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【朗報】草刈りに精を出してしまう件

 わたし、華亥ムラクモ♡ ……突然ですが、皆さんにはムラクモちゃんを称えてもらいます。

 畏れよ、プリティ。オーソレミオ! OH! それ見ろ! ぷんすかぷんぷん状態になっても愛嬌が勝っちゃう系女の子♡



 ああ……。ムラクモちゃんったらムラクモちゃん、なしてそなたはムラクモちゃんなのん? フフ……ムラクモ姫。それはねぇ……。最強だから! ムラクモちゃんは存在レベル、魂から最強なので、ゆえに最強の個=ムラクモちゃんはムラクモちゃんでしかないというほーてい式が完成する! わたしはムラクモ、あなたもムラクモ。あいつもそいつもどっちもこっちも、ぜぇーんぶムラクモ!

 うじゃらこ、うじゃらこ~。しまった! ムラクモ多重発生現象だ! この世の平均知性が著しく低下してしまったぞ!


 はい。

 四日目の学校だよ。

 今日も今日とてお仕事に向かうとね、「学長がお呼びですよ。……もしかして、なんかやらかしました? ムカついてその辺の一般人殴り殺したとか……」的なことをね、ノデ男言ってきたのん。……失敬だな! やんないよ! ムラクモちゃんは人間は殴んないって言っとるでしょっ。

 その意志の固さときたら……チグハグ女のチグ子を生かして返すレベルだよ! ……それは別に賞賛されることではないのでは? ムラクモはいぶかしんだ。


 さておき、学長室。

 すぃー姉に案内してもらって向かうのん。

 「おめぇ、もう四日やぞ。まだ覚えてないのかよ」って感じのお目々で見られちゃうけど……しーらない(ぶりっ子)。どうせ一週間経ったらお役御免だもん! ……言っとくけどぉ、これは怠慢ではないのだぁ。ムラクモちゃんのフロッピーディスクより少ない記憶領域を温存しようって、立派な作戦なんだからね! まー! ムラクモちゃんの面の皮は広辞苑よりぶ厚いざますね! ほっとけ、ホットケーキ!

 脱線しちゃった。

 学長のお話なんだけど、長ーいお話を要約するとねぇ。

 「最近調子どう? なんか変わったこととかあった? 例えば……学校の怪談が話題になってるとか。 ところで……生徒達の声を聞くに、講義は頑張ってくれてるみたいだけど……わかるよね? わかってくれてるよね? …………あ! ふと思い立ったからなんとなく話すけど(すっとぼけ)、最近の学内……ゼルヴィナ信者が増えてるみたいだぁ。──別に思うところはないよ! ないけど……。マジでわかってるよね?」

 ってことみたい。……いや、わかりませんけど。

 おじいちゃん、『わたしってマジでブス』『そんなことないですよ! かわいい!』ってやり取りしたい系女の子の精神持ちし者なのん? 

 というか、ムラクモちゃんってば、ムシケラレベルの知能しか持ってないって言ってるでしょ! やってほしいことあるならちゃんと言葉にして、しっかり伝えてよね! まったくまったくぅ。

 でも……。ムラクモちゃんは天才なので、分かったこともあるよ。

 これやっぱ先生としてじゃなくって、暴力装置として呼ばれとるやんけ! って。……わかってたけどね。わかってたけどねっ、つーん(そっぽ向き)!

 ムラクモちゃんがお色気教師枠に座することなんて夢のまた夢だなんてことはさ! うえーんしくしく(白々しい嘘泣き)。

 


 ところで、その……ぜるびなとかってやつ、聞き覚えあるかもしんない。

 それも最近だよ。めっちゃ最近。とってもタイムリーなネタってやつでござんすわね。……聞きたいかい? ──みなまで言うな! 聞くも涙、語るも涙の冒険がありまして……なんつって。

 ……できればキレイさっぱり忘れ去っちゃいたかったけれども……。チグ子だよ。

 あの変な女が去り際に口走ってたのに、ぜるびなってあった気がするのん。『悩みとか痛みを共有いたしたいので、一度訪れてください』ってねぇ。

 あ、言っとくケド、ムラクモちゃんはノーサンキューだよ。……なんてーの? 自分で居たい……みたいな? ムラクモちゃんはムラクモちゃんでありたい……的な? 他人の意見に流されるだけの人生は卒業式にしてしまった……的な? てきてきてきな、てきちぇきなう! ……頭こんがらがってきちゃった。

 ……ヤなこと思い出したら、なんだか……イライラしてきちゃったな。 


 ……。

 おっと、いっけなーい! 落とし物、落とし物! そこ行くプリティなお嬢さん、何を落としたって言うんだい? それはねぇ……倫理観と忍耐力……カナ☆ おっと蛮族!



 ───



 いじこじ、いじこじ~。

 もうっ! ムラクモちゃんったらいつまでおへそを曲げてるの?

  ……ふっ。感情とは厄介なものだよ、チミ達ぃ……。哀ゆえに愛が歪むアイ……。最強のムラクモちゃんでさえコントロールがままならないものなのだ……。 お笑いだな未熟者ムラクモ! む、何やつ!? そんな有様でプロフェッショナルを名乗るとは……キサマなどプロ偽証罪アマチュアわたしで十分だ! 死ねぇい! ぐあー!


 うん。

 ……それにしたって、チグ子。大した存在感ですよぉ。こうまでムラクモちゃんの心に爪痕を残してくるなんて……ドキッ! これって……恋? バーニングハート、バーニングラブ! くらえ! 超高火力フラッシュパンチだぁ! どかーん! これがムラクモ恋物語の結末か……なんてねぇ。

 そんなしょーもないこと、つらつらーって考えてたらね、訪ね人があったの。どちらさま? ムラクモちゃんになんかご用あるのん? 


「ぁ、あああ、あの! あのその! ちょっとお時間いいですか!」


 はたしてはたして。

 めっちゃどもって入ってきたのは……誰だっけ? なんか見た顔だな。……うむむ。ちょっと思い出せそうにない。……もしもしすみません! 僕たちどこかでお会いしたこと……ありませんか? キャッ! ナンパ目的の痴漢! ムラクモ逮捕だ! ガチャーン! 

 ……二つ結びにしてるからツー子でいいや。


 そのツー子ね、何故だかとってもビビってる。不思議ですねぇ。……でも、お目々だけはムラクモちゃんを強く見つめてきとる。ただならぬ様子ってやつかも。……しゃーない。お話だけでよければ、聞いて差し上げましょう。感謝してよね! 

 この敏腕熱血教師・華亥ムラクモにぜんぶお任せ! でまかせ! ……悩みの種を増やしてきそうな相談相手だぁ。


 ……そんでお話聞いてみるとね、なんか変なお花のこと調べてるみたい。モシモシ花だって。何それ、新手の人外?

 そう思って聞いてみたけど、わかんないから調べてるって。……それでムラクモちゃんに聞きに来るって人選ミスじゃない? ……ツー子も期待はしてなかったみたい。知ってるかもしんないから、聞いてみただけって感じっぽい。

 そんでなんか……おーとじへんとか、リアンナ教祖とか聞かれたケド、全然知らない。誰それと一緒に戦ったって言われてもねえ。いちいち覚えてないよぉ。まー、薄情! ムラクモちゃんには情というものが存在しませんの? ふっ……自己愛ならカンストしてるぜ。なんつって。

 知らないでだいたい返してたんだけど、ちょっと聞き捨てならない単語聞いちゃった。


 ぜるびなだって。ここでもぜるびな。もしかして流行ってる? ムラクモちゃんってば流行に乗り遅れてしまってるんですかって。

 それについて知りませんかって、ツー子ってば聞いてきてたのん。

 ……知ってるか知ってないかで言えば、知らないよ。でも……。わたし、チグ子見てる。

 だから、それがツー子の求める情報かは知らないケド、教えられることはあるのん。あるけれど、言いたくない。

 むしろ、むしろ一刻も早く記憶の中から浄化したいなって思ってたところだよ。……知らない知らない! ムラクモちゃんは見たいものしか見たくないんだい!


 まぁ……。ムラクモちゃんも非情じゃないからね。危ないから関わんのやめときなよってくらいは言ったんだケド……。聞く気ないみたい。

 ……とっても真剣なお目々でジーって見られちゃってねえ。


「──調べて、それで何かがわかったとして……。それで私に何ができるかなんてわかんないけど。自分で思うよりもずっとずっと危ないことをやってるのかもしれないけどっ。それでも知りたいんです! 知った後どうするかとか、そんなのは後で考えます!」


 だって。……無鉄砲だなぁ。

 でも、こういう子……嫌いじゃないよ。事情なんかまったく知らないケド、なんだか応援したい気分になっちゃった。

 だから……思い出したくもないケド、チグ子のこと教えてあげたの。「……なんだかとっても危険なカオリが漂うれでぃでござんしたわよ」って。

 具体的にどれくらいの危険度かってーとねぇ……わかんにゃい。わかんないんだけど、あいつ、侵略者のボスに気配が似てる。

 チグ子のことはわかんないケドねぇ……。少なくとも侵略者のボスは、全身全霊本気モードの最強ムラクモちゃんと戦いが成立するレベルだよ。それどころか、何回か殺されかけたのん。

 まあ、ムラクモちゃんは最強無敵なので、ちゃんと勝利したけどね。勝利したけど……。たぶんね、“協命機関”の油ギットリおじさん達の、ムラクモちゃんを異世界に追放しようぜって考えの後押しにもなった気がすんだよね。『ちょいちょい、華亥ムラクモとかいうプリティアイドル……可愛すぎて世界が少子化まっしぐらだから追い出しちゃおうぜ!』つってねえ。

 

 その後も細かいこと聞かれたケド、特にピンときたことなかったから、わかんにゃいって正直答えたげたのん。正直に言えてえらい!

 ……いや、すみませんね。大したお役にも立てず、自分語りにまで付き合ってもらっちゃって。話聞いてもらえて嬉しいのもあったから……帰ろうとするところを呼び止めたのん。

 

 プレゼントあげるよ。

 投げキッスしてるムラクモちゃんフィギュア。気休めの生命維持の魔法かかってるいつものやつ。これねぇ、れっちんに頼まれて作ったんだよね。『アンタ、あの猛り狂うドラゴン像……アタシにも作ってくんない?』ってあんまり頼んでくるもんだからさぁ。……あと一つ言っとくケド、あれ、アイドルポーズのムラクモちゃんフィギュアだからね! 二度と間違えるでないぞ!


 「狂気の高笑いをする悪魔像」だなんて失敬なことを言っとるツー子へ、「がんばって、応援してるからね」ってエールを送りつつ、送りつつ。ムラクモちゃんフィギュアを押し付けて、サヨナラバイバイしたのん。



 ───



 五日目だよ。

 お仕事を終えて宿に戻ったらねぇ……。ななな、なんと! じょーちゃんおったのん! え? 来たの? 一緒に王都観光しちゃう? ……した。

 仕事帰りだったからそんなに長いこと遊べなかったケド、服を見て、食べ歩きして、一緒のお部屋でネムネムできただけで……拙者、感無量にござ候。……ところで、プレゼントあげますわって、またチョーカーもらったの。銀ピカの装飾付いた皮のやつ。……というか、その銀ピカの装飾ってのが、明らかにネームプレートなんですケド……。

 ……これやっぱり、ムラクモちゃん犬扱いされてますよね? わんわん!

 まあいいけどね。……ムラクモちゃんの器は恒星クラスの広さなので。……しまった、プロミネンス! 人としての尊厳まで焼き払ってしまった!



 そんで迎えた六日目。

 今日のムラクモちゃんは一味違うぜ! なんといっても……気分がリフレッシュしている! 気分高揚状態のムラクモちゃん脳内は五割増しでうっとうしいぜ! ……ダメじゃん!

 テンションアップのおかげで、お仕事にも身が入るってものでございましてねぇ。この日のムラクモちゃん講義はいつもの三割増しで喋ってあげたよ。生徒さんに。

 「パンチの打ち方……すっごいパワーで殴る。どーん」って感じ。「せ、先生って魔法使えるんですよね? コツとか……」って質問には、いつもだったら「ん、わかんない」って返すところを「難しいことわかんない」って返してあげたのん。

 ……三割増しでわかんなさが加速してますねぇ。


 そんで、お昼。

 購買で買ったパンをねえ、食べようって思ったの。そしたらね、教室まで案内してくれてたすぃー姉が、急に立ち止まって、「少しお話よろしいでしょうかぁ」とかって言い出したの。

 ……いや、よくありませんケド。このプリティ・アームに抱えられたパンの山がお見えになりませんか? 今のムラクモちゃんってばすんごく忙しいんですぅ。

 ま、いいけどねぇ。

 聞いたげるケド……。できる限り要点をかいつまんで、手短にお話してよね!


 すぃー姉ね、なんかごちゃらこーって言ってたケド、

 「てめえ、リアンナ教祖さまのお気を患わせたせた件、忘れてねえだろうな?(誰?) 本当だったら即お前みたいな危険人物はゼルヴィナ(やっぱ流行ってるみたい)の総力を挙げて叩き潰すところだが、今回は見逃してやる。ありがたく思えよ! ただし、条件付きだ。この王立学園はもはやゼルヴィナの縄張り。いいか? 余計なことはするな。貴様に預けられた一週間……何もしないままで去っていけ」

 ってことみたい。

 ……ちょっとちょっとぉ。そんな言い方されると、まるで近い内に事件でも起こりますよって宣言しとるみたいじゃないのぉ。

 ムラクモちゃんのゲーミングカラー脳細胞が、ピキキーンと反応しちゃいますよぉ。……聞いてください、皆さん! 真犯人は……この中にいる! えぇー! ところで、どんな事件の犯人を捜してるのん? …………わかんにゃい! つまりそれって……冤罪って、こと!? 冤罪押し付け探偵わたし。

 ……こいつのこと、気にだけしとこ。

 

 

 ───



 そんなこんなで、キーンコーンカーンコーン! ……放課後です。学校内に残ってるよい子の皆さんは、一刻も早くお家に帰りましょう。ムラクモちゃんも帰りたいです。

 けど残念。いつもならさっさと帰っちゃうところだケド、今日は用事があるのでーす! それってなぁに? アイドルムラクモちゃん、オンステージの準備……カナ? ……冗談。今日明日はすぃー姉のこと見張ろっかなって。……なるほど今更。

 五日間は何してはりましたのん? ……えっ。ふつーに王都観光……してました。判断が遅い! 無能! ムラクモ! すいません!


 ところで、ムラクモちゃんに隠密行動なんてできますのん? ……フフフ。やはりそう来るか。しかし万事抜かりなし! 答えは、そう! “できない!” な、なんて力強い宣言なんだ……。こんな情けないことを胸を張って言えるなんてムラクモ……ヤツは一味違う。稀代のおおうつけに違いない……。

 うん。

 ムラクモちゃんは黙って歩き回るだけでも人目を引いちゃうタイプのアイドル美少女であり、ナチュラルボーン・プレデターだからね。コソコソすんのは向いてないのん。……だ、だからあれほど隠形のスキルを取っておけというたに……え? 何そのスキル。どこのクエストで取れるのん? 現実浸食性ゲーム脳わたし。


 抜かりがないのは本当だよ。

 すぃー姉の気配はちゃんと覚えたからね。だからちゃぁんと気にしてさえいれば、空き教室占領わたし遂行中でも、だいたいのことはわかっちゃう。

 ……え? 覗き? ストーカーですか? もしもしポリスメン? こんなところに覗き魔ストーカー女がおりましてよ! ……ち、ちがう誤解だ! やめろー! ムラクモは死んだ。 Q,なんで死んだの? A,彼女にも恥の概念があったんでしょう。

 

 ……。

 ……暇だなぁ。

 なんか飽きてきちゃったし、眠くなってきちゃった。もう少しだけ待ってみて、何も起きそうになかったら帰ろっかな。生徒みんな学校からいなくなるまでなんて待ってらんないもんよぉ。……おっと短気。ムラクモちゃんのわがままガール気質がこんなところで足を引っ張ってしまったぁ。


 なんて考えてたらね、なんだか変な感じしたの。すぃー姉の気配が変わる感じ。

 具体的にどう変わったかって、人間そのものって感じの魔力の気配の内側に、人外っぽい魔力の気配が生まれる感じ。……ムラクモちゃんの経験で言えば、悪の組織の改造人間とかこれに近かったかも。……ムラクモちゃんの敵は基本的にゲボヘドロのムシケラ野郎だったからあんま詳しくないケド……改造人間ってねえ、擬態がすんごいうまいの。本性あらわすまで、ガチのマジで人間そのものなんだからぁ。

 ここから名探偵ムラクモちゃんのスーパー推理ショーが始まるぜ! ぜるびなの正体見たり! 地球由来の悪の組織だったのかぁ! ……なんてね。そんなワケないないナイロン。異世界追放されたムラクモちゃんと、悪の組織(有限)がおんなじ世界に来てるなんてどんな確率なんですかって。

 改造人間もどきさんは偶然の一致なんでしょう。……そんなことある?


 ……まあいいけど。近くに生徒さんいるみたい。……めっちゃ近くに一人、けっこう離れた場所に数人。……危ないっすねぇ。

 てーへんだ、てーへんだぁ。てぇーへんなことですよぉ、これマジで。……つーことでね、敏腕熱血教師ムラクモちゃんは愛する生徒を守るために愛と教育の暴力行為を行使することをここに誓いますぅ。まー、野蛮! あなたが行った乱暴狼藉は断固として抗議しますからね! うっせぇ! コンプライアンスで子供が救えるか! 行くぜ!



 最強のムラクモちゃんにかかれば、ことの現場に急行するなんて一瞬だよ。

 ……一瞬だったケド、突入すんの、ためらっちゃった。

 それまではねぇ、

 教室の壁をさぁ、こう……ドカーン! ってやるの。熱血教師モノでありがちだよね。廃工場とかでさ。入口がでっかい音立てて開くの。いいよね、アレ。一度やってみたいよね。ちなみにムラクモちゃんは最強なので、通りたいと思った場所すべてが道。んだもんなので、壁を崩落させながら現れても、それは何のツッコミどころにもならないのだ!

 なんて超速思考してたんだケド、いざお部屋の前に来たら気付いちゃった。


 ツー子だよ。

 すぃー姉(人外?)と一緒にいるの。

 ……なんでためらったかって? ……わかんにゃい。

 無鉄砲を応援するとは言ったけどぉ、さすがに人命には代えられないもん。……ムラクモちゃんともあろう者が覗き見なんかしちゃったんだけど、ツー子とかマジでボロボロだったしぃ。

 腐っても鯛、くたばり損なったって魔法少女だもの。聖なるハート(当社比)はいつだって優先事項を間違えない! ……ハズだったんだけども。

 ……なんだろ。ツー子とすぃー姉のやりとりね、わからんちんだけど、お友達を巡ってのバトルっぽかったの。一方的っぽい展開みたいだったけど、ツー子全然諦めてなさそう。

 びっくらこいちゃうくらいに強い瞳しとってさぁ。……ここで手出しするのって、なんとなくよくない気がしたの。や、ガチのマジでわかんないんだケドぉ……。


 ムラクモちゃんがドギマギビクビク見守り隊してるとね、すごいんだよぉ。

 ツー子ってば、すぃー姉に一矢報いたのん。ば、馬鹿なキサマ……何故? 彼我の戦力差は絶大だったハズだ! ……意志だ! 貴様を倒すという……意志が俺を強くした!

 ……。

 ……敬意を表するよ。ムラクモちゃんには持てない強さだって。

 でも……いい加減にもう限界そう。

 ツー子の意地にもひと段落ついたっぽいし、助けさせてもらっちゃお。……かっこいいもの見せてもらって、なんだか得した気分だし、お礼だよ。


 ……最初はねぇ、壁をぶっ壊して登場したりしたら派手かなって思ったんだケド、あんなカッコイイところ見せられたら、ムラクモちゃんも張り切っちゃう。

 ってことでね、一つ上の階へ行こっかなって。いちいち階段なんか使ってらんないから、壁をばーんってやってお外へ。そんで一つ上の通路の壁をどーん。

 こうして、ムラクモちゃんド派手登場計画の準備は整ったのでした。

 

 んーで、はいどーんっ。

 お部屋の床を軽く叩いてぶち抜いて、憧れのステージへ!

 そうしたらねぇ、取り込み中のツー子とすぃー姉の視線がムラクモちゃんに集中しちゃう。きゃんっ、みんなの視線を独り占め♡ あなたは誰? ……そう、絶対可憐アイドル・ムラクモちゃんだよ♡ あ、お写真は一人一枚まで、一枚まででお願いしまーす!


 ……。


「──わたし、華亥ムラクモ♡ 絶体絶命の教え子のところへ、タイミングよく救助に現れる系女教師♡

 ……かっこいい無鉄砲、見せてもらったお礼だよ。助けてあげる」


 ……ツー子にね、それだけ言っときたかったの。

 彼女はすごい子だからね。尊敬する相手には名乗りたい。……まるでミーハー系みたいな価値観だぁ。

 やることやったので、お仕事しましょう。なんか……雑草人間って感じにイメチェンしちゃったすぃー姉に向かってダッシュダッシュ! は、速い! なんてスピードだ! これが華亥ムラクモ……峠でナンバー1の座をほしいままにする健脚か……! あ、しまったカーブで曲がり切れない! どーん! スピードの出し過ぎには注意ってことですねぇ。ムラクモちゃんジョーク。


 んで、雑草人間ちゃんのところについたなら、周りに生い茂ってる草をブチブチ~! わーいわーい! 草刈りだぁ! ムラクモ、お手伝い大好き! 庭に生えてるもの全部、ひとつ残らず引っこ抜いてくるね! ついでにお家も! ……なぁんて物騒なお手伝いなんだぁ。むしろ破壊行為やんけ!

 草を抜き終えたら、次は本人。なんか熱帯雨林に生えてそうなドギツいお花に刺さったすぃー姉を引っこ抜いたげる。

 ……ちょちょ、そんなに悲鳴上げないでよぉ。ムラクモちゃんが弱い者いじめしてるみたいになっちゃうでしょ。……実際弱いものいじめでは?

 しーらない(ぶりっ子)!

 そんで、雑草人間のくせに雑草魂をどこかに置き去りにしてきたっぽい彼女へ、サヨナラバイバイのパンチをしようと思ったのん。


 思ったんだケド……。この人、すぃー姉なんだよね。……ということは、人間なの? それとも人外? これけっこう大事。

 考えてもわかりそうになかったから、そちは人間に化けた人外でおじゃるの? 人外に変身した人間でおじゃるの? 教えてたもって聞いてみたの。

 すぃー姉ってばねぇ、中々答えてくんなかったんだけどぉ。ムラクモちゃんが慈愛と寛容の精神で粘り強く待ってあげると、「人間です」って。……なるほど。


 安心していいよぉ。ムラクモちゃんはヒトを殴らないからね。

 だから、お休みなさいっつって首根っこ掴んで締めたげる。ダイジョーブ、ダイジョーブ。ワタシ、ちょーすごいマッサージ師ネ。絶対失敗しないから、シャチョさん安心して身を委ねてくだサーイ!

 ぎゅぎゅー。はいおやすみなさいってねぇ。


 はぁー終わった、終わった。

 さっさと帰って、ご飯にしたい気分だったケド……いちおうね。いちおう、ツー子の様子見たげる。……うん、そんな大怪我してるって感じじゃない。

 ならいいや、帰ろ。

 じゃあの。……お疲れ様だったね、ツー子。

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