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【長編】ムラクモちゃんズストーリー劇場版『帝都燃ゆ』!・5

 わたし、華亥ムラクモ♡ ムキムキマッチョ、ムキマッチョ! いやんっ、汗臭い! 青コーナーはー! なんかマッチョな人。そして赤コーナーがムラクモちゃん! 生まれたことがすでに奇跡! 強くてすごくてえらくてかしこい! プリティキュートな女の子♡



 囚コロだよ。ふああ~。

 うん。よく寝たよく寝た。夜更かしなんかぜんぜんしないでぐっすり寝たからムラクモちゃんってばめっちゃ調子いいよぉ。……ふああ~。

 朝ごはんに果物もらって食べたらね、ハデポさんと一緒にれっちんの応援しに観客席までれっつごーだよ。

 そんで、バトル場。

 なんだかとってもプロレスリングなバトルリングを見守りつつ、見守りつつ。

 ウトウトしたりおやつ食べたりしてたら何だかんだで戦い始まるみたい。



 れっちんの一回戦ね。

 お相手はなんだか物騒なおじさんだよ。

 現在進行形でムラクモちゃんのプリティを阻害しているクソダサ仮面に負けず劣らずのマスク付けとる。


 ……?

  んん? ……あいつもなんか変だな。……マスクじゃなくって気配がね。

 先生(仮)ほど露骨ってわけじゃないんだケド……。うーん……よくわかんない。

 残念なことにムラクモちゃんCPUはちょっとでも重労働すると熱暴走しちゃうからね。複雑な問題の解決には向いていないのだ! ……うーん、このムシケラ知能。


 

 んで、すんごく目立つ登場演出やった後に、バトル開始だよ。

 ……気配は変だけど、れっちんが負けるような相手ではないかなって感じ。

 

 あ。……あとその変さね。戦いが始まってみたらけっこうわかったかもしんない。

 結論から言うよ。あれね、外部から魔力を譲渡されとる。ただの魔力じゃないよ。ある程度練り上げた形の……なんて言ったらいいのかしら。

 近いカタチで言えば、ムラクモちゃんが使う回復魔法かも。中途はんパワー。

 ……ちゃんと説明するとね、魔法未満のエネルギーなの。回復魔法よ、起きろー! ってお願いしたけど、「INTのステータスが足りないので発動しません。……でも、お前無能すぎて哀れになってきたから、ほんのちょっぴりだけ効果付与してやるよ」って状態がこれってこと。

 強化魔法ならぬ、強化魔力。……っていうほどのもんでもないかも。

 うーん、非効率。強化すんなら魔法使った方がいいのに。……もしや、ムラクモちゃんと同じくINT低めのバッファー魔法使いさんがいらっしゃるってことなのかしら? わーい! 低知能仲間だぁ!


 ……ところで、外側から魔力を注入するのってドーピングでは?

 ──イカサマよ! あいつらイカサマしてるわ! なのでこの勝負はノーカンだーっ! 取り分は全部拙僧がいただく! なんつって。

 や、別に囚コロのルールなんて知らないから、これがホントにイカサマなんかは知んないケド。でも、あんまり公平ではないよね。スポーツマンシップはどこへ行ったのん? ……へっ。そんなモノは、夜空の向こう側に置いてきちまった。

 ……? こやつ何言っとるん?


 ……。

 魔力が飛んできてるところ。それなりに距離があるよ。

 ちょっと人多いからあんま正確じゃないかもしんないケド……昨日のお宿。あの辺りから飛んで来とる感じする。……ん? 

 いやいや……なんで宿屋から魔力飛んできて、グラディエーター・マッチョさんを強化してんですのって。

 ……え? 宿泊業だとぼったくり過ぎて人が泊ってくんないから、他人に魔力を受け渡すタイプの副業なさってるのん? それとも、もしかして……推しの選手を勝たせたくって仕方ないタイプの宿泊客が陰ながら支援なさってるのん? よもやよもや、本業が宿屋さんだからバッファーとして未熟ってコト?

 いやいや、そんな馬鹿な。……むむむ。

 ……まあいいか。


 バトルはねぇ、れっちんの勝利で無事幕を閉じましたよ。

 マチョマスクさんったら、過剰な魔力譲渡で破裂しちゃった。

 ……。

 いちおう、ご冥福は祈っとくねえ。よく知らんムラクモちゃんに南無南無されてもなんやそれって感じだろうケド。……成仏してね。


 二回戦、三回戦ってれっちん普通に勝ち進んだよ。

 相手はねえ、別にふつう。特に変な感じはしなかったかなって。

 そんで準決勝。お相手は先生(仮)。

 手に汗握る因縁のファイトが今、はじまる……!!


 戦いはねえ、わりとれっちん優勢だったかなって。マチョマスクさんを先に見てたのが良かったのかな? 危なげない感じ。

 先生(仮)のブンブン・ソードをツンツク・スピアで弾き落としてるよ。必要以上に距離を詰められないように、間合いを取ってねえ。

 ……ただ。

 攻め手にすんごく迷いが混じっとる。……無理ないと思うケド。

 でもそれでも、れっちんの勝ちは揺らがないよ。ムラクモちゃんそう思う。

 思うケド……おかしいんだよね。すごくおかしい。

 だってね、あのマチョマスクさんと先生(仮)の変さって一緒だよ。おんなじ出所から来てる魔法未満のエネルギー。同じようにずんずくつぎ込まれとる。……同じどころか、もっともっと過剰に。

 ってことはさ、マチョマスクさんの散りざま見たら先生(仮)にもなんかしらの……うーん。こわがりとかあせりとかってあるもんだと思うのん。「──なっ! マチョマスクが……死んだ? やつはムキゴリ四天王でも最弱ぅ……。 し、しかし。あの死に方は……! お、俺の……俺達の使ってきた力って……いったい何なんだ……!?」みたいな。でも先生(仮)、焦るどころかニヤケとる。

 

 ……真面目なお話、するね。

 とんでもなく力に差があるのに、ちょっとした気分の差でやられちゃうことって、けっこうあるよ。

 ルームメイトとのケンカが原因でケムシに針千本にされちゃう子とか。失恋のせいでアリンコに踊り食いされちゃう子とかね。

 ……ムラクモちゃんの鼻紙仲間もそうな感じに「こんなはずじゃなかった」ってなっちゃう子まあまあいたし。

 ……もちろん、れっちんがそうなるって決まったわけじゃないよぉ。メンタルとかね、割り切りとか。すごく意識してる人だと思うの、彼女。……でも、だからこそ。一度迷いが引っ付くと……剥がせないんじゃないかなって。


 ……。

 雲行きが怪しくなってきたってことだよ。……ムラクモちゃんちょっと現実逃避したくなってきちゃった。ちょっと気軽に乗り込める宇宙ロケットとかありますか?



 は、はらはら~。ドキドキ~っつってね(震え声)。

 れっちんの戦いを見守るよ。

 ……クッ! 口惜しいぜ! ムラクモちゃんともあろう者がよ! 友のピンチを指をくわえて見てるしかできないなんて!

 最強ムラクモちゃんが援軍として駆けつければあんな奴の一人や二人──別にどうにもできない!! 何故ならムラクモちゃんはヒトを殴らないから! ……チクショウ! この役立たず! 口先大魔王! 冷血非道女ムラクモ! うえーん、すみません!


 ……れっちん、どんどん追い詰められてるよ。

 もちろん、技量差、地力の差がある以上……簡単には負けないはずだよ。実際に有効打は受けてない。……まだ。

 大丈夫、れっちんなら……。だなんて気休め、もう思えやしない。


 …………。

 わたし、この先……わかっちゃった。

  

 ……だから。

 モヤモヤモヤモヤ~って考えてたの。

 そんなところにね。ハデポさんが話しかけてきたよ。「……何故、助けに行かないんだい?」って。

 ……あのさぁ。言ったよね、ムラクモちゃん。もう言いましたよね?


「……ヒトは殴んない」

「友人が危機に陥ってるのに?」

「…………」

「君は、こんな時でも自分の意地を優先するのかい?」


 意地じゃなくって、約束だよ。……大切な、約束ゴト。

 もう、何度も破っちゃってるけど。……でも、それでも。

 

 わたし、魔法少女だよ。

 ここが地球じゃなくたって、暴力装置のお役が御免になったって、“暴君”だなんて呼ばれたって。わたしはずっとずっと魔法少女。

 ……魔法少女ってね、人間の味方だよ。敵じゃない。だから……。


 ……。

 男が、ニヤケた顔でれっちんを攻撃してる。……剣が、徐々に彼女へ傷を刻みつけている。……体力の限界なんだ。

 大切な友達が、よくわからない人間に殺されるかもしれない。……ううん。かも、じゃない。

 殺されるに違いない。


 ……イヤだよ。

 イヤだ。れっちんは助けたいよ。だってわたし、幸せなの。

 じょーちゃんがいて、れっちんがいて。

 メガネさん、屋台おじさん、フローゼ、アイリ、ゆみ子……。この世界で出会った人達。

 壊れそこなった暴力装置なんかを、人間として扱ってくれる人達。

 みんな優しいんだもの。守りたいって、そう思う。


 思うケド……。

 なんとなく思うの。


 ここで、れっちんを助けるためにあいつ殴ったら……。ううん。殴ろうとしたなら。

 その瞬間、きっともう二度と、魔法少女を名乗っちゃいけない気がする。

 なんでかな? 顔も知らない他人のためなら、言い訳できたのに。友達のためだと、なんも言い訳できないの。


 

 れっちんのこと。

 魔法少女のこと。

 ……選べないよ。

 時間だって、永遠じゃないのに。


 わかんない。

 わかんないよ。


 ──おとーさん。

 わたし、わかんないよ。わかんないから、叱ってよ。お前間違ってるぞって。


 ──じょーちゃん。

 ……。


 『ちゃーちゃん大好き宣言することにしますわ!』


 ……ん? 


 『この間あげたリード付きチョーカーは絶対に付けてくださる? 常にとは言いませんから、わたくしの目の届く範囲と届かない範囲では絶対に』


 んん?


 『──わたくし、ちゃーちゃんにはもっと欲張りになってほしい。もっと欲張りになりましょう? “暴君”らしく、強欲に、傲慢に』


 ……あ。

 そういえば、わたし“暴君”だった。

 ……。


 『でも、きっと……。ちゃーちゃんが思うように、思うことをやり続けたら……あまりいいことにならない気がしていますの。だから、離しませんのよ』


 じょーちゃん。

 わたし、わかんない。正しいことがなにかなんて。……だから。


 『じょーちゃんは……正しいの?』

 『うーん…………わかりませんわ。だってわたくし、世間的に見て正しいとか間違ってるとかで動いてませんし。ちゃーちゃんが好きなだけですのよ。

 ちゃーちゃんにとって良くないことになるなって思ったら、たとえちゃーちゃん自身が相手でもわたくし戦いますわ。……それだけのことですのよ』


 魔法少女だけど、暴君。暴君だけど、魔法少女。……うん。

 もしこれが間違ってたなら。わたしを叱ってね。……じょーちゃん。


「……ね。聞いて」

「聞くとも」

「わたしね。魔法少女でいたい」

「……それが、君の正しさなのかい?」

「うん。……でも、れっちんは友達。ぜったいに助けたい」

「……わからないな。それでは選ばないと言ってるようなものだ」

「選ぶよ。──どっちも選ぶ」

「──は?」

「横暴で傲慢、強欲でよこしま。……それでいいの。だってわたし、“暴君”だもの」


 ……ここでひとつ、ムラクモちゃんってば天才的ひらめきしちゃいましたよ。……な、なんだって!? そ、それはなんなんだい、天才軍略家、ムラクモ孔明! ……ふっ。この臥竜鳳雛謀神如水半兵衛ムラクモに全ておまかせあれ!

 いけない。ちょっとテンションぶち上っちゃった。

 あのね。れっちんが今苦戦してんのって迷いがあるからだよ。それは間違いないの。でもね、それともう一つある。……先生(仮)が魔力譲渡されてるから。

 ならさ、ムラクモちゃんがれっちんに魔力送って、あんな奴の攻撃ぜんぜん効かないくらいまで強化してあげれば……問題ないよね?


 この天才的発想をね、ハデポさんに教えてあげたの。そしたらさぁ「さっきの見てなかったのかい!? マスク・ドライガー選手は破裂したんだよ!!」なんて言ってきおる。……ほう。あの破裂の原因に気が付いておったか。ハデポさんも中々出来るね。

 でも大丈夫だよぉ。魔力譲渡はムラクモちゃん、けっこう得意だからね。

 治癒魔法だってけっこう人に使ってるし、実戦経験豊富なんだよぉ。……お、おお……。ムラクモちゃんのINTの低さが今……役に立っている……!!

 ですカラ心配いらないヨ! ワタシ、とってもスゴい先生ネ! 安心して任せちゃっテ!

 うん。……まあ、れっちんレベルの実力なかったら、普通に爆散しちゃうと思うケドねぇ。……れっちんだけのトクベツ……だよ♡ 受け取って、この想い! ムラクモちゃんからのプリティ・プレゼント! フォー・ユー!

 「そ、そんなめちゃくちゃな!」とか言っとるハデポさんをスルーしつつしつつ。はいビビビー。

 出力制御に若干の不安が残る魔力譲渡がれっちんを襲う! なんつってぇ。



 そっからの展開はねえ、一方的なもんでしたよ。

 ムラクモちゃんのプリティ・パワーを強制注入されたれっちんったらね、も~ムラクモちゃんがびっくらこいちゃうくらいに使いこなしてくれちゃってぇ。……や、ムラクモちゃん由来の魔力なのに、ムラクモちゃん以上に使いこなされると、それはそれで微妙な気分になりますねえ。

 まあいいや。

 れっちんのツンツクスピア・メラメラタイガークラッシュ(勝手に命名)で先生(仮)ったら、あっさりノックアウトされちゃった。


 ばたんきゅー。拍手喝采! ひゅーひゅー! れっちんかっくいー!

 なんだかとってもお祭り騒ぎだよ。……これで変な気配するやつ、ぜんぶ倒したのかしら? まさかまさか……決勝戦の相手も同じようなやつだったり……しないですよね? 天丼は一度でけっこう! 二度目はちょっとくどいですわよ! ……ホントぉ? ムラクモちゃんの脳内騒ぎはくどくてしつこい天丼で構成されてんじゃありませんのって。……ほっとけ、ホットケーキ!

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