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【配信】ちょっとした騒動に巻き込んじゃう件・2

 風切り音が鳴った。

 わたしの首を跳ね飛ばそうと、いびつな刃が袈裟がけに振り下ろされる。──回避は、間に合いそうにないな。……なら。


 肉色の軌跡を描いて迫る刃。

 獲物を削り殺すことを目的としているようなギザ刃の鎌を、左腕を前にして受け止める。

 ……痛いなぁ。



【ムラクモちゃん!】

【逃げて!】

【タ、タイラントロリが傷を受けた……だと?】

【↑ 不謹慎だぞ】



 ──っと。

 いけない、いけない。咄嗟のことだったから、ついシリアスになっちゃった。

 笑って誤魔化そ。えへへ……ぴーしゅピーシュぅ〜……脳みそ融解してんのかしら?


 ……キャッ、ムラクモちゃんの珠のような左腕に傷が! 大丈夫だ、問題ない。お前は先に行け、俺もすぐに追いつくさ……なんてね。



【全く動じてなさそうで安心した。……いや、していいのか?】

【↑ 駄目だろ。滅茶苦茶血出てるぞ。普通に大怪我やんけ!】

【つか、敵キモくね? 虫モンスターか?】

【というかドチャクソ追撃かけてきてて草。全部回避されてて草】

【所詮は不意打ち頼りの一発屋風情よ】



 ……左腕の傷はねぇ、そこまで深くはない。肉を削ぎ斬られちゃったけども。筋繊維をズタズタにされたけども。

 ……ちょっくら魔法をかけてやれば完治する程度の深さだし、どうってことないわね。

 それ、回復呪文や! キュイーン!



【モンスターの攻撃捌きながら、しれっと治癒魔法かけてて草。こいつもう不死身だろ】

【あのレベルの重症を、あんな簡単に回復できるもんなんか?】

【↑ タイラントロリがやることだ。考えるだけ無駄だぞ】

【反撃開始だぁぁぁっ!】



 ところで、下手人。

 見た目はねぇ、虫。虫モンスターってより、虫怪人って感じ。全体的な色はピンク。

 二足歩行でね、腕が四本ある。で、その腕が全部鎌なの。ハナカマキリならぬ、ニクカマキリって感じ? ふっ、だがその作戦も……ムラクモちゃんには通じん! 残念だったわね。


 ……。


 左腕は……うん。動きはする。──ならよし。

 拳をギュッと握って気合一発!

 見てろよお前! ぜってぇやり返したる! ムラクモちゃんは節足動物が大嫌いなんだ! 一匹として生かしては帰さんぜよ!


 はい、がしーっ。

 振り下ろされた鎌を軽く引っ掴んで、ブチュッと握り潰してあげる。そうしたら、虫くんったら凄絶な悲鳴をあげちゃうの。

 何よもうっ! そんな声あげられると、ムラクモちゃんが悪者みたいになるでしょ! 弱き者イジメ、ダメ、絶対! 違いますぅ。正当防衛ですぅ!

 ……誰に向けての言い訳なんですか?



【うおっ、急にすげぇ悲鳴あげるじゃん】

【そりゃお前、腕握り潰されたようなもんだしな。怪我したら声の一つも上げるでしょ、普通】

【↑ その理論でいくと、タイラントロリは普通じゃなくなるんですが……】

【バッカ、お前! そりゃあ……ムラクモちゃんはかわいいなぁ】



 安心してね! ムラクモちゃんは慈愛の精神に溢れた模範的人格者なので、苦しみは長引かせないよ! 一発で三途リバーの彼方まで吹き飛ばしちゃるけんね! ポチャーっ。なんつって。


 んだもんで、ほいじゃあ、さいなら! ……って、ばいばいのパンチをしようと思ったんだけど。虫怪人くんってば逃げの体勢に入ったの。

 わたしが掴んでた腕を切り離して、背中からニョッキリ翅をイン・ザ・スポッツライツ! ……かっこつけちゃった。


 怪人くんは飛び去ろうとするんだけど、もちろんそんなの許すわけないよね。でも、思ったよりすばしっこいから、デコピン弾でも飛ばして粉砕したげようかなって思ったの。


 そしたら──。


 パァン!


 肉みたいな壁が破裂して、中からキモ虫がコンニチハ。あらまぁ賑やか。今日はお客さんがいっぱいで、とんだパーティ日和ねぇ。

 ……うーん。そいつらったらね、カマキリとアリの融合体みたいな変なやつなのん。虫怪人くん以上に、腹が立つ見た目してるなぁ。


 ──侵略者思い出しちゃう。

 絶滅しよ。



【ひぇっ】

【ムラクモちゃんこっわ。お目々ギンギラ光っとる】

【バーバリアンロリが、ついに殺意に目覚めてしもうたな】

【つか、あの人型モンスターなに? あの壁からうじゃうじゃ出てきてる奴らも何なの? 有識者いないの?】


【フィーナ@公式アカ:どちらも未確認のモンスターです。ムラクモさん、出来れば死体を丸ごと……無理でも、一部分は持って帰っていただけますか?】


【いや、あの子の心配しろよお前ら! 依然ピンチだろ! ガチでやべぇ状況なんだぞ!】

【↑ さてはお主……初見じゃな?】



 ……ばっちいですわねっ。キモ虫共はまとめて殺虫消毒ですわよ!


 ということで、どーんっ!

 カチカチ顎を鳴らして威嚇してきてるナマイキなムシケラの顔面にパンチ! かわいそうな虫くんの頭部は破裂して、後ろのお友達を巻き込んじゃった。あらあらまぁまぁ、お気の毒。


 さらに、さらに! キモ虫大楽団に、悲鳴という音色を奏でさせてやるぜ! パンチ、パンチ! ねこぱんち! ムラクモキャットだにゃん! にゃー! にゃー!

 ふっ、今宵のムラクモちゃんは血を求めておるぜ……。ゲロキモインセクト体液を? ……ごめんなさい。嘘言いました。いらにゃい。



【フィーナ@公式アカ:ちょ! 素材! 跡形もなく消し飛んでる! 消し飛んでますから!】


【ムラクモちゃんはかわいいなぁ……】

【なんか、いつもよりも残虐ファイトに磨きがかかってないか?】

【虫が嫌いなんやろ。バーバリアンロリにも可愛い所あるやんけ】

【↑ 現実から目を逸らすな】



 虫くんの頭を握り潰しつつ、別の虫くんへプレゼントフォー・ユー! そしたら彼ら、ぐっしゃぐしゃに潰れちゃった。じゃあの。次はドデカ虫以外に生まれ変わりんしゃいよ!

 不意打ちとばかり、鎌を振り下ろしてくるイケないお手々には引き千切ってからの……オラーっ! ギロチンキックじゃ~っ! どかーんっ。あっ、消し飛んじゃった。しかし、ムラクモちゃんは謝らないぜ。


 ……。


 しばらく暴れ散らかしてると、キモ虫の動きが変わってくる。

 潰しても潰しても湧いてくるから、ちょいキリがないわねって思ってたところだったのん。


 キモ虫の腹を抉り潰しながらちょろっち警戒してみたの。……うえっ、ゲボヘドロ・グリーンブラッドだ。ばっちい。

 いけない、意識逸れちゃった。ともかく、必殺技でも放つつもりかしら? なんて思ってね。

 そしたら──。



【逃げ出してる?】

【タイラントロリが、ついに虫モンスターにまで恐怖を与える存在になったか……】

【いや……待て。これ不味いんじゃないか?】

【↑ どういうこと?】

【あいつらが逃げてる先を見てみろ! 下層に繋がる階段だ。中層、上層まで上がってくるわけじゃないだろうが……下層に最下層レベルのモンスターが存在してるってだけでも、かなり危険だぞ!】




 ちょっとぉっ! 逃げないでよっ!

 ムラクモちゃん、決意しちゃったんだからね! キミ達は今日! この日! 種族まるごと絶滅するんだよ! おわかり? ……おおぅ。青臭い理想を掲げたヒーローに打倒される三下系的セリフを、無意識に吐いちゃった。チンピラ系ホームレスわたし。


 とにかく、ムラクモちゃんは一度ロックオンしたゲボヘドロインセクトを見逃すほど甘くはないぜ! 何が何でも絶滅させたる! 逃げた虫怪人くんも、ドデカ虫くん達もね!

 覚悟しな! 今日がおみゃーの命日だ! ……なんつって。


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