第33話 提案してみる
マーチンの町に来て数日…僕は昼夜逆転生活を続けている。
夕方前に町のゴミ置場に立ち寄り、直せそうな生活魔道具をチェックし、そのまま町の外へと出て野宿の準備を整え、魔石ランプの灯りの下で魔石式水生成水筒などを教本を片手にリペアの魔法を使って修復し、
「クケ、クケケ」
と、近くの草むらでガサガサおっ始めたグラーナをサクっとギャンさんからもらった片手剣にてシメるという作業を繰り返す。
これで経験値も貰え、ギフトの熟練度も上がり、金も手に入るという完璧なサイクルが産まれるのだ。
流石に連日連夜のグラーナの夜狩りの為にコツも掴み狩りも楽になっているので、魔道具の勉強が捗る、捗る…
『生活魔道具なら壊れ方にもよるがかなりの確率で直せる様になったから、直した魔道具をいい加減売りたいが…』
と月単位で借りた自分のベッドだけの部屋を圧迫しだした修復済みの生活魔道具の処遇を考えつつ、草むらの近くで、
「クケケ、クケケケっ!」
と、グラーナのカップルがクライマックスに向けて盛り上がるタイミングを待ち、もう交尾にだけ集中した瞬間を狙い皮に変な切り傷がつかない様に目から脳を目掛けて片手剣をねじ込むのである。
上のオスから仕留めると、下のメスはオスの重みで一瞬動きが遅れるので同じ手順でメスも仕留めるのだが、
『何とも心苦しい狩りだな…』
と、交尾中を襲うという手法に心がチクリと痛むのだった。
しかし、
「これもマジックバックの為…あの世でフィニッシュを迎えてくれ…」
とグラーナ達に謝りつつ狩りをつづけて夜が明けると、町の門が開きベルとケント君が彼の亡くなったお父さんが冒険者時代から愛用していた魔道具の手押し車をゴロゴロと押して僕と合流する。
この手押し車には魔道具の最高峰であるマジックバックにも仕込まれている【重量軽減】の魔道回路が使われており、獲物をパンパンに積んでも子供でも扱える程に軽々押せるという逸品であり、この手押し車を借りる代金として、僕は夜狩りのグラーナから五匹分の足肉を解体後に買い取りに出さずにケント君のお家に届けて、昼からの屋台の食材としてもらい、僕はその間にベルと王道の釣り竿を使うグラーナ狩りの腕を研くケント君に手押し車を返す為に再び門の外に向かい、ベル達がグラーナ狩りを終える昼まで夜に使ったテントの場所で一匹分手元に残したグラーナの足肉で、僕の前世の記憶を生かし淡白な足肉を使った料理を試しているのである。
ベルとケント君がブンブンと竿を振り、水面に落ちた疑似餌がわりの草の束をクイッ、クイッと小刻みに動かし水面に落下して慌てる虫魔物を演出すると、その動きに興味を持った数匹のグラーナが動きだすと吊られて周辺のグラーナも集まり、トコロテン式に湖から陸へと1匹、2匹押し出されるので、そのタイミングを狙い倒すという手順の技術とタイミングが物を言うスポーツ的な狩りである。
そんな狩りの練習を、
『今日もグラーナ湖の水面がキラキラと眩しいや…ホントにマーチン湖って名前でなくてよかった…前世の記憶のせいで呼ぶ度に少し恥ずかしい思いをするところだった…』
などと、どうでも良い事を思いつつ眺めながら、僕はマーチンの町で購入した食材も使い、ギャンさんの店で買った鍋やフライパンで欲望に任せて唐揚げを揚げ続けている。
産まれた国と違うから『もしや!』とは少しは期待したが醤油は勿論無かった為に、カエル魔物の微妙に生臭い足肉を食べやすいサイズにカットし、塩と生姜っぽい香味野菜やハーブなどを色々すり込み暫く放置し臭みを消して、マーチンの町でそろう小麦粉や香辛料で衣を試行錯誤して楽しんでいるのである。
「片栗粉が見当たらないから少しイメージと違うがこれはこれで旨いな…次はニンニクを混ぜてパンチを出すか?」
などと、味見をしつつ揚げ続けているとベル達が狩りを終え、ケント君に返した手押し車に獲物を積んで僕の所まで来て、
「お兄ちゃん、お腹空いた」
と元気に唐揚げに飛び付き、モシャり始めるベルと、
「これ、美味しです!」
と知らない料理に興味深々なケント君に、
「気に入ったのならレシピを教えてあげるよ」
などと、言いながら三人でグラーナ揚げを頬張っていると、町のグラーナ狩りベテランおじさん達や子供グラーナ狩りビギナー達も引き上げる時間となり、
「おっ、良い匂いだな…」
などとグラーナ揚げの香りに誘われて帰る足を止めるので、試食として数パターンのグラーナ揚げを食べてもらい感想を聞いておき、改良の参考にする為に配りまくる。
そして僕はその日の午後は宿屋で眠り、夕方にまた夜狩りに向かい狩りの片手間に魔道具の修復や唐揚げの改良をする事を続けて、錬金ギルドの店でベルがお父さんとお揃いの色と形のマジックバックを手にする頃にはケント君のお母さんの屋台には新たなる名物となるグラーナの唐揚げが誕生していたのであった。
グラーナ狩りで毎日懐が暖かい町の人や冒険者達がエールや葡萄酒を片手に屋台で盛り上がる為に酒の肴になるグラーナの唐揚げは大人気になり、ケント君のお母さんにレシピの提供を願い出る屋台仲間が居るらしく、ケント君のお母さんから、
「ジョンさん…どうしましょう?」
と、相談されたので、別にグラーナの唐揚げで儲ける予定の無い僕は、
「ケント君の将来の為にケント君の名前でレシピを商業ギルドに登録でもして【元祖グラーナ揚げの店】とかって看板でも掲げるなり、レシピ使用料を取るなりして下さい」
と、提案しレシピをケント君親子にプレゼントしたのであるが、ケント君もお母さんも、
「夫が好きだった町の皆さんの為になるのなら…」
と、レシピの登録はしたが、町の屋台でのレシピの使用は無料という太っ腹な対応となり、グラーナ揚げの食べ比べという新たな町の名物が誕生したのであった。
さて、ケント君はグラーナ狩りの腕も上がり、ケント君のお母さんの店は常連さんが、
「人気なのは良いが、俺たちが買うのが大変になっちまったなぁ~」
などと、冗談を言う程に繁盛しており、ベルもお目当てのマジックバックを手に入れたのであるが、僕だけゴミ置場から回収し修復した生活魔道具が僕の部屋を圧迫したままで、未だに店の開いている時間を町の外か、睡眠に費やしている為に生活魔道具が貯まる一方なのである。
『明日は夜狩りはお休みにして魔道具を買ってくれる町の中古品の店を探すか…』
と、思いながらもテントの中でまた部屋を圧迫する魔石ランプや水筒などを修復しながら朝を迎えたのであった。
そして、明日は手押し車を借りなくていい旨をケント君に伝えて、その日の午後はあえて睡眠を取らずに夜まで活動して、久しぶりにベッドにてグッスリ朝まで眠る事にしたのだが、
『あぁ…なんだか勿体ないな…』
と捕らぬタヌキの皮算用で、夜狩り分の収入を捨てたような気分になりグッスリは眠れない結果となり、
『駄目だ、駄目だ!魔道具を売って稼がないと部屋が圧迫されてるんだから!』
と、今日もグラーナ狩りにケント君と仲良く向かうベルを送り出した後に、カプセルホテル程のベッドのみの安宿の部屋に転がる生活魔道を獲物用のカゴに詰め込み中古品販売店へと向かったのであるが、
「兄ちゃんウチの店から現金を根こそぎ持って行く気か?!」
と言われてしまったのであった。
ちゃんと動く生活魔道具は冒険者は勿論、町の人も使う物であり、錬金ギルドの店から新品を購入すれば大銀貨数枚、魔石ランプは人気商品で小金貨1枚以上掛かる便利グッズであり、中古品でもニーズはあるが、いかんせん量が量となり一時的ではあるがリサイクルショップのおじさんのお金を全て吐き出す事になるらしく、
「兄さん、物々交換といこうぜ!」
と提案され僕は、修復した新品同様の生活魔道具とリサイクルショップの品物を物々交換する事になったのだった。
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