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第6話

今回はちょっと退屈かも…

俺の目の前に、現代っ娘ミーハー神様イオがやって来た次の日の朝。

俺は牢屋の床の寝心地が悪いせいと、両手両足に鎖を付けて寝づらかったせいで、ワリと早く目覚めていた。


「ふ~む、分解と還元ねぇ…。なんつー化学的な能力なんだ」


そして今は、特にやる事がないので昨日貰った能力説明書を読んでいた。

っていうか、これ電話したら出てくれるのかな?

まぁ携帯は海に落ちた時に壊れたみたいだけど。


「原理は分かったけど、どうやって使うんだ? 触って念じればいいのかな?」


俺は何か適当な物がないかと思案し探していると、ふと鉄球が目に入ってきた。


「物は試しだ…」


そういえば、鉄球って何の元素が合わさって出来てるんだろ?

知ってなくても出来るのかな ?


とか考えながらも、俺は右手側の鉄球に触れ、ぶんかい~、と頭の中で念じた。

が、鉄球には何の変化もなし。黒々としたまん丸さんがそこにある。


「あれ? 何も起きない。なんだよー……って、うわっ!?」


何もないじゃん、とか思って右手を持ち上げた瞬間、鎖に繋がっていた鉄球がボロっと崩れたのだ。

そして粉状の物が辺りに散らばった。


「これって…、成功したのか?」


俺は先に何も無くなった鎖をブラブラしながら、粉状の物が散らばる床を、茫然と眺める。


「すっげー、ホントに分解したよ。俺ってば能力者になっちゃった」


そして、再び説明書に目を落とす。


「えーっと、元に戻すには還元を使えばいいんだよな」


いちおう元に戻さないと、誰か来た時に怪しまれるしな。

そして、俺は粉状の物が散らばった辺りに手を翳し、元に戻るよう念じた。


「還元~…。うぉっ、すげ! っていうか重っ」


すると今度は、何も無かった鎖の先に鉄球が復活した。

急に戻ったズシッとした感触に、つい声をあげる。


むむむ~…

凄いなこの能力。

考えようによっては色んな事に応用出来るぞ。

異世界補正さまさまだな。


そういえば、この前の戦いのとき、ディアスさんの魔法が効かなかったのは、魔法無効化のおかげだったのか。

ますますチートだな。



とりあえず、俺は自身の能力を把握するために、牢屋中で色々な物を分解したり還元していた。

そこで分かったのが、どうやらこの分解という能力、自分の体が触れていれば、手だろうが足だろうが尻だろうが構わないらしい。

そして、分解するには触っていないといけないが、還元するには触る必要はないみたいだ。


そんなこんなとやっているウチに結構な時間がたち、牢屋番の男が朝飯を持って来た。

男は料理の乗ったトレーを床に置くと、向かい側の牢屋を開けて、昨晩と同じようにリーシャさんを呼び出した。


「…おはようございます」

「あ、おはようございます」


昨日のように睨まれる事はなったが、うつむき加減で元気の無い挨拶をしてきたリーシャさん。


「さっさと食っちまえよ。食い終わったら訓練場に来てもらうからな」


そう言って、牢屋番は早々に去って行った。


「…今日から訓練なんですね」


リーシャさんがパンを食べやすい大きさに千切りながらそう言ってきた。


「よく分かんないですけど、多分」


…そういえば。

俺はふと気になった事があり、リーシャさんに聞いてみる事にした。


「あの、ちょっと聞いていいですか?」

「…何でしょう?」

「貴方や他の人が首に着けてるそれって何ですか?」


そう、ずっと気になっていたのだ。

奴隷の人達全員が首に巻いている、ビー玉みたいな物が付いた首輪。

たぶん奴隷とそうでない人を分けるための物なのだろうが、他に何か意味があるのだろうか。


「これは、私たち奴隷を縛る枷です。コレがある限り、私達は逃げる事が出来ません。もし奴隷主から逃げたり、反抗しようものなら、魔石が反応して、首から上が吹き飛びます」

「そんな…」


俺はリーシャさんの首に着いたソレを見る。


「多分あなたも、今日あたりに…」

「そか…」


沈黙の時間がしばし続き、リーシャさんは気づいた様に手を動かし始める。

その後は、お互い何も話すこと無く黙々と食事を終えた。









 それから数十分後。

食事を終えた俺は、迎えに来た牢屋番によって訓練場に案内され、リーシャさんの方はまた牢屋の中へ戻って行った。

 そして訓練場に着いた…

のだが。そこには、昨日のように訓練している人達の姿が無かった。

代わりに、奴隷主のアルネオと槍男、――さっき知ったが、槍男はアルネオの側近らしい――そして、何だか白と銀色の混じった高そうな服と帽子を着けた、眼鏡の兄ちゃんがいた。

眼鏡の兄ちゃんは、何だか薄らと優しそうな笑いを浮かべており、何か腹の中に色んな事を秘めていそうな感じだ。


…なんていうか、ハラグロそう。




しかしこの人、なんかどっかのゲームで見た、神官みたいな格好だな。杖も持ってるし。

まぁキラキラ加減は違うけど。

この兄ちゃん自分で眩しくないのかな?


なんて考えていると、眼鏡の兄ちゃんが俺に近付いて来た。

その手にはあの首輪が握られていた。

そしてアルネオが口を開く。


「今日から小僧は、正式にウチの奴隷剣闘士となる。だがその前に、手続きをしておかねばな」


そして、眼鏡の兄ちゃんが俺の首に手を伸ばす。

俺は反射的にその手を躱そうとするが、眼鏡の兄ちゃんが俺に釘を刺す。


「抵抗はするなよ。俺の魔法で傀儡にされたくなければ、大人しくするんだな」

「……」


俺はその言葉のあまりの冷たさに、一瞬自分の心が凍ったような錯覚を覚えた。

俺が抵抗の動きを示さないのを確認すると、眼鏡の男――兄ちゃんってレベルじゃねぇ――は、ニッコリと笑顔を浮かべながら、俺に首輪を着ける。



はっ!

いま気付いたけど、おれ魔法効かないじゃん!

…うっかりミス


あれ?

ってコトはもしかして、この首輪も?


俺に首輪を着け終わった眼鏡の男は、首輪の魔石に手を翳し、何やらブツブツと唱え始めた。


「契約と戒めの精霊ヴァーユよ、汝が力をもって、この者に戒めを与えよ」


すると、首輪に着いた魔石がパァーっとひかり…


パリンッ!


割れた。


「なに!?」

「あー…、やっぱりね」

予想通り、魔法は失敗したみたいです。


「貴様っ、何をした!」


眼鏡の男が叫び、槍男が矛先を俺に向けてきた。


「いや、あのー、どうも俺魔法が効かない体質みたいでして」

「「「っ!?」」」


あ、驚いてる驚いてる。

槍男とか槍落としてるし。最早ただの男だよ。


そして何やらヒソヒソ話し合う三人。


あー、俺どうなるんだろ?

拘束しようにも魔法は効かないし、枷とか付けられてもその気になれば引き千切れるし。

しかし奴隷じゃなくなったところで、行く宛もないんだよな…。

元の世界でいう、生活難で刑務所に入りたがる人の気持ちがなんとなく分かるわ。



「おい小僧」



すると、三人での話し合いが終わったのか、アルネオが話し掛けてきた。


「小僧じゃない。俺の名前は有沢累だ」

「アリャシャー・ルイ? 変わった名前だな」

「アリャシャーじゃなくてっ、あ り さ わ る い! 何だそのやっちゃった感のある名前は! 有沢が性で、累が名前だ!」


何となく予想はしてたけどね!

っていうか、変なところで外人っぽいな。

異世界翻訳機能も万能ではないらしい。


「名前が後にくるのか、容姿といい名前といい、キサマこの大陸の生まれではないな?」

「まあな」


大陸どころか世界違うけどね。


「ふむ…」


そして再び思案するアルネオ。

今度は他のヤツらと話さずに、1人で考えている。


「ディアスを倒したあの実力、魔法無効というレアスキル、そしてこの容姿……。おい小僧」

「だからっ、…はぁ、もういいや。で、あんだよ?」

「奴隷ではなく、普通の剣闘士として雇われるつもりはないか?」

「え?」


雇う? 俺を?


なるほど、そうきたか。

奴隷として縛りつける事も、力で抑えつける事も、ましてや誰かを人質にして言う事を聞かせる事も出来ない俺を、どうやって軍門に下させるか。

金、もしくはそれに見合うモノをチラつかせるのが一番だからな。

しかし…


「う~ん、今すぐ答えなきゃダメ?」

「今すぐだ」



…どうしよう


どうする!

オレ!!





早く累を暴れさせたくてウズウズしてます。

次回か次次回に期待して下さい!



もともと期待してない?

イヤン!

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