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第5話

今回つじつま合わせ? のお話です。

説明が多いので、あしからず。


カチャカチャ―


食器のぶつかり合う無機質な音が牢屋の中に響く。


「どうぞ」

「あ、はい…」


俺の口へと、淡々と食べ物が運ばれる。

肉、パン、スープ、野菜と、順番も気遣ってくれたりしている。


「モグモグ…、んぐっ」

「……」


先程から俺にご飯を食べさせてくれているこの女性。名前はリーシャ・ハーネス、この場所に来て早々、俺が戦わせられた男性、ディアス・ハーネスの妹だそうだ。

綺麗な青髪と青い瞳で、見たところ年は二十歳くらいだろうか。すっきりとした目鼻立ちをしており、誰が見ても美しいと言える様な容姿をしている。


さて、なぜ俺がこんな女性にご飯を食べさせて貰っているのかと言うと…

簡単に説明すると、両手に重い鉄球を付けられたままでは食事をし辛いので、牢屋番の男がこの女性に食べさせるよう命令したのだ。

まぁ男はその作業すらも面倒臭そうだったが…


で、今こうしているワケである。



しかし、気まずい…

このリーシャという女性。牢屋に入って名を名乗るやいなや、俺の事を許さない、と言いだしたのだ。


しかもその後は何を言うでもなく、ただ黙々と俺の口へ食事を運んでいる。


しかしまぁ、恨まれても仕方ないか。

もしあそこでこの人のお兄さんが俺に勝っていたら、この人は奴隷から解放されていたんだから。



「本当は…」


すると、今まで淡々と動かしていた手を止め、リーシャさんが口を開いた。


「本当は、貴方を恨むなんて事が間違っているのは分かっているんです。でも…」


そこまで言うと、リーシャさんはキッと俺を睨み、芯の通った声で続きを喋り始めた。


「貴方のせいで兄は肋骨を骨折し、左足の骨にヒビが出来るという大怪我を負いました。これで兄は数ヶ月の間、剣闘士として戦う事が出来なくなりました。今まで兄はこの街一番の奴隷剣闘士という事で、奴隷主であるアルネオに優遇されていたんです。しかし、アルネオにとって兄は商品。戦えなくなった商品には、もう用はありません。下手をすれば、兄は…」


初めは凜とした態度で喋っていたが、段々と弱々しくなっていくリーシャさんの声。

最後には目が潤んできてしまった。


 ちょっ、リーシャさん泣きそうだよ!

どうしよう!


「すいません。こんな事、貴方に言ってもしょうがないですよね。貴方だって、アルネオに命令されて戦っただけなのに…」


ぐっと目尻を手首で拭い、謝ってきたリーシャさん。

こんな時、俺はどうすれば良いのだろう。

大丈夫ですよ、なんて根拠も無い事は言えない。



「……」

「すいません、続きをどうぞ」


そう言って、再び手を動かし始めるリーシャさん。

俺は結局、彼女がこの牢屋を出るまで、何も言うことが出来なかった。











誰もが寝静まった、その日の夜。

俺の牢屋に、1人?の珍入者が現れた。



「やぁ、有沢累くんだね。やっと見つけたと思ったら、キミなかなか面白い所にいるね」

「……だれ?」



他の牢屋の人達もみんな寝たので、俺もそろそろ寝よっかなー、と思って横になった瞬間、急に後ろから「あ、いたいた!」という声が聞こえてきたのだ。


ビックリして声の方を振り返ってみると、そこには、ワンピースを着た金髪の女の子が立っていた。

見たところ十四歳くらいだろうか、クリクリした大きな目をしており、その瞳はルビーの様な綺麗な赤だ。


まぁ要約すれば、美少女だ。

とんでもない美少女が、いま俺の目の前にいる。


「え?やだもぅ美少女だなんてぇ~。ほめても何も出ないぞ~」


あれ、俺いま喋ったっけ?

もしかして心の声だだ漏れ?

無意識に口に出しちゃってた?


「へ?あ、違う違う。ゴメンね、勝手に心を読んじゃった」


そう言うと、美少女はペロッと舌を出して、頭をコツンと叩いた。


なにこの仕草、キュンキュンくるんだけど。

ッと、それは今は置いといて…


「心を…読む?君はいったい…?」


俺は先程の美少女の発言が気になり、そう呟いた。

すると、美少女はスカートの裾をクイッと両手で摘み、お姫様の様なお辞儀をして


「初めまして、有沢累くん。ワタシはキミの世界を管理する神の1柱、名前は…そうだね、イオって呼んで」


と名乗った。


「…は?カミ?」

「そ、神さま」


そう言うと、美少女イオは俺に近付き、スッと額に手を触れてきた。


「実はキミを元の世界に連れ戻しに来たんだけど…、ちょっと遅かったみたいね」


ハァ~、とため息を吐き、残念そうな顔をするイオ。

なんかそんな顔も可愛いな…


いやいやっ、じゃなくて!!

神様って!

あの神様!?

本当に?

連れ戻しに来たって…

え、じゃあ帰れるの!?

あ、でも遅かったって言ってた。何が?


「その質問には順番に答えていくから、ちょっと待って」


そう言うと、イオは俺から手を離し、俺の前に座った。


あれ、そこ椅子ないけど?

空気椅子?


「まず、ワタシが本当に神様かどうかだけど、本当だよ。証明しろって言われたらちょっと難しいけど…。とにかく、ワタシは八百万の神の1柱なの。でもまぁ、下っ端も下っ端なんだけど」


「はぁ、八百万の神様ねぇ。じゃあ日本の神様なんだ。…ん? ならなんで金髪なの?」

「そこは…ほら、なんて言うか…、神様だってお洒落したいじゃない? チカラを使って、ちょいちょーいって自分好みのルックスにさ」


ああ、なるほど。

ミーハーだな、神よ。

っていうか詐欺だろ、これ。


「詐欺じゃないよっ。変えたって言っても、ベースは変えてないもんっ」

「ふーん、まぁどうでもいいや」

「…キミ、女の子にモテないでしょ?」

「は?なにそれ」


なんで知ってるの?


「はいはーい、次の質問いくよー」

「いやいや、今の気になるんだけどっ。もしかして、俺がモテない理由とか知ってるの?」

「自分の胸に手を当てて聞いてみなさいな。…さて、次の質問だけど」


イオは俺の言葉をバッサリ切り捨てると、話を次に移した。


「そうだ、俺を連れ戻しに来たって。俺帰れるの?」

「それがねぇ、出来なくなっちゃったの」

「は? なんで?」


なぜにホワイ?


「キミがこの世界と契約しちゃったから」

「契約?なにそれ、した覚えないけど」

「それがしちゃったの。まぁキミは無意識だろうけど…」


うん、知らないもん。


「キミ、最初この世界に来た時、凄く体がダルくなかった?そんなに動いてないのにすぐ疲れちゃったりとか」

「ああ、うん。でもあれは何も食べてなかったせいで、体力が無くなってたと思ったんだけど?」


そう、失恋のショックでね。


「それが違うの。キミは元々この世界の住民じゃないから、だから、キミの魂自体がこの世界から反発を受けて、その影響で体が弱ってたの」

「へぇー、そうなんだ。じゃあなんで今は元気なの?」

「だから、それがこの世界と契約したからなの。キミ、この世界に来て初めて食事をとった瞬間、何か違和感を感じなかった?」


そういえば…、あったな。

パンを一口食べた瞬間、やたら元気になった。


「うん」

「キミがこの世界の物を体内に入れて、それを受け入れた瞬間、キミはこの世界で生きていくという契約をしてしまったの。だから、元の世界には帰れないってワケ」

「……クーリングオフを」

「出来るワケないでしょ」


なぁああにぃぃいい!?

じゃあ俺はこれから一生この世界で暮らしていかないとならんのか!

冗談じゃない!

帰して!おうちに帰してぇ!


って、あれ?

そういえば…


「ねぇねぇ」

「しかしキミの心は起伏が激しいねぇ…。ん、なに?」


って、また人の心を勝手に読んでたんかい。

じゃなくて


「この世界の物を体内に入れたら、って言ってたけど。俺その前にたしか水を飲んだんだけど? なんであの時は何も起きなかったん?」

「さっきも言ったでしょ。体内に入れて、それを受け入れたらって。さっきキミの記憶を見たけど、キミあの水は飲み水じゃないとか贅沢なコトほざいてたじゃない。そのせいよ」


ほざいて、って…

なるほど、だからか。

しかし…


「ねぇ、ホントに俺帰れないの?」

「うーん、残念ながら。たぶん最高神の力でも無理だと思う」


うっそーん。



「まぁなんとかなるって。幸いキミは、この世界と契約した時に特殊な能力を貰ったみたいだし」

「は? 能力?」

「そ、能力。あ、ちなみにこれ、便利だと思って作っておいた。能力説明書」


そう言って、イオはポンッと掌にB4サイズの紙を取り出し、俺に差し出してきた。

いまどっから出した?


俺はイオから差し出された、その能力説明書を読んでみた。


――――――


☆有沢累の能力説明書☆


能力は、用法・容量を守って正しくお使い下さい。


■身体強化

・効果 自身の身体能力の強化

・制約 無し

・常時発動


■分解

・効果 物質を元素レベルで分解出来る

・制約 触ったモノだけ

・分解したものは元に戻せない(能力、還元以外では)


■還元

・効果 物質を元あった状態に戻せる

・制約 死滅した生物は戻せない

・死んでいなければ、死ぬ寸前から元気な状態に戻す事も可


■魔法無効化

・効果 自身に影響を及ぼす全ての魔法を無効化する

・制約 自身も魔法を使えなくなる



能力お問い合わせセンター

0120ー#$-&%*\


―――――――



…おい

薬の取り扱い説明書かよ。

ってゆうか最後のなんだ。



「ってなワケで、それちゃんと読んでおいてね。…あ、ワタシそろそろ行かないと!」

「え?元の世界で仕事とか?」

「ん~ん、そろそろ好きなドラマの放送時間だから」


さいですか。

この現代っ娘神様め!!


「ゴメンねぇ、明日の夜にまた来るから。それまで死なないでね~」


なんて縁起の悪い事を言いながら、何やら光の中に消えて行くイオ。


っていうか牢屋の中に置き去りとか、貴様それでも神様か!

とか心の中でツッコミを入れつつ、今日1日だけで本当に色々な事があって疲れた俺は、その後すぐに横になって寝たのだった。




イオの本名ですが、そのウチ出てきます。

ちなみにヒロインの1人にしよっかなー、とか考えてたり。

未定ですが…

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