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詩のサークル

うたた寝

作者: 齋藤 一明



冷房の壊れた工場

最大限に回転する機械が熱を出す

削られまいと抵抗する材料

刻々と鋭さを失う刃先

それらが正面からがっぷり闘い、熱を出す

制御装置が熱を出す


工場の中は茹だりそう



今日のワークは時間がかかる

起動させれば二時間くらい停まらない

その間、本を読むもよし、話を書くもよし

テレビを見るも眠るも勝手


さあ起動した

コーヒーでも沸かそう

掛けて待つ間に、目蓋が下がってきた




暗い中を私は運ばれている

遠くに漁り火を望みながら硬い椅子にすわって

規則的な音につつまれて、時折り体をゆすられて

窓枠の土瓶を落とさぬように、窓は細めに上げてあった

寝付けぬ私は退屈だ

窓の下を並走する燈火が近づき、離れるのを見るしかないのだから

ちょっと探検してみよう

特に当てもなく通路に立った私は、眠りこけた乗客を起こさないよう注意してデッキに出た。


饐えた臭いのする便所の先に、前の車両への踏み板が不規則に揺れていた。


揺れに身を任せて真っ暗な空間を見つめていた。

たしか、さっきまで夜汽車に乗っていたはずだが


腰掛の脇に置いたカンテラが照らすのは足元だけ

そして、船板だけだ


竿先に強いアタリがあった。

大きなアワセで針をしっかりかける。

あとは強引に魚をねじ伏せるだけだ。

私は両手で竿をしっかり掴んで、おもいきり引き寄せた。




引き寄せた手に、太い棒が握られていた

私は知らぬ間に立ち上がり、片足を船端にかけている。

重い、大物だ

喜んだ私は、引き寄せた棒をむこうに奪われ、そして奪い返している。


ぐぐーっと船がうねりに持ち上げられ

その一瞬に小さな灯りが見えた。


舳先にどっかと腰をおろした男が右手を肩まで上げてゆく手を示す

私は、それに応じるかのように櫓を操った

もう少しで港だ

入り口さえすぎれば、中は鏡のように穏やかなはずだ


早くはやくと気持ちが急ぐ

しかしその間にも、うねりにもちあげられ

頂から一気に谷底へ突き落とされた

その気味の悪いこと

奈落の底へ落とされまいと、無意識に足を踏ん張る

しかし、踏ん張るべき船端は、いつの間にか消え失せていた


ボチャンと落ちるはずが、虚無の空間を漂っている

どうなるのだろうと不安がつのり、私は何度も足を蹴った


ビクッと足が動いたのを覚えている

こんどはどこへ跳ばされたのだろうと薄目を開けてみると

見慣れた工場にいる

パイプ椅子に寄りかかった私は、大きく体を傾けて転げ落ちる寸前だった


そうか、つい居眠りをしてしまったのだ

こみあげる欠伸をし、大きく伸びをする

そしてゴシゴシと目を擦った

そして舌打ちをする


目が覚めたはずなのに、見るものすべてに虹がかかっていたからだ



機械加工にもいろいろありまして、時には運転を始めると一日中機械が停止しないこともあります。

かと思えば、わずか数秒で加工が終わることもあります。


今日は、長時間機械が止まらない仕事をしていました。

順調に動き出すと余分なことはしない方が善い。

つまりヒマになり、ついウトウトしたようです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 夢の中の不思議な世界。 覚めたと思っても夢が続いているのでしょうか まだまだ夢は続いている! なんて事を考えてしまいます ライトノベルなどの読みすぎですかね(笑)
2016/07/18 23:09 退会済み
管理
[良い点] 巧みな表現で夢の景色を描いておられます。 非現実なのに足元の確かな感覚。 流石。 詩の中でこそ飛躍もまた着地する。 そんな表現を見せてもらいました。 [一言] 虹の視界……眼医者へは行かれ…
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