無罪に向けて
予想外の人物の出会うことはあったが、その後はおおむね予定通りの行動をとった。
一つ違ったのは、ロウが食堂に行くと大きな騒ぎになることが予想されていたので、
リウにこの場所でも食べられるようなものを買ってきてもらいここで食べようという結論になった。
3人分の食事をリウが一人で持ってきてくれたが、
その光景にロウは後輩をパシらせているような感覚に陥った。
しかし、リウだからとあまり考えないようにして意識の外に追い出した。
持ってこられた資料の量が多すぎて、食事の後もまだ整理を続けていた。
ようやく終わったのは夜になってからだった。
またリウに夕食になりそうなものを買ってきてもらい、
(今度はトールも少し出した)
食べながら資料を読みあさる。
「・・はぁ。それで、なにか分かりましたか?」
「・・・あぁ、この世界の人間がエゲツナイってのは嫌って程分かったよ」
資料を見ていてまず思ってのはこの世界の人間は外道過ぎるということだ。
曰く、幼い魔族の子供を攫って混ぜ合わせ、キメラを作った
曰く、足りない資源を魔族の体の一部から取り出すことで補っていた
曰く、捉えた魔族を互いに殺し合わせたり、死ぬまで慰み者にした
などなど。探せばどんどん出てくる。
「・・正直、信じられないことばかりだ。
生きた子供を混ぜるとかふつう考えないだろ」
「その考えないことを平然とやっていたのがお前等人間だ。」
「ここに来てお前たちの人間嫌いがよくわかったよ。」
予想を遥かに上回る今までの人間の行いに辟易しながらページをめくっていく。
そうしてめくっていった先にお目当てのページを見つけた。
「・・・あった、これだ。えーっと・・・
『最初に移らせたい者に一年の半分をかけてじっくりと改造を施す。
この改造を施すことにより、人間のうちにある微弱なエアを少しだけ強化することが出来る。
この改造を失敗すれば移り変わりは不可能になる。
次に移る対象の肉体だがこれには種族により対処が異なる。
エアの反応が強いものは特に何もしないが、逆に強くない者には体内に狂人薬を
注入してエアの強化を図る。対象の肉体には特に何もしない。
成功率に多少の差は出るがまぁ許容できるものだ。
二つの肉体の整備が完了したら併合機を使用する。
移る人間の血を注いだ併合機を対象の肉体に埋め込んだ後、
移る人間を殺す。出てきた微弱のエアを対象のエアとなじませれば完成となる。
経過を観察し、問題が無い様ならば実践に投入しても良いだろう』」
その場にいた3人は何も言えない。あまりにもふざけた内容に理性が認めることを拒んでいるのだ。
「・・・ここに書かれていることが全て本当って訳じゃないんだろ?」
「・・・・ここの書庫に保管されてるものは全て完璧に調べつくされたもので、
あやふやな情報はここには保管されていません」
絞り出した声はかすかに震えている。
ロウの質問に返したリウは、気持ち悪いものを見たような不愉快極まりない顔をしていた。
ロウは本をテーブルに置き、椅子にもたれかかる。
「・・・二人はこれのこと知ってたのか?」
「・・そういった物があるというのは知っていたが、
それがどういった物かは今初めて知った。」
「ここに書かれてるのは『操る』というより乗っ取りだ。気色悪い。」
「ていうか、コレでロウの疑い晴れたんじゃないですか?
この記述によれば移った奴は死ななきゃいけないみたいだし。」
リウがパッと明るそうな顔をするがロウの表情は真逆。
暗い顔でリウを見つめる。
「どうしたんですか?」
「残念ながら、その可能性は低いだろうな。」
「・・何故ですか?」
ロウは再び分厚い資料のページをめくりながらリウに説明する。
「・・今回の事件、俺を犯人に仕立てるため為の会議に国のトップのほぼ全てが出そろったんだろ?
国のトップに立つような連中がこのことを知らないなんて考えにくい。
さらには無理やりのこじつけで俺を犯人に仕立てて、
俺が変なことしないように牢屋に閉じ込めておこうとした奴らだぞ?
もし仮に、本当に知らないだけなら俺が助かる可能性は無い事もない。
けれど、それだけで手を引くとは到底思えないんだよなぁ。」
「・・・・。」
「じゃぁ、お前はどうするつもりだ?
お前の考えだとここでいくら調べても意味がないことになる。」
「・・・そうなんだよな。そこは俺もどうしようかと考えていた。」
「はぁ? じゃぁ、何か?
お前は何も考えずにあれだけの啖呵を切ってここに来たのか?」
読み終えた資料を閉じ、積み重ねている本の上に置く。
その反対側にある本の山から新しい資料を取って再びめくりだす。
「・・何も考えてないわけじゃないさ。ほぼ確実に助かる手段は考えてる。
けど、その為には情報が足りない。だから今調べてんだよ」
「確実に助かる手段? 何だそれは?」
「ほぼ、な。」
トールの言葉の間違いを訂正して少し間をあけ、告げる。
「・・・俺が直接、犯人を捕まえるんだよ」
「「!?」」
「そのためにはまだ情報が足りない。だから調べてんだよ」
ロウの言葉に二人の動きが止まる
二人の様子に気が付いた様子のロウは声を掛ける。
「・・どうした?」
「・・・何堂々と逃げ出す宣言してるんだお前は!
言っておくがお前はこの城の中限定で動けるんだぞ!」
「んなこと言った・・・」
言い返そうとトールに向き直るが、
まさかの人物の登場で遮られることなった。
「ロウはいるか!」
声のする方に向く。
ロウたちがいるのは扉すぐ前にあるテーブルを陣取っている。
だからこそすぐに気が付くことが出来た。
「・・ロベルト? 何かあったのか?」
走ってきたのか、肩で息をしている。
額に汗を垂らしながらロウの方に歩いてくる。
「あぁ、良かった。ここにいたのか。
どうしたもこうしたもない。・・・また、やられた。」
「14人目か?」
ロウの問いに静かにうなずく。
リウの息をのむ音が聞こえてきた。
「これから行くんだがロウも来てくれ。
昨日の件もある。人間しか分からない文字で書かれるものがあれば手間だからな」
「分かった、ついてくよ。案内してくれ。二人も来るだろ?」
「勿論だ。」
「・・がんばります。」
リウは引け腰だがロウは気にせずにロベルトの後を追う事にした。




