかな。まぁ、反撃っつっても相手の目的が分からない以上後手に回るしかないんだけど」


「半分って・・・。それでよく反撃に移ろうとか言えたな」


 少し期限の悪そうな態度で話すトールに、隣に座るリウが肩を叩きながらなだめている。全体の視線がロウに向く中、一人だけ湯呑を傾けていたシュロロが問いを発する。


「・・・詳しく話せ。」


「安心しろよ、そのつもりだ。これから話すことはあくまでも俺の予想だから信じる信じないは自分で決めてくれ。」


 出された湯呑に口をつけて咳払い一つした後に、周囲から向けられる視線に答える様に話し出す。


「とりあえず、今結論が出たこととして『犯人』と『次』についてだ。

 『目的』については全くと言っていいほど分からない。」


「順番にいこうカ。『犯人』は?」


 ソルドールの言葉にうなずいて視線を向ける。


「結論から言って、これまでの実行犯の体は『精霊フェアリー』の血を受け継いでいる兵士が犯人だ。」


「馬鹿な! 精霊フェアリーは戦争の際に皆殺しにされたはずだ。まさか生き残りがいたとでもいうのか?」


「そのつもりだ」


 声を荒げるロベルトに冷静に言葉を返す。その対応に頭が冷えたのか、一度息を吐いてから再びロウに問いかける。


「・・・何故、精霊フェアリーなんだ?」


「一番の理由としてはあの黒い靄だ。」


「靄?」


「あぁ、そうだ。あの男の体を覆っていた黒い靄だが、あれは最初何かしらのエアの能力かなにかと思ってたんだが『黒い』能力は存在しないらしい。」


「・・・黒い、能力?」


 浮かんだ疑問を口にしたリウに向けて続きの言葉をつなげる。


「『エア』ってのは、マナやガナに元からついている色でどういった能力に派生するかが決まるらしい。だよな、シュロロ。」


「・・俺はそう認識している。各々の体内に存在しているマナの色は数あるが、少なくとも『黒』は俺は見たことが無い。

 だからこそこいつの話は信じられんかったが、チビの報告書には黒の靄を見たという目撃者がいたらしい。証拠があるなら認めないわけにはいかないだろう。」


「ということらしい。では何故黒いのか? という問題だが、それは結構簡単に見つかった。」


 シュロロの方に視線を向けていた視線がロウに集まり、その視線を代表するかのようにリウが尋ねてくる。


「戦争のときに使っていた人間の兵器だよ。確か『狂人薬』だったか。これは服用した対象が限界を超える力を手に入れるための薬で、副作用としてマナの黒化と意識の混濁が見られるそうだ。」


「マナの黒化についてはそれで解決かもしれんが、意識の混濁? もしそうなら正常に動くことはままならないと思うのだが・・」


「そのための併用機だ。この併用機ってのは、他人の体に自分の意識を植え付けるとかいうふざけた機械で、おそらくこれを使われてると考えてる。」


「・・・それで体か。では中身は?」


 ロベルトの質問にロウは首を横に振って答える。


「すまん、それは分からない。王宮の書庫には『人間だけに限定される』ってのは書かれて無かったんだ。」


「・・・そうか。」


 告げられた答えに落胆の色を示すロベルトの横で、自分のペースを守ったままのソルドールが次の問いを聞いてくる。


「ふーん。『犯人』についてはなんとなく分かったヨ。で、『次』ってのハ?」


「それの話に入る前に確認することがある。・・・シュロロ、どうだった?」


「思った通り、盗られていた」


「・・・そうか。」


 ロウとシュロロの間で交わされた応答に周囲の面々は困惑の色を浮かべる。


「ちょっト! 二人だけで話さないデ、分かるように話しなヨ!」


「王宮にはとある防御壁が張られている。そうだな?」


「それガ?」


「その防御壁は『一定以上の大きさや量』または『一定以上のマナ量』を感知した時に働くもんなんだよな?」


「話が見えないヨ。何が言いたいのサ。」


 言葉に詰まるロウに変わり、答えたのはシュロロだった。


「・・・最近、その防御壁を一度解いたことがあるだろ。」


「そんな事あるわけ・・・・・」


 言葉の途中で突然黙り俯くソルドールに、隣に座っているロベルトが声を掛ける。


「ソルドール様?」


 ロベルトの声に反応したのかどうか分からないが、呼ばれた瞬間俯いた顔を上げて何か理解したような顔をしている。


「・・・『人間狩り』! じゃぁ、まさか!」


「やっと理解したか。互いに気づくのが遅かったな。」


「何を言っているんじゃ、お前等?」


 話しについていけてないみたいで、トール リウ フェザーが頭に ? を浮かべる中、話の意味に気がついたのかロベルトがその疑問に答える。


「まさか、先の『人間狩り』の指令の本当の目的は防壁の排除が目的だったのか!」


「「「 !? 」」」


「だけならばまだ良かったんだがな。」


「・・・あの時は緊急を要するということデ、時間を短縮させるために防御壁だけを切ったのではなク、さらにその大本。

 王宮全体につながっている元を切ったんだヨ」


「なっ!」


 それを聞いた全員に衝撃が走る。


「故に、その時は一部の通信のみが可能で後は皆使い物にならなくなっていた。・・・こんなことに気が付かんとは。俺の馬鹿さ加減に怒りが収まらん。」


「ヘッポコが馬鹿なのは元から知ってたけどネ」


「あ゛ぁ?」


 二人の間に流れ出した剣呑な雰囲気をフェザーが鎮める。その様子を眺めながらシュロロに問を発する。


「で、盗られたのは?」


 ロウからのその質問に、先ほどまでと打って変わって急に表情が暗くなる。その様子を見ていたソルドールが先を促す。


「なにもったいぶってんノ? 早く言いなヨ。」


「・・・・『エデンの実』だ」


「え゛! あれ盗られたノ? 」


 シュロロが告げたそれを聞いた瞬間、ソルドールの顔も一気に真面目なものになる。


「・・・最初は信じられなかった。が、事実だ。」


「うっわー・・・。」


 ソルドールは頭に手をあてて、困り果てている。二人の間で理解されている内容だが、こちらは全く理解できずに頭に ? が浮かぶ。


「おい! 二人で納得すんなって。説明しろよ、なんだ『エデンの実』って。」


「私も聞いたことがありません。説明してください。」


 二人で顔絵を見合わせたのち、ソルドールがポツポツと言葉をこぼし始めた。


「この『エデンの実』は国家最重要機密に指定されている内容なノ。これを知っているのは王とマキシム、それと神将だけだから他言しちゃダメだヨ?」


 思っていた以上に機密レベルの高いワードらしいことは理解できる。

 話している時の表情は真剣そのもので、嘘をついているようには見えない。


「この『エデンの実』というのは、要は力を手に入れることが出来る実でな。さっき話にも出ていたが『狂人薬』とやらの完全上位互換だと考えればいい。」


「何で力を手に入れるだけの実がそんなに機密レベルが高いんだ?」


「手に入る力が大きすぎるんだヨ。もしその実に適応するものが現れたら、神将総出でかからないと国が滅んじゃウ」


「・・は?」


 言われた内容がいまいち理解できない。いや、理解はしているだろうがそれを理性が無意識に拒んでいるのだ。


「得る力が大きいんだったラ、反対に副作用も甚大でネ。実に適応したら別だけど、失敗したらそいつは化け物になっちゃうんだヨ」


「それも、神将複数人で互角の化け物だ。」


「・・・そんな危険なもんを盗られたと?」


 ロウの質問に二人は頷く。ただでさえ頭が痛いというのに、ここに来てさらに頭痛の種が増えてしまった。

 辺りを漂う空気は一気にどんよりとしたものに変わるが、そんな空気を変えようと気まずい雰囲気の中リウが言葉を発する。


「ま、まぁ盗られたものについては後で考えるとして、ロウ。『次』ってなに?」


「・・・そうだな。ま、隠しそうな場所にも心当たりがあるから今は置いとこう。」


 ロウの言葉に俯いていた面々が急に顔を上げる。

 聞きたそうな視線が投げられているが、それを無視して先を話しだした。

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