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第10話

大暴れ!!




…って感じじゃないかも。

 有沢累は怒っていた。

彼は元の世界では、かなり温厚な性格であると周囲から言われていた。

 しかし逆に怒らせると、手をつけられない程の暴れっぷりを見せる。

彼自身もそれが分かっているので、なかなか怒らないように心がけている。

 しかし今、有沢累は今までにない怒りを覚えていた。


 リーシャさんは賢く優しい、芯の通った人だ。

そのリーシャさんが、あそこまで追い詰められていた。

 好きでもない自分に、自らのカラダを預けようとするほどに。 あの時のリーシャさんの顔が、頭から離れない。


「……」


 牢屋の格子を分解し、外に出る。

 まだリーシャさんと牢屋番の男の気配は感じる。

 当初の予定では、牢屋を抜けた後にそこら辺のアルネオの部下を捕まえ、アルネオの居場所を吐かせる段取りだった。

しかし、これからリーシャさんが行く場所にはアルネオがいる。

なら、二人の後をつければ良いだけだ。


 誰かに遭遇した時は…

その時に考えよう。

今はあまり頭が回らない。



「おい貴様、何をしているっ」


 さっそく出会ってしまったようだ。

運の悪い。


「止まれ!」


 男が腰に差した剣を引き抜き、此方に向け振り抜いてきた。


「分解」


 しかし、男の剣は累を切り裂く事はなく、累の体に触れた瞬間に粉と化す。


「――なっ、っ……」


 男が驚く暇も与えずに、男の鳩尾に蹴りをいれる。

男は呻き声すら上げずに、床に倒れ伏す。


幸い、前を行く二人には気付かれなかったようだ。


「っ!? キサ――」


 曲がり角を曲がったところで、また敵に遭遇した。

今度は剣を抜く隙も与えずに、相手の男の頭を掴み、壁に叩き付ける。


「……」


男は壁に顔を付けたまま、ズルズルと崩れ落ちる。


「…あそこか」


リーシャさんと牢屋番の男が、どこかの部屋に入ったようだ。


扉に近づき、部屋の中の会話を聞いてみる。


「……噂に……の…だ。…ほど…くしい…」

「……はり…奴隷……もったい………だな」


途切れ途切れだが、会話が聞き取れる。

二人の男が、何やら話しているようだ。

そして、一人の男の声には聞き覚えがあった。

アルネオだ。


「…見つけた」


扉に手を触れる。


「分解」


扉が分解され、部屋の中の景色が目に飛び込む。

そこで真っ先に目にしたのは、一糸纏わぬ姿の…




「な…に?」







アルネオだった。



えーと、とりあえず。


「なんつーもん見せやがる!!」


床に落ちていた水晶のような物を、アルネオの股間に向け全力投球。


「はぉっ!」


水晶のような物は、真っ直ぐに飛んでゆき、アルネオのゴニョゴニョ…にクリーンヒットした。


「ルイさん!」

「やほ、リーシャさん。助けに来ましたよ」


リーシャさんは、アルネオの近くで椅子に座っていた。


あぁもう! なんかアルネオの素っ裸を見た瞬間に、怒りとか色んなのがふっ飛んだわ!



「こ、小僧…、貴様なぜここに…」


 アルネオが股間を抑えて、蹲りながら言う。


「なぜって、そりゃあリーシャさんを助けに来たに決まってんだろ」

「この…小僧! このワシに刃向かうとどうなるか分かっているのか!」

「ん? どうなるの?」

「この糞餓鬼が! ザック、その小僧を殺せ!!」


アルネオの命令を受け、ザックが槍をこちらに向け突進してくる。


「ォオオオオ!!」

「猪じゃないんだから…、っと」


 千刃の指輪を盾に変え、攻撃をいなす。

そして即座に盾を鉄甲に変え、ザックの横っ面に拳を叩き込んだ。


「ガッ、ハ……」


 ザックは床に倒れ伏し、ピクリとも動かなくなる。

さらばモブキャラ、名前だけでもあって良かったな。


「さぁ、リーシャさんをこっちに渡すんだ」

「ぐっ…、ええぇい!もの共出会え!」


 時代劇でしか聞いた事のないようなセリフを叫び、部下を呼ぶアルネオ。

 そして部屋の中に、十数人の武器を持った男達が雪崩れ込んで来た。


「その餓鬼を殺せぇ! 生かしてここから出すな!」

「ダメ! ルイさん、逃げて!」



 リーシャさんの声と同時に、男達がそれぞれの武器を振りかぶる。


「…分解」


 しかし俺の能力の前に、武器など無意味。

 男達の武器は、俺の体に触れた瞬間、全て粉と化した。


「なっ、武器が…」

「何が起こったんだ!?」


 空になった自分の手を見つめ、ざわめく男達。


「悪いけど、俺に武器は効かない。俺を倒したかったら、素手でくるんだな」

「く…っそぉ!」


 ヤケクソになった男達が一斉に殴りかかってくる。


「えっと、こうゆう場合は…」


 四方八方から襲い掛かってくるコイツ等を一掃出来る武器はないかな~?

 と、一瞬考え…


「よし、やってみよ」


 千刃の指輪にイメージを送り、指輪を武器に変える。


「じゃじゃーん!」


 出来た武器は、1mくらいの鋼鉄柄の先に、真四角の鋼鉄の網が付いたもの。

 まぁ所謂、スゴく大きな鋼鉄の蠅叩き。


「ソイッ!」


 それを360゜振り回し、周りにいた男達をなぎ倒す。

なにこれ、めっさ気持ちいい。


「な、バカな…。一瞬で十数人を…。しかも何だ、あの武器は? 変幻自在の武器など聞いた事がないぞ」


 驚くアルネオ。

っていうか、いい加減に服を着れ!


「さ、リーシャさん。こっちに」

「…あ、はい!」


 アルネオが驚いている隙に、リーシャさんをこっちに引き寄せる。


「くっ…、小僧! 動くな!」


 先ほど俺が投げた水晶のような物を手に取り、そう叫ぶアルネオ。

 なんだあれ?


「? なにそれ?」

「ふ、ふふ…、コレは奴隷達に着けた首輪を管理するための魔石だ。それ以上抵抗をすれば、その女の首を吹き飛ばすぞ」

「――!!」


 クソッ! まさかあの水晶のような物がそんな道具だったなんて。

 俺が投げなければアルネオの手に渡る事はなかったのに。

この距離じゃ分解は間に合わない。

どうしたら…


「ル、ルイさん…」


 怯えた目で俺を見るリーシャさん。

 くそ、どうしたら…


「……」

「さぁ小僧、大人しく投降しろ」


 手に持った魔石をチラつかせながら、下卑な笑みを浮かべるアルネオ。



 …魔石?

そういえば、あれって魔法で制御してるんだったよな。

そして俺の能力…。




 …もしかしたら。


でも、コレは一か八かのカケだ。


「早くしろ小僧。その女の首を吹き飛ばしたいのか?」

「……リーシャさん」

「は、はい」

「俺を…信じてくれますか?」

「え?………はい」


 一瞬俺の言葉の意味を理解出来ず、疑問の表情を浮かべたリーシャさんだったが、俺の表情から何かを感じたかの様に、覚悟を決めた顔で頷く。


「ありがとう、リーシャさん…」


 自分の命が危ういというのに、俺のことを信じてくれるリーシャさんに感謝の言葉を述べる。


「アルネオ、やるならやってみろ。ただし、他人を呪わば穴二つ。それ相応の覚悟はするんだな」

「く…、何をワケの分からん事を! ええぇい、もういい! 死ぬがいい!!」


 そう言って、魔石に魔力を込めるアルネオ。

 その瞬間、俺は四歩ほど離れた場所にいるリーシャさんの所まで跳び、首輪に手を伸ばす。


――カッ!!


 リーシャさんの首輪の魔石が、強い光を放った。






馬鹿デカい蠅叩き。



・鋼鉄だから頑丈

・当たると痛い

・柄が長い

・網もデカい

・人を叩くのに最適

・でも網目がデカいから、蠅は叩けない…





蠅叩きじゃねぇ!!

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