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【配信】ちょっとした騒動に巻き込んじゃう件・1

 視聴者数:5992




 わたし、華亥ムラクモ♡ 夢はでっかく目指せ! ムラクモバベルタワー! 夢見るハートの女の子♡




 ……ということでね。

 はいどーんっ。

 ムラクモちゃんパンチで岩トカゲくんは開幕即死! 南無三! キミのお肉は荷物になっちゃうから、今回は頭だけ持ってくね!

 許せよ、この世は非情なんだ……。



【地竜くんェ……】

【出合い頭に殴り殺される地竜くんかわいそう】

【こ、これが噂のタイラントロリか……】


 一仕事終えたら、目ん玉カメラくんを掴んで、さらに下層へ繋がる階段へ。新章開幕!? ムラクモちゃんの冒険は新たなるステージへ──。なんつって。

 ……ところで、この蟻塚ダンジョン、どんくらいの深さあるんだろ。別にどうしても絶対、何が何でも知りたい知りたい知りたいのーっ! ……ってわけじゃないけど、うん。

 一応、聞いてみようかしら。ムラクモちゃんはネタバレを気にするタイプじゃないので。


「……下、一番奥なの?」



【そう考えられてるよ。つっても、最下層を踏破したやつなんかいないから、もっと下がある可能性も否定できないが……】

【↑ いや、ダンジョンの構造的に、これ以上の広がりはないって、否定されてるぞ】

【↑ そうなん? すまん、ちっと情報古かったみたいだわ】



「……ふあぁ〜」



【あくびかわいい。お手てで口元隠すのかわいい】

【タイラントロリ、自分から聞いたくせにもう興味失ってて草】

【最下層からはモンスターが桁違いに強くなるっていうし、一度戻って準備した方がいいんじゃないか?】



 んー……うん。もう何でもいいや。

 それじゃあ、ムラクモちゃんは下へ向かいます。あばよ現世! オルァ、ビッグになって帰ってくるぜ……。んだらよぅ、気合入れろやーっ! ばっちーん! ぎゃあーっ!

 メテオインパクトわたしの、闘魂注入・ラブリービンタだ! ……なんだか筋肉で服をミッチミチにしてそうなムラクモちゃんバリエーション(日々増殖中!)だわね。


 んーで、最下層。

 ソコに足を踏み入れた時、空気が変わって──! なんてこともなく、いつも通りに辛気臭い。



【うおお……画面越しにも異様な殺気が伝わってきやがる……】

【み、見るからにやべぇ場所だ……】



 強いて言うならね。壁の色が黒に近い感じの紫色に変化しとるってくらい。

 あらま、シックな色合い……素敵ですわね。わたくし、紫好きですの。ほんとぉ? うっそでーすっ! ムラクモちゃんは緑が好きです! 理由は自然っぽい色だから! 隙自語。で、でもよぅ、ムラクモちゃん……ゲボヘドロインセクト野郎の体液もだいたい緑色じゃねえか?

 ……いいのだ! ムラクモちゃんは過去を振り返らない! ……都合の悪いことから目を逸らしているだけともいう。キャッ、お耳がいたーい♡


 ……ん?

 その時! 地獄のムラクモ・イヤーが奇妙な物音を拾った!



【うおっ、なんだあれ!?】

【ギガジエンド・バジリスクだ!】

【ギガジエンド・バジリスクwww】

【なぁにそのクソダサネーミング……。もしかして、ふざけてらっしゃる?】

【馬鹿野郎! アダマンタイトよりも強固な鱗を持ち、視線だけで敵を殺す、火竜よりもやべぇモンスターだぞ! 逃げろ、ムラクモちゃん!】



 その正体──。

 それは、うじょぞる、うじょぞる……とぶっとくてながーい身体を引きずりながら立ち塞がる黒い影だった……。

 い、いったい何者なの!? 負けないで! ムラクモちゃんっ、あなたがここで屈したら、いったい誰がムラクモタワーを建設するっていうの!? 次回、ムラクモ! 蒼穹に爆散! また見てね!


 ……ところで、長い奴。

 見た目はねぇ、黒紫の壁と同化するような色合いの鱗をした、ドデカスネークくんなの。目ん玉ぎょろんぎょろんさせちょる。

 ……何かお探しでしょうか? 紳士服? 袖はご入用ですか? え? いらない? ほーん。

 ここで一つ。パリパリのスーツと掛けまして、ドデカ蛇くんの目ん玉と解きます。(その心は?)どちらも決まって(キマって)いるでしょう! すごいぜ、ムラクモ! ……また脱線しちゃった。


 んーでねぇ、そのキマったお目めからは、概念魔法っぽい波動がぎゅんぎゅん飛んできとるのら。なんか触れただけで肉が爛れ落ちて腐食する感じの。

 だけど……残念だったな! ムラクモちゃんに状態異常は通用しないのだ! なぜなら最強だから! 最強とは全てを置き去りにしてしまうという概念……。ふっ、自分自身が恐ろしいぜ……。強すぎてしまってよぅ……。



【……あの。ムラクモちゃん、ギガジエンド(笑)バジリスクくんからガン見されてるけど、まったく影響受けてなさそうなんですが……】

【酸の池に落ちても普通に這い上がってくるんやぞ。蛇の視線ごとき屁でもないわ!】

【↑ なんでお前が威張ってるのん?】


 

 いい加減に鬱陶しいので、おりゃあ、とキック。視聴者を意識して、ちょっと頑張ってみたサマーソルトのやつ。あらまぁ、ムラクモちゃんったらキックのおめかしができて偉いわね! えっへん!

 顎を軽くかすめて脳震盪を起こさせ起こさせ。ふっ、そりゃ峰打ちだぜ、ってやろうと思ったんだけど……蛇くんったら爆散しちゃった。

 サヨナラは……言わないぜ……。


【うわぁ……。肉片が石礫の魔法みたいに飛び散ってて草。残虐ファイトの使い手か?】

【何を今更。タイラントロリの戦いは最初からずっと残虐暴虐だったろ。かわいいね】

【ギガジエンドだなんて……名前負けもいいところだったな……(遠い目)】



 はい。先へ進みましょう。

 襲い来る悪夢の軍勢をなぎ倒し、なぎ倒し。友との離別、知られざる過去、闇堕ちした実の父との再会……。ドラマティック・ネオロマンスダンジョンinわたし……なんてね。

 けども、そんなおもろい展開なんて起きてくんないまま、ヤマナシ、オチナシ、イミモナシのダンジョン探検道中をゆく。おいおい、ハプニングは旅のお約束でしょうに、しっかりしてよねっ。ぷんすかぷんぷん! クレーマームラクモちゃんはお怒りですよっ。


「ん? うわ……」


【ひぇっ】

【なんだここ……キメェ】

【無駄に肉感的で、マジで気味が悪いな】

【つかここ、未踏領域じゃね?】


 しばらく歩いてもなんも起きないもんだから、もう飽きてきちゃったな〜ってなったの。もう配信終わっちゃおっかな〜ってさぁ。

 そしたらねぇ、そんなタイミングで周りの景色が変わったんだよね。エリアが変わったってのかな?


 遺跡っぽい造形だったデザインがね、生き物の体内みたいになったの。壁とかピンクのプニプニがどっくんどっくん、って脈打っとる。きもっ。


【ムラクモちゃん無表情だけど、一刻も早く帰りたいって気持ちがにじみ出てて草】

【まぁ、ここキモいしな。気持ちは分かる】

【どんなモンスターが出るかわからんし、いつでも逃げられるようにしておいた方がいいんでない?】


 生理的に無理なので〜。

 いや本当に、ここマジで生理的に無理なんで、実家に帰らせていただきますわっ!

 そうと決まれば、こんなところに長居は無用だ! くっ、俺は先に戻るぜ! こんなところで死ぬなんてゴメンだっ! うぞろぞろーっ! ぎゃあーっ!

 ……じゃなかった。終わりのあいさつして、配信をオフに──。


「!」



【え?】

【あ】

【ムラクモちゃん!】



 この時。懐かしいにおいが、脳みその裏っ側を突き抜けてった。

 地球にいた頃に。魔法少女をやっていた頃に。クソったれの侵略者共の相手をしていた頃に──。


「──ッ」


 飽きるほど嗅いで、日常みたいに慣れ親しんだ、『死のニオイ』だ。

 背筋が鋭く冷えて、視界が急に明度を上げた気がする。……久しく感じる死の気配に、もしかしてわたしは興奮しているのか?

 ……どうでもいい。


 振り返ってみると──ソコには。

 鎌を振り上げて迫る巨大な影が、わたしの首を狙っていた──。

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