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全てが新しい異世界にて -fast life-  作者: 鰹節
第二章 英雄大国 ストロガノン
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晩餐


「らしくないとこ見せちゃったね」


そう言って立ち上がるセシルの顔はなんとなく

すっきりしているような気がする。


「そんなことないさ。」


「・・ロウの言葉で気持ちは軽くなったけど、無くなるわけじゃないよ。

 今ロウが直面してる問題はいずれ向き合うもので、仕方ないにしても

 あの時については責めないなんてできないよ。」


ロウの通じたのだろう。だからこそその表情は先程とは全く違うものになっている。

しかし、互いの言い分が互いに理解できるからこそその表情には一点だけ黒がかかっている。


「・・そうか。それじゃぁ、まだ納得できないってんなら俺の言うこと聞いてくれ」


「え?」


ロウは立ち上がって背伸びする。

きょとんとした顔でロウの方を見上げてくる。


「今回の事件にキリが付いたら祭典に行ってなんか飯奢ってくれよ。

 タダ飯ほどありがたいものは無いからな。」


「でも、」


「それでも足りないってんなら、あの時の続きで町の案内頼むよ。

 あんな形で終了しちまったからな。・・・だめか?」


笑いかけながら立ち上がれるように手を伸ばす。

その姿に折れたのか分からないが、セシルも笑いながら伸ばされた手を掴む。


「・・分かった。ロウがそれでいいなら私に奢らせて。」


「OK! 約束だ。行こう、みんな待ってる。」


セシルの手を離して振り返り階段を降りようとする。


「・・ロウ」


呼びかけられた言葉に振り返る間もなく、セシルが抱き着いてきた。


「・・・何?」


「ありがと」


短く簡潔に伝えるとセシルはロウを抜き去って階段を下りだした。

困った奴だ、と内心で呟きながらセシルに続いて階段を下る。


セシルが先に階段を下り切ってロウに振り向く。


「ロウ、食事より先にシャワー浴びてきたら? 少し匂うよ?」


「・・やっぱり? ここんとこそんな余裕なかったからな。

 お言葉に甘えるよ。俺の部屋で良いんだよな?」


「あぁ、ご飯は私たちの方で準備してるからゆっくりでいいからね。」


「分かった。また後でな」


「・・・それとご飯が終わったら話したいことがあるんだ。」


道をわかれそうになる寸前にセシルから声を掛けられた。


「話したいこと?」


「・・・リーのことなんだ。」


「リーリアの?」


「・・後で時間つくれる?」


「作るさ。俺の部屋で良いよな?」


安心したのかセシルの顔に笑顔に変わる。

頼むよ、とそう告げてセシルは扉に消えた。

ロウもその姿を見て自分に割り当てられた部屋へと向かった。


  ◇◇◇ ◇◇◇


久しぶりに浴びたシャワーが身に染みる。

こんなに気持ちのいいものであることを感じさせられた。


浴びた後、いつものタンスにしまわれている執事服を引っ張り出して着替える。

肌に触れる布の柔らかが今まで来ていたものとは全く違い、これも改めて感じさせられることになった。


着替えも終わり、向かおうと扉に触れると声が聞こえた。


「ロウ、居るんだろ? 入るよ」


そう言って開かれた扉からマリアが入ってきた。

入ってきたマリアにロウは驚きもせずに、むしろ待ってましたと言わんばかりの表情を作る。


「で、あんたはここに何にしに来たんだい?」


「・・久しぶりにみんなの顔が見たくなったって理由じゃダメか?」


「フン、とぼけんじゃないよ。あんたがそれだけの理由でここに来るとは考えづらい。

 さっさと言いな。・・じゃないと・・・・」


パキリ、と指の骨がなる。一度だけ見たあの病室での感覚が襲ってくる。

その姿にロウは両手を上げて降参の姿勢をとる。


「悪かった、謝る。・・聞きたいことがあってきた。

 フェアリーについてだ。」


「・・なぜあたしに聞くんだい? あの書庫なら問題なく調べられるだろ。」


「あの場所で調べちまうといろんな奴の目に触れる可能性がある。

 知られたくない奴にまでな。それに、あんたのことだ。

 リーリアたちを育てると決めた時点で通常より多くの知識を身に着けたんじゃないか?」


体を覆うオーラが消える。そこにはいつも通りのロウに対しての

少し不機嫌そうな顔をしたマリアがそこにいるだけだった。


「フン。何が聞きたいんだい?」


「まずは、そうだな。フェアリーの特性だ。

 確か体はエア…マナやガナで構成されてるって話だったよな?」


「マナやガナか。その言葉を聞くのは懐かしいねぇ。

 ・・・そうだよ。確かにそう言ったし、それで間違いはないさ。それがどうかしたのかい?」


「自分の体を構成してるマナを体外にそのまま放出することはできると思うか?」


ロウの言葉に訝し気な表情を浮かべ真意を探ろうとするが分からない。


「・・・どうだろうねぇ。断言することはできないが、

 フェアリーはエアについての知識や応用力は周囲のそれとは次元が違ったからねぇ。

 もしかしたらあたしらの知らない力を持っていた可能性は否定しきれないねぇ。」


「もし----------」


ロウが言い放った言葉がマリアには信じられなかった。


「なに?」


そこからロウはマリアに思っていることを話し出した。


  ◇◇◇ ◇◇◇


「ロベルトさん、これお願いできますか?」


「あぁ、分かった。焼きがもうすぐ終わるからその後で良いか?」


「はい、大丈夫です。」


セシルが扉を開けて入ったら以外な光景が広がっていた。


「えっと、どうなってるの?」


「セシルかい? もう大丈夫なのか?」


「はい、すいません。迷惑を・・」


「謝んじゃないよ。女にはそうゆう時期があるもんさ。

 気にしてたらきりが無いからね。切り替えなよ。

 ・・・・・・トール、何か言いたそうな顔してるね。」


「いえ! そんなことは!」


シュシュとミューに懐かれているようで、

じゃれ合いながら椅子に座っているトールは慌てて言葉を返す。


「セシル! 帰ってきたんだ、良かった。もう平気みたいだね」


笑いながらセシルの方に駆け寄ってくるのはリーリアだ。

変わらない笑顔で出迎えてくれたその親友に笑顔で返す。


「すまない、心配させてしまって。」


「なに言ってんの! 家族なんだからそんなのいう必要ないって!

 セシルも元気になってよかったよ。ロウさんは?」


「あぁ、先にシャワー浴びてくるって部屋に行ったよ。」


「そうなんだ。それじゃぁ・・・・」


「談笑してるところすまない。そろそろ手を貸してもらっても良いか?

 一人で四つのなべを操るのはなかなかに大変なのでな。」


「あっ、すいません! 大丈夫ですか、ロベルトさん」


慌ててリーリアはロベルトのところに舞い戻る。

その後に続いてセシルも台所に向かう。


「ロベルトさんも料理できたんですね」


「あぁ、これでも趣味は料理でな。

 見た目と違いすぎるとソルドール様にはよく笑われたよ」


「あー、それはちょっと・・・思うかな。」


言葉に詰まったのか、言葉がしりすぼみになる。


「ははは、気を遣わなくてもいいさ。私自身が一番思っているのだからね。」


少しの談笑ののち、リーリアが不意にロベルトに質問する。


「・・・あの、ロベルトさん。聞いても良いですか?」


「ん? 何をだい?」


「何でロウさんにあんなに優しいんですか?

 マリアさんもそうでしたが軍に所属しておられる方々はみなロウさんのことが嫌いなものだと。

 だから、ここに帰ってくることは無いかもしれないなんて思ってたんですが・・・」


炒め物が完成したのか、手を止めて皿に盛り付ける。


「・・・そうだな。確かに、軍の皆は人間のことが嫌いだ。ロウのことも例外じゃない。」


「じゃぁ、何で・・」


「・・友人と被るんだ。」


「友人ですか?」


洗い物をしているセシルもその話に入ってくる。


「そうだ。私が住んでいた村は戦争の折に皆死んでしまってね。

 ・・・その村から生き残ったのは私だけなんだ。」


「・・・それは、」


「だからなのかな? その村で一緒に過ごした悪友と被るのさ。

 あの頼りになりそうで、ならなそうなあの感じが。」


「ふふっ、ちょっとわかります。」


「だろう? あいつもそうだった。変に抜けてるというか、惜しいというか。

 見てて不安になるんだ。・・ロウもあいつと同じようにいなくなってしまいそうでな。」


「・・・すいません、変なこと聞いてしまって。」


謝ってきたリーリアにロベルトは笑顔で言葉を返す。


「いや、かまわないさ。ロウのことを思ってくれている奴がいるのならば俺も安心できるからな。

 こんな料理上手な女性がそばにいるんだ。私も安心してロウと接することが出来るというものさ。」


出来上がった皿をテーブルに並べていく。

トールも手伝おうと立ち上がろうとするが、

両手にくっついてしまったシュシュとミューがそれを拒む。


「・・そんな、料理上手だなんて」


顔を赤くしながらモジモジしているリーリアを横目にセシルはロベルトに反論する。


「ダメですよ。リーリアは褒めると調子に乗っちゃうんですから」


「ちょっと、セシル! 何言ってんのよ!」


横からチョッカイを出してきたセシルに抗議する。

すると芳ばしい・・・もとい、焦げ臭いにおいが漂い始める。


「ほら、鍋」


「あっ」


慌てて鍋の方に向き直る。

その様子を見ていたロベルトと目が合ったセシルは笑いかける。


「ほらね?」


「ははっ、どうやらそのようだ」


「・・・うーー。」


顔を赤くして鍋の中をかき混ぜて、用意したさらに盛り付ける。

大体の準備が完了したところでロウが降りてきた。


「お待たせ、悪かったな。」


「遅いぞ、何してたんだ?」


二人とじゃれ合っているトールに目を向ける。


「いや、特に何も。・・・・お前こそ何してたんだ?」


「見たら分かるだろ、見張りだよ。この二人が勝手に食べ始めないようにな」


「・・・その割には口の周りについてんぞ」


「食べ残し!」


「食ってんじゃねぇか! なにが見張りだ!」


入り口の近くでギャーギャー騒ぎが起きる。


「さっさと中に入りな。後がつっかえてんだよ。」


「マリアさんもどこ行ってたんですか?」


「野暮なこと聞くんじゃないよ」


こうして全員がそこまで大きくない部屋に集まった。


「お帰りなさい! 今日は人数が多いので、立食で食べる形にしました!

 今回の料理はロベルトさんがメインで作ってもらったので、

 皆さんロベルトさんに感謝して食べてくださいね!」


「・・・ロベルト、料理できたのか?」


「その質問もそれで3度目だな」


ロウの質問に苦笑しながら皿を渡してくる。

テーブルの上に並べられた料理の数々にロウは目を丸くする。

皆がキラキラと輝く目をする中、


「命に感謝を」


その言葉を合図に料理に向けてハイエナたちが手を伸ばす。

残るかと思われた量だったが、一つも残らず全て平らげられた。



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