【朗報】山へ遊びに行く件
わたし、華亥ムラクモ♡ 食の喜びに目覚めた、雑食系女の子♡
なーんてこった! 肩凝った! ムラクモおばあちゃん、肩揉んだげるね? あらまぁ優しい子ね……誰がババアじゃ! 許さんぞ!
はい。
突然だけど、わたしはいま、山に来ている……。何故って? ふっ。雄大な自然に抱かれて、自らの小ささを再確認するためさ……。なんつって。
すごいこと聞いちゃったんだよね、屋台おじさんのところで。盗み聞きなんだけどさぁ……きゃっ! 何!? あの人わたし達の話に聞き耳を立ててるわ! キモーい! 誰か捕まえて! 盗聴よ! ……いや、すんません。返す言葉もありませんですの。ゆるちて。
で、内容。
なんでも今の時期、ダンジョン都市の近くにあるなんか……山。山が時期を迎えてサンサイがすんごいらしいの。何でも食べちゃう雑食系ムラクモちゃんとしては、もー! 気になって夜も眠れへん! って、なっちゃいますわよね。サンサイってなんだ!? 誰の才能を褒め称えてるんだい!? 賛才……なんてね。山菜ですよ、ムラクモちゃん。お顔洗ってらっしゃい。
ヨーロレイヒー。
やっほー!(やっほー!)コケコッコー!(鳥頭ー!)ムラクモちゃんってばつよくてすごくてえらくて頭いい!(お前みたいなやつを花言葉にしたお花あるんだってー!)
たまげたぜ……やまびこってヤツは罵倒を返してくるモンなんだな……。ムラクモちゃんの再生可能形状記憶合金製ハートが傷付いちゃう。
迷惑そうな顔で見てくる同志(と書いてライバルと読む)をかき分けかき分け。ムラクモちゃんは自分なりの道を行くぜ! き、キサマ! 公務執行妨害だぞ! ええい! わたしの道を阻むな! どかーんっ。さらばムラクモまた会う日まで。南無南無。……うん、協調性って大事よね。ムラクモちゃんは常識人なんだ。誰が何と言おうと常識人なんだ……!
山菜の話。
ドデカ宇宙シオヤアブの暗殺攻撃さえ見逃さないムラクモ・アイは早くも目的物をロックオン! どけぇ! そいつは俺のもんだぁ! 散れ散れ、有象無象共めッ! ……ん? あ。これ……ただのビニールゴミやんけ! ムラクモ・アイ、節穴だった。かなしいなぁ。……ていうかゴミのポイ捨てやめなさいよ! 次見かけたらこの山もろともお掃除しちゃうんだからねっ。
まあ、人生はトライ&エラーの連続っていうじゃない。失敗したって気にしない気にしない、開き直っておっけー! ……ん? 開き直っちゃったら、エラーの報告ができないのでは? うん。でも心の平穏の方が大切だから……。意志薄弱系空き地ホームレスわたし。
「……ん、これ知ってる。きのこだ」
見つけたるはなんか黒々とそびえたつ菌糸類。まっくろくろすけのボディに浮かんだ赤い水玉模様がなんかきれい。この瞬間、俺は『運命』を悟った! 俺とコイツは出会うべくして出会ったんだってな! トゥインク。
……。
ほんのちょっぴりだけ、味見してみようかな? きのこは生で食べたらお腹壊すって言うけど……まあ、ゲロキモゲジゲジ野郎に比べたらかわいいもんでしょ。
ということで……あーん──。
「ちょちょちょっ!! 何してんだいアンタ! そりゃ毒キノコだよ! 『タベタラナイゾウバクハツシマスダケ』だ!」
え? どちら様?
ちょっと! いきなり背後から声をかけるなんて失礼じゃない! ……それはお前が隙だらけだからだ。ふんっ、マヌケめ。きーっ! 失礼しちゃう! ……いや、本当に誰ですか?
「あたしゃ雑貨屋のベンだよ! 迷宮都市の白百合って言ったら、あたしのことさね」
「……迷宮都市のビッグベアの間違いでは?」
「ほお。面白いことを言う小娘だね。パンに挟んで食ってやろうかい!?」
すみません!
いやー……ムラクモちゃんってば、命の恩人に対して、ちょっと無礼でしたわ。分を弁えない発言お許しください白百合姉御!
……べ、別にムキゴリビックベアおばさんの圧に屈したわけじゃないんだからねっ!
あっちこっちでこっちがあっち。
ムラクモちゃんのラブリーネームを教えて差し上げると、「変な名前だね。まあアンタにゃお似合いか」なんて言ってきよる。変とは失敬なベアおばだ。ムラクモちゃんのムラは何のムラ? 因習村のムラだよーっ! じゃあクモは? 邪悪モンスターのクモ! ……そんなわけないでしょ! まったく失敬なわたしだ。
「アンタ、山菜狩りは初めてかい? 危なっかしくて見てらんないよ。……あたしが色々教えてやろうかい?!」
だって。
ありがてぇ。眠くならない程度の短文で教えてね。覚えらんないだろうけど。
悪気はないからね、うん。本当に悪気はないのよ。だからその振り上げた拳を降ろしてください。え? 頭に向かって下ろしてやるよって? 人生は無常だぜ……ふっ。ぺちこーん。
「うわぁああーーっ!!」
「お、オオイノシシが出たぞーっ!」
んーで、そんなこんなでベアおばから身につかない山菜講義を受けてると……。
──ばぁっ!
遠くの方からすんごい悲鳴。
どうやらドデカイノシシが出たみたい。大きさってどんなもんなの? つかどこ住み? ポンスタやってる? よかったらムラクモちゃんと戦ってみない? 最近、お肉食べるのにハマってるの。
「ちょ、アンタどこに行こうってんだい! そっちにゃ、デカイノシシいるってんだろ! 人の流れってのが見えてないのかい!?」
「ん。おいしい山菜あるから……。次、お肉ほしい」
「は? ん? ……っておい!」
ベアおばの制止を振り切って、行くぜ暴走特急ムラクモ11号! ぎゅーん、ぎゅーん! ちょっ、人の流れが邪魔になりますわね。ん。誰よいま、ムラクモちゃんのプリティーヘッドを撫でたやつ! ……余裕あるわね。
……はい到着。
なんか逃げ惑う人達を薙ぎ払おうとしてたっぽい突進をムラクモ式エレガントキャッチで受け止めちゃう。ふん、所詮キサマの力など、ムラクモちゃんには到底及ばんのだ……。なんだと! やってみなけりゃわかんねぇだろうが! 勝手に決めつけんなパーンチッ! ぎゃああ! ムラクモは死んだ。
……縁起でもないこと考えちゃった。
「フシューー……」
そんで、イノシシくん。すごいでかい級モンスター。とっても食べ応えがありそうわね。……いや、さすがのムラクモちゃんもこの大きさは食べきれないかしら?
うーん……どうしよ。むむむ……。
消しカスサイズの脳みそを全力でシャカシャカさせて打開策を閣議。無理やり胃の中に押し込むのは? ダメだ! 気持ち悪くなって寝込んじゃう! 近所の人達に配るのは? ダメだ! 前に狼くんのお肉をお引越しのあいさつに持ってったら、ドン引きされちゃったもの。なんならメガネさん呼ばれて、めちゃくちゃ怒られちゃったし……。
「お、女の子が、オオイノシシを受け止めてるぞ!」
「……た、タイラントロリだ……!」
あ、そうだ(天才的発想)。屋台おじさんのところに持ってって、イノシシくんで串焼きを作ってもらうついでに食べきれない部分をプレゼントしたらいいんだ! ……おおぅ。我ながら無駄のない策過ぎて、震えるぜ……。こんな考えが自然に浮かんでしまうなんて、もしかしてムラクモちゃんは当世屈指の天才軍略家なんじゃないの? ムラクモの正体見たり! 天才軍略家(WITHムシケラ知能)。
と、いうことでね。
イノシシくんには悪いけれど……。キミには今から死んでもらいます。ムラクモちゃんの豊満なお胸(当社比)に飛び込んでヨシヨシを求めてた獣くんに、とりゃあと愛のハグ。
そしたら……。なんてこったい! イノシシくんの上半身と下半身が真っ二つになっちゃった!
許せよ、この世は弱肉強食……おいしいお肉は焼肉になるのがサダメなのだ……。
「いや……アンタのがよっぽどビッグベアじゃないかい!」
よいしょっとこらしょっとでっかい食肉くんを担ぎ上げようとしてると、ガッシムンズと肩を掴まれてベアおばからお言葉。えぇ? 心外なんですケド……。この妖精さんみたいにかわいいムラクモちゃんのどこが熊だって?
ふっ、そうか……テディベアみたいに愛くるしいってことね。ベアおばも好きねぇ。
……いいよ! 山菜のこと教えてもらった恩もあるし、ムラクモちゃん一押しのお店に連れてったげる!
「ん。こっちだよ」
「いきなりなんだってんだい!?」
や、だから屋台おじさんのところに行くんだってば。もうっ、テレパシーくらいちゃんと習得しててよね!




