第48話 再チャレンジ
久しぶりとなるタンカランダンジョンにやってきている。
前回何度チャレンジしても六階層でクタクタになり引き返していたのが嘘の様に七階層まで進む事が出来たのは、リーグさんの参加と、遠距離攻撃手段が増えた事が大きいと思われる。
どうやらリーグさんの話ではダンジョンの魔物はテイム出来ないらしいのであるが、テイマーギフト保持者から見れば何やら意味不明な『声』を絶えず出しているらしく、居場所に関しては丸分かりとなる為にリーグさんが居れば索敵は完璧であり、相手に気付かれる前に遠距離から魔道具の杖の魔法を当てて弱らす事も可能なのだ。
『魔道具の回路で再現出来る魔法が、初級の魔法が主流な為に火力は弱いが、一撃でも先制攻撃出来るだけでこうも楽に攻略出来るのか…』
と改めて感心してしまう。
ただ、前回の攻略と違い魔道具に消費する魔石も必要な為にドロップした魔石は買い取りに出せないので、稼ぎとしてはかなり低くなってしまうのだけが難点であるが、
「まぁ、安全が一番だからジャンジャン魔法をブッ放していこう!」
という方針で進んでいるのである。
リーグさんはテイマーとして相棒を探すのは建設中の自宅の魔物厩舎が完成するまで待つ事にしたらしく、今はタンカランダンジョンにて鉱石集めをベースに魔物のサーチをしてくれ、
「旦那様、魔石以外のドロップ品もアイアンアントのアゴやらの金属が多いみたいですし、宝箱から鉄や魔鉱鉄のインゴットも出るらしいので、集めた鉱石も合わせて装備をつくりましょう」
と、レッドベアーに切り裂かれた僕の胸当てはリペアの魔法で直したが、そもそも僕たちの防御力が足りない事を気にしているらしくツルハシを片手に鉱石を求めてダンジョンに潜っているである。
『いや、僕もベルも鉄板入りの皮の胸当てをしているけど…リーグさんは作業着にツルハシだよ…まずはリーグさんの装備からだよね…』
とは思うが、どこぞの貴族御用達の秘密組織の構成員だったリーグさんは初級のダンジョンなど簡単なのか、ツルハシのみでも問題なく進んでいる。
『これで借金奴隷という身分でなければ冒険者として登録して充分通用するのに…』
と思うのではあるが、下手に冒険者として登録をすれば組織の人間に居場所を示す事になる可能性があり、リント王国では相変わらず指名手配犯扱いな為にリント王国にも居場所を知られたくない事情から、
「旦那様もリント王国へは行かないだろうし、旦那様の奴隷として様々な手続きも楽ですからね…」
などと、本人が僕という隠れ蓑となる人間の借金奴隷というポジションを何故か気に入っている様子なので、
『まぁ、本人が良いのなら…』
と、若干ではあるが違法奴隷商人としてのクソ親父の罪により追放された僕が奴隷を持つという事と、前世の記憶から【奴隷】というフレーズ自体に抵抗感はあるが、仕方なくリーグさんの旦那様をしているのである。
さて、一番近いマーチンの町ではグラーナが湖に集まりだした季節であり、グラーナで稼いで装備を整えた駆け出し冒険者がタンカランに腕試しにまだ来ていない為にダンジョンは鉱石狙いの常連さんのみで、入り口で買えるダンジョンの地図に書いてある採掘ポイントの中でも、人気な金や銀が採掘出来るポイントでなければ比較的自由に採掘も可能である。
なによりニルバ王国の初級ダンジョンで一番深い十階層のボスを狙うぐらいならば中級ダンジョンの十階層辺りをウロウロした方がお金も経験値も稼げるのでボス周回をしている冒険者も居ないらしく採掘ポイントの無い九階層とボス部屋のある十階層は貸し切り状態の予定であるのだが、その九階層に行く為の八階層がこのダンジョンの難所らしく、ベルが、
「お兄ちゃん…もう疲れた…」
と珍しく弱音を吐いている。
それもそのはずで、上の階層では単体で出てきたアイアンアントというメタリックな小型犬サイズの鉄鉱石大好きな変わり者の蟻がワラワラと現れるエリアなのだ。
最盛期には冒険者も沢山潜っており、手分けして倒す大群を今は僕たち三人で倒す事になり、体力自慢のベルですらメイスで殴り疲れてしまっている。
この八階層でも鉄鉱石は採掘出来るのであるが、殆どアイアンアント達のオヤツになる為に鉱石狙いの常連も殆ど来ないので、無理をして進んで『もしも』な事になっても助けは期待できない…
「う~ん…進むべきか…帰るべきか…」
と、一旦七階層に上がる階段の所まで戻り、安全なエリアで体力を回復させながら考えている僕の隣でベルが、
「何時間かしたらまた数が戻るんだよね…」
と、感覚的に体力さえ有れば、もう少しで下に降りる階段までの道の蟻を倒しきれそうな為に悔しそうにしており、リーグさんも、
「旦那様とベルちゃんのマジックバックと自分のカゴもアイアンアントの素材でパンパンですから…地上まで戻るよりもボスを倒して転移陣で戻った方が良いかと…」
というので僕は、近くに他の人が居ない事を確認した後に、
「よし、誰も見てないから秘密兵器を使うか!」
とバーストシリーズをマジックバックがニュンと引っ張り出して、
「誰か来そうならすぐ使うの止めて隠してね」
と、注意事項を伝えると、ベルは
『待ってました!』
とばかりにバーストショットに通常弾を籠めて、坑道のような八階層の奥から湧いてくるアイアンアントを撃ち抜くと、
「うん、これなら疲れないよ」
と満足そうに次の弾を籠めている。
リーグさんもバーストライフルを手に取り、
「こんな距離…大丈夫でしょうか…」
と、少し強過ぎる威力に不安を抱えつつであるが、
「出来るだけ遠くのアイアンアントを狙ってみたら? 跳ね返ってもこっちは怪我しないと思うから」
という僕の意見を信じてライフルを構えて蟻の駆除を始める。
問題は僕のバーストランチャーであるが、坑道から次々に来るタイプでなく広い場所であれば群れに毒を撒く事ぐらい出来そうだが、
『コイツ…めちゃくちゃウルサイんだよな…音…』
という事もあり、こんな閉鎖空間では皆の鼓膜が心配になるので使用は控えて、既に満タン気味のマジックバックにランチャーを押し込み、代わりに麻袋を取り出して、
「ドロップ品は僕が集めるから…」
と二人が討伐したアイアンアントの魔石とアゴや、頭などの鉄素材の回収と、傍らに落ちている変形したバーストショットの弾を拾い下の階層を目指したのである。
暫くはベルとリーグさんが交代で蟻を倒している間に、弾丸にリペアをかけて再利用する作業をし、二人が前進すると倒したドロップ品を回収し、
「ひゃっほう! 宝箱だ!!」
というボーナスをはさみながら、そんな作業を三度ほど繰り返すと九階層への階段が見え、蟻はまだ他の通路にも居るかもしれないが、
「全部倒す必要は無いから下に降りるよ!」
と、殲滅ハイになっているベルを止めて一旦下に向かう階段に促すのであるが、うちのベルちゃんは、
「もうちょっとで全滅だったのに…」
と残念そうにしており、リーグさんまで、
「ベルちゃん、ボス部屋の前には待機場が有ると思うからそこを拠点にしてまた倒しに来たら良いんじゃないかな?」
と、新型魔法銃での狩りが気に入ったらしく、
「まぁ、人目がなければバーストショットやバーストライフルの耐久テストも兼ねて狩りをするのも良いか…」
と納得した僕ではあったが、
『あれ? これって僕だけ経験値が入ってないのでは!』
と気がつき、
「ねぇ、僕も交代でどっちか借りて蟻を倒したいんだけど…」
と、お願いしたのであるが、ベルは、
「え~っ、お兄ちゃんのヤツあるのに?」
とご不満な様子であり、リーグさんも、
「そ、そうですね…」
と、渋々貸すとも、ベルに賛同して貸さないとも取れる返事でやり過ごそうとしているので、
『はいはい…アリさんシューティングにハマったんですね…良いですよ~、経験値ならグラーナの集団にランチャーを撃ち込んで大量に倒してやるんだから…』
と少し拗ねてみる僕であった。
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