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修復ギフト持ちの貴族の息子でしたが追放されました  作者: ヒコしろう


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第92話 見逃し配信

さて、午前中にカサール子爵様達に呼び出され、春に王都に行く事が決まったのであるが、


『そんな事はもうどうでも良い…』


という気分である…何故ならば、自宅に帰ると既に皆がお祭りムードであり、その輪の中心にはライト兄さんとイデアさんが居て、皆口々に、


「良かったね…」


とか


「おめでとう…」


などと言っている。


その状況を見て僕は、


『あんな呼び出しなんて無視すれば良かった…』


と本気で後悔する事になったのである。


つまり、僕はあれほど楽しみにしていたライト兄さんの一世一代の告白を家族の中で唯一見逃したのであったのだ。


昨日遅くに硬化コーティング液剤が完成し、倒れる様に眠りについたライト兄さんが今朝方遅めに起床し、護衛騎士さんから僕の、


「イデアさんが帰ってきたよぉ」


という伝言を聞いて飛んで来たそうなのであるが、現場に立ち会えてない僕に、普段は各自の作業などで母屋にあまり居ない皆さんまで、


「母屋でメリーさんとお茶を飲んでた時に良いものが見れました」


などとニコニコで先ほど居間にて起こった男女の物語を見守れた事を教えてくれたのであった。


本日は護衛任務もなく女の子チームと一緒にちびっこチームの面倒を見ていたイデアさんはマーチンの町で買った可愛らしい服装であり、伝言を聞いてノープランだが駆けつけたライト兄さんは、普段と違うイデアさんの姿に、ここに来る途中で考えていた台詞まで吹っ飛んだ様子で、居間の入り口辺りで固まっていたらしく、心配したイデアさんが、


「大丈夫ですか?」


とライト兄さんに近寄ったかと思うと、いきなり、


「綺麗です…」


とライト兄さんが呟き、そこからは怒涛の流れになったのだそうで…


『って、その怒涛の流れが詳しく聞きたいのですが!?』


とは思うが、祝福ムードの居間にてこれ以上根掘り葉掘り聞くのは野暮というものであり、バルディオさんまで、


「良かった…本当に良かった…」


と噛み締めるように呟き、


「主殿のおかげで…感謝を…」


と男泣きしはじめるので、今一つこのビックウェーブに乗り切れない自分がいるが仕方なく、


「良かったですね…」


とだけ伝え、


「ラベル先生にお手紙を書かないといけませんね」


などとウキウキのメリーさんが思い出した様に、


「そうでした、坊っちゃま…カサール子爵様のお屋敷には何の呼び出しでございましたか?」


と聞くので、僕は、


「あぁ、王家から爵位を僕にって言って来たからお断りしておいたよ…それより、春先に王都に行く事になったから…僕の錬金術の師匠であるエルバート師匠がカサールに帰って来るらしくてね…」


と話したのであるが、お祭り状態の居間が一瞬静寂に包まれ、居間の端でベルが、


「ライトお兄ちゃんとイデアお姉ちゃんが大好きですよ~ってなってね…」


と、まだ幼いちびっこ達に向けて先ほどの告白の件を説明している声だけが聞こえてきたかと思うと、次の瞬間、


「えぇ!」

「何で断りましたか?」

「主殿…」

「旦那様!?」


と一斉にツッコミを入れられたのであった。


「いや、どうしたの…皆、怖い顔で…めでたいんだから…」


と、あまりの迫力に話を反らしたかったのであるが、主役のイデアさんまで、


「主殿、なんで爵位を断られたのですか?」


と聞いてくるし、ライト兄さんまで、


「師匠が帰ってくるの?!」


と慌てているのである。


「え~っと…爵位なんて無くても今の生活で十分だしね…それよりライト兄さん、春に迎えに行って師匠を連れて僕が帰ってくるのは夏前だから、それまでに今回無駄に広くなった我が家の敷地に家でも建てます? ほら工房は師匠に返さないと駄目だし…」


と提案すると、ライト兄さんは、


「ジョンの『それより』の基準が分からないが…工房は師匠に返さないとな…」


と言っている所にバルディオさんが、


「娘のイデアはもう歳も歳だから…ライト殿が良ければ…」


と、交際をすっ飛ばして同棲どころか結婚を提案しており、


「いや、そんな…いきなり…良いんですか?」


などとモジモジしはじめるライト兄さんにイデアさんが、あの日ベーレダンジョンで手に入れた絆の指輪がはまった手の甲をライト兄さんに見せながら「ニコッ」と微笑んだ途端にライト兄さんは、


「はい!」


と直立不動の姿勢をとり、


「では、結婚パーティーは師匠が戻られてから行いますが、新居の建設から始めたいと思います!」


と宣言をしたかと思うと、ライト兄さんは僕に、


「という訳だから、土地を分けてくれないかな…代金は払うから…」


と頭を下げるので、僕は、


「お金なんて要りませんよ…ただ…」


と、ライト兄さんの耳元で小さく、


「後で、どんな告白だったか事細かに…」


と、ライト兄さんのギフトの力で細部までしっかりと先ほど見逃した告白の一部始終を本人解説のもと僕だけの為に報告してくれる事を条件に出したのである。


ライト兄さんは真っ赤になりながらも、


「わ、わかった…」


と言ってくれ、絆の指輪で心が駄々漏れのライト兄さんからの心の声を聞いたらしいイデアさんまでも、首元まで顔を真っ赤に染めながら、


「主殿がお望みならば…」


と何やら決意をした表情になり、ライト兄さんが、焦りながら、


「えっ、ここでもう一回ですか?!」


と、どうやらイデアさんから本人出演による再現放送を指輪越しに提案されたらしく、僕は慌てて、


「話だけで良いから…」


と、これ以上全てを鮮明に思い出せるライト兄さんの便利であるが、ある意味難儀なギフトにて変なトラウマが残らない様に願い再現だけは阻止し、


『わかってはいたが…これは尻に敷かれるな…』


と、確信しつつも兄弟子の人生の大イベント成功を祝う僕であったのだが、しかしその後、別室にて僕は胸焼けしそうな程の二人の告白劇を聞かされお腹いっぱい状態となっている。


どうやらライト兄さんがポロっと、


「綺麗です…」


なんて言ってしまったから、


『もうこのまま告白しちゃえっ!』


となり、イデアさん的には、


「私なんかがこんな格好…変でしょ…」


などと、ベル達に選らんでもらったスカート姿を恥ずかしがっているのを見たライト兄さんが、


「本当に綺麗です…いつも綺麗ですが、今日のイデアさんも…好きです」


と、言ったのちに、


「もう、冗談は…」

「冗談じゃないです!」


みたいなやり取りを何ラリーかした後に、


「俺…昔から、いざという時に上手に話がまとめれないので…」


と、ベーレダンジョンで手に入った絆の指輪という3メートル圏内であれば対となる指輪を身につけている者同士の考えている事が伝わるという、戦闘中であれば無言でも意志疎通が出来るマジックアイテムであるが、これが恋仲になった者同士であれば、嘘発見器や自白剤的な役割となりこの指輪のせいでイチャイチャパーティーを解散した冒険者が何組居たか分からないというある種の呪物であるが、ライト兄さんは、


「俺がイデアさんを思う気持ちが嘘じゃないって知って欲しいから…」


と指輪の片方をイデアさんに差し出し、その指輪が何かというのを傭兵であったイデアさんも戦場で使っていた傭兵仲間が居た為に理解しており、それからは居間の皆に注目されながら黙って見つめ合う二人というシーンであるが、何故かイデアさんが、


「主殿には正確に報告したいので…」


と、変な責任感から半泣きのライト兄さんから指輪越しに交わされた二人だけの愛の言葉のやり取りまで聞かされた僕は、


『もう止めてくれぇぇ!』

『甘い、甘すぎて糖尿になる…』


と、少しずつメンタルを削られる羽目になったのであった。


『二人ともお幸せに…そして、もう面白がってイデアさんとライト兄さんの恋バナは聞かないと誓うよ…イデアさんが本気の報告を始めるから…』



読んでいただき有り難うございます。


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