第87話 出頭
ご丁寧に騎士団長さん自ら部下を引き連れ宿屋に来ており、
「僕一人の為にこんな人数…」
と呆れてしまうが、騎士団長は、
「いえ、主は出来れば皆様を…」
と言いかけたところで僕は、
「これ以上ウチ家族を傷つけるというのか!」
と騎士団長の言葉を遮り、
「話も罰も一人居れば十分だろ!?」
と言って馬車に乗せられてお屋敷まで来たのであるが…
『これは一体どういう状況なのだろうか…』
という、光景が…パーティーなどもう終わっているかと思っていたが、まだ会場にはパーティー参加者達が残っており、
「子爵様、どうなさるおつもりですか?」
と、子爵様を取り囲んでいるのである。
『はぁ…また牢獄かな…』
と覚悟をしていた僕はパーティー会場である広間に来た事にも驚いていたのだが、尋問を受ける雰囲気でもない事にも驚き、
「これは…」
と思わず声を出す僕の隣の騎士団長が、
「ジョン殿をお連れしました!」
と叫ぶと、会場の客達が振り返り僕たちを見る。
するとマーチン子爵様が、半泣きで、
「いや、待ちかねたぞぉ…」
と騎士団長の言葉に安堵したのであるが、すぐに子爵様の隣に居た長男さんが、
「父上、まずは竿師殿に謝罪からです!」
と、僕の事を「竿師」と呼びながら父親を叱っており、長男さんの周りにはよく知るグラーナ狩り名人チームが勢揃いしていたのであった。
確かにパーティー前の報告会から居た名人チームではあるが、マーチン子爵家の方々とご挨拶をした時には長男さんは、
「あなたがジョン殿ですか…」
と普通な感じであり、全く僕を「竿師」と呼ぶメンバーとの接点が分からないままではあるが、とりあえずマーチン子爵様の居る場所まで進み、
「先ほどは大変失礼を…」
と頭を下げる僕にマーチン子爵様は、
「止めてくれジョン殿、頭を下げるのは私の方です…この通り…」
と頭を下げてくれ、その後に皆さんからの話で、僕たちが帰った後でとりあえず何が有ったか聞いたところ、あの小太りな次男坊は【人物鑑定】という教会や裁判所に国境の関所にて重宝されるギフトを授かり、他人の名前やギフト、あとは称号なども見えるそうで、パーティー会場に案内されたベル達と次男坊が会って少し話したらしく、彼がベルの話から、
「本当にDランク冒険者なのか?」
と聞き、
「では鑑定してやろう…」
とベルを見て、
「おぉ、本当にウエスとタンカランの踏破とある」
と驚いていたらしいのであるが、その後に隣のララちゃんと、ターニャちゃんまで鑑定すると、
『奴隷』
という、称号が出た事により、
「なんで奴隷が我が家のパーティーに…」
というあの事件に繋がるという事なのだ。
マーチン子爵家の長男さんが、
「私が母と共に会場に到着した時には既に竿師殿が帰った後でして…」
と申し訳なさそうに話してくれたのである。
どうやら、小太りな次男坊であるマルコ少年は平民や貴族という身分にこだわりが無いお子さんだったのであるが、王都の学校に入学した時にクラスで威張り散らしていた父親が戦争で亡くなり幼くして当主となったイケイケな貴族のクラスメイトが商人の息子をバカにしているのがどうしても許せずに、イケイケに人物鑑定ギフトを使うと、名乗っていた名前とは違う別の名前が現れ、奴隷という称号まで…そして、虐めを止めさせようと呼び出した校舎裏にて、彼と言い合いになり、つい…
「お前って本名は違うじゃないか…貴族だと言って威張りちらして…奴隷の癖に!」
と、全て暴露した為に格上貴族家とバチバチの問題に発展したのである。
伯爵家当主と、子爵家の息子が1対1で話をつけようと呼び出した場所での事であり、表向きは「喧嘩」として処理されたのであるが、その貴族家は戦争に行った当主と同時期に幼くして一人息子まで病気で亡くなり、夫の兄弟に当主の座を明け渡したくない母親の策略で自分が替え玉として育てられていた奴隷だとその時に初めて知った本人は今までの行いを恥ずかしく思ったらしい。
それから彼は全てを教師に打ち明けた後に、叔父さんに当たる人に当主の座を明け渡して退学したそうで、自分が不用意に鑑定をした為にムカつく奴とはいえ退学…というか人生を狂わせてしまったという次男坊が背負うには重た過ぎる十字架に堪えきれなくなり次男坊も退学してしまった事を長男が教えてくれたのであった。
『奴隷という称号で、嫌な記憶がフラッシュバックして必要以上に反応したのか…』
と何となく察したのではあるが、
『いや、それでもララちゃんとターニャちゃんを泣かして良い理由には成らないな…』
と、改めて怒りを覚えた僕であったのであるが、今回のパーティーに呼ばれた町の有力者の中には、この秋にグラーナを狙って町に来た蛇の討伐に参加したバルディオさんやイデアさんからカルセルで我が家の一員になった時の話を既に聞いて知っていたグラーナ狩り名人会メンバーも居おり、
「マルコ坊っちゃまの気持ちも分からなくはないですが、この町の恩人とも言える竿師殿の家族への態度…子爵様が前もって彼が金の力や悪意で奴隷を購入したのでは無い事は事前に知っておられた筈…」
と、マーチン子爵様に詰めよっていたそうで、
「いや…マルコは奴隷という話題だけで興奮してしまうから…」
と親としてトラウマを負った息子から逃げたせいで起こった今回の一件らしく、僕を怒らせたまま帰らせた場合は、彼らはマーチン子爵家に愛想をつかせて、
『商人達はマーチン子爵家との取引を止め、職人達は弟子を連れて他の町に移り住むぞ!』
という条件まで提示し、長男さんも、
「グラーナ狩りの師匠達が出ていかれた場合は私も弟子としてこの家を捨てて竿師殿の元に行き、生涯をかけてバカな弟と至らぬ父の謝罪を致します」
などとよく分からない事になっていたらしく、マーチン子爵様に、
「よくぞ戻って来て下さった…この通り私の謝罪を受け取って欲しい…」
と深々と頭を下げられ、僕も、
「私の妹が息子さんに…申し訳ない…」
と子爵様よりも深々と頭を下げる事により何とか丸く収まったのであるが、問題は父親が当主として呼んだ招待客のレディーに「帰れ」などと言った次男坊本人をママが許しておらず、お屋敷横の騎士団の建物の地下牢にて頭を冷やさせているマルコ少年のケアである。
「では、ジャンピングキックをした妹の保護者として僕も罪を償いますか…」
と、マーチン子爵様と騎士団長さんにお願いして、僕もマルコ少年と同じ牢屋にブチ込んで頂き、学校を退学した者同士で腹を割って話そうという事にしたのである。
マーチン子爵様や長男さんは、止めてくれたのであるが、
「翌朝までなら何の苦でもないですし、マルコ坊っちゃまの気持ちが何となくですが分かるんですよ…まぁ、王都に問い合わせたのであれば僕の素性もマーチン子爵様はご存知ですよね…だから、牢屋なんて別荘みたいなモンですから…」
と、リント王国式の貴族の所作にて挨拶をした僕を不思議に思わない子爵様達を見て薄々僕の過去を知っているとは予想していたが、図星だったらしく、マーチン子爵様は、
「国は違えど息子と同じく学校を退学した元とはいえ子爵家のご子息からのアドバイスならばマルコも一歩踏み出せるかも知れません…どうか息子を…」
とお願いされたので、僕は、
「あぁ、宿屋に居る家族達に朝になったらカサールに出発するように言って有りますので、僕も一緒に帰るから待ってくれる様に伝言だけお願いします!」
とだけ言って、
「では、牢屋で未来ある少年と人生について語り合ってきまぁ~す」
と、名人チームや来賓の方々に手を振りながら騎士団長さんの案内で牢屋に向かったのであった。
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