表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

1

 ご覧いただき、ありがとうございます。拙い小説ではありますが、少しでも楽しんでいただければと思います。

 また、あらすじ通りに進むかは保証出来ませんが、完結はさせる予定でおりますので。更新速度は低いですが……。

 そんな作者でも、構わないとおっしゃっていただける方は本文へどうぞ。

 私立藤成(とうせい)学院高等学校は東京都の高級住宅地の近くの丘の上に建っており、この学校は東京でも有名な難関高だ。特色は特殊教養科という茶道や乗馬、社交マナー等の変わった授業が組まれているクラスがあるという点だ。そのため、学費が非常に高く、この科に入学するのは上流階級のお金持ちばかりだ。代々のこの科の卒業生は有名企業の子息や令嬢ばかりで、難関高ということもあり、お金持ちの間ではこの科を卒業することがステータスにもなっている。

 そのほかの科は音楽科と普通科が存在し、音楽科は名前の通り音楽を中心に学ぶ生徒が集まるクラスで、普通科は有名国立大学や有名私立大学を目指している生徒が多い。また、普通科は一般の高校と変わらないような授業のため、学費は他の私立高校よりも少し高いぐらいの金額で、一般家庭の生徒がほとんどだ。

 この三つの科があり、個性あふれる学校といわれているが、それぞれが独立しており、交流は行事以外にほとんどない。

 特に特殊教養科と普通科は仲が悪く、廊下で生徒がすれ違ったり顔を合わせたりすればお互いに顔を合わせようとせず、教養科の生徒は身分の違いから馬鹿にした態度をとるため、いさかいに発展することも珍しくない。また、行事になれば協力するかと思いきや、することもなく行事も良い思い出になっていないのが毎年のことだった。

 音楽科もお金持ちが多いため、教養科とのいさかいはない。そもそも、音楽以外には興味が無いものも多く、普通科ともいさかいはないが、教養科と普通科のいさかいにも我関せずの態度を貫いているため、音楽科がいるからといって問題が減るわけではない。

 こういった理由があり、それぞれクラスでの仲は良好だが、学校や学年となるとまとまりがいまいち見えない学校となっている。


「なぁ、今日の入学式って新入生代表が2人なんだってな」

「そうらしいな。なんでも、毎年入学試験のトップは教養だけど今年は普通科のヤツも同点でトップに並んだらしくてさ、それで2人になったらしいぜ」

「へぇ、どんなヤツか楽しみだな。教養の奴等がいるせいで片身の狭い俺らも今年は少しは張り合えるといいんだけどな」

「まぁ、頭では張り合えても、結局は庶民は、とか言って来るんだろーけど」

「あ~あ、どーにかなんねーのかな~」



「△△年度、第○○回、藤成学院高等学校、入学式を始めます」

その頃、今年高校一年生となる佐藤妃菜(さとうひな)は入学式へ参加していた。小学校、中学校と公立の学校を出ている妃菜にとっては非常に憂鬱な気分がしていた。

(あーあ、入学式始まっちゃったな。本当に保護者はお金持ちが目立つし、生徒もなんだか教養科の生徒が感じ悪いし、嫌だな)

実際教養科の保護者は他にも多くのお金持ちが参加する入学式のため、気合いを入れて身だしなみを調えている。指よりも大きな宝石が飾られている指環をしていたり、これ見よがしに知り合いの保護者と挨拶を交わしていた。

(それに新入生代表のことばも言わなきゃならないし、早く家に帰りたいわ)



そう思っている間にも式は進行していく。予想していたよりも校長の話は簡潔で退屈しないものだった。それというのもこの高校は日本屈指のグループ企業である藤成グループが経営していることもあり、校長はやり手を雇っている。大企業の御曹司や令嬢を預かる側としてしっかりとした責任能力や経営能力がある人材をつけなくてはならないからだ。そして、今現在、少子高齢化が進む中では有名私立高校であったとしても胡坐をかいてはいられない。


「続いては、新入生のことばです。新入生代表、特殊教養科、桜木成久(さくらぎなりひさ)。同じく新入生代表、普通科、佐藤妃菜。」

いよいよ新入生の言葉が始まった。代表が2人なのが今までにないことなので、保護者がざわめく。

そしてもう1人の新入生代表が話を始めた。同じ新入生代表だが、顔を合わせるのは今日が初めてで予行練習もしていない。今まで普通科が新入生代表を務めたことは創立して35年経つが片手で数えられる程だ。そのことから普通科よりも教養科の方が上の存在だと考えられていることがわかる。

 実際、教養科と普通科は入試試験における偏差値は同じくらいで、それぞれのクラスのテストの平均もほとんど変わらない。しかし、学年のトップとなると大体の年は教養科となっている。それは、将来的に企業を担っていかなければならないこともあり、幼いころから有能な教師を雇い、勉強をさせられている生徒が中にはいるためだ。

 今年の桜木成久という人物もそうなのだろうと妃菜は思う。髪は短めの黒で、目はやや釣り目がちだが、大きめな瞳をしていて鼻筋もすっきりしている。格好いいと騒がれること間違いないと思うようなイケメンだ。きっと学院でもすぐに人気になるのだろう。しかし、教養科ということでいまいち良い印象はないし、顔はいいくせにずっと無表情だ。やはり普通科と一緒の新入生代表ということで気に食わないのだろうか。

 そんなことを思っているうちに妃菜のことばを言う順番が回ってきた。

 今回は二人ということで半分に分けて話すことになっている。春の陽気を述べることから始まり、主に挨拶的な部分を彼が話し、妃菜は後半の学校生活や行事への期待や勉強に対しての姿勢を述べた。そして、二人で共通して話す内容が、自身が望む学年の在り方だ。これは、毎年話す内容に入っている。高校側の意図としては、学年の中心となるであろう学年のトップが目指す学年の在り方を宣言してもらうおうということだ。

 実際に昨年度は、活発な活動をしていき、楽しく思い出をたくさんつくっていきたいと代表は述べた。そして、彼は生徒会へ入り、文化祭の後の後夜祭の開催を提案し、実行した。有名なバンドやお笑い芸人を招き非常に盛り上がったため、本年度も開催の予定となっている。これは教養科だけだが、他にも社会見学として、有名企業への見学を行った。日本の有名企業には藤成学院の卒業生が多いため、訪れる企業を探すのには全く苦労しなかった。

 今年の彼はというと、勉強に励み、勉強面で成果をあげることと、平穏な毎日を過ごしたいと無難なことを述べた。このことから、彼が中心になりたいと思っていないことが見てとれる。

 そして、妃菜はというと

「私が望む学年の姿は、身分の差や学力の差からいさかいを起こすことがなく、行事等の場面ではクラス関係なく皆が協力して、良い思い出を残すことです」と、述べたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ