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全てが新しい異世界にて -fast life-  作者: 鰹節
第二章 英雄大国 ストロガノン
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目が覚めて


「んん・・。」


瞼の間からまばゆい光が差し込んできて目が覚める。

開けると眩しいのでゆっくりと開き、目を慣らしていく。


「覚めたのかい。」


寝ているベットの傍らには、やけに筋肉質なおばさんが座っていた。


「・・えっと、マリアだったか?」


「覚えてるとは驚きだね。

 あんたとはあんまり関わらなかったはずだが?」


「毎日あれだけあんたの話を聞いてるとな。嫌でも覚えるって」


そうかい、と鼻で笑い読んでいた本を閉じる。


「お前、体はどうだい?調子は?」


肩や首を回して自分の体の感覚を確かめる。


「・・・特に異常はないな。

 しいて言うなら体が少しだるいくらいか」


「そうかい。・・・体の痺れはないのかい?」


「あぁ、全くないよ。

 ・・何か言いたいことでもあるのか?」


「・・・・・。」


言葉に詰まったようで、沈黙が流れる。


「・・別に言いたくないならいいけど。」


「いや、これは言わなきゃいけないことなんだ。

 ・・まさかこんな日が来るとはね。」


大きく深呼吸してロウの目を見る。

その目は大きく、見る者を威圧するようであると同時に、

相手に優しく接するような温かさを感じる瞳だった。


「お前に、感謝と謝罪を。」


「・・いらないよ。俺にはそんな言葉を向けられる資格なんかない」


「お前にはなくてもこちらにはあるのさ。セシルを助けてくれてありがとうね。・・・お前は戦争のことは知っているね?」


「・・まぁ、少し」


牢屋で聞いたあの内容しか知らないが、

察するにこれだけ知っていれば十分だろうと勝手に判断して話を先に進める。


「私はね、昔は第一線で働いていた元兵士なのさ。

 それで、人間であるあんたに冷たく当たっていたんだ。

・・すまないね」


「別にいいさ。こっちに来てからあの扱いには慣れてんだ。

 今更謝れても逆に困る。」


「そうかい、話を続けよう。私には息子がいたんだが、

その戦争で死んでしまってね。自分の中が空っぽになっちまったのさ。

戦う意味が見いだせない、そんな時にあの子たちにあったんだ。」


ロウは何も言わずにマリアの話に耳を傾けている。


「あの子たちがちょっと特別だってのは知ってるかい?」


「・・特別かどうかは分からないが、

 フェアリーの血を持ってるってのは聞いたな。」


「なんだ。知ってるんじゃないかい。

 フェアリーってのはね、意志もつエアなのさ。」


「意志もつエア?」


また、分からない言葉が出てきた。

(どっかで時間見つけて、この世界について調べたほうがいいかもしれない。分からない言葉が多すぎる)


「そう。フェアリーはね、高濃度のエアが集まることで、一個の生命体として生まれるのさ

 時は戦争中だ。資源なんていくらあっても足りいもんさね。

 ・・・あとは分かるだろう?」


「・・資源として狩られたのか。」


「狩り尽くされたのさ。

長いこと戦争してると、じり貧になってくるのは見えている。

 そこで人間が投入したのは、

エアを大量に使用して振るわれる兵器だったんだ」


「なるほどね、そのフェアリーの生き残りって訳だ。

・・・でも大丈夫なのか?話聞いてる限りだと、かなりの偶然で生まれてくるみたいだが、生活する環境が変わっても平気なのか?」


「そこは大丈夫さ。

体の中に取り込むものが高濃度のエアで無い限り、

あの子らの体質は人間に近いものであり続けるからね。」


「どうゆうことだ?」


「要は、食べるもので変わるって話さね。

 純粋なフェアリーはエアを食物として体に取り込むことで

維持していてね。

 そうすることで強力な力を振るうことができるのさ。

 逆に、今のあの子らのように魚なり肉なりを食べるとね、

体が魔力の塊から実体を持つようになる。

 結果、力と引換に体を実体化させることが出来るのさ。」


これでいい、と顔を俯かせる。

話を聞いてる間、聞こうと思っていたことを口にする。


「それ、何で俺に話すんだ?人間だぞ?」


「言ったろ?謝罪と感謝を述べると。

 これがあたしの誠意の証なのさ。

それに、この話を知ってるのはあの子らとあたし、

それとあんただけだからね」


「なんかしてもすぐにわかるってか。」


「そうさね」


「もし、俺が犯人だったらどうすんだ?」


「安心しな。その時はあたしが責任もって殺すから」


やれやれと、再び布団に寝転がりここまで疑問として

抱いてこなかったことが湧き上がってくる。


「セシルは無事なんだよな?」


「話聞いてたろ?大丈夫さ、怪我一つしてないよ」


「俺が寝てから時間そのくらいたった?」


「だいたい6日だね。姫様も外回りから帰ってきたしねぇ。」


セシルが無事であることはうれしかったが、


「・・6日か。俺そんなに寝てたのか」


「あぁ。町は祭典ムード一色さね。」


「それともう一つ。あの靄はどうなった?」


「それは、私よりあいつらの方が適任だろ」


マリアが話し終わった後、廊下から誰かが歩いてくる音が聞こえてくる。

ちょうど扉の前で止まったかと思うと、コンコンとノックの音が鳴り響く。

その音に合わせて声を返す。


「起きてるよ、どうぞ」


「!?  失礼する」


入ってきたのは肌が黒い丸刈りの男と

やたら人相が悪く髪は背中まで伸ばしとげとげしく逆立っている。

話しかけてきたのは、丸刈りの男の方だった。


「君に聞きたいこと·····がっ! なぜマリアさんがここに!」


「こいつはあたしの部下だよ。ここにいても問題はないだろ?」


「では、人間の移送先というのは、」


「あたしのところだ」


「そう・・・でしたか」


男たちは互いに戸惑った顔を見合わせる。


「別に話したらいいじゃないか。あたしのことは気にしなくてもね」


そういって本を開く。ここに居座る気が満々のようだ。

その姿勢があまり気にいらないのだろう。

人相が悪い男がケンカ腰で話し出す。


「おい、婆さん。分かんねぇのか?邪魔なんだよ

 とっとと出てけよ、コラ、あぁ?」


「ほう、いい度胸じゃないか。あたしに対してその態度とは。

 近頃はあんたみたいなのにはトンと会わなくてねぇ。

退屈してたところさ」


パタリと本を閉じる。マリアが纏う気配が別物に切り替わる。


「!?」


人相の悪い男も余裕の表情が消え、眉間にしわを寄せて露骨に警戒する


「ダメだねぇ。そんなに隙だらけじゃ、殺してくれって言ってるようなもんさね」


「んだと?」


まさに一色触発の状態を収めたのは丸刈りの男だった。


「止めろ二人とも!

ここはそうゆうことをする場所じゃないだろう!

 グリム!その癖直せと何度言えばわかるんだ!

 マリアさんも!今は抑えて。

 こいつはまだ入って日が浅いので、

多めに見てやってください」


「おい!ロベルト!」


「黙っていろ!これ以上話をややこしくするな!」


わざと聞こえるように舌打ちをして引き下がる。

それを確認した丸刈りの男はマリアの方に向き直る。


「本当に出て行かないのですか?」


「当然だろう。私の部下達が死にかけたというのに、

 上司のあたしがはいそうですかと

引き下がれるわけがないだろうに」


「・・・わかりました。この場にいることは認めますが、事件のすべてまでは話せませんよ?」


「まぁ、良いだろう。あたしは聞いてるだけさね。

 口は挟まないよ」


「ありがとうございます。さて、」


マリアから視線を移しロウのベットの横までくる。


「生還おめでとう。君が初めての生き残りだよ。」


「初めて、ねぇ。ちなみに襲われたの俺で何人目?」


目をつぶり少しの間があってから、口を開く。


「あまり言いたくはないが・・・・12人目だ」


「12! じゃぁ、11人が犠牲に?」


「全員がひどく無残な死体で上がってきてるよ。」


目を逸らして苦しそうな表情で答える。

目つきの悪いほうを見ても同じように悔しそうな表情をしている。


「だからこそ、君には話が聞きたくてね。

 ここまで誰一人として目撃者がいないなか姿を見たうえで、

 さらに戦闘までこなしたというじゃないか。」


「・・まぁ、な」


「これから話を聞きたいんだが体は大丈夫か?」


寝ている体勢を起こして座る。


「問題ないよ。サクッと終わらせよう。」


「その協力に感謝する。私はロベルト・ジーザス。

 向こうの壁に寄りかかっている

人相の悪いのはグリム・レーベントだ。

 君の名は知っている。軍の中でも有名だからね。

名前で呼ばしてもらっても?」


「あぁ、かまわない」


「そうか、わかった。ではロウ、これから質問を始める。

 正直に答えて欲しい。良いね?」







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