表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全てが新しい異世界にて -fast life-  作者: 鰹節
第二章 英雄大国 ストロガノン
19/132

闇との邂逅


__________。


懐かしい夢を見た。


これはスラムにいた時の記憶だ。


_____________。

__________________。


声が聞こえない。目に映る姿もぼやけている。

忘れられない記憶のはずなのに、いまいち思い出せない。


_______。


ぼやけた姿が手を伸ばしてくる。

その手を掴もうと手を伸ばし、



「はっ!」


飛び起きていた。肩で粗く息をしている。

時計の方に振り返り、時間を確認する。


「・・・まだこんな時間か」


いつも起こされる時間より少し早い。

もう一度寝るには遅すぎる為、着替えていつもの部屋に向かう。

階段を下り、朝ごはんを食べる部屋につくとそこには先客がいた。


「? あら、ロウじゃない。今日は早いんだね」


「・・あぁ、目が覚めたからな。

 それにいつも起こされてばかりじゃかっこ悪いからな」


「それは良い心掛けだ」


セシルは笑っている。


「そうだ、一緒に買い物行くかい?

 少しだけどこの辺の案内するからさ」


「・・・いや、俺は」


遠慮しとく、と声を出そうとしたら全身に悪寒が走った。

なんだか懐かしいこの感覚がロウの頭を一気に覚醒させる。


突然動きが止まったロウに心配したのか、声をかけてくる。


「・・ロウ?大丈夫?無理だったらそ無理で、」


「あぁ、いや大丈夫だ。俺も行くよ

 ここのことあんまり知らないからな。教えてくれるなら助かる」


「そう、なら良いんだ。もう出るけど準備は?」


「特にするようなことはないな」


そう言って両手を広げる。

フフッと少し笑い歩き出し、扉を開ける。


「じゃぁ、行こうか」


 ◇◇◇ ◇◇◇


日が昇る前で周囲はまだ薄暗い。

周囲の住宅は石造りの家が並んでいて、静まり返っている


「セシルはいつもこんな時間に買い物に?」


「そうだね、買い出しはあたしの担当だからね。

 食材の買い出しや仕入れ、消耗が激しいものもあたしが頼んでる」


「へぇ~。それじゃ、リーリアの仕事は掃除とかだけになるんじゃないのか?」


「そうでもないよ。仕入れはあたしだけど、

 管理は全部リーリアが引き受けてくれてる。洗剤からタオルまでなんでもね」


「シュシュとミューは完全に厨房専用なんだな」


「そうなるね。あの二人はまだ幼いから任せるのはちょっと心配かな」


ここにきて初めて知る寮の仕事の分担。

リーリアはおっちょこちょいな所があるからそうゆうのは向いてないと思ったが、

以外にもしっかりしてるんだなということを知ることができた。


「・・しかし、静かすぎじゃないか?

 店空いてんのか?これ」


「ここはまだ民家の集合だからね。

 あの曲がり角を曲がるとすごいよ」


その言葉に訝しがりながらも歩くと、曲がり角の付近で声が聞こえてきた。


「うおぉ!」


「すごいだろ?この国自慢の朝市だよ」


曲がった先には、これでもかと並べられた出店が並んでいた。

魚、野菜、果物、肉、といったものが所狭しと並んでいて、

出口が良く見えないぐらいの大きさがあるようだ。


「すごいな。でも大丈夫なのか?

 こんなに並べると昼まで持たないんじゃ・・・

 品質的にも、量的にも」


「そこは心配しなくていいよ。物はまた改めて入ってくるし、

 鮮度については刻印石が普及しているからね」


「刻印石?」


出店が並ぶ中に入っていったセシルを追いかける。


「刻印石ってのはエアの力を刻み込んだ石のことさ。

 本来、生物以外にエアは宿らないんだ。

 けど、特別な刻印を刻むことでいろんなものに応用できてるのさ。」


「すごいな、それ」


「あぁ、ホントにすごい。そのおかげで私たちは戦争が終わってから

 短い期間でここまで復興できたんだから。」


説明をしながらも出店のおやじにしっかりと注文をしているのは、

さすがといったところだろう。


渡された荷物を横から奪う。

突然出てきた手に驚いたのか、ロウの顔をまじまじと見つめる。


「教えてくれてんだから、何かしないとな」


「・・・ありがと」


受け取り、また別の店へ向かう。


「戦争が終わった記念でね、もうすぐ祭りが開くんだ。

 二日かけて行われる式典でね、この国はすごい賑やかになるんだ」


「式典ねぇ、・・・この国だけ?」


「予想の通り、世界でほとんど同時に行われる。

 けど、ここは桁が違う。なんたって英雄が治める国だからね。」


「・・・終戦の英雄か」


出てくるのは相変わらずの嫌なあの男だ


「そ、さらに言うとそのご息女も式典に来られるんだ」


「あいつ、娘がいたのか!」


衝撃の話に口が閉まらない。


「かなりの美人でね、さすがだよ。性格もいい子で、

 同じ女とは思えないくらいなんだから。

 っと、ここが最後だね。ちょっと待っててね」


「あぁ」


店の前に一人で立ち、考える

(あいつ、娘がいたのか。意外すぎるだろ、どんなもの好きが惚れたんだろうな)

いろいろ思うところはあるが、今考えても仕方がないので頭を振って切り替える。

セシルの方に目を向けると、ロウの方を指さして何か話している。

(確かほかの店でも指してきたような)

何をしてるのか目を凝らすが分からない。

少ししたらロウの方に戻ってきた。


「お待たせ、じゃぁ帰ろうか」


「何話してたんだ?」


歩き始めて質問する


「あぁ、簡単だよ。仕入れた食材を受け取るのはあの人でって伝えただけだよ」


「なるほど、じゃぁ、いろんな店で俺に向かって指さしてたのは・・・」


「そういうことだよ。荷物下ろしお願いね」


「了解」


短くこたえ、寮に戻ろうと歩き始める。

少し歩くだけで周囲が一気に静まりかえり、まだ朝方なんだと実感する。


「あっ、そうだ。祭典のことで言っとかなきゃいけないことがあって」


「何?」


「祭典の日はかなりの大人数が来るから警備の人も自然と増えるんだけど、

 それでも手が回り切らないみたいで訓練兵たちもその警備に参加するんだ」


「てことは、祭典の日は寮には誰もいなくなるのか?」


「そう。初日で掃除やらを終わらせて二日目はみんなで回ってたんだけど、

 ロウも一緒に来るよね?」


「・・・いや、俺は遠慮しとくよ。

 みんなで行ってきてくれ。」


「なぜ?」


「いや、俺人間だし。警備が増えんなら必然的に目につくだろう。

 その都度騒ぎを起こすのは申し訳ないからだよ。」


その答えにセシルは呆れた表情を作る。


「ロウも馬鹿だね。今更じゃないか。

 騒ぎになるだろうってのは、みんな分ってる。」


「・・・・・。」


「突然連れてこられたこの場所で文句を言わずに完璧にこなしてくれてる

 ロウの頑張りを評して一緒に行こうかって誘ったんじゃないか。

 リーもシュシュもそのつもりだよ。

 ミューは何も言わないが、うれしそうな顔してたし。」


「・・・全く、お前ら」


ロウはため息を吐いて断ることを諦める。


「・・分かった。じゃぁ、お願いします」


「お願いされました。フフッ、

 良いじゃないか、美女に囲まれて幸せだろ?」


そうゆうセシルはかなりスレンダーで無駄の無いスタイルをしている。

今考えると、あの寮にいる人たちは皆綺麗どころが集まっているように思う。


「・・美人がいうと嫌みにしか聞こえんが?」


「知ってる」


彼女が見せた珍しいイタズラ笑顔だ。

頬を赤らめた彼女が先に歩き、追いつこうと走り出そうとした瞬間







それは出てきた。




(ねっとりとしたこのにおい・・・)


振り返った先には住宅の間、ただ闇があるだけだった。

普通ならば気が付かない。

しかし、ロウはこのにおいに長いこと接してきた為分かるのだ。


「セシル!走れ!」


「え?」


突然声を張り上げたロウに驚き振り返る。

その表情を見て今まで嬉しそうだった表情が消える。


「どうしたの?」


「いいから走るぞ!あれやばい!」


それを聞いてセシルは振り返る。


「・・・・なに・・・あれ・・・」


立ちどまるセシルの手を引こうと振り返る。

そこに見たものは、



闇だった。



人型の黒い靄があの住宅の隙間からぬるりと出てきているところだった。


それを見たセシルは震えて動けないでいる。


「セシル! セシル!」


何度か名前を呼ぶことで戻ったんのかこちらに振り替える。


「・・ロウ・・あれ・・」


「知らん!走れ!」


背中を少し押してやることでセシルの震える足が動き出す。

たどたどしい走り方も、少ししたら無くなりちゃんと走り始める。

走りながら、後ろを振り返り黒い靄の様子を見る。

(あいつ、追いかけてきてる)

靄は、足の部分を動かすことなく滑るように追いかけてくる。


「誰か!誰か!」


声を張り上げるが、全く物音がしない。

(・・・気配がない。この周囲に誰もいない?

 住宅街だぞ、こんな朝早くならだれかいるだろ)


「ロウ・・・」


心配そうな顔で見つめてくる。


「この近くに兵士たちがいるような場所は?」


「近くに一つあるけど、」


「そこ行こう。あれは触れちゃダメな奴だ」


ロウの長年の経験の賜物だろう、対する相手の実力を大まかに判断できる。

あの黒い靄が纏う血のにおいが尋常じゃない。

今までに出会ったことが無いレベルで危険信号を鳴らしている。

(つっても、あんなのに近付こうなんてあり得ないけどな)


「あの角を曲がった先に・・・」


息が上がっている。靄はどうかと振り返ると、

(マジかよ!)

もう目と鼻の位置にいた。このままじゃ追いつかれると判断したロウは、


「そのまま走って兵士たちの助けを呼んできてくれ」


「・・・ロウは?」


「いいから行け!」


横目に黒い靄の手が見える。その瞬間、手に持っていた荷物を捨てて

右足で急ブレーキをかけて止まり、勢いがついている靄の腹を殴りつける。


予想外のカウンターだったのだろう。セシルに触れる寸前で止まり後ろに転がる。

(痛って、右手ひねったな。けど、体はちゃんとあるな)

2,3回転がりロウの方を向いて襲い掛かってくる。


飛んできた靄の両手には長い棒状のようなものがついており、

右手で振りかぶり切り込んでくる。

それを下がって躱すと、左手の棒で突いてきた。

体を右にずらして躱し、突き出た左手を壁に蹴りつける。


靄は、左手を蹴られた勢いそのままに一回転して、裏拳の要領で当てに来る。

それを前に出て、右手首を掴みんで靄を振り回す感覚で壁に叩きつける。


「おまけだ」


壁に叩きつけた瞬間、頭部があると思われる場所を膝で蹴り飛ばす。

壁と膝にサンドされる形で叩きつけらる。


「・・・・・っ。」


かなりのダメージなのか、かすかにうめき声が聞こえた気がした。

(これで、)

とどめに入ろうともう一度膝で蹴ろうとしたら、まとっている靄がいきなり噴出された。


「・・・がっ」


噴射の勢いは強く反対側まで飛ばされてしまった。

このとき頭を強く打ってしまったのか、くらくらする。


「・・・まずい」


纏う靄が少しはがれた隙間から覗く姿は男だった。

靄が完全に剝がれていないため、服装を確認することはできなかったが

それでも性別だけは確認できた。


その男がこちらに向き直り、ゆっくりと歩いてくる。

相対しようと立ち上がるも、ふらつく頭がいうことを聞かない。


そのまま靄の男は突進してくる。

体がうまく動かない状態でかわし切るのは不可能だった。


「いっ!」


体をねじり、心臓めがけて刺してきた位置を肩に変えることに成功した。


靄の男が右手を振りかぶり、もう無理かと諦めそうになった瞬間



ドガンッ



大きな音がしたかと思うと、靄の男はロウから離れていた。


「いたぞ!こっちだ!」


声が聞こえる。


「絶対に逃がすな!追え!」


かなりの人数の足音が聞こえると、


「ロウ、ロウ!」


大きく体を揺すられるような気がする。


「しっかりしてよ! ロウ!」


視界がぼやけて頭が回らない。肩の傷口が痺れてきた。

(あいつ、毒を・・・)

立っていることがまできなくなり、その場に座り込む。


「っロウ! 兵士さん!こっ・・・・い!」


「・う・・・・か!」

「・・は・・変・!・く・・・・・・!」


言葉が聞こえなくなってきている。


「お願い!死なないで!」


その言葉だけがくっきりと聞こえたのが最後、

ロウは意識を手放した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ