第40話 討伐隊、西へ
盗賊のアジトの1つを潰せたのではあるが…
『何とも気分が晴れない…』
という感想である。
殺意を持った人と戦った事については納得…というか覚悟は出来たのだが、しかし、そんな事よりも奪還した集落を見渡し、
『人は、ここまで非道になれるのか…』
と悲しくなってしまう自分が居る。
盗賊達は、生きている者は捕縛され、死んでいる者はアイテムボックス持ちの輸送兵の方が回収しカサールの町の軍務大臣様の配下の方々に引き渡す手筈なのでそちらは問題ない。
むしろ問題なのは、盗賊の手から奪い返した集落からは、他の町に避難して商いをしてマルダートに戻る旅路を襲われたという商家の娘さんと店の使用人であった女性が保護され、集落の地下倉庫からは多数の腐敗した遺体が見つかり、カサール騎士団の中で鑑定ギフトを持つ人が、1人ずつ鑑定を行い名前を控え、その方々を埋葬する穴堀りを僕も手伝ったりしたのだが、盗賊達に荒らされた集落には、
『これはベルには見せたくないな…』
と顔を背けたくなるような光景ばかりであり、クリスト様も、
「もう集落としては…」
という程の惨状であった。
しかし、既に盗賊討伐作戦は動き出しており、この集落にとどまる訳にもいかないために、布にくるまれた遺体が並ぶ墓穴にクリスト様が、
「すまぬ…急いでおるゆえ墓碑は無いが安らかに眠ってくれ…」
と、ゴーレムで土を被せ、
「救出した娘が言っていた父や家の者の遺体の件はカサールの町に残った者に任せて我々は次のアジトに向かう!」
という指示で山を下りカサール男爵様達と合流し僕たちは移動を開始したのであった。
この作戦のターゲットとなる盗賊団は最初の調査ではもっと複数あったのであるが、幸か不幸かカサールの町の襲撃を機に討伐隊を恐れてか、大小4つのグループにまとまり、先ほどのマッドウルフという盗賊は二番目の勢力であるらしく、マッドウルフがリント王国からニルバ王国の中心に向かう街道の東側の一番良い場所をキープし、小さい規模の盗賊2つがマッドウルフのおこぼれにありつく形で東西にのびる街道沿いの捨てられた村をアジトにしており、そちらは移動のついでに壊滅させるとして、問題は街道の西側に潜む一番大きな組織が、両国の戦争が有った場所からリント王国方面に近い辺りを何ヵ所かアジトにしているのである。
彼らの殆どはリント王国を中心に活動していた複数の盗賊が急遽手を組んだ組織らしく、冒険者に紛れて討伐作戦の情報を手に入れると、周辺の盗賊に声をかけ休戦協定を結びカサールを襲う計画を企てたリーダを筆頭に、町を裏切った門兵達も現在所属しているという情報がギルドマスターが派遣した冒険者達から入っている厄介なグループである。
つまり、カサール男爵様親子や兵士長さん、それに冒険者ギルドの顔にも泥を塗った張本人とも言える決まった名前は無いが賞金首も多数所属している大型組織なのだ。
中心人物がリント王国側の盗賊という点に、あのクソ親父の影がちらつき凄く嫌な感じがする。
『親父と繋がりの有った盗賊は大概捕まった筈だが、一斉検挙を逃れた下部組織だの一時期所属していたOB的な残党もいたって聞いたからな…』
とは思うが、
『盗賊なんて沢山居るらしいからな…うん、きっと関係ない盗賊だよ…』
と、願ってしまう自分がいるのも確かである。
この東西にのびるの街道は盗賊の噂が以前から有るために殆ど旅人は来ず、マッドウルフのメンバーは南側の街道をメインの狩り場にしながらも、たまにこちらの街道に入って来た旅人も襲う為に、小さめの2つの盗賊団としては空白地の時に追跡を逃れて一息つく事が目的であり、
『そろそろトンズラするか?』
などと考えていた時に、カサール男爵様の討伐作戦を知った大きな組織からの呼び掛けに応じただけで、
『拒否したら何をされるか…』
という事情も分からなくは無いが、そんな言い訳がカサール男爵様親子には通用する筈もなく、もう隠す事も止めたゴーレムを先頭にろくに休憩も取らずに街道を西へと向かい突き進み、報告に有った2つの盗賊のアジトを建物ごと薙ぎ払い、抵抗する気持ちすら湧かない盗賊達を無慈悲に壊滅させていくのを少し後ろから、
『暗くなってきたし、夜間戦闘のためにコックピットの上部に魔石ランプ…いや、反射板を使った魔石ライトみたいな装備も欲しいな…』
などと、カサール男爵親子がゴーレムで暴れた後片付け班の様になりつつあるカサール騎士団の方々は、
「あのゴーレムって…まだ動きますよね? この後が本番みたいな感じなんですが…」
と最後の大型組織の殲滅を前に、あんな使い方をしているゴーレムが壊れないか心配になったらしく僕に聞いてくるのだが、
『いや、僕も知らないよ…実戦投入が初めてなんだから…』
とは思うが、
「急造とはいえ、エルバ師匠や兄弟子の皆さんの力作ですし、少々の修理ならば僕が出来ますから…魔石次第…ってところですかね」
と彼らに伝えると、
「魔石は魔道具用に沢山持って来ていますし、そのファイアボールなどの魔道具の杖の出番すら…ですから、あとは男爵様の体力が心配となりますね…」
という事で騎士団の方々からの提案もあり、このアジトを潰した後に、パイロットのお二人にはしっかり休憩を取り、明日以降の大規模戦に備えていただく事になったのであった。
ゴーレムコアを休眠状態にすると魔力でフレームを覆っていた土が崩れ落ちコックピットの出入口が露出すると、クリスト様は、
「これはゴーレムに乗った父上だけ街道を彷徨かせただけで盗賊は退治できたかもしれんな…」
と不完全燃焼気味に伸びをして、コックピットから出られた解放感と共に僕に、
「すまぬがジョン殿、エルバート殿にゴーレムを起動させてからも簡単に出入り出来る様にお願いできぬか…その…トイレが…」
と言いにくそうに相談してきたので、僕は、
「まだ構想の段階ですが将来的に資金と資材があればフレームではなく全身の素材をあらかじめ組み上げ、ゴーレムコアがその体を取り込む形にしますので、無防備な開口部を土で固めると言う事が無くなる予定です」
と伝えると、クリスト様は、
「そうか…それなら安心…では私は用を足しに…」
と小走りで草むらへと向かわれ、カサール男爵様もコックピットから降りてきて、
「がっはっは、ワシはまだまだ戦えるが配下の者が、休め、休めと…ワシを老人扱いしおってからに…」
と、満足そうにされており、僕に、
「おや? クリストの奴は??」
と聞くので、少し濁しながら僕は
「あぁ…えっと、多分…あちらの草むらにお花を摘みに?」
と、クリスト様の行き先を伝えると、カサール男爵様は、
「倅もまだまだだな、戦場では小便ぐらいなら垂らしたまま戦うのがニルバ貴族よ!」
などと不穏なセリフを吐いて行かれたので、
『えっ、そうなの?』
と、ニルバ貴族の常識を知らない元リント王国の子爵の子供であった僕は、
『ニルバ貴族…凄い…』
と、ニルバ貴族の心意気に感銘をうけつつも、その後、すぐに機体チェックも兼ねてカサール号のコックピットを調べたのだが、チビッた形跡はなく、
『良かったぁ~』
と胸を撫で下ろした僕であった。
『これは基本装備としてコックピットの椅子はトイレも兼ね…いやいや、戦闘兵器だし横転した時にマミレちゃうか…内部から施錠出来るハッチがあればパイロットがトイレ休憩を取れるし大丈夫だもんね…』
などと、報告書に記載する改良点を吟味しながら、早朝よりほぼ休みなく動き続けたゴーレムの内部フレームをチェックし、間接部分や魔術回路にリペアの魔法をかけておき、
『僕が使えるリペアの魔法も外部から魔石なんかで魔力が補充出来たら魔力切れなく使いまくれるのに…』
などと、無い物ねだりをしながらも、魔力切れが近づいた僕も騎士団の方々に警備をお願いして眠りについたのである。
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