第75話 いざ、下層へ
ベーレダンジョン踏破を目指して、BランクとCランク冒険者で組まれた常連チームのオッサン達は、世話になった知り合いの冒険者の子供に、【業火の槍】というマジックアイテムをプレゼントする為にどうしても20階層から下のエリアで狩りをしたかたったのだそうで、
「業火の槍以外は要らないから…」
と、道中で希に落とされる宝箱の中身は勿論、20階層のボスであったスケルトンダークナイトという闇属性装備を身に纏った上位のスケルトンナイトの初回撃破ボーナスまでこちらに渡してくれたのである。
「案外良い奴らだな…」
と、陰湿な嫌がらせをしていたライト兄さんが感心する程に、彼らは僕たちの即席パーティーメンバーとしてダンジョン踏破をサポートしてくれている。
このダンジョンは、ゾンビから始まりスケルトンとなり20階層から下は、ゴーストやら闇属性の魔物に加えて、そんなに多くは無いが罠なども設置してある為に、常連チームのリーダーさんが僕たちの先頭を進み罠を見つけては、避ける様に注意してくれたり、安全な位置からわざと発動させて無力化してくれているので大変助かっているのであるが、
「これは、少し楽をし過ぎてないですか?」
と不安になってしまう僕に常連冒険者チームの方々は、
「なぁに、何ヵ月も上の階層で光属性の武器を求めて潜っていたんだ…それを人数分の属性武器をいっぺんに用意してくれたんだからこれぐらいさせてくれや」
などと言いながらも、知らぬまに背後に回り込み奇襲を仕掛けてくるダークストーカーという闇属性の魔物に光属性のナイフを投げて仕留めると、
「武器さえあればさほど強くも無いし、二人がサクッと踏破した後で、俺たちはのんびり稼ぐから…」
と、魔石まで渡してくるのである。
『なんだか申し訳ない…』
と思いつつも、ちゃっかり魔石までもらっている僕たちは、楽しく25階層までやってきたのであるが、そこで面倒臭い奴らに絡まれてしまったのであった。
きっかけは、
「この階層には先客が居るようだな…数時間で元に戻る罠が無力化されたままだ…」
というリーダーさんのセリフのから迷路の様な壁に囲まれたエリアにて、あちらさんから接触を図ってきたのではあるが…
「探知ギフトに変な反応が出たから見に来てみれば冒険者か…」
と、上から目線のイケ好かない奴らに思わず僕は、
「いや、国と冒険者ギルドが管理しているこのダンジョンにはDランク以上の冒険者しか入れないはずだが…」
と、それはそれは丁寧に『お前もだろ…』教えてあげたのであるが、どうやらそれが気に入らなかったのか、
「我等ベーレ聖騎士団の鎧を着ただけの卑しい冒険者と、神と人々の為に日々ダンジョンで修行している我等とが同じと申すか!」
と、聖騎士の鎧を着ているライト兄さんをビシッと指差してイキリ散らかしており、ライト兄さんはというと、
「えっ、俺…」
と、うんざりした顔でこちらに確認してきたのだが、僕は、
「ほら、ライト兄さん…言ってやって下さい」
と、ライト兄さんをこの即席パーティーの代表として送り出したのであった。
しかし、陰湿な仕返しをするが、基本温厚なライト兄さんは、
「いや、ベーレ聖騎士団の鎧と仰いましたが、普通にダンジョンのドロップ品でして…この聖騎士の鎧を勝手にお揃いで着ているのはそちらの自由ですし…」
と凄く丁寧に説明したのであるが、それがまた気にくわないのか、
「神がどーだの…こーだの…」
と、電波な奴みたいに会話にならず、騒ぎを聞き付けたらしい電波な奴らのメンバーが集まり、聖騎士団と僕たちで睨み会う時間が流れたのである。
『これじゃ話が進まないな…』
と諦めた僕は、
『よし、人生2周目の僕がここはひとつ…』
と前に出て、
「いや、そもそもダンジョンなんですから獲物を横取りでもしない限り文句を言われる筋合いはありませんよね…だったらこの階層で狩りをしている皆さんの邪魔にならない様に先に進みたいんですが?」
と提案するが、聖騎士団さんとやらは、
「そもそもで言うと、聖女様の修行の場に卑しい冒険者が彷徨いているのが問題なのだ…しかも光属性の武器まで揃えて…我が教会にて光属性の魔合金は神々の像へと作り変える故に、我等にその武器や防具を差し出すのだ!」
などと眠たい事を言って来るので僕は、
「いや、ゴーストだのここら辺の敵は光属性の武器じゃないと倒せないのに、なんで差し出さないとイケないです?」
と、真っ当な意見を言ったのであるが、奴らは、
「踏破が目的であれば我等の教会にて作った聖水を使えば良いだけだ…卑しい冒険者には過ぎた装備…光属性の武器は神々の像へとなるべきなのだ!」
と、話が噛み合わないのである。
常連冒険者チームの皆さんまで殺気を帯びてきた頃合いに、
「皆さん…落ち着きなさいませ…」
という女性の声が響くと、聖騎士団の連中は、
「聖女様…」
とザワつき左右へと道を空け、その道を通って現れたのは、一瞬『ドワーフ族かな?』と思えるズングリした女性であり、彼女は聖騎士団の奴らに、
「ダンジョンにて武器を渡せなどとは…冒険者の方々に死ねと言っているのと同じですよ…」
と叱ったので、
『少しは話が出来る人間が出てきた…』
と一瞬安心したのであるが、どうやらただの電波な奴らの親玉だったらしく、
「卑しい冒険者には幾らかの金を掴ませて神の慈悲を…と言っていますよね…」
と言った後にこちらに大金貨一枚を投げてよこし、
「それぐらい有れば満足かしら…サービスで帰りの分の聖水もくれてやりますわよ」
と言っているのである。
『もう、まともに話せる人間は居ないのかよ…』
と呆れていたのだが、しかし、いい加減我慢の限界だったらしい常連冒険者チームのメンバーが、
「おい、そこのパンみたいな丸っこい女、こんなんじゃ足りないし売る気も無いって言ってるのが分からないのか?」
とか、
「神様の声を聞くために努力されて、ミミまでパンになってまともに人の話を聞けなくなったらしいな…お可哀想に…」
などと、かなり強めに彼女を煽るのだが、
「パンみたい」
というフレーズがツボに入り、こちらサイドだけでなく聖騎士団サイドからも、
「ぷっ」
と吹き出す声が聞こえ、真っ赤になった焼きたてパンみたいな聖女様は、そのコッペパンみたいな腕を伸ばして、
「あの、無礼な冒険者を消しなさい!」
と、ヒステリックに叫んだのだ。
勿論、いくらダンジョン内とて人を殺すのは法律違反であるが、危険なダンジョンにて命を落としたと偽装するのは簡単である…
『これが教会のやり方か…今後のお付き合いを考えないとな…』
と思いつつも、既にあちらは殺る気満々でこちらに向かって来ているし、常連冒険者チームも武器を構えて迎え撃つ為に陣形を組んでいるのであるが、その時、ライト兄さんがスッと僕たちの前に出たかと思うと、
「任せてくれるかな…こんなチャンスなんてあまり無いから…」
と言ってオンブゴーレム君の足ピンボタンを押して、自分のカバンから毒々しい色の瓶を取り出してゴーレム君の右足に仕込まれたバーストランチャーに装填し、
「ジョンも続けよ」
と叫んだかと思うと、笑顔で聖騎士団へとソレを射ち出したのであった。
『マジか…』
とライト兄さんの考えを理解した僕も、マジックバックからバーストランチャーを取り出して、
「次、麻痺毒で良いですか?」
とライト兄さんに聞くと、彼はニヤリと、
「うん! で…その次は酸でもブッかけてやろう、人体実験なんてこんな時でも無いと出来ないから…」
と、実に悪い笑顔で自分のカバンを漁っていたのであった。
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