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まとろい  作者: 囘囘靑
3/5

3.

(なんだこれ)

 これが男を見た際の、私の正直な感想だった。男の左わき腹に、包丁はあまりにも真っ直ぐ刺さっていた。男の身につけていたワイシャツは既に赤黒く染まっており、既に玄関前も血で湿っていた。


「だ、大丈夫ですか?」

「畜生、やられた……」

 苦悶の表情を浮かべつつ、男は握っていた何かを私に手渡した。それは何かのカードだったが、血にまみれてよく分からなかった。鼻孔に生臭い臭いが漂ってくる。私の全身から汗が噴出した。


「やられた? やられたって?」

「頼む、警察、けいさつ……」

 息をするのもままならないのだろう、うわごとのように男は呟き、反対側へごろんと転がった。


 窮地に追いやられると、人間は何をしでかすのか分からない。普通に家の電話で警察と救急車を呼べばいいものの、私はなぜか近所の交番めがけて走っていた。


「ちょっと待って――!」

 とか何とか言いながら、男性の反応を見ることさえなく私は駆け出していた。私の住処から交番まで、さほど離れていないというのに、このときほど距離が遠いように感じたことはなかった。

 だから交番の明かりを見たとき、私はどれだけほっとしたことか!


「すみません!」

 私は交番へ駆け込むと、今までの一部始終をありのままに話した。私のただならぬ様子と、血まみれになっている私の手を見て、巡査たちの表情もどんどん険しくなっていった。


 すぐさま一人が本部へ連絡し、もう一人が現場へと駆けつけることになった。中年の巡査と一緒に、私は寮へと舞い戻った。

 ところが、である。

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