第49話 予定変更
完璧に予定が狂ってしまったので、僕は必死に草木も生えていない荒野の様な九階層にてバーストランチャーに道中で採掘した鉄鉱石をブチ込んで、
「二人は八階層で倒せるからここは一人でやらせて!」
とお願いし、ロックマンという小型のゴーレムを倒している。
ただ硬いだけで足も遅く、名前のわりに青くもなくて、片手から弾も射てないロックマン君からは走って逃げれば十階層に向かえるのではあるが、
『グラーナ狩りには人目が沢山有るからカサール子爵家の秘密兵器のバーストシリーズは使えない…』
と気がつき、
『いや、夜狩りで!』
とも考えたが、どうにもこうにもランチャーの「ブォウゥン!」という独特な音が夜中に鳴り響くと、流石にマーチンの町から兵士の方が見回りに来て最悪事情聴取になる可能性まであるのである。
現に今もこの九階層は結構広い空間だが、耳の良いベルは帽子の上から耳を押えて、
「お兄ちゃん、ウルサイよ…」
と文句を言っている程である。
バーストショットは「パシュ」という銃というより吹き矢に近い音で、バーストライフルは銃身が長く改良してからは前よりもやや静かになったのであるが、バーストランチャーは中に入れる物で多少の差はあるが一応にウルサイのである。
『空気圧で重たい物を飛ばす為にランチャーにだけ空気圧縮の回路が多めに入っているらしいんだから仕方ないだろ』
とは思うが、八階層でワラワラと出てくるアイアンアントを安全に狩れる二人に対抗して経験値を稼ぐにはこの階層にウロウロしている10体ほどのロックマンを倒さないと割りが会わないのである。
ダンジョンの入り口前にある冒険者ギルドのカウンターで聞いた話では、このロックマン君は戦闘用のギフト持ちがギフトの熟練度を安全に上げる為の練習台にする以外は、頑張って倒したとしてもドロップしたゴーレムコアが無傷でなければ全く
価値はなく、魔石も苦労のわりに小さめというハズレ魔物であり、
「走って通過するのが普通ですね」
と言っていた通りに、いざ倒してみても割れたり粉砕したゴーレムコアと魔石のみのドロップしかなく、
『ランチャーは魔石の消費が多いのに…』
と、使った分をやっと回収できたかどうかという成果に悔しい気分になってしまう。
ロックマンを倒して十階層に降りると、ビックスライムの時と同じ作りの待機エリアの先に扉があり、
「さて、どうする?」
と僕が聞くと、ベルは、
「アイアンアントを全部倒してきたい!」
と元気に答え、リーグさんも行きたそうにしているので、
「僕はここで荷物の番をしてるから二人で行ってきなよ」
と、自分のマジックバックから素材等の戦利品を麻袋に移して、リーグさんにマジックバックを貸して、僕だけ十階層にて休憩する事にしたのである。
『片手剣で斬り込むにはアイアンアントは硬いし、ランチャーは狭くて使えないから…』
と諦め、定期的に荷物を移動させてダンジョンに取り込まれない様にしていたのだが、
「暇だ…」
となってしまい、戦利品の入った麻袋チェックしながら、
「これ、幾らぐらいになるのかな…金属素材は装備を購入する時に鍛冶屋に材料として渡して安くしてもらうってリーグさんが張り切っていたからな…だとすると、殆ど現金にはならないか…」
と、今回はあまり手元にお金が残りそうに無い事にガッカリしていると、先ほど回収した壊れたゴーレムコアが目に入り、
『粉々なのは無理そうだけど、これぐらいのひび割れなら…無傷のゴーレムコアもじっくり観察した事もあるし、もしかしたら…』
と表面の水晶っぽい素材にヒビが入っているだけのゴーレムコアを麻袋から取り出して、
『頼むぞ…直ってくれ!』
と願いながら、リペアの魔法を使ってみた。
すると、必死に願いながらリペアの魔法を使った為かゴーレムコアを直すのに必要だったのかは分からないが、服や鍋などの修復とは比べ物にならない程の魔力が持って行かれた感覚をおぼえ、
「危ない…ダンジョンで実験はするもんじゃないな…」
と魔力切れで気絶する可能性も有った事に変な汗を流している僕は、軽率な行動を反省しつつも手の中のゴーレムコアを見るとヒビは無くなり、
「あれ、これって成功してない!?」
と一人で驚いていたのであった。
その後、ベル達が戻まで荷物の管理だけをしながらも、
「う~ん…ゴーレムコアなんていう不思議なアイテムでもひび割れ程度なら修復出来るのは分かったが、そんなひび割れを直すだけで魔力を物凄く消費したのは僕の修復ギフトがまだそのレベルではなかったから魔力でゴリ押したのか…そもそも現代の錬金術師でも再現出来ないマジックアイテム的な物の修復には馬鹿みたいに魔力が必要なのか…」
などと考えてみるが、勿論のこと答えは出ずに、
『魔力でゴリ押せるのならば魔石を使った魔力タンクから僕に魔力が供給出来れば粉々になったゴーレムコアでも修復出来るのかな?』
という謎にダンジョン内で一人モヤモヤしながら、まだ麻袋の中に転がるギリギリ修復出来そうなゴーレムコアを見つめていると、満足そうなベルとリーグさんが帰って来て、
「お兄ちゃん、ギルドのお姉さんが言ってたレア魔物の金色の蟻が居たよ」
と報告してくれたのであった。
ドロップアイテムが金を含む素材なこともあり、それだけでもかなりの稼ぎになるが、会えない冒険者は何度チャレンジしても出会えないゴールドアントなるレア魔物までベルは一発で引き当てたらしく、
『なんかベルってダンジョン運みたいな物があるのかな? ウエスダンジョンでも宝箱からトップレアを引き当てたし…』
などと考えた僕は、
『よし、今後は自分で開けたい気持ちをグッと我慢して宝箱は全部ベルに開封してもらおうかな…』
と決めたのであるが、問題はここからで、ボス部屋の主の件でベルが、
「一人ずつボスのロックリザードっていうトカゲを倒したら初回撃破ボーナスが3つ貰えるんだよね」
と、宝箱狙いでボスに単騎決戦を挑むと言い出したのである。
リーグさんは、多分ツルハシ1本でも問題なく倒せると思うし、ベルもバーストライフル辺りを使えば自慢の身体能力で敵をかわしながら弾を籠めて何発か撃ち込めば勝てるだろう。
しかし、自慢じゃないが僕は単騎で勝てるかすら不安である。
『敵をかわしながら弾を籠めるなんて事が出来るのか…』
なんて考えているとリーグさんが、
「ロックリザードなら倒した事がありますから、今回は自分が片付けますので皆で転移陣で戻って、村の鍛冶屋で装備を整えてから旦那様とベルちゃんはボスを倒しに来る事にしましょう」
と提案してくれ、
「え~、ボクも殺りたいなぁ…」
と拗ねるベルに、リーグさんは、
「魔鉱石も採掘できましたし、材料代金分を抜きで鍛冶屋で魔鉱鉄のバトルメイスと盾を買えますよ…どうです?」
と宥めてくれ、
すっかりご機嫌が戻ったベルが、
「早く戻って鍛冶屋さんに行こう!」
と騒いでいるので、リーグさんにボス討伐をお願いすると、
「では旦那様、ウォーターショットの魔道具の杖をお借りしても?」
と言ったリーグさんは水を飛ばせる魔道具の杖とツルハシだけを持ってボス部屋に向かおうとするので、
「えっ、バーストライフルは?」
と聞くとリーグさんは、
「沢山の敵ならば使いますが、たかがロックリザード一匹ですので…」
と、自信ありげに入って行ったのであった。
ボス部屋の扉が締まって、鍵が掛かると、単騎決戦を提案したベルも少し心配になったのか、
「お兄ちゃん…」
と不安そうに僕に何かを言おうとしたのであるが、心配する暇さえ与えずに扉が開き、
「いやぁ~、長年庭仕事だけでしたので少し体が鈍ってますな…かわせると思った尻尾の一撃を食らってしまいました…情けない…」
などと、服に付いた土を払いながらリーグさんが現れ、
「旦那様、ベルちゃん、宝箱チェックをしたら転移陣で帰りましょうか」
と僕たちを呼んでくれたのであった。
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