第69話 動き出す季節
春も間近な晴れた日に、試験機ではあるが魔石式魔力供給装置が完成した。
鍛冶師であるバラッドさんの到着を待ってから本格的に改良する計画であるが、今回はラベル先生の専用の試験機として以前僕がテストしたゴーレムの魔石タンク方式のストーンバレットの杖というか連邦のキャノンみたいな魔道具をベースにし、ラベル先生の左手のサイズに合わせて錬金ギルドで扱っている錬金鉄粘土で背中の魔石タンクからつながる甲冑の腕の様な物を作ったのである。
ラベル先生の修復ギフト専用の試験機のために強度や動きやすさなどは今回は度外視で、メンテナンスのし易さからライト兄さんに頼んだ魔道回路も表面にむき出しであるが、背中に背負った魔石タンクから魔力を吸い出し、その魔力を左手の鉄の装備に刻まれた魔道回路に流すと、その魔力はリペアの魔法に必要な光属性に変換され、魔力の発動をラベル先生が左手をピント伸ばした先10センチ辺りに調整すると、これで魔力供給魔道具が完成したのである。
まぁ、問題は魔法の使い手も多少訓練が必要な点であるが、そこはラベル先生というべきか、流石はエリート修復師なだけはあり、魔道具の魔力発動ポイントに合わせてリペアの魔法を発動させるのに、ラベル先生はさほど苦労はしなかった様子であった。
修復対象であるゴーレムコアに魔道具を装着した左手をかざし対象物との距離を調節すると、そこに合わせてリペアの魔法を発動させる。
するとラベル先生の魔法に自動的に魔道具から魔力が供給され、先生は魔法が魔力過多で暴走しない様に制御に集中すれば良く、
「多少のコツは必要ですが、それもすぐに慣れるでしょうし、これならば魔力切れを気にせずに確実にコアの修復が出来ます!」
と喜んでくれている。
ただゴーレムコアの修復に大量の魔力が必要なのか、魔力供給魔道具の魔力効率が悪いのか一回毎に大量の魔石を消費してしまうのは少し改良点なのかもしれないが、ラベル先生が、
「これは、ニルバ王国の魔法系ギフト所持者の未来をガラリと変える大発明ですぞ!」
と、ウキウキで国王陛下に向けて自分が修復したゴーレムコアと今回の試験機を手土産に王都へ帰るためにレポートを作成しはじめている。
さて、世紀の大発明をしたもう一人の立役者であるライト兄さんなのであるが、現在は今までと違った次なる研究に入っている…それは…
【激弱ライト兄さん専用、強化装甲と実戦型魔道キャノン】
という何とも物騒な兵器開発である。
まぁ、云わずもがな…イデアさんの好みの男性がパパのバルディオさんよりも強い事が条件らしく、今までヘンテコな機能をつけてまともな魔道具を発明できなかったライト兄さんが、今回は初めて自分が決めたコンセプトがブレるような追加機能をつける事なく、ただ一途に、
「バルディオさんよりも強く…」
と、下手をすると魔力供給魔道具よりも真剣に、
「ジョンの冒険者用の装備の素材ってドワーフ族の鍛冶師の秘術で付与がついている素材なんだよな…」
などと僕に質問しては、
「よし、その素材さえ手に入ればレッドベアーの首を一撃で落とす威力に耐える為にここの部分に…」
と、バルディオさんの攻撃力を基準に動きやすい全身防具のアイデアをひねり出していたのであった。
そして、我が家に寝泊まりしているラベル先生の魔力供給魔道具の調整も兼ねて今日もウチの居間にてチラチラとイデアさんを盗み見ては、やる気を漲らせているライト兄さんを僕とメリーさんとで生暖かく見守りながら、ズズッとお茶をすすっては、
「メリーさん、もうすぐ春ですねぇ…」
「はい、お坊ちゃま…どこもかしこも春が来ると良いですねぇ…」
などと、必死になっているライト兄さんをお茶請けにしていると、魔力供給魔道具のレポートをまとめているラベル先生が、
「ジョン殿もそろそろお相手を探さないと…そんな年寄りが若者の色恋沙汰を楽しみながら庭先でお茶会を開いているみたいに…」
と軽く呆れられてしまったのであるが、こちらの世界は15で成人とはいえ、前世の記憶のある僕的なイメージでは、
『まだまだ少年…』
みたいな感覚だし、定職にもついてないのに家族が多いからという状況で、
『恋愛なんて…それどころでは無い…』
という感覚なのである。
今はコソコソとゴーレムコアを直しつつ、
『カサール子爵家と…あとは子爵様の娘さんが嫁いだマルダートの代官さんも男爵に出世したらしいからお祝いがてらこのゴーレムコアの一部をプレゼントして…』
と目の前のテーブルに並ぶ僕がこれまでに直したゴーレムコアの中から幾つかを横に避けて、
『あとは、ゴーレム部隊を作りませんかぁ? などとそそのかして…』
と、残ったゴーレムコアと、まだ直していないコアを数えながら、僕は、
『うん…残りは少し安くで構わないから買い取ってもらわないと…ラベル先生もゴーレムコアが直せるならいずれ価格が暴落するだろうから冒険者ギルドだけではいっぺんに売れないし…貴族家にまだ価値が高い今、直接売り込むしか…』
などと、ゴーレムコアビジネスの今後を見据えて動いているのである。
このように連日ゴーレムコアの修復をしており、どうやら僕自身の魔力の総量が上がった感覚があるのだが、しかし、どうやら連続で2個は修復出来ずに1個を修復すると以前の様にフラフラにならないが、やはり魔力回復のインターバルを必要とし、その間に出来るのはラベル先生から習った修復用の素材を用いた欠損部位の有る衣服などの修復の練習や大量に購入した錬金鉄粘土の残りを使い、
【僕が考えた最強アイアンゴーレム】
の模型という、少しの魔力を流せば硬化して鉄になる粘土で実現可能かどうかなど無視した自室のインテリアを作る程度か、あとは我が家の幼子達の成長を楽しむだけである。
子供というのは見ていて飽きないし、日々の成長もなかなか面白い…正確な誕生日は分からないが、もうすぐ2歳になるであろうジョイ君とエレナちゃんは、最近までは「あー」とか「うー」とか二人だけの言語で喋っていたのが、今では
「ちょーだい」
と手をだすと、持っていた裁縫上手のマチさんが作ってくれた人形などを、
「はい、どーぞ」
と言って渡し、
「ありがとー」
とお礼を言う、という遊びにハマっているらしく様々な物を二人で手渡ししてキャッキャしており、年上のもうすぐ三歳のシルフちゃんは、大工のボンドさんが作ってくれたオマルでトイレトレーニングを開始しており、
『布オムツの交換も上手になったのにな…』
と、少し寂しくも嬉しい僕がおり、オムツ交換などは皆に、
「旦那様がそのような…」
と言われながらも、
「育児に参加しないで見ているだけの人間には成りたくないんだ…」
などと、もっともらしい事を言ってはみたが、本当は単に三人に嫌われたくない…なんなら好かれたいという理由で頑張ったオムツ交換の日々を思い返しながら、少しウルウルしそうになる。
幼い三人の中で一番お姉ちゃんのシルフちゃんなんかは、
「お兄ちゃん、ダッコ」
などと甘えてくれるまでになっており、そんな可愛い彼女にはベルや同年代のララちゃんもターニャちゃんもメロメロで、彼女達はシルフちゃんのお姉ちゃんとして頑張っている様子で、現在は目隠しパーティションの向こうでオマルトレーニング中のシルフちゃんの横にて、
「そこで、う~んと頑張る!」
「頑張れぇ♪」
と、声援を贈るララちゃんとターニャちゃんの声がして、
「ウ○コとヤル気は自分で出すのが大事!」
と、独特の名言で応援するベルの声をリビングにて、
『凄い名言だな…いつか使ってみよう…』
などと感心している僕は、ジョイ君とエレナちゃんともっと仲良くなるべく、二人の流行である貸し借り遊びに参加し、ジョイ君から積み木を「どーぞ」されて、「ありがとー」とお礼を言ったり、エレナちゃんにその積み木を「はい」と差し出し、「ありがと♪」と可愛くお礼を言われたりしている。
『何か…幸せ…』
と思うのであるが、そんな生活をしているうちに春が訪れ、我が家はバタバタと畑作業や広い牧場の有効活用の為に牛魔物などの購入の為に馬車を出し近くの村等に向かう準備が始まり、
『僕も毎日居間でゴーレムコアを修復してばかりも居られないな…』
と思うようになり、冒険者として…そして大家族のお兄ちゃんとして動き出すのであった。
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