第99話 お疲れ様
リント王国の国王陛下とも念話師さんを挟んだリモート謁見も予定外に加わり、本当に面倒臭い謁見となったのだが、念話師の女性が、
「陛下が追放を解いて爵位も与えるので戻ってきてくれぬかと…」
とリント王の言葉を伝えてきてくれるので、
「大変有難い話ですが、そのお気持ちだけで…」
と、特に必要とされていないリント王国へ戻るのもだが、ついでに面倒な爵位なんて与えられるのもまっぴらなのでキッパリ断ると、念話師の女性は、
「陛下が、本当にすまなかったジョン殿。 今さら爵位を剥奪し、財産を没収した後に強制労働の罰を与え、更に追放した件を水に流して欲しいなど…無理か…と言ってます…」
と伝言してくれたのであるが、この念話師さんは僕の一件を知らなかったらしく、
『えっ、何それ…』
見たいな驚きの表情になり、僕自身も、
『改めて聞くとかなりヒドイな…』
と感じる程に、しっかり罰を与えて放り出した人間が有益と解れば、必死で引き戻そうとする自国の国王陛下に彼女はドン引きしているのか、
『やれやれ…』
みたいな顔をしながら、暫くリント王と念話ギフトで話しているらしく、
「えっ…」
とか、
「承知しました…」
などとブツブツと独り言のように呟くと、彼女は死んだ魚の様な瞳で、
『陛下が、心からの謝罪を…』
と言って土下座モーションに入ったので、僕は慌てて彼女を立たせて、ニルバ国王陛下に、
「ちょ、陛下からリント国王陛下に流石にこれはやり過ぎだと言って頂けないでしょうか…」
とお願いすると、ニルバ国王陛下は嬉しそうにエドモント宰相様に、
「彼女に椅子を貸してやってくれ…少しリント王にビシッと言ってやるとするかな…」
というと、念話師の彼女越しの首脳会談が始まったのであるが、ニルバ国王陛下は、
「足元の賊の集団も満足に取り締まれず、その集団の切った尻尾にまんまと翻弄されて賢者を自ら叩き出したというのに、今更派遣した念話師に土下座させたぐらいで許されるとは思っておられるのか…と余が言っていると伝えてやれ」
と、彼女がちゃんと土下座をした事にした上でニルバ国王としてチクリと抗議をして下さったのであるが、その後、国王陛下同士でかなり突っ込んだお話をされ、間に挟まれた念話の女性は暫くすると完全に灰の様になりグッタリする羽目に…
『国王陛下の口喧嘩道具にされたんだもんな…お疲れ様だよ…』
と僕もだが、この部屋中の全員が彼女の健闘を讃える中で、ウッキウキのニルバ国王陛下が、
「ご苦労であった、ゆっくり休まれよ」
と念話師の彼女を労った後に、
「ふぅ~、言ってやった、言ってやった」
と満足そうに伸びをしており、宰相様もだが、大臣のお二人まで、
「此度の戦は完全勝利でしたな…」
などと笑っている…そして僕が、
「戦?!」
などと驚いていると、国王陛下が、
「何を驚いておる? そなたへの褒美としてリント王国と仲良くするにあたり、リント王と『なんでも言い合うこと』を戦争代わりにして武力衝突を避けたというのに…」
と仰り、ゴレア軍務大臣様も笑いながら僕に、
「一度は殴りあった仲ですが今では陛下同士は友と呼べる関係…それを更に強く結びつける一因としてジョン殿が現れてくれ、ニルバ王国とリント王国の絆が、先代様の時には考えられないまでに…」
と、どこぞの昭和の番長みたいな理論で、現在のニルバ王とリント国王陛下の仲を教えてくれた後に、
「だから陛下にジョン殿をニルバ王国貴族にと推薦したというのに…」
と、チクリと嫌味も頂いたのであるが、ゴレア様の隣で、ナバール様も、
「我輩も、ゴーレムマスターや魔法系ギフト保持者の将来を明るくし、技術の発展や研究者や技師という国の未来を作る若者の手本となるジョン殿を是非に我派閥に迎えたいと…」
言い出し、今度は大臣の二人が僕をめぐって険悪なムードになると、勝利の余韻でハイになっておられるのか陛下が
「おっ、今度はジョン殿の居場はどちらの派閥が相応しいか二人で話し合いか!?」
と、楽しげにされており、僕は思わず、
「あの…陛下…」
と恐る恐る、
『カインお坊っちゃまは慣れているのか顔色ひとつ変えておられませんが、もうゼルエルガさんとかクリスト様がウンザリされてますし…』
みたいな雰囲気を醸し出すと、宰相様はソレに気が付いてくださり、
「陛下、そろそろ…」
と謁見の話に戻してくれ、
「おっ、そうだな」
と言った陛下は、
「では明後日のゴーレムの模擬戦の前にカインの魔法を見せてもらうとして…」
と予定をのべた後に、
「それで…話は聞いておるが…クリスト殿ぉ…余が言うのも何だがゼルエルガ殿と…その…」
と凄く頑張って言葉を濁していると、クリスト様はニッコリと笑いながら、
「はい、ゼルエルガさんが良いんです」
と婚約についての報告をされたのであった。
どうやら亡くなった先代の王様とゼルエルガさんは同い年だったらしく凄く微妙な言い回しで、陛下は、
「ゼルエルガ殿…仲が良かった父上も天界より祝福しているはず…」
などとゼルエルガさんを祝福しつつも、クリスト様には漢としての器の大きさの様なものも感じたらしく、
「今晩、少し二人で酒を飲まぬか?」
とサシ飲みのお誘いをクリスト様にしていたのであった。
それから、
「では、ジョン殿への褒美についてだが…」
という話題になり、僕は慌てて、
「いや、立派な石壁を陛下からの依頼でゼルエルガさん達に建ててもらいましたので…」
と断ったのであるが、宰相様が、
「アレとコレとは別の件ですので…」
と言い出し、どうやら貴族に推薦した二人の大臣さんのメンツが僕が貴族を拒否した事で潰れかねないらしく、軍務大臣様と文部大臣様に直接ナニかをおねだりして、
『爵位ではなくて褒美を与えた』
という事にしたいそうで、
「いえ、お構い無く…」
と僕がそれも断ろうとすると、また大臣様達が、『金』だの『嫁』だのとオークション形式で僕に褒美を与えようとするので、僕はウザリしながら、
「お金は稼ぎますし、嫁はまだ必要無いと…いう事にしていますから…」
というと、
「では、何が望みだ?」
「可能な限り応えるから何でも言ってくれ!」
などと言って下さったので、
『さて、どうするか…』
と咄嗟に考えた結果、
「そうだ、小さくて構わないので平民も通い易い学校をカサール子爵領にお願いします」
とお願いしたのであった。
これならばあの地域の子供達が遠い大都市にある学校に行くという金銭的なハードルも下がるし、剣術など武器系ギフト持ちの平民が兵士や騎士になる為に軍務大臣様の力で講師の派遣をお願い出来るし、勿論『学校』なので文部大臣様の顔も立つはずである。
僕の隣でそのお願いを聞いたクリスト様が、
「いや、折角の褒美でウチに学校をお願いしなくても…」
というが、僕の、
「カサール子爵家には大変お世話になっておりますし、カイン様が言っていた様に試験にパスすれば進級は勿論のこと、卒業も可能という事ならば我が家の子供達も入学には少し年齢的に遅いですが歳相応の学力は身につけております。 なので希望すれば通わせてやりたいという僕の家族としてのワガママですので…」
という、それっぽい理由に納得してくれ、
『よし、これで後はカサール子爵様に丸投げ出来る!』
と安心した僕はついでに、
「そうだクリスト様。 工事用ゴーレムの話と、それを扱える様に決められた業者に免許なんかを出す件もですし、ゼルエルガさん一人では魔力供給魔道具の使用許可試験や訓練が大変になりますから軍務大臣様も文部大臣様も居られますし、陛下にニルバ王国にてゴーレムの免許と魔力供給魔道具の免許についてお願いしましょう」
と提案してしまい、結局その日はほぼ1日潰れてしまったのであった。
『まぁ、面倒臭かったが色々と丸投げ出来て良かったとしようかな…』
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