第15話
長いこと投稿休止してて申し訳ありませんでした。
とりあえず、豚割は生きています。
ただ軽いスランプに陥っていただけです。
さて、15話です。
今回はなんか書きたい事をツラツラと書いていたらこんな長さに…
ホント、安定しないヤツでスイマセンデス。
感想、誤字脱字等ありましたら、遠慮なくお願いします。
「………」
「あ、リーシャさん。これは、あの…え~と…」
「ふぇぇえぇ…」
ハイッ、嫌な予感的中ぅ!
なんかこの世界に来てから、俺の嫌な予感ってワリと当たってる気がするんだけど、気のせいだよね?
リーシャさんが汚物を見るような目で俺の事を見てるんだけど、気のせいだよね?
「………」
…気のせいじゃなかった。
ものっ凄い見てます。
「…ルイさん?」
「ハイ」
ヒィィッ!
その目で口だけ笑顔とか、めっさ怖いんですけどリーシャさん!?
「誰ですか、その子?」
「え、え~と…その…」
せ、説明のしようが無い。
どないせいっちゅうねん。
実はこの娘、神様なんだぁ! とか?
いやいや、ないって。
ちっちゃい娘を自分の部屋に連れ込んで、ベッドの上で神様プレイかよ!
危険人物だよ!
っていうか神様プレイってなんだよオレ!
あまりの危機的状況に脳内イカレたか?
落ち着け、オレ。
クールに、クールにいこう。
イッツクール。
ヒッヒッフー、ヒッヒッフー…。
「さぁ? 誰でしょうね?」
何だそれぇぇええ!
なに言ってるの俺のクチ!
脳とリンクしてませんよー!
ビキッ――
ドアノブに手を掛けたままのリーシャさんの手元から、不穏な音がした。
そのドアノブ、鉄製なんですけど?
「何で知らない娘がルイさんのベッドの上で泣いてるんですか?何でベッドが乱れているんですか?」
そ、それはイオが自分でグチャグチャにしただけであって。
「その、これは…」
「説明して下さい」
リーシャさんが見た事ない顔になってるよぅ。
助けて神様ぁ。
っていうかイオ、いつまでも泣いてないで何とかしなさいな!
「ふぇぇぇん…」
…ダ メ だ こ り ゃ 。
この状況を打開するには、え~と、え~と!
「ち……」
「ち?」
「ちゃうねん」
「………」
「………テヘッ」
「死んで下さい」
「チョッ、落ち着いてリーシャさん! とりあえず殺意むき出しの目と、その右手の水で出来た剣みたいなの仕舞って!」
「大丈夫です。ルイさんだけに責任を負わせません。後で私も――」
「正気に戻ってリーシャさーん!」
ぁあもう !
早く戻って来てイオー!
もうお前に頼るしかないんだからー!!
「ふぇ?」
あ、泣き止んだ。
俺の心の叫びが聞こえた?
「…聞こえた」
未だ涙の浮かぶ目をゴシゴシと擦り、コクリと頷くイオ。
「と、とりあえず、リーシャさんに説明を~」
「何をブツブツ独り言を言っているんですか? 天からのお迎えでも来ましたか?」
っていうかリーシャさん性格変わり過ぎ!
ダークリーシャさん怖過ぎです!
「ふ~ふ~ふ~、今息の根を止めてあげますからね」
某青狸のような笑い声をあげて此方にニジリ寄って来るリーシャさん。
殺られる!
魔法が効かないのは分かってるけど、なぜだろう、殺される予感!
「ちょっ、ちょっと待ってお姉さん!」
イオが俺とリーシャさんの間に慌てて入り、リーシャさんを止めにかかる。
「あら、泣き止んだのね。大丈夫よ、変態のお兄さんは私が退治してあげるから。だから貴女は暫く目を瞑って耳を塞いでて」
「いや、そうじゃなくて! この人は何も悪い事してないから。悪いのは私なの! 私がちゃんと累にシて(・・)あげられなかったのがいけないの!」
……イオさんや、それは火に油どころか灯油ですよ?
「こんな年端もいかない少女にナニをやらせようとしたんですか!?」
「ち、違うっ、俺は何も! イオ、言い方が悪過ぎるって! それじゃあ逆効果だって!」
「え? えと、累が(異世界に)跳んじゃったのは私のせいなのっ」
「なるほど、あどけない美少女を前にして理性が跳んでしまったと。獣ですかルイさんは?」
「ちがー! 俺は正常ですー!」
「分かっていますよ。えぇ、分かっていますとも。ルイさんは私くらいの年代の女性には興味が無いんですよね? 小さな女の子にしか興味が無いんですよね? だから私なんかには目もくれないんですよね!?」
言葉の後になるにつれて、段々と語気が強くなるリーシャさん。
「ルイさんがこれ以上罪を重ねる前に、私が全てを終わらせてあげます。大丈夫、ルイさん1人では逝かせませんよ。後で私も後を追います」
「ちょっと待ってリーシャさん! 色々と待って! とりあえず、俺の話を聞いて。ヤンデレないで!」
「さよならルイさん!」
「ちょッ、ギャーー!」
リーシャさんが、手に持った水剣を振りかぶる。
「……」
瞬間、金色の影がフワリと俺の前に現れる。
「滅っ」
イオが、俺とリーシャさんの間に滑り込んで来たのだ。
それはどこか緩慢な動きに見えたが、一瞬で俺とリーシャさんの間に入るほどの速さだった。
そのイオは、リーシャさんに向け手を翳した状態で凜と立っている。
そしてリーシャさんの手に握られていた水剣は、いつの間にか消滅していた。
「……え?」
「貴女ちょっと落ち着きなさい」
あまりに突然の出来事に目を点にしているリーシャさんに対しそう言って、リーシャさんの額に手をスッと置く。
「……っ!?」
するとリーシャさんは突然気が抜けた様に地面にペタンと座り込み、再び目を点にしている。
「え? いま…あれ?」
「落ち着いた?」
ニッコリと微笑み、リーシャさんにそう語り掛けるイオ。
「あ、貴女はいったい…」
「それはこれから説明するから、とりあえず椅子に座らない? そこのキミも、ボケッとしてないでお茶でも淹れてっ」
「うぇ? おれ?」
いかんいかん、ついポケーっとしてしまった。
「他に誰がいるのよ。ほら、二人とも動いた動いた!」
そう言ってパンパンと手を叩き俺たちを促すイオ。
「「は、はい!」」
異口同音に同時に返事をし、ワタワタと動き出す。
「…で、少しは落ち着いた?」
ソファに浅く腰掛けたイオが紅茶を一口含み、手にカップを持ったままリーシャさんに話し掛けた。
「は、はい…」
確かに落ち着いてきてはいるようだが、未だに当惑の眼差しをイオに向けるリーシャさん。そりゃそうだ。
なにせ見た目は14かそこらの少女が、魔法力で定評のあるリーシャさんの魔法をいとも簡単に無力化して見せたのだから。
そして、幼さを感じさせないその落ち着き。
見た目と中身が相反しているイオに対し、リーシャさんはどう接していいのか分からずにいた。
「まぁ、私みたいな子供が精霊の強制解除やこんな喋り方をしてれば、普通は驚くよね」
「ッ!? ぃ、いえそんなっ…」
苦笑しながらイオがそう言うと、一瞬ビクッと肩を震わせ慌てて否定するリーシャさん。
っていうか
「おいイオ、リーシャさんの心読むなよ…」
「仕方ないでしょ。私のこのチカラは常に解放状態なんだから。まぁどうしてもって言うんなら、常にキミの深層意識を読んでれば、他の人の心を読む余裕は無くなるけど?」
「すいません、勘弁して下さい」
深層意識まで読まれてたまるか。
「はいはい、じゃあキミはもう少し静かにしててね」
「うぃ」
子供に言い聞かせる様に言われてしまった。
「さて、あんだけバタバタしといてなんだけど、一応こう言わせてもらうわ。はじめまして、私の名前はイオ。まぁ偽名だけど、本当の名前を言うとそこの人が驚くだろうし、貴女は何も分からないだろうから、敬愛と尊敬の念を込めて、イオと読んでちょうだい」
「偉そうだなおい。…っていうか、偽名!?」
神様って偽名使う必要あるのか?
「偉そうじゃないの、偉いの。そしてキミ、次私が話してる最中に茶々を入れたら、幼少時の恥ずかしい過去を暴露するよ」
「ふん!俺に恥ずべき過去などないわ!」
「あれは小学3年の頃。クラスメイトと教室内で遊んでたら、誤って女子生徒のスカートを全開に捲ってしまって、クラス中から変態のレッテルを…」
「スイマセン、ユルシテクダサイ」
ソファから飛び降りて、床に額をこすりつけて謝罪する俺。
違うんだよ、あれは本当に事故だったんだよ。
知ってる?
小さい子供って意外に残酷なんだぜ?
「何故イオさんがルイさんの小さい頃の事を知っているか気になるところですが、先に私の自己紹介ですね」
そう言って、リーシャさんは自分の胸に手を当てる。
「私の名はリーシャ。リーシャ・ハーネスです。この大陸では流麗の魔女の二つ名で知られています」
「そう、よろしくねリーシャさん」
ニッコリと微笑み、右手を差し出すイオ。
しかしリーシャさんはその手を取らずに、訝しげな目でイオを見る。
こっちの世界には握手はないのかな?
「…貴女の名は分かりました。そして何となくですが、悪い人ではないというのも分かります。しかし、貴女はいったい何者ですか? 先程の私の精霊魔法を一瞬で解除したあの技。そして、興奮状態にあった私の体の力と、精神の力を奪った技。どちらも、貴女のような小さな子供が使える技術ではないはずです。それをあんないとも簡単に…」
「ん~…、やっぱりそう来たかー」
所在なさげだった右手で、ポリポリと頭を掻いて困った顔をするイオ。
一瞬チラッと此方を見て、「どうしよっか?」と視線で聞いてくる。
俺に聞くなよ。
「(私は神様だー、って堂々と正体明かせばいいじゃん)」
とりあえず、俺も視線でそう返してみる。
「(そうなんだけどねー。でも、そう簡単に信じてくれる人なんて普通いないって)」
「(俺は信じたけど?)」
「(キミと一緒にしちゃダメでしょ)」
なんだそら。
褒められてる?貶されてる?
「(両方と言う事で。あ、ちなみにこれ、私の力で思念会話してるから。目と目で通じ合ってるわけではないので、変な勘違いをしないように)」
「(………)」
「……あのー、それで、私の質問には答えて頂けるんでしょうか?」
「あ、ごめんなさいね」
自分の質問そっちのけで見つめ合っていた俺達に、リーシャさんが若干機嫌の悪い顔で話し掛けてきた。
なんか背後に黒いオーラが…
「え~と……、ん~、なんて説明すればいいのかな」
こめかみに人差し指を当て、ん~ん~唸るイオ。
そしてリーシャさんの方をチラッと見て「ま、いっか」と呟き、リーシャさんに向き直る。
「リーシャさん、これから私が言う事は全部本当の事。だから落ち着いて聞いてね?」
「…? はい」
リーシャさんは一緒キョトンとしたが、直ぐに姿勢を正して頷いた。
「私は、この世界の人間ではありません」
「この世界……え?」
「更に言えば、そこに居る彼もこの世界の人間ではないの」
「ルイさんも? …え? あの、この世界の人間ではないって、どうゆう事ですか?」
明らかに動揺しているリーシャさん。
まぁ普通は動揺するよね。
おかしな人だと思われないだけマシだ。
「私と彼は、ここではない世界、異世界からやって来たの」
俺はやって来たって言うより、誰かさんの過失で跳ばされたんだけどね。
イッテ! 向こう臑を蹴るな!
「異世界……。えっと、国でもなく大陸でもなく、世界? この世界とは異なる世界からですか?」
「その通りよ」
「そんな、まさか…」
信じられない、といった顔をするリーシャさん。
イオから俺に視線を移す。
「信じられないかもしれないけど、これは事実です。俺とイオはこの世界の人間じゃぁない」
「………」
沈黙が場を支配する。
どれくらい時間がたっただろうか、徐にリーシャさんが口を開いた。
「なぜ…」
「ん?」
「もしルイさんやイオさんが、本当に異世界からこの世界にやって来たのだとしたら、なぜお二人はこの世界に来たのですか? この世界には奴隷が、死が、哀しみが、苦しみが溢れています。なぜ、わざわざこのような世界に?」
「「……」」
その言葉に、俺とイオは無言で目を合わせる。
それこそ、どう説明しよう。
只単に「こいつのミスでこの世界に跳ばされちゃっただけで、選んでこの世界来たワケじゃないんだ♪(テヘッ)」と言ってもいいのかもしれないけど、その場合、イオが神様だという事をバラさなければならない。
まぁ他に誤魔化しようはあるのかもしれんが、リーシャさんにはあまり嘘をつきたくないしなぁ…。
「………」
「………」
再びの沈黙。
「ん゛~~~……、だばらぁっ!!」
「うわっ!?」
イオがポンコツになった!?
難しい顔をして唸ってたと思ったら、急に立ち上がって雄叫びをあげたのだ。
「面倒くさい面倒くさいめんどくさーーい! あーもうメンドクサイ!! これだから神様なんてやってらんないのよ!」
ちょっ、おま!いま神様って!
さらっと自分の正体明かしたよね!?
「それがなに! 私はサラリーマンですって言ってるのと同じようなもんでしょっ」
「いやいやいやいや、全然同じじゃないし。サラリーマンと神様とか、規模が違いすぎるだろ。月とスッポンどころか、太陽とアリンコだよ」
全国のサラリーマンの方ごめんなさい。
「えっと……、あの、神様とは? なぜイオさんは急に叫び出しだのですか?」
「あー、その、イオが叫び出したのについては、ただ単にコヤツに責任感とか忍耐とかいうものが不足している如何しようもないヤツだからとか、そんな本当にどーしようもない理由ですけど、神様っていうのは……」
「いい、それは私が言う!」
俺がそこで言葉を濁すと、イオがビシッと手を出してそう言った。
「リーシャさん!」
「は、はい!」
キッと視線をリーシャさんに向け、リーシャさんの名前を呼ぶイオ。
リーシャさんがその声に反応し、ビクッと肩を震わせ返事をした。
「これから私が話す事は、貴女の事を秘密の守れる人だと信用して明かす、とても重要で秘密なお話です。
貴女はこの会話の内容を、誰にも話さないと誓いますか?」
"信用して"って……、勢いで言っちゃったくせに何を今s――いたいっ! だから向こう臑を蹴るな!
「あ…、えぇと」
急にそんな事を言われたリーシャさんは、困った顔でこちらを助けを求めてきた。
ん~~…
「こんなワケの分からない事に巻き込んですいません、リーシャさん。でももし、リーシャさんが真実を知りたいなら、俺(+α)の事を知りたいなら、ここはイオの話を聞いてほしい。まぁでも…」
そこまで言って、俺は頬を人差し指でポリポリと掻きながら続ける。
「俺としてはリーシャさんには全部知っておいてもらいたいと言うか、リーシャさんに嘘はつきたくないので、聞いて欲しいと…言うか…」
だんだん尻すぼみになっていく俺の声。
「…ヘタレ」
るさい、ポンコツ神様。
とりあえず言いたい事は言ったので、リーシャさんの反応を見てみる。
「………///」
何故か顔を若干赤くして俯いてしまっている。
知恵熱?
「…朴念仁」
「?」
イオが何かポソっと言ったが、何を言ったのかは聞こえなかった。
まぁいっか、どうせイオだからロクでもない事だろ。
今はそれより…
「リーシャさん?」
「は、はい! えぇと、その、ルイさんがそう仰るのなら…」
一瞬ワタワタとしたが、直ぐにキリッとした顔に戻りイオの顔を見る。
「お願いします。私に、あなた方の秘密を教えて下さい。私リーシャ・ハーネスはこれからの話を一切他言しない事を聖霊に誓います」
それを聞いたイオは、むふんっと満足そうな笑みを浮かべ、椅子に座り直した。
なんか踏んだり蹴ったりなルイですが、やるときゃやる漢なんです。
生暖かい目で見守ってやって下さい。