第60話 一件落着
いきなり雰囲気の変わった僕とピンチョスさんに驚く暇もヤンの野郎にはなく、ドカドカとテントに突入してきたのはこのカルセルの町を預かる領主様のお家の騎士団の方々であり、
「我が主から王家へと献上する予定のゴーレムコアが壊されたと連絡を…」
と、仕込んであったかの様にタイミング良く突入してきたのは勿論ピンチョスさんやバラッドさんがギルドマスターとしてご領主様と掛け合い、ちゃんと仕込んであったからである。
騎士団の方々は狼狽えるヤンを取り押さえ、壊れたゴーレムコアの数を再度確認し、
「確かに六つ破損している…」
と言い出し、騎士団の方がヤンに、
「これは後日、代金が用意出来次第に彼から主が購入する予定の品…ソナタが故意に壊したとあれば…」
と伝えると、ヤンは見苦しく、
「いや、わざとでは…」
などと焦るが、ピンチョスさんも僕も、
「いや、わざとでしたよ…」
「地面に力一杯叩きつけてたよ…」
と素直に証言すると、ヤンは、
「お前ら!」
と騒ぐが、自分も色々とやらかしているのでこれ以上の騒ぎは起こさずに穏便に済ませようと、
「そうだ、ゴーレムコアならしっかり弁償致しますのでどうか、お引き取りを…」
とヤンは騎士団の方々に懇願しているのであるが、僕もピンチョスさんも、
『待ってました!』
という、奴のセリフにニマニマしてしまう。
騎士団の方は、
「そうか、その方が弁償を…ならば…」
と、テーブルに書類を広げ始め、
「現在、王家からゴーレムコアの納品依頼が出されており、我が主が王家への贈り物として冒険者ギルドに納品する予定の8個のコアを一つ大金貨十二枚で買い取らせてもらう契約で…」
と言い出すと、ヤンの野郎は、
「そんな筈はない、ゴーレムコアだぞ!!」
などと、「不当な金額だ!」と騒ぐが、ピンチョスさんは可愛らしい笑顔のまま、テーブルにならぶギルドへの王家からの書類などの資料を指でコンコンと叩きながら、
「だからだよ…今、ゴーレムコアの需要が上がって冒険者ギルドで8個分のお金なんて用意出来ないからご領主様にお願いしてたのに…」
と言った後に、糸状だった目をカッと見開きヤンを見つめたまま、
「お前が話をちゃんと聞かないから…」
と言ったかと思うと再びキャラクター顔に戻り、
「そうだ、ジョン君の件は満額で大金貨二枚って言ってたよね…その分は差し引いてあげるからジョン君の妹ちゃんの件はオシマイだね」
と笑顔でヤンに尋ねると、奴は既にピンチョスさんの圧に怯みコクリと首を動かすだけの人形となり、
「うんうん、人間素直が一番だよ」
という、ピンチョスさんは再び殺気を放ち始めると、
「では、つぎはお前をオシマイにする相談だな…」
と、騎士団の方々とヤンの壊したゴーレムコアの件の清算に移る。
ゴーレムコア自体はスライムの核みたいに傷をつければゴーレムを倒せるという弱点みたいな物であり、つまり案外壊れ易いアイテムなのであるが、
『1つか2つ壊れたら…』
という想定の作戦であったのだが、どうやらゴーレムコア同士がぶつかり、見事に1つ大金貨十二枚の計算のコアを六つも壊してしまった為に、ヤンの野郎は額面上では大金貨72枚という負債を抱え、その中で大金貨2枚をベルのジャンピングキックの件で相殺しても焼け石に水なのである。
となれば、奴の資産を差し押さえていくしかなく、騎士団さん達の働きにより、
「買い付けた金額よりなぜ借金奴隷の負債額が増えている?」
と、普通は肉体労働の対価として減る筈の自分を買い戻す為の借金が増えている事を調べあげられ、
「仕事上での罰金なんて…それは、他国では知らんがニルバ王国では許されない…」
との判断により、どうやら罰金刑までつくらしく、見事に連行され【ざまぁ案件】なのであるが、問題は奴の負債を相殺する為にヤンが手放した奴隷達である。
借金奴隷の元冒険者5人に、元は戦争中の捕虜として捕まり引き取る為のお金を雇い主から払って貰えずに戦争奴隷となった父親と娘の元傭兵2人という奴隷テント内にて職員としてこき使っていた方々に合わせ、
「こんな子供まで!?」
と驚いてしまう幼子3人を含む8人の子供と、様々な理由で借金が返せなくなり借金奴隷となっていた市民7人という売り物としての奴隷である。
こともあろうか、後日カルセルのご領主様の決定で彼らは、
「買い取る前のゴーレムコアの弁償としてだからジョンなる冒険者の所有だな…」
となってしまい、僕に「逃げろ」とアドバイスをくれた男性はピンチョスさんの知り合いの冒険者だったそうで、
「こんなに痩せて…食べさせてもらってなかったんだね…奴隷の扱いの件でも追加でヤンの奴に罪を…」
などと何かと世話を焼いていたピンチョスさんに、元冒険者の5人はそのままセットでお願いしてカルセルの町で冒険者をしながら自分を買い戻す為に収入の一部を僕に回す契約にしてくれたのでピンチョスさんに丸投げで構わないが、
「もう、傭兵としては戦えませんので…」
と、戦争で受けた傷により傭兵として稼げなくなってしまった片目が見えないベルがジャンピングキックを放つきっかけとなったケモ耳のお姉さんと、片足が義足のお父さんの傭兵だった2人はすぐに解放する訳にも行かず、秋には完成予定の我が家のお手伝いとして雇用して、お給料から返済という計画にしたのである。
そして、7人の借金奴隷さんは、
「家も既に有りませんし、あの町には…」
などと、各自色々あるらしく、帰っても再出発すら困難なそうで、
「では、カサール子爵の町は働き手不足だから…」
と一旦連れて帰る事にし、一番の問題は8人の子供達である。
幼子の3人は幼子の売買が許されているリント王国にて正規の手続きで親に売られた子供なのだが、いかなる理由であれ子供を売り飛ばすという親に返すのは不安であり、その他の5人の子供達も、親を盗賊に殺されていたり、ニルバ王国でも奴隷商人に売れる年となるのを待って親に売られた可愛そうな子供である為に、
「とりあえずウチ子ね…」
という選択肢しか僕にはなかったのである。
しかし、これだけの人間を食べさせて行けるかが不安なのだが、今さら、
「無理だから他の奴隷商人さんに転売しま~す」
なんて、鬼畜な事は出来ないし、人として『ダメ!絶対!!』である。
見事にヤンに壊された六つのゴーレムコアの中で、再びリペアの魔法で直りそうなのは2つ程で、無事な2つと合わせて4つのゴーレムコアは本当にカルセルのご領主様が購入してくれる事になったので当面はお金の心配は無いとは思いたいが、ゴーレムコアバブルなんて永遠に続くものかも怪しい…
『一気に大家族になってしまった…これは色々と頑張らないと…』
と思いつつ、リーグさんに
「カサールまで帰る馬車を増やすしかないね…」
と相談すると、リーグさんは、
「奴隷商人のテントや馬車も旦那様の所有になったのでは?」
というのであるが、
「あんなヤツの持ち物を使うのは嫌だし、奴隷として各地を巡った思い出のある馬車に皆を乗せられないよ…」
という事で、少ないが現金に変えてもらい、新しく仲間になった皆さんの着替えなどの生活必需品の購入に宛てしまったである。
「結局ギュウギュウになるかも知れないけど馬車は二台は必要だね…」
と、子供達の世話をベルと大人の奴隷チームの皆さんに任せて馬車の購入へ向かおうとしたのであるが、宿屋を出た所でピンチョスさんとバラッドさんにカルセル騎士団の方々に、
「あぁ、良かった行き違いにならずに済みました…では、お屋敷まで参りましょうか」
と、拉致られてしまい、僕は観念してリーグさんに、
「ごめん、馬魔物だけでも選んでおいて下さい」
と金袋を渡し、大人しく騎士団の方々の馬車にてお屋敷へとドナドナされたのであった。
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