第四位 有川 浩 「阪急電車」
【あらすじ】
阪急電車今津線を舞台にした、連作短編。駅ごとに主人公が入れ替わり、リンクしていく構成。結婚準備中に、婚約者に浮気をされ、報復を計画する女性、ちょっとあほな社会人の彼氏がいる高校生、ママ友との関係に悩む主婦。日常にあるさまざまな人の機微を描いた物語。短編のタイトルは、各駅名になっている。
「四位はこれです!」
「図書館戦争と同じ作者ですよね。だいぶイメージ違いますね」
「私も意外だった。いい意味で裏切られたね」
「っていうか、ばらっと見ただけですけど、この最初の方に出てくるウェディングドレスの女性、すごいですね」
「でしょ! この話は、かっこいい女性が多く出てくるけど、一番は彼女だと私は思うね」
「怖いですけどね」
「ちょっと! ちゃんと内容読んでから言いなよ!相手の男のぐだぐたぶりと来たらひどいんだから!」
「…すいません、ちゃんと読みます」
「あとは、物語の中にちらちら出てきて、登場人物達にアドバイスする、年配の女性もいいんだよね。この人は、さっきの女性みたいに、きりっとしたかっこよさとはまた違って、穏やかだけど芯が強いみたいなかっこよさだね」
「短編連作ですけど、主人公はみんな女性?」
「ううん。男性もいるよ。でも女性が多いね。バイト君は女性主人公だとあんまり読まないかな」
「そんなことないですよ。図書館戦争読みましたし」
「阪急電車もナイスな男性キャラ出てくるよー。正直かっこいいとは言いがたいんだけど」
「ぐだぐだ男も出てくるし?」
「それはほんとにだめ男だよ! 私的にえっちゃんの彼氏はいいねー」
「えっちゃん…わからないですけど、作中のキャラクターですよね」
「高校生のえっちゃんと、ちょっとあほな社会人彼氏の話があるんだ」
「あほな彼氏がいいキャラ?」
「いいよー。なんか優しいし、やりとりがほんわかするー。けっこう好み」
「え! 好み?」
「ちょっと、そこでなんでそんな驚くの?」
「いえ…店長に好みなんてあったのかと」
「なにそれー私にも好みくらいあるよ。まあそれはともかく、男女問わずいいキャラが出てきて楽しい短編集だね」
「…そうですか」
「あと、これは短編連作だから、最後にこれまで出てきたキャラクターがつながる場面があって、そこがいい。たまたま駅ですれ違っただけの関係でも、人生に影響を与えることもあるんだなあなんて思う」
「関西ならではって感じがしますね。東京なんかだと、人同士そんな余裕もないでしょ。田舎だと、そもそも駅に人がいないし」
「いきなり現実的な話になったな」
「駅ですれ違って、それが運命の出会いとかあり得ないでしょ漫画じゃあるまいし」
「誰もそこまで言ってないじゃん。てか、何怒ってんの? なんか電車で嫌な思い出でもあんの?」