【速報】はじめてのくえすと・1
わたし、華亥ムラクモ♡ 友達一人増えたよ! リア充街道まっしぐらの女の子♡
今日のムラクモちゃんは一味違うぜ!
なんといっても友達と街を練り歩くだなんて超高位レアリティイベントの真っ最中なんだもの。ほら見て! みんな見て! 銀髪ミステリアス美少女わたしの隣を歩いてる、金髪セレブリティ美少女はムラクモちゃんの親友ですよ! 人生初の大親友なの! ……ホントぉ? ペットのチャリクモちゃんと、飼い主のじょーちゃんの間違いでは? キサマこの野郎! 言っちゃいけないことってあるぞ! ブロークン・ハーツ(笑)。
「ちゃーちゃん! 次、これをご着用になって!」
「……おけ」
ドールメイキングWITHムラクモちゃん……かっこよく言っちゃった。着せ替え人形扱いわたし。
わたし的に服って、着れさえすればなんだっていいものだから……コダワリって特にないのよね。かわいい服着てたって、それで宇宙ムシケラが容赦してくれるわけでもなかったし……。大親友兼、飼い主ちゃんには悪いけど、服屋巡りって正直、そこまで楽しくはない。
……でも新鮮。おじょー様はテンション爆アゲって感じでアレコレ世話を焼いてくれるし、店員もチヤホヤしてくれるからね。
かわいいかわいいって、賞賛の嵐が……ンー。気持ちいい! ……わたしの天職って暴力装置でいることだと思ってたケド、実は顔面偏差値の高さを活かしてヒモになるって方向性もあるのでは!? キャームラクモちゃんったら最低! ざしゅー。さらばムラクモ、地獄で更生しろよ! ……うん。慎ましく生きましょう。
猫かわいがり呉服店が終わると、次はお高そうなレストランでランチ。店員さんの「場違いな格好しやがって……帰れよ」って感じの視線をスルーしつつ、ふかふかソファーへヒップアタック! ぽよぽよんっ。なんてこった、こんな柔らかい椅子、我が人生においてもついぞ出会うことはありませなんだ! これほしい! ムラクモタワーに置きたい! 諦めたまえ、空き地ホームレスには過ぎたる夢ぞ。クッソー、見てなさいよ! いつか必ずげっちゅする!
そんで料理。出てくるヤツはなんか見たことない感じのセレブ御用達メニュー。いいの? ねえいいの? ムラクモちゃんがこんなの食べちゃってもいいの?
はい、ぱくー。
……。
「うーん……」
「あら、お口に合いませんでした?」
「ん……んー。……なんか、味うすい」
「貴族は健康志向ですからねぇ……実はわたくしも、昨日の屋台さんのお料理の方が好きですわ」
えぇ……金持ちって、常に油ギッチョンチョンのこってりフルコースを食べてるもんじゃないのん? 貴族(薄味)ってどんなの? 「ククク……それでこそだね、最強とやら。これからも程よい無能でいてくれたまえよ」とか言ってくる? ……ダメだ! ムラクモちゃんの知る金持ちイメージが“協命機関”のギットリおじさんしかないせいで、健康志向貴族が全然思い描けない! もうっ。だからもっと人と関わんなきゃダメって言ったのに! ……はいはーい、猛省しておりますぅー。なんつって。
お貴族様の生態にはちょっと興味あるけど……まあいいや。どうせこの先、関わり合いになることなんかないんだろうし。
───
んで、次の日。
勤勉なムラクモちゃんは今日もムシケラ千切りアルバイトに精を出しますよ! あら、やる気ね。 もちろんでございますわ! おいしいご飯に、竹馬の友。さらにはムラクモタワー(石ころ)まで所有してるとあっては、人生バラ色ってもんでしょ! へへへ……ようやく俺にもツキってやつが回ってきやがった……。おい、ムラクモ! 上から来るぞ! え!? ばーんっ。ムラクモは死んだ。
……そんなことある? あるかな? あるかも……? 青天の霹靂直撃系わたし。
で、メガネさんギルド。ダンジョン穴のところに行くと、突き刺さる視線たち。ふ、人気者はつらいぜ。
おはようございます! こんにちは! みんなのアイドルムラクモちゃんの登板だーっ! さっそく出たぞ! 魔の剛速球、キルゼムオール弾! ぐああーっ! おっとバッタームラクモ、耐えられないーっ! どかーんばきーん。……ワタシ探索者ネ。アヤシクナイヨ。
……お前はいったい、何の話をしとるんだい?
はい。
今日はねぇ、気分を変えてクエストを受けてみようかなって思いましたの。ダンジョンばっか潜ってたら、湿気で頭にキノコ生えちゃいそうだし。ムラクモダケ。まあ、なんておいしそうな菌糸類なのかしら! ぱくーっ。わ! 毒があるっ。知能がムシケラ並になってしまう呪いの毒だ! ……イヤなキノコだなぁ。
ということでね、今日は観光がてらクエストを受けようってワケ。
人でごった返すホームを直進直進。見たかどっこい、これが俺の生き方だ!
そんでね、うん。依頼板の前にたどり着いてから気付いたんだケド……。
わたし字が読めないじゃん! かーっ! これだからムラクモちゃんは肝心な時に役に立たないって言われちゃうのよ! 何をぉ~! ムラクモちゃんだって頑張ってるでしょ! ならば1+1──答えられますね? もちろん! スマイルだ! 2ッてね。……うん。次行こう。
「あ、ムラクモさん。今日もダンジョンですか?」
「……字、読めない」
「は? 何を言って──……あっ、依頼板のことですか。というか、ちゃんと口で言ってくださいよ。アレアレって指差されてもわかりませんって」
はあ、とため息メガネさん。よせやいよせやい、てやんでぇべらぼうめぇ。ほめられたってなんもやれるもんはないんだぜぇ。なんてこった! ムラクモちゃんの面の皮はアザラシの皮下脂肪よりも分厚いぞ!
ほら読んで、早く読んで、ムラクモちゃんにお仕事を斡旋するのだ! ……態度デカいわね、何様ですか? それがし、ムラクモちゃん様にて候。
「ん。お散歩ついでにやれるやつがいい」
「……くぅ。舐めとんかコイツって叱りつけたいのにぃ……。実力“だけ”は本物だからできない……っ」
「地道な作業でもいいよ。飽きるまでは頑張る」
「こ、この小娘……っ!」
ちょ、怒んないでよ。ムラクモちゃんに悪気はないのよ。ただ……自分に正直なだけ、っていうのかな……。ちょっと人とは違う価値観、っていうの? センスが違うっていうか? にじみ出ちゃったんなら悪いことしちゃったっていうかぁ~。……ムッカァ。ちょっとうざいですわね、こいつ。ウザクモちゃんには永遠に眠っていてもらいましょう……くらえ! 脳内フラッシュパンチ! ギャース! ふ、悪は滅びた。
「ふぅ。……わかりました。この依頼なんてどうですか? 『クオイ草の採取』。採取地はそう遠い場所じゃありませんし、必要数も少ないです。まあ、報酬も雀の涙ですが……」
「いいね。受けたい」
「承りました。手続きをしますから、少しお待ちくださいね」
いやあ、ワクワクしちゃいますね。ここからムラクモちゃんの冒険は始まるんだ! 華亥ムラクモのお散歩クエスト。……うーん、牧歌的だぁ。




