第26話 感じる成長
ベルが女の子だと知ったギャンさんが、
「ベルちゃん…こんな感じのヒラヒラしたのも有るんだよ」
と、スカートなどの古着を取り出し、
「そんなんじゃアシッドスライムにパンツまで溶かされちゃうからっ!」
と大変ウザがられている横で僕はエルバさんから錬金術の中でも魔道具についての基本を習っている。
ダンジョン等で手に入る魔力を流せば特定の魔法が放てる【マジックアイテム】を解析し錬金術師が作り出したのが【魔道具】であるのは僕も知っている。
魔道具は魔力の少ない人でも扱える様に魔物の体内で生成される魔石を使うのが特徴である。
長い研究の末に明かりや火種などの生活魔道具と言われるものはかなり小型化に成功しているが、攻撃魔法などを打ち出せる魔道具は初級の攻撃魔法を再現するのがやっとで、それすらも魔道回路なる物を何枚も使う為に、ダンジョンから出るファイアボールのマジックアイテムが腕輪などの装飾品まで古代の魔法文明の技術なのか、今の錬金術師には再現出来ない高度な技術で小型化されているのに対して、その魔法技術を研究し、錬金術師が試行錯誤の末に作り出したファイアボールの魔道具は複雑な魔道回路を必要とし、追加で魔石から魔力供給する回路も組み込んである為に、どうしてもかなりガッツリ大きな杖の形状となり、敵に合わせて属性を変えるなどという戦法をとるには杖を運ぶ専属のスタッフを雇うしかなく、弱い魔法しか撃てないのに金ばかりかかるという金持ちにしか許されない道楽装備なのだ。
そして、この魔道回路なるものが繊細な物らしく魔力を通さない板材に魔力を流しやすい緻密な紋様を正確に書かなければ起動せず、回路の途中の紋様が破損すれば大金貨が吹っ飛ぶ高価な魔道具でもたちまちゴミに早変わりするそうで、なぜにこのような魔道具の説明をエルバさんにお願いして詳しく教えてもらっているかというと、
『生活魔道具である魔石ランプなら何だか直せそう!』
と感じたからである。
ポーションでも欠損部位を治すエクストラポーションは最上級の難易度らしく、それは修復のギフトでも同じようで、まだ代替え素材を用いて無くなった部分のリペアは出ないのだが、試しにギャンさんの店のガラクタから、どうやら踏まれてしまったのかひしゃげて壊れた魔石ランプを手に取り、
『もしかして壊れているけど部品は全部有るし…直せるかも!』
とチャレンジしたのであるが、見た目は元通りっぽくなったのだが、明かりがつかず、僕のリペア魔法を興味深そうに眺めていたエルバさんが、
「どれどれ…」
と鑑定ギフトも使いチェックした結果、中の回路は壊れたままで外側だけ直った事が分かり、
「中身を1つずつ直してみぃ…」
とアドバイスをくれ、他の魔石ランプから壊れていない魔道回路を探しだし、
「これが魔石から魔力を吸い出す回路で、こっちがライトの魔法の回路…」
などと魔道回路の説明をしてくれ、動く回路の正確な模様を意識しながら曲がったり割れたりしている魔道回路にリペアの魔法をかけると無事に回路が修復出来たのである。
どうやら僕の能力はビックスライムなどを狩った事により少し成長したらしく、一通りの素材は厚みさえ薄ければ錆びない魔鉱鉄の板で作られた魔石ランプのフレームもライトの魔法の光が集まるガラス部品も修復出来る様になり、見えない部分の修復は出来ないが、中の魔道回路を取り出して、機能や紋様を正確に把握し、しっかり目で確認しながらリペアの魔法をかける事により比較的簡単な生活魔道具の回路であれば直せる事が判明したのだ。
となればやることは1つであり、ベルにウザがられているギャンさんに、
「ここらへんの魔石ランプの部品と壊れた魔石ランプを全部下さい」
と、ギルドマスターという偉いさんに会う為の服などそっちのけで、エルバさん…いや、エルバ師匠のアドバイスを受けながら魔石ランプ修理に没頭しているという訳である。
以前エルバ師匠がパーツ取りに使った魔石ランプの残骸も多数あり、パーツを直したが部品が足りない物も有ったが、なんとか八つの魔石ランプの修復に成功し、魔力切れ間近となり、
「もうクタクタなので…」
と、本日の修復を終了したのであるが、問題は【魔石ランプは欲しいが八つもは要らない】という事であり、
「ギャンさん、悪いんだけど6つ程買い取ってくれない?」
とお願いしたのであるが、ギャンさんから返ってきた答えは、
「馬鹿言え…使える魔石ランプを6つも買い取れる金はこの店には勿論ない!」
と自慢げに断られてしまったのである。
するとエルバ師匠が、ギャンさに、
「自慢するような事か…情けない…」
と呆れながらも、
「貧乏商人に関わってた事を不運と思うて、直ぐに稼ぎにはならんが売れた分をジョンに払う形ではどうかのぅ?」
と提案してくれ、ギャンさんも、
「えっ、いいの?!」
と喜んでいたので、材料費として壊れたランプを購入した料金を差し引き、売れた分だけ買い取り金額を支払う契約となり、僕は材料費なしで収入が入り、ギャンさんは、ガラクタの整理を出来た上に直った魔石ランプった料金から仕入れ値分を払うだけで儲けが出るという両者に得となる契約が成立したのだが、そうなると、どうやら商人として正式な手続きがあるらしく、僕が調子に乗り過ぎて服にリペアの魔法をかける魔力が残っていない為に、
「ギルドマスターさんに会うのは明日だね…」
という事で僕とベルは、ギャンさんとエルバ師匠と一緒にカサールの町のギルドが集まる大通りへとやって来たのである。
冒険者ギルドの前を通るのに、
『冒険者ギルドでもなんだか色々と手続きがあるらしいけど…ごめんなさい…明日絶対に来ますから…』
と心の中で謝りながら、先ずは商業ギルドに入り、僕のギルド口座なる物を作り、そこにギャンさんが売り上げを振り込む形らしく、
「ここでは契約書も書くぞ」
とギャンさんに言われ、僕は、
「そんな…ギャンさんを信用してるから大丈夫だよ…」
と言ったのだが、エルバ師匠に、
「駄目じゃよ、ギャンみたいなヤツは貧乏でも金をスラムの子供らに使ってしまうから、ジョンの分を使い込まない様にギャンの為にも契約は必要じゃよ」
と、諭され馴れないニルバ文字でサインも行った。
『良かった…文字カルタを作った時から練習してて…』
という作業の次はエルバ師匠に案内されて錬金ギルドへと向かったのであるが、そこで師匠は窓口の職員さんに、
「弟子の見習い登録と生活魔道具の教本の販売を頼もうかのぅ」
と言ったのである。
驚く僕に師匠は、
「錬金術師は試験を通過するか弟子になり一定の実力を示せば成れるのじゃが、見習いとしてギルドに登録すれば低級の錬金術師の教本や錬金器具の購入も出来るからのぅ…壊れた魔石式水生成水筒やら、魔石式着火棒もギャンの店に転がっておるゆえ、直して儲けるとよいわい」
と、笑顔で言ったかと思うと、
「ほれ、ギャンよ。 これから我が弟子が儲けさせてくれるから、初期投資じゃ…教本代金ぐらいは立て替えておかんか…」
とギャンさんをつっ突き、ギャンさんは渋々小金貨1枚という大金を払っていたのであった。
『まぁ、中古品とはいえ修理して預けてある6つの魔石ランプの買い取り金額が全部で小金貨1枚なんて事はないだろうし、全部売ればギャンさんにも儲けは出るだろうから…いいよね…』
という事で、この日僕は錬金術師見習いとして錬金ギルドに登録され、ギャンさんのお店と契約し、魔道具の修復にてお金が手に入るという駆け出し冒険者からは考えられない副収入の目処がたってしまったのであった。
『これでギャンさんの店がもっと目立つ立地ならば…』
とは、思うがそれは虫がよすぎる願いなので、あの路地裏でもお客さんが訪れて今まで以上に儲かる様にギャンさんの店を宣伝する事で貢献する事にしたのである。
読んでいただき有り難うございます。
よろしけれはブックマークをポチりとして頂けたり〈評価〉や〈感想〉なんかをして頂けると嬉しいです。
頑張って書きますので応援よろしくお願いいたします。




