第77話 一件落着
その夜、夕方に来た聖騎士団が冒険者ギルドにお揃いのフード付きマント姿でコソコソと再び現れたのであるが、僕やライト兄さんが出るまでもなく、元はAランク冒険者だった冒険者ギルドの支店長さんが、
「来るならもう少し早く来いや…こっちは明日も仕事なんだ!」
と怒鳴り、賭けをしていた冒険者達は、
「そうだ、そうだ、あと一時間ほど早く来ないから負けたじゃねぇか!」
とか、
「中途半端な時間に来やがって、あと二時間したら明け方で俺の勝ちだったのに…」
などと文句を言いながら、賭けに負けたウサを晴らす様に支店長さんと暴れたのである。
勿論、賭けに勝った冒険者も、
「ありがとよ…でも、悪いなギルドを襲撃なんかするからよ…」
と申し訳なさそうに参戦しており、いくら良い装備を持ち、ダンジョンの下層で鍛えている聖騎士団とはいえ、闇属性特化の防具と光属性の武器しかなく、回復ギフトや光属性魔法ではゴースト達とは違い生身の人間にダメージは薄く、一人また一人と無力化されて、最後には、
「よし…まぁ、聞くまでもないが、指示を出したのはあの爺さんだわな…」
と捕らえた聖騎士団のメンバーに、支店長さんは優しい笑顔で質問しているが、しっかり喉元に刃物を当てており、完全に心まで折られた騎士団のリーダーが、
「はい、ここに居る全員を黙らせ、聖女様を解放する様にと指示をうけて来ました…神官長様は教会にてお休み中です」
と、ベラベラと全てを告白すると、支店長さんは、
「よ~し、緊急クエストだ。 コイツらを檻にブチ込んでから、一緒に教会で一暴れするのについて来てくれた冒険者に、ギルドからの今日の報酬とは別に、私のポケットマネーから酒場で一杯奢るぞ」
と宣言すると、冒険者達から、
「ケチ臭いぞぉ、あと二杯はつけろ!」
などと言われた支店長さんは、
「こっちとら、安月給の僻地勤務職員なんだぜ…あぁ、分かったよ一人三杯とツマミに串焼きも1本つけてやる!」
とヤケクソ気味に宣言すると結局、襲撃のお返しとばかりに宿に泊まっている冒険者全員で教会に深夜のお宅訪問に向かい、全員を一旦拘束したのであった。
神官長の爺さんが、
「こんな事をして、カルネ男爵様が黙ってないからな…」
などと五月蝿かったので、ライト兄さんは、カサール子爵様から言われていた通りに、
「どうも、カサール子爵家のお抱え錬金術師で国家錬金術師のライトと申します…ダンジョンでは聖女とやらに命を狙われ、先ほどは追加で騎士団に襲撃まで…どうします…カサール子爵様とニルバ王国のどちらでも、そのカルネ男爵様とやらとお話してくれますが?」
と伝えるとやっと神官長は大人しくなり冒険者達にスマキにされて投獄されたのであった。
翌朝から特別報酬で潤った冒険者達でギルド酒場は大盛り上がりとなり、誰もダンジョンへ潜らない為に、冒険者ギルドも開店休業状態であったが、支店長さんだけは、
「くそぉ~、酒代で財布は空っぽになるし、今回の件の書類は書かなきゃイケないしで、私だけ大損した気分だ…」
と、ブツブツ言いながらカウンターの奥で書類と格闘していたのであった。
そして事件から2日後に、近くの町から檻馬車を含めた数台の馬車が到着し、後の事はニルバ王国の法律におまかせする事になったのであるが、ライト兄さんにカサール子爵様より通信魔道具に入った報告では、どうやら黒幕はカサール子爵様と同じく軍務大臣派閥であり、近くの町を治める貴族の子分としてチョロチョロしていたのがカルネ男爵というオッサンで、なんとパンみたいなフォルムの聖女様のパパなのだとか…
『まぁ、聖女と言っているが三十路前であるので、男爵様もそこそこの年齢なのだろう…』
という事だけは推測できるそのパン聖女のパパも現在上司である伯爵様が拘束しており、部下のしでかした事の大きさを恥じて、今回の件を最後にかなり評判の良かった伯爵様まで引退するそうである。
なので、上司を引退まで追い込んだ悪事としてカルネ男爵とやらはかなり重い処罰を受ける事は確定しており、その悪事の実行犯であったベーレの教会の連中であるが、どうやら正式なニルバ王国内の教会の組織には属していない古くから有るリント王国側の微妙に違う宗派の様な位置付けらしく、正式な教会側からのお願いにより彼らの悪事を公表してニルバ王国側の教会とは違う事を国民に知らせるそうで、
『これはどんな裁きになるかは知らないが、今後ニルバ王国で暮らすのは大変だろうな…』
と思うし、戦争中に戦力になるマジックアイテムを敵国に流していたのだから下手をするとリント王国との国際問題にもなりかねないのである。
しかし、そんな事は僕たち冒険者には知ったこっちゃ無いので、
「面倒な奴らが居なくなったから下層でマジックアイテムを狙いたいな…」
などと、酒場で燻っている冒険者の為に、
「は~い、修復ギフト持ちが居ますので、同じタイプの壊れた光属性武器をなんと1日5本までなら大金貨一枚…と言いたいところを皆様に限り小金貨五枚で引き受けますよ~」
と提案すると、酒場に居た全員が、
「マジか…こうしちゃ居られない!」
と、スケルトンナイトや壊れた武器を持っているスケルトンを狩る為に10階層へと転移する列をつくりギルドは活気を取り戻したのであった。
仲間になってくれている常連冒険者チームにも早く業火の槍を狙ったダンジョン生活に戻って欲しくて、
「僕たちもサクッと踏破してしまいましょう」
と提案して、
『明日あたりから修復で魔力を使うから今日のうちに…』
と水撃の杖をマジックバックから取り出して、下層の魔物へ向けて僕の光属性の魔力で簡易聖水となった水をブッかけると、
「ジュッ」
と敵が蒸発し、後には魔石やたまによく分からない素材がドロップし、
『魔道具のアクアショットの杖より水の勢いも強いし、使う魔力量も衣類のリペア程度しか使わない…やはり、魔力量がある人間にはマジックアイテムの方が好まれるのが分かるよ…』
などと感心しているうちに30階層に到着し、少しでも常連冒険者チームに業火の槍の出てくるチャンスをあげたいので、今回は僕とライト兄さんだけでボスに挑む事にしたのであるが、正直なところダンジョンの最終ボスであるデスナイトという物理防御が強く、光属性の攻撃さえ何発も耐える死霊系の魔物であったが、
『光属性の攻撃を何発も遠距離から射てる』
という水撃の杖と僕のセットの前に成す術もなくジュッと音を発てて消える事になり、ライト兄さんから、
「俺一人では多分苦戦するから嫌だけど、ジョンは一人でも十分倒せたな…」
といわれ、どうやら彼は不完全燃焼気味にこのダンジョンの踏破を完了したのであった。
デスナイトの魔石と大振りな剣というドロップ品を見つめて、僕が
「これって魔石はマジックバックに入りそうだけど、この剣は無理だな…」
とボヤいていると、ボス部屋の入り口から、
「おう、案外早かったな…」
と、常連冒険者チームが入って来て、ライト兄さんが、
「ジョンが一人で倒しちゃって…防御力が凄いから光属性武器より癪だけど聖水を何個かボス用に買って来た方が楽に倒せそうだ…」
とサラッとアドバイスをしていたのであるが、
「教会の連中は全員連れて行かれたしな…ボス討伐には聖水を買いに他の町まで行くしかないか…」
と、がっかりしていたのであるが、
「まぁ、出るかどうかも分からない光属性武器を何ヵ月も探してたのに比べたら簡単な買い物か…」
と思い直してくれた様で、いざ宝箱チェックになったのであるが、僕が、ライト兄さんに、
「もしも、業火の槍が出たらプレゼントしても良い?」
と聞くと、ライト兄さんは、
「ここまでの宝箱や魔石までもらったんだから当たり前だ…」
と言ってくれたのであるが、常連冒険者チームの皆さんは遠慮しており、僕は、
「さぁ、ダンジョンさん…あんたに意志があるっていうのなら、今回あんたの腹の中で悪さしてた奴らを取り除いてやったんだから業火の槍を頼みますよ!」
と大声でボス部屋の中に声を響かせてから、格好良く初回討伐のボーナス宝箱を開けると、そこには、
「これだから…ダンジョンさん…多分友達少ないだろ…」
と、思わず呟きたくなる聖水6本セットなるハズレ枠のアイテムが入っており、常連冒険者さん達も、
「こりゃ、自分たちで倒して引き当てろって事か?」
と笑い、その後に、
「悪いがこの聖水を売って欲しい」
とお願いされ、ここまでのパーティーメンバーから金は取りたくないので聖水セットはプレゼントしたのであるが、僕は、
「あそこは業火の槍をバンと出してめでたし、めでたしだっただろ…」
と少し不満をもらしつつも、
「折角だし俺たちもボスを倒してから帰るから…」
という、常連冒険者チームを残してライト兄さんと先に大振りな剣を引きずりながら地上へと転移陣で帰る事にしたのであった。
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