第114話 後片付け
いくらスタンピードだったとはいえ、振り向けばゴーレム君の通った後が魔物の屍の山になっており、
『ダンジョンでなら魔石とドロップアイテムを拾うだけの楽しい時間なのだろうが…』
と、血生臭いビジュアルに少し引いている自分がいたのである。
掴むなどの高度な指示が未だ出せず、現在は殴り殺す事しか出来ないゴーレム君には一旦集落の門番がわりに待機してもらい、
「あのままにしておくと肉を狙ってまた魔物がくるかもしれませんから…」
と、集落の防衛を頑張ってくれた皆さんと一緒にマジックバッグや荷車を使い、踏み荒らされた畑に散らばる倒した魔物を集めて皆で解体作業をしていると、鉄の鎧を身に纏ったコーチャーの騎士団が避難していた馬車の村人と共に帰ってきたのである。
騎士団といっても鎧を着ているのは20人程であり、残りの数十人の方々は、
『潰れたかも知れない村を片付ける人足』
と、
『ぎりぎり生き残った傷ついた集落の兵士を看病する薬師』
それに、
『死んだ住人を弔う為の教会関係者』
というメンバーがメインの後処理チームとその護衛というコーチャー王国の中心地からの一団に、この東の集落の方々が現在の状況を説明したらしく、
「本当にスタンピードを迎え撃って退けたのか…死人も出さず…」
と驚いているのを無視して、僕たちが、
「ダグさん、この名前のよく分からない不細工な猪魔物の肉って、案外美味しそうだね…」
などと、ビスティア地方の魔物を解体しながら、現地の方々から、
「そいつは【ンギリ】だよ」
とか、
「こっちが山ンギリで、こっちは森ンギリ、山の方は皮や骨が素材として高値だが、肉を食うなら森ンギリがオススメだよ!」
などと楽しく知らない魔物の事を教えてもらいつつ作業をしていたのだが、騎士団の偉いさんは東の集落の方々の説明を聞いた後に、待機中のゴーレム君と、皆が倒した獲物の山を見ても尚、信じられなかったらしく、
「その、村を救った英雄の方々に話が聞きたい!」
と、騎士団の偉いさんは、こちらにワザワザやって来て、なぜかバルディオさんに、
「冒険者の方々のリーダーとお見受けする…」
と頭を下げるとバルディオさんは、
「いえ、主殿は…」
と申し訳無さそうに、僕を紹介したのであるが、
『なんか微妙に失礼だな…どなたがリーダーですかって聞くのが普通だろ…』
と、少しムカついた僕は、
『どうせ他国の事だから深入りはせずに…』
と、ノリスさんとマイラさんのお孫さんの顔を見てサッと帰るつもりであったが、
『助けに駆けつけずに後処理班をよこして、数年に一度のペースでスタンピードが起こっているのに集落には丸太の壁しかなくて、畑はスタンピードで踏み荒らされても仕方ないというこの国の姿勢が気にくわない…』
と、感じた僕の何かしらのスイッチが入ってしまい、騎士団の偉いさんが、変な汗をかきながら微妙な笑顔で、
「あっ、これは…あなた様がリーダーで…コーチャー王国騎士団団長、モリブから国民に成り代わり最大限の感謝を…」
などと僕に頭を下げる狼フェイスの騎士団長さんに、
「小国とはいえ、国民の生活を守るのが騎士団の勤めでしょうに…前回のスタンピードで畑を失い借金から奴隷として売られていた夫婦と縁があって家族同然の仲になったから助けはしたが、以前その夫婦の為に国が何もしてくれなかったという事にも憤りを感じておりました…そして、たまたま出会した今回のスタンピードの対応として、そちらの王家のやり方…更に不満を感じております!」
と、畑を守る壁や掘りすら作らずに、年貢だけ取り、下々の農民はスタンピードで何を失なっても、
『仕方ないよね…』
みたいなコーチャー王国のやり方をチクリと意見してやった。
騎士団長さんは、グッと僕に顔を近づけて、
『ガキが偉そうに…』
みたいな顔を一瞬したが、どうやら集落の方々も前々から色々と思う所はあったらしく、僕の味方になってくれ、
「そうだ、スタンピードで畑を荒らされても年貢は例年通りって…中心地の奴らは良いけど端の集落は大変なんだ!」
とか、
「魔物避けの壁も無いし、住人から出す兵士だけではなく騎士団も配備して欲しいと前々から…」
などと、騎士団長に食ってかかってくれ、焦った騎士団長は、
「こ、込み入ったお話は…その…城にて…国王陛下もスタンピードを蹴散らした英雄にお会いなりたいと…」
と、僕たちの味方ばかりのアウェイではなく、ホームにての話し合いを希望したらしいのであるが、僕としては、
「別にコッチにはワザワザ国王陛下に会いに行く理由もありませんし、倒した魔物を早く解体しないと、また魔物が肉を狙って集まるかもしれませんので、手伝わないのであれば城に帰って国王陛下に来年の東の集落の年貢をどうにかしてくれる様にお伝えください」
と意地悪く言った後に、
「グヌヌ…」
となっている騎士団長に向かい、僕は、
「ガキに指摘されて腹が立ったのなら、まずこの集落の畑の状態を把握して、ガキにすら言われてしまう国のやり方をしっかり自分の頭で考えなさい!」
と怒り、そして優しく、
「秋に蒔いた小麦の種が芽吹いたばかりの畑が魔物に踏み荒らされた惨状を見て、貴方は『年貢の為に春に畑を耕し直して夏野菜でも植えろ』などと言えますか?」
人生2周目のトータル年齢では先輩として諭してあげると、ようやく騎士団長さんも理解したらしく、
「解体作業の手伝いや、住人達の畑の壊れた柵などの修繕を頼む、私は一旦城に報告に戻る」
と連れてきた方々に指示をだした後に、数名のお供と馬魔物に乗り帰って行かれたのであった。
『まぁ、これで来年の年貢だけでも楽になれば…』
と思っていると、スタンピードで葡萄園を失った事が原因で年貢の為の借金で奴隷となったノリスさんとマイラさんが、
「旦那様…ありがとうございます」
と涙ながらに感謝してくれ、この東の集落に嫁いだ二人の娘さんが赤ちゃんと旦那さんと一緒に、
「お話は両親から…両親だけでなく今回は私たちまで救っていただき、ジョン様には感謝しても仕切れない恩を…」
と、お礼を言ってくれたので腕の中で寝ているモフモフな赤ちゃんを覗き込み、
「僕に『様』なんか要らないよ。 それに感謝なんて良いから…ニルバ王国の西の端からワザワザこの子を見るついでに、チャチャっとやった事だから気にしない、気にしない…」
と言いながら、馬車の揺れで眠りに落ちたのか、緊急事態を感じて泣き出してしまい、今は疲れて眠っているのか分からないパパ似のアライグマっぽい寝顔の赤ちゃんの頬っぺたを、
『も、モフリたい…モフらないまでも突っついてみたい…』
という衝動に駆られながらも、
『起こしちゃダメだから…』
と我慢している僕に、集落の皆さんまで、
「長年言いたくても言えなかった事を…本当にありがとう!」
などと言ってくれ、中には、
「これで王様がなんやかんや言ってきたらアッシらはジョンさんの元で決起しやすぜ!」
などと言い出し残された騎士団の方々がピリッとするが、住人達はお構いなしで、
「コッチにはジョンの旦那と地竜の夫婦を殴り殺したジェロニモが有りやすから…」
などと、僕が、
『地竜って…あの恐竜ってドラゴンの仲間なんだ…あと、何…ジェロニモって?』
と首を傾げる周りでは、畑を踏み荒らされたり、死を覚悟したスタンピードを無事に乗り越えた為に、ヤケクソ気味な気分と達成感により興奮状態の住民達が、
「ジェロニモっ、ジェロニモっ!」
とお祭りムードとなり、地竜を殴り殺した戦力を前に騎士団の方々も住人達の多少の言い過ぎにも目を瞑ってくれるらしく、誰からもお咎めもなく解体作業などを手伝ってくれており、
『ならば追加で口止め料も払っておくか…』
と考えた僕は、
「よし、皆でスタンピードを乗り越えたお祝いにこのお肉でパーティーでもしますか?」
と僕が提案すると、集落の方々は、
「殆どジョンの旦那が倒した獲物だから旦那の自由にして下さい」
と言ってくれたので、僕は、
「では肉祭りを開催してここに居る全員でお腹いっぱ食べたあとは、皆で塩漬け肉とかにして助っ人を出してくれた他の集落の方々にお裾分けして下さい、素材は売って畑を荒らされた皆さんで分けたり、集落の装備などにあてて下されば…あっ、魔石だけはもらって良いですか…」
とお願いすると、住人達から今度は、
「ジョンっ、ジョンっ!」
という恥ずかしいコールがまきおこったのであった。
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