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全てが新しい異世界にて -fast life-  作者: 鰹節
第二章 英雄大国 ストロガノン
39/132

合流

 

「うぅー、おなか痛い」


 顔に浮かぶ色は暗く、おなかをさすっているのは猫耳少女だ。


「・・大丈夫か? リウ。そこまで無理しなくても・・・」


「ううん。私は自分の意志で、来たくて来てるんだから。それを曲げたくない。」


「・・そんな心配すること無いんじゃなイ? 本人が行けるって言ってるんだからサ」


 鼻歌を歌いながら上機嫌で先頭を歩いているのはソルドールだ。持っている紙袋からはガシャガシャと不思議な音が聞こえてくる。袋の中身について聞いたら内緒だと言われたが、聞こえてくる音から察するに何かしらの武器のようなものが詰まっているのだと予想している。


「ソルドール様、その言い方は少々冷たく聞こえますよ。」


 注意を促したのは立ち位置がオカン役的な人物、ロベルトだ。なぜこの二人が付いてきたかというと、ネルの計らいによるものだ。

 『シュロロが最後に言っていた通りにしてやろうか』ということでソルドールに声を掛けたところ、何故かロベルトまで連れて行こうということになり今のこの状態になっている。


「んー、そんなつもりは無いんだけド。気に障っタ?」


「いえ、そんなことないです。お気遣いありがとうございます。」


 ソルドールからの言葉に明るく返すがその表情はまだ少しくらい。一体何があったのか気にはなるがそこに触れるのは良くない気がするので聞かないでいる。


「ほラ! 大丈夫だって言ってるじゃなイ! 気にしすぎなんだヨ、ロベルトはサ。」


「・・・リウも少しくらい言っていいんだぞ? 調子に乗るとつけ上がるんだから。」


「ちょっと聞き捨てならないナ、その言葉。撤回してもらおうカ!」


「撤回するも何も事実じゃないですか。そのせいで私がどれ程の苦労をしてきたか分かってるんですか?」


「そんな事一度も無かったでショ!」


「・・・物見の塔」


「うっ」


 ぼそりと呟やかれた言葉に、今までの勢いが一気にしぼんでいったのが分かった。


「グリムの一件もそうでしたし、他に新しいものでは遺跡の時も含みますね」


「・・あ、あはは。」


「笑い事ではないんですよ? 遺跡はまだしも、塔はいけない。あれの復旧に私がどれだけ尽力したと思ってるんですか!」


「・・・すいませン」


 立場が一気に逆転して、ただでさえロベルトと並ぶと小さいソルドールの身長がより小さくなるように感じる。ロベルトが言葉を放つ度にしぼんでいっているような気がする。


「ふふっ。」


 不意に後ろから聞こえたのは小さく噴き出した笑い声だ。そのお絵に後ろを振り返ると、声を押し殺して笑っているリウがいた。その視線に気が付いたのか、前を歩く二人に声を投げかける。


「すいません。ずいぶんと仲が良いんだなって思いまして。」


「仲が良いっていうよりか、ロベルトが口うるさいだけなんだヨ。そのせいで私がどれだけ・・・」


「・・何か、おっしゃいましたか?」


「・・・イエ、ナンデモナイデス。」


 リウの言葉で元のサイズに戻ったように感じたが、それも一瞬でロベルトの言葉で再び小さくなってしまった。

 その後も言い合いが続き、しばらく歩いたところで目的の場所についた。


 朝から王宮に戻り、できるだけ書類の整理を終わらせてここに来ている為、時間はもう夕方だ。


 シュロロの家は王宮から見て左側の山のふもとに建っている。構えられた門は木と瓦で組まれてかなり大きな門構えで、厳粛な気を放っている。

 門に近付き扉を開けようとしたところ、どこからともなくきれいな和服に身を包んだ女性が現れた。


 その女性は黒の生地に桜の花が散りばめられたようなきれいな着物を着ていた。頭には髪を後ろでまとめて、着物と同じ桜のかんざしがシャリン、と優雅な音を立てて揺れている。


「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」


 その女性に促されるまま後につていく。門の壁伝いにぐるりと移動し、案内されたのは正面入り口ではなく人一人しか通れないほどの小さな扉だった。


「本来ならば正面から入っていただくのですが、今回はどうやら例外のようでして。まことに申し訳ありませんがこちらから入っていただくようお願い申し上げます。」


 扉を開けて頭を下げる。歩き方や礼のどれを見ても違和感がない、無駄な動きが無いのだ。磨き上げられた作法というのはここまで美しいものなのか、と深い感銘を受けた。


「いーヨ。じゃ、入るネ」


「・・では、失礼します。」


 ソルドールは特に気にすることもなく扉をくぐって中に入る。ロベルトも一言添えて後に続く。


「・・・失礼します」


 リウとトールも二人に続くようにその扉をくぐって中に入る。そこは屋敷の裏口のようで、目の前にある半開きの扉の先には何人もの屋敷の人たちが料理をしている姿が見える。


「・・・こちらです。」


 再び、先を促してくる。少し歩くとそこには魚が泳ぐ大きな池があり、真ん中に橋が架かっている。

 その周りには手入れが行き届いた木が数本生えており、一つ一つが自分を魅せるためでなく周りの池や木、花といった景色を際立たせている為に設置されているようだ。

 その景色を、直感で美しいとトールは感じた。


 その景色が見える縁側で靴を脱ぎ、屋敷の中のある一室に案内された。


「この部屋でお待ちになって下さい。今すぐに主を呼んできますので」


 頭を下げてトールたちから離れていく動作にも無駄がない。きっとかなり腕の方もたつのではないかと思わされた。


 連れて来られた先にあった扉を開き、中に入るとむせ返るような本の独特のにおいが迎えてくる。そこは数多くの本が置かれていた場所だった。

 部屋の中に入った時頭が揺れた気がした。おそらく、この部屋の外と中の大きさが釣り合っていないために空間がねじ曲がっているのだろう。


「・・・あのへっぽこ、こんなに本持ってたのカ。」


「・・すごいな」


「どこからこんなに持ってきたのか。」


 思い思いの言葉を口にする面々の耳に、不意にどこからか音がする。その音に全員が気が付いたのか、その音の出どころを探ろうと静かになる。少しの間が置き、再び何かが崩れるような音がした。


「・・・・・。」


 全員が顔を見合わせて足音を殺して音のした場所に近付いていく。この本棚の曲がった先で音がしたので少しだけ顔を出してのぞき込む。

 本の山が乱立している中で、一部分だけそこにいる者の姿が見える。麻木色の服に輝くような銀色の髪が揺れると、


「ロウ!」


「ん?」


 振り返った顔を見間違えるはずがない。あれだけ嫌いながらも渇望していた人間の姿がそこにあった。


「おぉ! 来たか。」


「来たか、じゃないだろう! ここで何をしてるんだ!」


「うっ、えっ?」


 ずんずんと歩み寄ってきたトールに胸ぐらを掴まれ、本の山の中から引きずり出される。その行動にいまいち理解してないようで困惑の表情を浮かべている。


「えっ、何? 聞いてないの?」


「何の話だ?」


 いまいち話がかみ合わず互いの頭に疑問符が浮かぶ。それを見ていた者すべてが同じことを思っていただろうが、一人だけはいつもと変わらない様子でロウに話しかけていた。


「やっほー。元気してタ?」


「ここにいる全員に説明したんじゃないのか?」


「それはあたしの役回りじゃないシ。それこそヘッポコに言いなヨ」


「何の話をしてるんですか?」


 現状を把握できていない代表として質問するが、その答えは後ろからの声で答えられた。


「・・集まったか。少し狭いな。」


 周囲を見回すなり、その言葉を漏らした後指を鳴らすと部屋が大きく揺れて動き出した。

 グニャグニャと床がうごめくような感覚を足元に感じ、本棚たちは滑るようにして動き始めた。それから十秒ほどで収まると、そこは数人が座って話ができるであろうという広さの机とい椅子が並べられていた。


「・・・ふむ、こんなものか」


 そう呟くや否や、一人でさっさと椅子に座ってしまった。それに続くようにしてソルドールも椅子に座わる。


「うーン、これ座り心地悪くなイ?」


「文句があるなら立てば良いだろう、チビ」


 二人がマイペースで進む中、話の流れについていけない者が三名ほど。さらにそれに拍車をかける様にして新しい侵入者が現れた。


「ふぃーええ湯やったわ。神将ってのはいつもあんな風呂に入ってんのかいな」


 タオルを首にかけた獣人が現れて、当たり前のように出されている椅子に座る。


「いやー、しかしあれじゃな。少し見ん間にえらい増えたな」


 そんなこと言いながらシュロロと話している。その様子を見て三人は完璧に固まってしまっている。

 その様子をみて、ロウは一番近くにいるトールの手を叩いて話す。


「・・話すから、とりあえず座んない?」


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