15話 待ちぼうけお化け
※視点が変わります
気付いたら、ホールにいた。
暗い。
電気は落ちていて、音もない。
台だけが並んでいる。
休みらしい。
そういえば、そんな張り紙を見た気がする。
まあ、どっちでもいいか。
どうせ打てるわけでもない。
島を歩く。
足音はしない。
静かすぎて、少しだけ落ち着かない。
こんな場所だったか、ここ。
いつもは、もっとうるさかったはずだ。
視線が、勝手に向く。
誰かのお気に入りの場所。
あの席。
誰もいない。
当たり前だ。
——なのに、もう一回見る。
何も変わらない。
「……。」
小さく息を吐く。
別に、気にしてるわけじゃない。
ただ、なんとなく目に入るだけだ。
それだけ。
島を一周する。
やることもないのに、歩く。
意味なんて、ない。
もう一度、あの席を見る。
いない。
「……。」
分かってる。
来るわけがない。
休みなんだから。
普通は。
普通なら。
——あいつはどうだったか。
少しだけ考える。
すぐにやめる。
「……別に。」
口に出る。
誰もいないのに。
どうでもいいはずだ。
来てなくても、別に困らない。
話すことがあるわけでもないし。
用があるわけでもない。
ただ、隣にいるだけだ。
——それだけだ。
「……。」
視線が、また戻る。
あの席。
空いたまま。
「……。」
恋に恋する乙女か、俺は。
小さく首を振る。
歩く。
止まる。
また見る。
「……。」
落ち着かない。
理由は、分かってる気がする。
分かりたくはないけど。
「……。」
他のやつもいるにはいる。
端の方に、誰か座ってる。
話しかける気にはならない。
どうでもいい。
「……つまんない。」
ぽつりと漏れる。
静かすぎるせいか、やけに響いた気がした。
……いや、響くなら、よかった。
「……。」
もう一度、あの席を見る。
いない。
当たり前だ。
「……。」
少しだけ間。
「……今日、来ないのか。」
小さくつぶやく。
誰に聞くでもなく。
答えなんてない。
「……。」
すぐに目を逸らす。
「……別にいいけど。」
付け足す。
誰も聞いてないのに。
「……。」
そのまま、しばらく動かない。
時間の感覚も、よく分からない。
どれくらい経ったのかも。
「……。」
ふと、思う。
明日なら、来るか。
たぶん。
いつも通り、あの顔で。
どうでもよさそうに座って。
「……。」
想像して、やめる。
「……来るだろ。」
小さくつぶやく。
根拠はない。
「……暇だな。」
言葉は微睡むように、揺蕩うように揺れて。




