6-2
先月中にできれば更新するといったのに、遅くなってしまい、申し訳ありません。あまり盛り上がりがない小説ですが、読んでいただければ嬉しいです。
次回からは体育祭編に入りたいと思っています。なので、今までよりは少し話が盛り上がるはず……?
どうなるかわかりませんが、がんばりますのでお付き合いいただければ嬉しく思いますm(__)m
「いってきます」
「妃菜!待ってちょうだい!」
「ママ、どうしたの?」
「百合子がファイルを忘れたみたいだから、届けに行ってくれないかしら?」
「わかったわ。行ってきます」
「いってらっしゃい。頑張ってくるのよ」
妃菜は教室に荷物を置くと、百合子のいる職員室へ向かって歩いた。
藤成学院は2つの棟からなっている。1つは音楽室や視聴覚室、図書館等の防音設備が求められる教室がある第二校舎と妃菜の所属する普通科と教養科が使用する第一校舎だ。音楽科は楽器を弾く機会が多いため、第二校舎に置かれており、どちらの校舎も3階建てで上から1年生、2年生、3年生の順に教室の配置が行われている。職員室は第一校舎の一階にある。音楽教師、音楽科の非常勤講師等の音楽教師のもう一つの職員室である音楽科準備室は第二校舎に存在するが、朝は毎日職員会議が行われることもあり、妃菜は職員室に姉がいると推測し、そちらへ向かう。
三階から二階へ降りていると、何やら喧嘩をしているような怒鳴り声が聞こえたため、何事だろうと二階の教室へ歩く。
「お前、だれにぶつかったと思ってんだよ!謝れよ」
「そっちが廊下を広がりながら歩くのが悪いんだろ。そっちが謝れ」
「普通科のくせに生意気言いやがって。謝れって言ってんだろ」
「誰がお前らなんかに謝るかよ!!」
「っ!庶民のくせに、はむかいやがって!!」
そういうと手で相手の肩を殴った。すると、それを皮切りに他の仲間も足を蹴る等の暴行をする。
「ちょっと!やめてください!!」
妃菜はたまらず、そう言って間に入っていった。
「なんだお前。勝手に口出しするんじゃねえよ」
「おい、江川。こいつ一年の新入生代表の奴だ。普通科の方の」
「あぁ。あの生意気な奴か。俺らに何の用なんだよ?」
「さっきから見ていましたが、手を上げるとはどういうことなんでしょうか?しかも相手は1人なのに集団でなんて何を考えているんですか!!」
「どういうことかだって?こいつが普通科のくせに俺たち教養科に生意気言うのがおかしいからに決まってるだろ」
「……教養科だから偉いということですか?」
「そうだよ。庶民が生意気言いやがって。おとなしくしていれば普通の学校生活が送れるっていうのによ」
そういうと、そいつらは馬鹿にしたように笑った。
「謝ってください」
「はぁ?なんて言った?」
「謝ってくださいと言ったんです!!喧嘩の方はどちらが悪いかは私は口を出す立場ではないので言いませんが、その方に暴力を振るったことはあなた方が悪いです。ちゃんと謝罪してください」
「お前もうわさ通り生意気だな。ちょっと新入生代表になったからっていい気になりやがって。生意気な口を利くんじゃんねぇよ!」
そういって、妃菜に向かって手を上げてきた。妃菜の兄や姉は誘拐や争いごとに巻き込まれても危険が無いように柔道や合気道を幼いころから学んでいるため、こういったことにも対処できるが、妃菜は誘拐の危険もなく、体も弱かったため防衛の手段を持たない。そのため、とっさに身をかばうために手でかばい、くるであろう衝撃を待った。
しかし、予想していた衝撃が来ないため、一緒に閉じていた目を少しずつあけて、のぞいてみると目の前に男子生徒らしき人物がいた。
「先輩、さすがに女性に手を上げるのはやめてください」
「……桜木か?」
「そうです。それで僕の言ったことは分かってもらえたのでしょうか、先輩?」
「……わかったよ。お前が言うならやめるよ」
「それで、この後の処罰はどうなさいますか?先生?」
もう一人の新入生代表だった桜木成久は、後ろに向ってそう尋ねた。
「そうね、けがはしていないけれど手を上げてしまったのは処罰しなければならないし……。本人に謝罪をしてもらって、生徒会の雑用を3日間手伝ってもらうということにしましょうか?」
「あなたもそれでいいかしら?」
百合子は先ほど手で殴られていた生徒に聞くと、はい、とうなずいた。
「お前も何をしているんだ?防衛手段もないくせに間に入ろうとするなど……」
そういわれると、反論する言葉はなく、うつむいて桜木の話をおとなしく聞く。
「今度からよく考えてから行動するんだな」
そして、去っていこうとするのであわててありがとう、と声を出した。
「お母様から電話があって、忘れ物を妃菜が届けに来るっていうから待ってたのに来ないから迎えに来てみれば、こんなことになっていて……。心配したのよ?」
「姉さま、ごめんなさい。これ、忘れ物……遅くなってしまって、ごめんなさい」
「いいわ。無事だったのだから。どこにもけがはないわね?」
「ないわ、姉さま」
「ならいいわ。もうすぐ鐘も鳴るから戻りなさい。届けてくれてありがとう」
「はい」
妃菜は急いで教室へ戻った。