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全てが新しい異世界にて -fast life-  作者: 鰹節
第二章 英雄大国 ストロガノン
34/132

出会いそして・・・

  ◆◆◆ ◆◆◆


やってきたのは小高い丘の上付近。セシルたちがいた場所からここまで一時間程度の距離にある場所は、

この里の中でも有数の花の名所として知られていた。


そんな場所でいくつかの鼻を摘み、降りる頃はもう完全に夜だった。

医者に手を引かれ、ゆっくりと降りていく。


中腹に来た辺りで手を引く医者の力が変わった。

顔を見上げると戦慄している表情で見下ろしていたのだ。

訳も分からないままセシルも視線の方に向けると、町がある方のいたるところで煙が上がっていたのだ。


医者はセシルを抱えて急いで降りていく。

町の付近に辿りついたときはもう手遅れで、そこには見たことの無い人間が歩いていた。

同じ見た目なのにそれは明らかに別の生き物であるという認識を受けた。



恐怖、嫌悪、憎悪、悪辣、怒り、そういった感情が出てくる前に

その医者はセシルに逃げるように告げた。

摘んできた花を一輪だけセシルに渡し、残りの花は医者が皆持って行った。

これは私が必ず渡すから、といって逃げる方を指した後病院の方へ走って行ってしまった。


「・・・まって」


追いかけようと物陰から姿を出した時だった。

先まで一緒にいた女性がその人間に吸い取られる瞬間を目撃した。

文字通り体が消えて、もともと医者だったものが消えてなくなってしまった。


幸いすぐに身を隠すことが出来たため見つかることは無かった。



そこからはただ走った記憶しか残っていない。

林の中を抜けて、瓦礫にまみれた町を走り去り、どこかの森の中に辿りつく。


大きな木にできたくぼみの中に隠れて震える体を強く抱きしめる。

カチカチとなる口の震えを止めようと口を塞ぐがそれでも漏れ出してくる。


それからどれだけ経っただろう。

かなりの時間が経過したかもしれないし、もしかしたら全く時間は立っていないかもしれない。

そんな時だった。誰かの叫び声が聞こえた。


この近くだ。音を立てたら殺されちゃう。あの時の医者と同じように消えてしまう。

そう自分に言い聞かせて震える体を抱きしめる。


「・・・・て! ・・・・!」


「汝に救いを! 汝に安寧を!」


女性はセシルが隠れている場所からよく見える場所で倒れた。


「汝に救いを! 汝に安寧を!」


そう繰り返すそいつは体がガタガタと不自然に震えていて、

よだれを垂らし、目は白目で迫っていた。


手に持っている見たことの無い機械が音を立てて動き出す。


「いやああぁぁっぁぁぁぁぁあ!」


どんなに叫んでもその男の手が止まることは無かった。

その女性もあの時の医者のように消えてその機械に吸い込まれてしまった。


「・・・・・・・!」


音を立てないように泣き声を抑えて、口を手で塞いで身を隠す。


「コレれれれで、ま、また一人りり、救ってシししシまっタ。・・・・ムム!」


男が何かに気が付いたようで、ゆっくりと近づいてくる。

全身が恐怖に震える。

見つからないようにその場で蹲る。


「ほウ! ソソそこにいるううぅウゥのはまだ赤子でデでデはなイかかか!」


その人間の視線の先には先ほどの女性が抱いていたとみられる赤子の二人が倒れてた。


「これレレれははは、かわわいそううぅぅに!

 私シシが、救ってあげまままああぁあショウ!」


ここで動かなければ私は助かる。大人しくしたら助かる。

自分に言い聞かせて、その場から動かないように言い聞かせた。


  ◆◆◆ ◆◆◆


その男は全てがおかしかった。


逃げ惑う姿はその男にとって愉悦でしかなく、

この世界に生きることに不満を抱き、生きることを諦めた者として

他者を決めつけて手当たり次第に殺していく。


そんな男が救った女性が残したであろう赤子を救おう(ころそう)と近づいた。


すると、ガサガサと突然別の方向から音が鳴る。

その人間は音の方向にに構えるが何も起きない。


「・・・・っ!」


「むっ!」


赤子のいる方から気配を感じて向くと赤子の二人を抱えて走っていくセシルの姿を捕らえていた。


「あぁ! 何ということだ! 救いを求める声がまだそこにあったというのにいににに!

 きががが付かないなど、私はなんととと愚かな!」


セシルの後を追いかけて走っていく。


  ◆◆◆ ◆◆◆


幼いセシルにとって、赤子は非常に大きなサイズに感じた。


あの時大人しくしていれば良かったのに、こんな怖い思いをしなかったのに!

と、何度も繰り返して呟いている。


しかし、その都度手の中に眠る赤子を見るとそんな後悔はどこかへ消え去っていくのだ。


「どーーこーーかーーなーー」


あの人間が迫ってきている。

走って逃げることを諦めたセシルは近くの岩壁に近くにある茂みの中に隠れた。


体の震えは赤子を抱いて止め、震える歯は赤子にうずめる。


足音が聞こえる。すぐ近くにいるのだろう。

声もすぐ後ろで聞こえている。

このまま、大丈夫、大丈夫。


人間の声がだんだんと遠ざかって行ったことに安堵して息を吐く。

その時だった。

上から子供が降ってきたのだ。


「うわ!」


突然降ってきたその子に驚いて声を上げてしまった。

慌てて塞ぐがもう遅い。


「そーこーにー・・・いたのかあああぁぁあぁああぁ!!!」


人間が近寄ってくる。落ちてきたその子も一緒に逃げようと触るが気絶していて動かない。

体が今まで以上に震えだす。焦りも緊張もこれまでにないくらい震えている。


ざちゃり


土を踏む音が聞こえた。

その声に振り返るとそこには機械を構えた人間がそこにいたのだ。


「汝に救いを! 汝に安寧を!」


もう終わりであると、そこにいる三人を抱える。


「汝に救いを! 汝に安寧を!」


嫌というほど聞いた、来てしまったその言葉の後は・・・・・・





「?」


先程まで感じていたあの感覚が消えている。体もまだある。

どういうことかと振り返ると、そこには紅蓮の髪の女性がそこにいた。


その女性は振り返り、腰を下ろして目線を合わせて話しかけてきた。


「大丈夫かい? もう安心だよ。」


その声に安心したのか、緊張の糸が切れたのかは分からない。

その記憶を最後にセシルは気を失った。



  ◇◇◇ ◇◇◇


「・・・で、後はマリアさんから聞いた通りだよ。」


「・・・・。」


聞いた話はかなり重いものだった。

セシルの言葉を聞いて、ロウはこの世界の人間に対して持っていた嫌悪感がより強まった。


「だいたい分かってるとは思うけど、その時の子供が・・・」


「・・・リーリアたちなのか。」


首を縦に振ってこたえる。


「目が覚めて声を掛けても一向に話をしようとしない。

 答えるのはうわ言の様に呟いていたリーリアという名前だけなんだ。

 シュシュとミューは体をくるんでいた中に名前が書かれていた服を着ていたから分かったけどね。」


「記憶が、か。・・・なぁ、聞いていいか?」


「何?」


優しい声で聞き返してくる。

今まで話していたことはまるで気にしていないかのように。


「・・よく俺に話そうって気になったな。

 セシルの話を聞いてる限りじゃ人間に対してかなりの恐怖心があったと思うんだが。」


「・・・あんたが家族だといったからじゃないか。

 たとえ人間だとしても私の知っている奴らとは違うことを、ロウは証明してくれたからね。

 だったら、私もそれなりに覚悟をしなきゃ。ロウに悪いよ。」


「・・・そうか、そうだな。変なこと聞いたな。悪い。

 話してくれてありがとうな、セシル。」


「ううん、なんでもないよ。さっさと解決して帰ってきなよ。

 じゃないとあたしが奢れないんだからさ。」


今までの雰囲気を吹き飛ばしてくるように明るく笑顔を作って話してくる。


「サクッと終わらしてくるよ。」


そう言って替えの服を何枚かとり、皆のところに戻った。


 ◇◇◇ ◇◇◇


「それじゃぁ、ご馳走様でした。」


トールは寮のみんなに礼を告げて先に外に出た。


「突然すまなかった。今度来るときは一言入れてから来させてもらうよ」


ロベルトもトールの後に続き出て行った。


シュシュとミューはかなり眠たかったんだろう。

今はマリアの腕の中で寝息を立てている。


「じゃぁ、サクッと終わらせて帰ってくるからもう少し待っててくれ」


「早く帰ってきてくださいね。待ってますから。」


名残惜しそうに言葉を発してくるのはリーリアだ。

ロウが今は無理やり連れてきてもらったことを聞いて悲しそうな顔で聞いていた。

まだその名残が言葉の隅に残っている。


「約束、忘れないでよね」


「ぜってー奢れよな。期待してるからな?」


扉に手をかけてマリアを見つめる。


「・・・・任せときなよ。」


「あぁ、頼む」


そう短く告げて扉を開けて外に出る。

雨が降る中、リーリアたちの視線を背中に受けてそのまま城へと戻った。
























はずだった。


 ◇◇◇ ◇◇◇


「・・・それで、これはどういうことだ?」


目の前に広がるのは武装した兵士たちだ。

しかし、気のせいだろうか。なんだかいつもの兵士たちとは違う気がする。

張り詰めた空気が流れる中、ロベルトは声を出す。


「それで、なぜお前たちがいるんだ?」


前に出て話しているロベルトの後ろでロウはトールに声を掛ける。


「・・・あいつら何者だ?」


「・・・・執行部隊だ」


苦しそうな表情でロウの問いかけに答える。


「執行部隊?」


「そうだ。この国は外交と内政をわけることで執政を行っている。

 我々神将は力の象徴。対して帝将は知恵の象徴だ。知ってるな?」


「あぁ、それは知ってる。」


「執行部隊とはその帝将が抱える直近の兵士達なんだ。

 こいつらは基本的にはこの国に対してあまり干渉してこない。」


「・・・あまり?」


ロウの質問にトールは視線を執行部隊から外さずに答える。


「治安の維持や化け物の討伐にも顔を出すことは無い」


「じゃぁ、どんな時に出てくるんだ?」


「・・囚人が脱獄した時とかな」


「!?」


視線をその執行部隊に向けると、ロベルトの脇から何人かが抜けてきた。

その中の一人がロウに問いかけてくる。


「お前が『人間 ロウ・ガーウェン』だな?」


「だったら何だ? 言っておくが脱獄したわけじゃないぞ? 

 そこにいる二人が証人だ。」


「お前に『死刑執行』の命令が下っている。

 大人しくその首を差し出せ。」


「「 !? 」」


「・・・えらく急じゃないか。確か祭典が終わった後に決まるとか言ってなかったか?」


「拒むのならば苦しむだけだ。さぁ今すぐ・・・」


勝手に話を進めている奴らにロベルトが怒鳴って

ロウのもとに歩いてくる。


「ふざけるな! 貴様ら! 勝手にそんなことを言いおって!

 それを証明する証拠はあるのか!」


怒鳴るロベルトのもとに一枚の紙が渡された。

その紙を見た瞬間、肌が黒いロベルトの顔が一気に青ざめていくのが見えた。


「ロベルト様、トール様。ここではあまり騒がない方が身のためです。」


ロベルトに渡された紙を見てトールも表情が変わる。


「では、納得できたところで執行します。」


数十人いる執行部隊のうち、ロウに一番近い兵士が大きな刀を振り上げた。

そして、ロウにめがけて振りおろす。


「・・・。」


振り下ろされた刀を躱して地面にめり込んだ刀を踏みつける。

もう片方の足で振り下ろした兵士の頭を思いっきり蹴りぬいた。


二三歩よろめいただけで、大したダメージにはなっていないようだ。


「ふざけるな。どれだけ俺を殺したいんだ、お前らは。」


「暴れるな、と忠告したはずだが?」


「暴れるに決まってんだろ。どこの誰が殺されそうになってんのに大人しくするってんだよ。」


「ならば仕方ない。苦しんで死んでもらおう」


横目でロベルトとトールの方を見るが、二人は何もできそうにないらしい。

悔しそうな顔が物語っている。

二人に目礼だけしてロウは正面入り口横の塀に向かって走り出す。


高さはロウより少し高いぐらいで、この程度の壁ならば問題なく登れる。

その壁を飛び越えて誰もいないほうに走ろうとした瞬間、背中に強い衝撃が走る。


「いっつ!」


その衝撃に耐えきれえず転がる。せっかくきれいになった執事服が泥で汚れる。

すぐに立ち上がろうとしたが転がった拍子に間合いを詰めてきていた兵士がいたようで、

両手を掴まれ、地面に押さえつけられる。


「・・くっそ! 離せ!」


どうすることもできないこの状況で、刀を抜いた兵士が近づいてきた。


「短い抗いだったな。もう終わりだ。死ね」


振り下ろされる刀はどうすることもできない。


雨が降りしきる中、悔しさの残る絶叫の声と共に赤い血しぶきが舞い散った。

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