第50話 ギリギリの判断
リーグさんの初回ボス討伐ボーナスの宝箱からは魔鉱鉄製の見事なスコップが現れ、
「これは良いものが出ました」
と満足そうに撫で回していたのでリーグさんはかなり気に入っている様子であるが、作業着にツルハシとスコップで鉱山作業員の見た目が完成してしまい、背負ったカゴの中の鉱石などが更に説得力を増してたのである。
初めて利用する転送陣はフワリと変な浮遊感があり、一瞬で地上にあるダンジョンの入り口横に立っている事に僕とベルが驚いているのを経験者らしいリーグさんは、
「最初は全員そんな顔をしてますが、そのうち馴れますよ」
と笑いながらギルドのカウンターへと向かっていたので、
『ダンジョンは久しぶりと言っていたけど…もしかして若い頃は冒険者としてバリバリダンジョンに潜っていたのかもな…』
と、リーグさんの手馴れたダンジョン攻略後の動きを見ながら、謎の組織に入る為に冒険者としての過去を捨てたのか、はたまた現在の居場所を隠す為に冒険者だった記録をあえて使って居ないのかは分からないが、冒険者の先輩として今後リーグさんの意見はちゃんと聞こうと決めた僕である。
それから戦利品のチェックを冒険者ギルドのカウンターで済ませる為にマジックバックやカゴから次々と戦利品を提出し、職員のお姉さんに、
「宝箱が二つのボスの初回宝箱が一つで、魔鉱鉄インゴットに回復ポーションに魔鉱鉄のスコップですか…」
と言われてしまい、どうやら職員さん的には微妙な宝箱の中身だったらしいのであるが、僕たちには必要な物ばかりの為に『大当たり』な内容である。
しかし、テンションが下がり気味のギルド職員さんもゴールドアントのアゴには大興奮で、
「数ヶ月ぶりですよ!」
と言って、魔物由来の金は高値で錬金ギルドが買ってくれるらしく、納品依頼の書類を出して、
『納品してくれ』
という顔でこちらを見つめているのであるが、倒した本人であるベルに所有権がある為に、
「来年には冒険者登録が出来て、冒険者ギルドポイントも依頼達成で入るし、それまで売らずに持っておくかい?」
とベルに訪ねると、彼女は、
「要らない、すぐに売ってリーグおじちゃんのマジックバックを買ってお揃いにする」
と言っており、リーグさんは、
「ベルちゃん、駄目だよ…折角のレア素材だから、おじちゃんの為には…」
と遠慮するのであるが、ベル的には仲間ハズレにしたくなく、
「ダメ!」
と頑なであり、リーグさんは、
「旦那様…」
と僕に泣きつくが、僕としても、
「ダメ…ベルが決めたんだから、決定です」
という事で、僕の名義で依頼品としてゴールドアントのアゴを納品して大金貨二枚という大金を手に入れたのであった。
しかし、それよりも驚いたのは試しに修復したゴーレムコアを、
『これも一応、ダンジョンから出た物だから…』
とカウンターに提出すると冒険者ギルドのお姉さんは目を見開き、
「えっ、えっ! 九階層のロックマンを倒す人も珍しいのに無傷のゴーレムコアなんて私がタンカランに勤務してから初めて…というか…」
と言いながら、ゴーレムコアを色んな角度から確かめ、
「支店長~」
と、上司まで呼びに行ったのである。
そして奥から出てきた「支店長」と呼ばれる年配のギルド職員さんが、ゴーレムコアを確認し、
「うわっ、本当だ…私の素材鑑定ギフトにもゴーレムコアって出てる…【壊れた】って表記が無いのは私もここに配属されて初めて見たよ」
と驚いていたのであるが、なんと、ゴーレムコアは国からの納品依頼が出されており、大金貨十枚という破格の報酬らしく、
「どうしよう…一応ゴーレムコアが狙えるダンジョンとしてギルド本部からは通達が来ていたけど、まさかウチから無傷のゴーレムコアが…」
と、慌てているのである。
どうやら、エルバ師匠達が作る新型ゴーレム部隊の為に国がゴーレムコアを集めているらしく、今までこの国ではゴーレムを使える人間も魔力が足りずに満足に運用出来ないままで、コア自体もハズレギフト扱いのゴーレムマスターにしか使えない代物だったので、昔はコアをリント王国側に輸出していたが、それも戦争があり軍事利用される為に輸出はストップして長年、
『レアの割りに使い道が無いクズアイテム』
として、コレクションアイテム感覚で小金貨数枚であったゴーレムコアが春前頃から急に高騰し、国から納品依頼が出されたのだが、
『まぁ、ウチからは出ないよな…』
と、マーチンの町にある本店のギルドマスターとも話していたらしくタンカランの支店には大金貨十枚を一括で払う備えが無いらしいのである。
「どうする?」
「どうしましょう、支店長?」
とパニック気味の職員さんを眺める事しか出来ない僕たちの存在を思い出したかの様に、ギルド職員のお姉さんが、
「あっ、まだ納品かどうか聞いていません!」
などと慌てるものだがら、僕は、
『まぁ、ひび割れ程度なら修復出来る事が分かってるし、大金貨十枚か…これは良い稼ぎになりそうだ…』
と心の中で悪い笑みを浮かべながら、
「はい、勿論納品しますが、仲間に錬金ギルドでマジックバックを買いたいのでマーチンの町の冒険者ギルドに行って直接納品しますよ」
と二人に伝えると、
「これは良い宣伝になるな…マーチンから冒険者が流れて来るかもな…」
などと喜ばれたのだが、ウチのベルは、
「えぇ~ボクまだボスを一人で倒してないから人がいっぱい来るのは困るぅ~」
などとゴネ出してしまい、支店長さんは困り顔で、
「う~ん…」
と唸り、職員のお姉さんが支店長さんに、
「どうします? 納品しないって言われたら…」
と不安そうに伝えると、支店長さんは、
「よし、マーチンのギルドマスターに暫くは他の冒険者には内緒にして貰える様に手紙を書くから、買い物をしたらまたすぐに帰って来てボスを倒しに向かってくれますか?」
とお願いされ、僕は、
「構いませんよ。 ベルもそれで良いよね?」
とベルに聞くと、
「それが良い!」
と答えてくれたのであった。
リーグさんが、
「この後で鍛冶屋に寄って装備を整えたいので、そちらが済んだらまた来ますのでその時に手紙を…あと、そのマーチンに行く馬車は?」
と聞くと支店長さんは、
「大丈夫、夕方に出てマーチンに昼前に着く便があるからまだ時間はあるし、ゆっくり鍛冶屋に…って紹介状を持って行くかい? あの爺さんの事だから安くはならないかも知れないけどね…」
と、バタバタと書類を書き始めたかと思うと、
「はい、紹介状! あぁ、馬車は私が待たせておくから良い装備を吟味して来てねぇ~」
と送り出され、僕たちは買い取りに出さなかった金属素材と、ボスであるロックリザードのドロップ品である皮を持ってこのダンジョン村で一番の鍛冶屋と言われているゴンザさんの工房とやらに向かったのであるが、鉱山の村だった名残で鍛冶屋が多いタンカランの一番の工房は、武器や防具の店も併設された中々に立派な建物であり、
「大丈夫かな…高そうだけど…」
と、中古品の店が主流の僕には少し敷居が高そうなお店であった。
店の中に入ると小柄で体格の良い人が、
「いらっしゃい、見ない顔だけどダンジョンは初めてかい?」
と声をかけてくれ、僕は冒険者ギルドからの紹介状を出して、
『爺さんなんて支店長さんが言ってたけど、元気で明るいおじちゃんじゃないか…』
と、勝手に頑固そうな人物を思い描いており、ホッと一安心して、
「これをゴンザさんに渡す様に言われていまして…」
と手紙を差し出すと、目の前の人物は一瞬変な表情を浮かべた後に、
「アタシがゴンザだと…」
と少し低い声で聞いてくる。
この時に僕の脳は熱を帯びそうな程にフル回転し、状況把握と危機回避の為の言葉を探し始めるのだが…しかし、
『えっ、なんで怒ってるの? 怒ってるよね…ゴンザさんじゃ無かった??』
と焦ってしまい、なかなか答えが導け無かった時に、ベルが、
「ねぇ、おばちゃん、この盾持ってみて良い…重たいかな?」
などと言った瞬間に目の前の人物は優しい笑顔になり、
「はいよ、重たかったら軽いのも出してあげるよ」
などという台詞を…この瞬間に僕は、
『えぇ、おばちゃんですか!』
と理解して、その事実に驚きながらもポーカーフェイスは崩さずに、
「大変忙しいと、思いますが工房主のゴンザさんにお渡しして頂けますますでしょうか」
と、ギリギリで失礼な勘違いをバレる事なく回避出来たのであった。
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