第98話 国王陛下との謁見
お城の客間のベッドは大変寝心地は良かったのであるが、
『明日は謁見か…』
と思うとなかなか寝付けず、やっと眠れた時には明け方であり、少々寝不足気味に部屋の担当メイドさんに起こされた僕はボーっとしたまま、
「午前中に陛下との謁見の予定でございますので…」
などと言われながら洗顔等を済ませたのであるが、その後の朝食は緊張と寝不足から全く食欲がわかず、テイカーさんとバルディオさんに、
「大丈夫ですか?」
とか、
「どこか具合でも?」
と心配されたのである。
『いいよなぁ、バルディオさんとテイカーさんは謁見しなくて良いんだもんな…僕も別室で待機組になりたいよ』
と思いながらも、
『しかし、心配されるほどの顔で謁見すれば失礼にあたるな…』
などと考え、グッと背筋を伸ばし気合いを入れた僕は、
「大丈夫…行ってくる!」
と二人に告げてクリスト様とゼルエルガさんにカイン様の貴族関係者組と合流した後に謁見の間へと誘導されたのであった。
お城の長い廊下を歩きながらクリスト様は、
「ジョン君、眠れたかい?」
などと聞いてくれるのだが、国王陛下の親戚であるカインお坊っちゃまの前で下手に、
『いやぁ、中々眠れなくて…』
などと言えば、城のベッドに不満があったみたいに陛下に伝わると嫌なので、
「はい…」
と、笑顔で答えてはみたが、早く謁見などという面倒臭いイベントを終えて昼寝でもしたい気分である。
国王陛下の前に出るのに仕方なく着ているカサール子爵様のお屋敷のパーティー用に仕立てもらった普段は着ないよそ行きの服も肩が凝りそうになるしで、
『早く終われ、早く終われ…』
と謁見の間へ到着する前から祈っていたのであった。
そしてやっと通された部屋は馬鹿デカいお城だけあり謁見の間という場所もとても広い空間であり、門番の様に立つ騎士団の方々の前を通り抜け、足元に敷かれた真っ赤な絨毯の先には見知らぬ男性が二人立っており、その奥に高そうな椅子が並んでいる。
『玉座より手前に居るってことは、あの二人が国王陛下ではないんだろうな…』
と思いながらクリスト様とゼルエルガさんの後ろに隠れるように進んでいると、カインお坊っちゃまが小声で僕に、
「ジョン殿、向かって右が軍務大臣ゴレア様で左が文部大臣ナバール様です」
と教えてくれたので、
『あぁ、カサール家の所属派閥のトップと、元は先生だったゼルエルガさんの関係大臣さんか…』
と一安心していると彼らは、
「よく来てくれたジョン殿」
「噂はかねがね…会えて嬉しいよジョン殿」
とクリスト様やゼルエルガさんを差し置いて同時に僕に声をかけた後に、お互いがお互いを軽く睨みピリピリムードである。
『これはどちらから声をかけるかですら角がたちそう…』
とアワアワしている僕に気が付いたのかクリスト様が、
「お久しぶりでございますゴレア様、こちらがジョン殿で…ジョン殿、こちらが我がカサール家が代々お世話になっているゴレア様です」
と紹介してくれ、続いてゼルエルガさんが、
「ナバール様、こちらが報告にあげました魔力供給魔道具の開発に携わり、現在は生産も請け負う商会の長でもあるジョン殿です…」
と流れを作ってくれたので、ゴレア様に代々お世話になっているカサール家に現在お世話になっている最中の僕は、ゴレア様からナバール様という順番で無事にご挨拶を終え、
『もう、だから貴族社会って…順番とかそんな小さいプライドでピリピリしないでよ…』
と、呆れながらもホッとしたのもつかの間、今回のメインイベントである国王陛下のおなりとなったのである。
「国王陛下が入られます!」
との宣言の後に、騎士の方々が入室して配置についた部屋に豪華なマント姿の男性と年配の男性が現れ、部屋の空気がピンと張り詰めたかと思うと、マント姿の男性が玉座の前に立つと同時に、
「あぁ、良いから、良いから…楽にして」
と言いながら椅子に腰掛け、隣の年配の男性が、
「陛下、そんな事では威厳が…」
と、注意している声には聞き覚えがあり、
『あっ、前に通信魔道具で話した事があるエドモント様っていう宰相閣下か…』
などと納得している僕の目の前では、暫く、
「こんだけの人数にこの重いマントまで引きずって威張る必要ある?」
と呆れる国王陛下と、
「しかし、普段の陛下を知らぬ方々にはちゃんとした国王陛下という姿を見せておかないと、民に示しが…」
と、はじめて謁見する人間にはこの豪華なマント姿をみせる決まりがあるらしく、部屋を見回すとどう考えても陛下とはじめまして状態なのは僕だけであり、
『僕の為にモメないで…』
と、人生で一度は言いたいセリフが頭を過ったが、
『今はその時では無いな…』
と言わずに我慢していると、大臣のお二人が、
「陛下…」
「宰相殿も…」
とやんわり中に入って止めてくれ、ようやく謁見が開始されたのであった。
初めはクリスト様からのカサールで作った新型ゴーレムの献上の件に始まり、カサール家の秘密兵器であったバーストシリーズの報告と開発者であるライト兄さんからの国家錬金術師に選んで頂いた感謝の言葉と、王家にバーストシリーズのサンプルと合わせライト兄さんが所有していた権利を献上する事で、王家でバーストシリーズの魔道具の生産や改良が可能となったのである。
『まぁ、ライト兄さんは発明したいのがメインだし、権利は要らなかったんだろうが…知らないよ…』
と、バーストシリーズの有用性を知っている僕としては、
『そんな凄い物をプレゼントしたら王家が本気のお返ししてくるよ…』
と、ライト兄さんの今後を心配するのであった。
その後にクリスト様からはゴーレムマスターやゴーレムパイロットのカサールでの訓練の報告に続き、ゼルエルガさんの国王陛下からの依頼で我が家の周辺エリアの石壁の設置が完了したという報告に合わせて、魔力供給魔道具にて発動出来るようになったカインお坊っちゃまの魔法が素晴らしいという報告が終了すると、国王陛下が、
「それで、そちらからの報告は以上かな…では、次は余の番だな」
と言って僕の方を見た陛下が、
「リント王国の国王殿経由であるが、バートン・オルト・ペア子爵からそなたに伝言を預かっておる」
と、どうやら陛下は、
『バートン様と仲良くしてあげて下さい』
という僕のお願いを聞いてリント王国側と手紙のやり取りをして下さったらしく、
『ジョン君の父上を操っていた貴族が判明したのであるが、どうやらその貴族もリント王国に巣食う大きな悪の一部らしい…すまない…しかし、今回の件により君の罪が不当に重い物と国王陛下も認めて下さった…どうだろう…ペアの町に戻って来ないか?』
というバートン子爵様からの伝言を僕に伝えてくれたのであるが、
「して…如何する?」
と聞く国王陛下に僕は、
「いや…如何もなにも、ペアの町はバートン子爵様が居れば大丈夫ですし、国外追放という形でしたが、今はペアの町より僕を必要としてくれる場所が有りますので…」
と、ペアの町やリント王国に未練が無い事を伝えると国王陛下が、
「では、国外追放が解けたとしても我が国に残ると…」
と念を押され、僕が
「はい…そのつもりですが…」
と答えると陛下は物凄く嬉しそうにされ、隣のエドモント宰相様まで楽しげに、
「これは私共からリント王国に伝えては力づくで止めたと思われ国際問題になりかねませんな…」
と言ったかと思うと、
「リント王国から来られている念話師殿を…」
と騎士の方に指示を出した後に僕の方を見てニッコリと微笑み、
「ではジョン殿、念話師を介してですが、リント王国側に帰らない旨を…」
と丸投げされ、僕はこの後リモートでリント王国の国王陛下と念話ギフト保持者経由でお話する羽目になったのであった。
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