【悲報】魔法少女 異世界へ追放されちゃう件
わたし、華亥ムラクモ♡ 自分語りするのが大好きな、今をトキメク女の子♡
はっきり言おう。
わたしってすごい。なんていったって腕っぷしの喧嘩じゃあ負けなしだし、ゲボヘドロのインセクト野郎に撥ね飛ばされても大丈夫だし、天才だし、あとは……なんかすごいしえらいしつよい。
わたしのどこがどうすごいのかって、具体的にいうなら生まれて今まで、本当のホントに負けたことがない。……腕っぷしの戦いに限ってってことにはなっちゃうけど──。
でもでも、生涯無敗だってのは真実で、人間同士のかわいい殴り合いから、腐れ外道の怪物との生死を賭けた殺し合いまで、手広く幅広くやり合ってはわたしは勝利してきたし、いろんな人のソンケーやショーサンを集めてきた。
そんなもんだから、私のほうもついつい調子に乗っちゃって……。
あるでしょ、ほら。思春期になると発症しちゃうやつ。わたしもソレにかかっちゃって。今じゃあ黒歴史ってやつなんだけど、ヒーローなんか気取ってた時期もあったの。
「わたしが強くてえらくてすごいのは、みんなを助ける使命を持って生まれたからに違いない」
なんてね、イタいでしょ?
こんなイタイタしいことを本気で考えて、めっちゃ鼻につくキモい言動を繰り返したりなんかしちゃって。
で、若さ特有っていうのかな、変な全能感。あと、ソコから来る妙な使命感だよね。そんなのに突き動かされた結果、世直しを気取ったりなんかしちゃってさぁ。
……やばいよね。
普通なら、子供のお遊びで終わった話なんだろうけど、わたしって、ガチのマジにナチュラルボーンでフィジカルなモンスターだったから、結構シャレになんない感じの被害を出しまくったりなんかもしちゃって。
そんな時だよね。“協命機関”だなんて、いかがわしい組織に目を付けられちゃったの。「あなたをスカウトに参りました」って感じにね。
っていっても、その“協命機関”ね。コレ自体は別に裏社会に潜む反社会的な人たちだとか、世界征服をもくろむ悪の組織だとかそんな怪しいことはなくって、わりと有名な企業がやってる──人気取りをするところなの。
例えばさ、アイドルだとか、配信者だとか、そんなのあるでしょ。信者を集めてお金儲けする人達。それと一緒。じゃあ、なにがいかがわしいのって……扱ってるのがアイドルなんかじゃなくって、魔法少女やヒーローだってこと。
広報が目的のくせして、武力を保持してるんだよね。……頭おかしい。
で、その頭のおかしなところがやってる魔法少女業ってのが、頭ハッピーセット黒歴史ワタシを思わず正気に戻しちゃうくらいにヤッバいブラックアルバイトだったって話。
魔法少女の──もしかしたらヒーローの人たちもかもだけど、扱いって基本的に悪い。
まずねぇ、人権がない。
お給金もお休みももらえないのに、そのくせ責任ばっかり重いし、当たり前みたいに命がけ。
わたしたちの敵ってね、人類を絶滅させかねない──なんなら、一歩手前まで追い詰めちゃってるような侵略者なのよ。そんなヤツらと戦争しなきゃなんないのに、ご飯は合成食のゼリーばっかりだし、寝床はタコ部屋ですし詰め。
やる気下がるよね。
しかもね、なにより気分下がるのが、機関の上層部って、別に立派な志や目的があるわけじゃないところ。
……企業倫理ってヤツ? それとも論理? どうでもいいけど、彼らはあくまでも商人で、ひたすらに利益を追求してやるぜ! ってスタンスってこと! つまりね、人類が滅ぶかどうかって瀬戸際に、コインの枚数を数えてるような人たちなの。
そんなだから、わたしたちがどれだけ頑張っても、血を流しても、その結果ムクロを野ざらしにしたって、知らんぷり。命がけの献身が報われることなんて決してない。
欲の皮が突っ張った油ギトギトおじさん達はいつだって自分の望みにしか興味がない。要するに、わたし達って欲望むき出しおじさん達の養分でしかないよねってコト。
──とどのつまり、魔法少女だヒーローだって言ったって、そんなのは単なるオタメゴカシ。字面ほどきらびやかなモノでも、華やかなモノでもない。
言っちゃえば、鼻紙なんかと変わんないんだよね、わたし達って。
よくあるでしょ。映画なんかで、
「お前の代わりなどいくらでもいるんだ」バキューン
ってやつ。ガチのマジにコレ。
そんなだから、運悪く殉職しちゃった子の扱いなんか見てらんない。
ギュッとまとめてポイっと捨てるって感じなんだもの。まるっきりゴミ扱いなんだよね。……なんていうのかな、コレ。渡る世間は鬼ばかりってヤツ? 違うかな?
そんな使い捨てワタシ達の仕事の大きなところは侵略者と戦うことだ。
当然だけど、侵略者相手に防衛戦争なんかやってると、互いに生存を賭けた競争みたくなるから、かなり大規模な戦いになる。長引くしね。だから、当たり前みたいに人が死んでく。悪くすると国も消し飛んだりする。
コレって“協命機関”が悪いんだけど、魔法少女になった子もならざるを得なかった子も、死の意識が頭から抜け落ちているコトが多い。力を得て、振り回されて、「こんなはずじゃなかった」って死んでく。
で、「人類のために散った尊い犠牲達」とかいって、上っ面だけ惜しまれつつ、実態はゴミみたいに処分されちゃうってワケ。
正直、正気の沙汰だとは思わないけど、わたし達の活躍に憧れてって、魔法少女を志す子っているみたい。……大多数は生きるのに困ってって子や、無理くり徴用された子だけど。
でも、無理ないところでもある。
“協命機関”って、広報するのが目的みたいなところあるから、定期的にやってるテレビの特集なんかじゃ、やれ誰それが怪人をやっつけましただとか、やれ事故現場で誰々を救助しましただとか、そんな上っ面のところしか報道しない。
だからね、わたし達のキレイじゃないところ……本当のホントの本質が伝わらない。
テレビの前でわたし達の戦いを知った人達には、わたし達がどこの、だれと、どんな戦いをしているのかってのがわからない。……こんなの、プロパガンダっていうんだっけ? わかんにゃい。
けど、感謝してることもある。……少なくとも、わたしは。
最初に言ったけど、わたしって強い。マジでつおい。
自慢するわけじゃあないんだけど、物心ついたばっかしの幼女時代に、宇宙ムシケラ所属のドデカいゲジゲジをぶっ飛ばしたことだってある。
で、人間社会でそんなつよつよ腕力持ってちゃうと……まあ、いいことばっかじゃないよねって話。
だから、わたしをスカウトしてくれたヒゲモジャスキンヘッドには感謝してる。……感謝してるから、キモゲジに頭から齧られて死んだあいつに、地獄でうまくやってますようにって祈っとく。
天職ってヤツだったんだろうなって思う。
同期や後輩や先輩達は、「こんなはずじゃなかった」って死んでったけど、わたしにとっての魔法少女ってブラックバイトは、掛け値なしの居場所だった。
薄気味悪いデカ虫達との気分最高のランデブーが、ただ一つ……。華亥ムラクモって暴力装置の存在を許容される意味だったんだって思う。
だから──。
壊れるべきタイミングを喪った兵器の行きつくところなんて。
「──被告。華亥ムラクモを次元追放刑に処す」
きっとまあ、こんなもんなんだろう。




