第1話
唐突だけど、皆さんに尋ねたい。
皆さんは、神様というものを信じているだろうか?
なに?
なんでそんな事を聞くのかって?
それはもし神様なんてヤツがいるとしたら、今すぐ俺の目の前に出てきて欲しいな~、とか考えているからである。
何故かと言うと――
「ここ、どこだよ…」
事もあろうか、俺は現在見知らぬ土地、しかも荒れ果てた荒野で途方に暮れ、散々彷徨い歩いた末に、遂に空腹で力尽き倒れてしまったのだ。
今すぐこの状況を俺に説明し、なぜこんな事をしたのか聞きたい。
事と次第によっては、神様だろうが何だろうが、ぶん殴ってやろうかと思っている。
さて、こんな事を言っても、皆さんには何が何やらって感じだろう。
とりあえず、俺がこの見知らぬ荒野に放り出された経緯について説明しよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
とある冬の日。
俺はこの十八年間の人生で、初めて出来た好きな人に告白をした。
矛盾するようだが、初めてと言っても、今まで好きになった人がいないってわけではない。
小学校の頃に、隣の席の元気でチャーミングな女の子に興味を持った事もあれば、近所に住む大人な面倒見の良いお姉さんが気になった事もある。
要は自他共に認める奥手な自分が、初めて自分で告白するほど、好きになったという事だ。
まぁ1週間後に控えたクリスマスを一緒に過ごしたいから、という理由でこの時期に告白したのだが、結果は…
「…ごめんなさい」
これである。
正直、泣いたね。
いやもう比喩とかじゃなくて、リアルに枕を濡らしました。
で、その告白の翌日。
俺は何とかいつもの様に学校に行き、少し落ち込みつつも、つつがなく授業を受けて下校をしたんだが…
その下校途中、俺はふと海に行って叫びたい衝動に駆られて、近くにある港まで行ったのだ。
学校からも自宅からもさほど遠くない場所にある港には、冬という理由もあってか、周りには他に人が見受けられなかった。
「ちょうどいいか。誰にも迷惑が掛からなくて済むしな…」
と呟き、俺は海の方を向いて港の淵に立ち、大きく息を吸い込むと…
「ばっかやろぉぉおおおおーーー!!」
と叫んだ。
ああ、青春時代…
これが青春か、甘酸っぱいどかろかメチャクチャ苦いぜチクショウ!
とか思いつつも、叫んで若干スッキリした俺は、踵を返しこの場から去ろうとした。
しかし――
ズルッ
「――っ!?」
気持ちが前に出るあまりか、俺は港の淵から爪先がはみ出る程の位置に立っていたのだが、それが悪かったのだろう。あろう事か、足を滑らせてしまったのである。
ドボォォン!
物凄い量の水しぶきをあげて、俺は冬の海に真っ逆さまに落ちていった。
あまりに突然の出来事と、真冬の冷たい海に浸かったせいか、俺の体はパニックになって全くと言っていいほど体が動かなかった。
徐々に強くなる水の圧力に、自分はなんの抵抗もできずに奈落へと吸い込まれてゆくのであった。
自分の人生は、これで終わるのか…
ただの一度も恋人が出来ることもなく、十八年という短い歳月しか生きられずに。
チクショウ…
こんなのってねぇよ、チクショウ…
そんな悲観を抱きつつも、自分の意識は奈落へと落ちた。
とかろがだ!
「…ん、んぅ……」
深い深い海の底へと落ちていった自分は、なぜか陸の上で目を覚ました。
「……あれ?」
一瞬誰かに助けられたのかとも思ったが、そんな考えは目の前の景色に消し浚われた。
一面の荒野
どこを見回しても建物一つない。
はてさて、こんな広い土地が日本にあったかな?
とか考えつつ、自分は先ほどまでの事を思い出してみた
――バッ!
慌てて自分の身体を触る。
これはホントに自分の身体なのか、自分は生きているのか、まさか透けていたりしないか、足はちゃんとついているか?
「いちおう生きてる…んだよな、どうなったんだ?」
そう呟きつつも、自分は辺りに誰か人はいないか、歩いて探してみることにしたのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
だいぶ長くなったが、そういう事だ。
ふらふらと宛もなく彷徨った自分は、ただ闇雲に体力だけを消費し、今に至る。
いちおう昔から体力には自信があったのだが、昨日の失恋のショックにより全く食事を取っていなかったのが仇になったらしい。
全くもって間抜けな話である。
「はらへった…」
そうして俺が地面に倒れ込んでいると、何やら遠くの方から大きな馬車を引き連れた不思議な格好をした集団が近づいてきた。
「なんだあれ、見た事ない服装だな。やっぱりここって日本じゃないの?」
もしかして…
もしかしてだけどさぁ…
まさかコレって、異世界トリップとかいうやつ?
おれ異世界来ちゃった?
いやいや、まっさかぁー!
……
マジで?
一人称って書きやすいですね。
とりあえず、これからよろしくお願いします!