第70話 パーティー
春の暖かな風が吹く日に、我が家では昼からパーティーが開かれている。
まず、ラベル先生が一旦王都へ報告に帰るお別れ会と、タンカラン村からバラッドさんとキミーさんのドワーフ夫婦が到着した歓迎会と、ベルが先日10歳となりカサールの町の教会でギフトを授かったお祝いなど、なんやかんやをいっぺんに行うお祭り騒ぎを楽しんでいるのである。
ライト兄さんのイデアさんに向けた思いはまだ何も進展しておらず、そのお祝いも残念会もこのパーティーには含まれておらず、その代わりに我が家に参加した牛達を守る為に見張り役に購入したブラウンハウンドの若いメスがメリーさんの相棒とも言えるオスのブラウンハウンドであるパトラッシュの落ち着いた大人の魅力にやられて春先から猛アタックをかけているのが、我が家で唯一進展がみえる色恋話であり、ラベル先生は、
「ライト殿の件を見届けたいが…我輩も陛下にご報告せねばならないから…」
と、メリーさんと若者の色恋話を摘まみに仲良くカルセルで僕が買い漁ったスパイスと、余っていた冬の保存肉や野菜のストックを使い料理上手のミントさんと一緒に作ってみたスープカレーモドキを楽しんでおられる。
このパーティーには奴隷に堕ちた元商人であるテイカーさんの商人復帰祝いも含まれており、彼は僕の出資で商会を立ち上げて、我が家の商品を売りさばくというお仕事をしてくれ、彼の借金奴隷としての負債をその仕事で手にした給料から返済する予定であるのだが、多分カサール子爵様やマルダート男爵様など地方貴族にゴーレムコアを売り付けるだけで返済分は完済すると思われる。
王都で師匠達が作っている新型ゴーレムは、ニルバ王国の主要な大貴族から順番に配備される流れであり、国境の本当に必要な貴族に配備されるのはまだまだ先の話になるのだが、ゴーレムコアを用意出来た貴族には、王都にてエルバート師匠や兄弟子さん達の指導により育っている鍛冶師、錬金術師、ゴーレムマスターのチームで構成されたゴーレム職人が派遣される手筈となっているのであるが、カサール子爵様は、
「待ってなどおられん、試験機体とはいえ、新型ゴーレムを作り上げた鍛冶師も居るし、錬金術師もエルバート殿の弟子が二人も居る…ゴーレムの調整も息子のクリストが出来る!」
と言い出して、クリスト様もノリノリで、焼かれたカサールの町の復興の起爆剤として、近隣の貴族家から鍛冶師や錬金術師を集めて、ゴーレム作りをすすめるらしく、お陰で王都でゴーレムコアを修復するラベル先生と直接マーケットを奪い合う事はなくなったのである。
しかし、王家など金持ち貴族ばかりを狙い打ち出来ない事となり、貧乏貴族でもお金だけでは無い繋がりで我が家に利益を呼び込む為の専属の販売員としてテイカーさんを任命したのだが、既に彼は買い物ついでの情報収集にて近隣の様々な情報だけではなく、
「新型ゴーレムには鉄などが必要なのですね」
と聞いたかと思うと、材料の仕入先まで見つけてきており、その情報をカサール子爵様にプレゼントする事により我が家の為に元手なしで新型ゴーレム作りを町の産業の一つにしたいご領主様に恩まで売ってみせたのであった。
『これは当面の現金収入はテイカーさんにゴーレムコアを丸投げしておけば大丈夫そうだな…』
という事で、彼の警護にバルディオさんとイデアさん親子をつけて置けば町や村を巡る際の安全は万全であり、僕は次なる目標に向けて集中する事が出来る。
そして、神様から【加速】ギフトなる移動速度を魔力を使い瞬間的に上げる能力を授かり、もう誰も追い付けない速度で走り回れる様になったベルは正式な冒険者登録をし、魔合金の装備と既に2つの初級ダンジョンを踏破している為にDランクスタートという異例の計らいをカサールの冒険者ギルドマスターから受けて、ララちゃんとターニャちゃんの女の子冒険者チームの戦力としてカサール周辺で、薬草摘みなどから冒険者活動を始めるらしく、
「二人ともすぐに強くなってバラッドのおじちゃんに鎧を作ってもらおうね」
などと張り切っており、バラッドさんも、
「ベル師匠のお仲間の為ならあの義父より凄い魔合金の鎧を作りますぜ!」
とヤル気で、奥さんのキミーさんも、
「ワタシ達の再婚を後押ししてくれた恩を返さないとね…バッ君…」
とバラッドさんを見つめ、バラッドさんも、
「キーちゃん…」
と見つめ返し、
『おい、まさか!?』
と心配する僕の心配を他所に軽くであるが、チュとしながらイチャイチャし始める。
初めてオッサンとオッサン風のおば様のキッスを見たであろうイデアさんがポトンとスープカレーを食べる為のスプーンを落として真っ赤な顔で固まっているのを見て、
『これは恋愛経験が少ないかも…相手は初心者ですぞライト兄さん!』
と、思いながらライト兄さんの方を見るとライト兄さんはスープカレーごと落として呆然としており、
『こっちは更に恋愛初心者かよ…』
と、ライト兄さんの恋の行方が更に怪しく思えたのであった。
そんな事がありながら、冬前にバルディオさん親子が乱獲したダッシュボアの皮鎧を身に纏った男の子チームはお手伝いクエストをきっちりこなしてEランクに上がったらしく、男の子チームの三名はリーグさんに引率してもらいサウスダンジョンにて腕試しがてら鉄を集めたりダンジョンの宝箱からの武器などを目当てに潜るらしく、上手く行けば一旦戻って装備を整えてタンカランダンジョンにも挑む予定なのだそうだ。
という事でこちらはリーグさんにおまかせして、僕はと言うと、お金の件も新人冒険者の件も、幼子の件も僕を育ててくれたメリーさんが我が家に来てくれた為に彼女にお任せできたので、
『よし、全力でライト兄さんの恋のサポートをする!』
という名目で特等席でこのバルディオさんという強大な敵に挑む弱々錬金術師のライト兄さんという面白い見せ物を楽しむべく、ライト兄さんが強くなる為に協力する事にしたのである。
事の発端は次期ご領主でもありゴーレムマスターのクリスト様が、
「ゴーレムも魔物を倒して行けばレベルが上がって、手下のゴーレムを従えれる様になるんだよ」
と教えてくれ、ライト兄さんが、
「あぁ、バルザックさんの研究資料にリント王国には隊列を組んで動くゴーレムの一団が有ったって書いて有ったし、そのリーダーゴーレムの指令を真似したのがゴーレムマスターのギフト無しでもゴーレムを操れる魔道具だから…」
と、資料を読んだ記憶を思いだして話していた瞬間に、僕の頭に、
『リーダーの指示で簡単な指示なら従えるゴーレムの軍団が出来る』
という事で、
『そのリーダーの指令を真似して動かせるゴーレムならば…レベルを上げたゴーレムの統率下なら今の五種類の指示を出す新型ゴーレムコックピットのボタンを倍に増やして上半身と下半身の二体が同時に扱えて、殴る、進むなどの基本動作以外に、掴むとか振り回すなど武器も使えるゴーレムになるのでは…』
と閃き、
【二体合体して1体のスーパーゴーレム】
なる夢のプランが生まれた為に、ライト兄さんのレベルアップと共にゴーレムのレベルを上げる為の発明を進めるのであった。
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