第113話 出撃、ゴーレム君
さて、新型ゴーレムで実際の戦闘は初めてだが、こんなのファミコン時代からゲームをしていた僕にとっては5つのボタンの組み合わせで動くゴーレムの操作など我が家の空き地でチョチョイと練習をすれば簡単なのである。
『…嘘です…練習と言っては、めちゃくちゃ乗って遊んでました』
武器が扱える新型を動かす為にコアのレベルアップが必要であり、ライト兄さんに、
「ライト兄さんがダンジョンで育てたコアが欲しい」
とおねだりしたのであるが、
「え~、あれは俺のだから…」
とケチな兄弟子に拒否され、
『まぁ、余ってるゴーレムが初期型だし…』
と諦めて、修復後の手持ちのコアをセットして僕の相棒となったのが、このゴーレム君である。
ゴーレムマスターであるクリスト様が言うにはゴーレムコアにも知能や性格みたいな物があり、最初は指示に対してワンテンポずれたりするが一緒に戦うマスターの癖などを自分なりに学習して息が合う様になるらしく、
『ならば練習あるのみ!』
と、ゼルエルガさんウチの空き地に我が家の魔法ギフト持ちの魔法の練習の的として土魔法で出した固くて分厚い石壁を相手にして、前進、後退、急旋回は勿論、ターゲットをロックオンしてからの突進等を繰り返し行い、実戦経験は無いが自分なりにかなりゴーレムさばきも上達したとは思うので魔物群れを迎え撃つ事も、
『レッドベアークラスの魔物でもドンと来いだ!』
と強気で皆より前に陣取っていられるのである。
「ヨシ、やってやるぞ…」
と気合いが入る僕がゴーレムのコックピットから見る視界は少し高く、遠くまで見渡せ、その水晶板ガラスの小窓の向こうにはスタンピードの土煙がもうすぐ側まで近づいていたのであった。
スタンピードの先頭は大概小型や足の早い草食魔物と本には書かれていたので、コックピットの魔石タンクから魔力を供給し、ゴーレムの頭部に設置してある左右2本のストーンバレットの杖から石を発射しつつ、
『スタンピードの魔物を驚かせて足を止めさせたら儲けモノ』
ぐらいの気持ちで、ゴーレム左右の肩口に設置してある魔石ライトを光らせて、ついでにコックピットの拡声魔道具をオンにしたままで、
「ジェロニモぉぉ!」
と叫びながらスタンピードに向かい突進をはじめたのであった。
この叫び声は昔見たロボが出てくる邦画のマネで、僕的には別に意味はなく、
『ウラらぁ~!』
でも良かったので、その後は奇声を上げながらスタンピードの先頭集団をドッスンドッスンと、わざとゴーレムの足裏にある重量軽減の魔道具を起動させずに踏み潰しながら暴れていると、僕のゴーレムが防波堤となりスタンピードが左右二手に別れはじめ、
『よし、集落に向かう数が減らせた』
と作戦の一段階目の成功を確認する為に後ろを見ると、集落を守るバルディオさん達も数が減ったとはいえ、まだまだ数の居るホーンラビットなど知っている魔物やあまり見慣れないビスティアの小型魔物達との交戦を開始しており、
「よ~し、まだまだ暴れるぞ~!」
と、スタンピードを二分する障害物としてこの場所に留まりながら、少しでも集落サイドに行く魔物を減らす為に魔物討伐のわんこそばを開始したのであった。
魔物達は、
「ウラ、ウララぁぁ!」
などと叫びながら前方で何やら暴れている為に一瞬足を止める魔物が居ると、その一瞬の減速が後方の魔物に伝わり、徐々にスタンピード全体の速度を殺して行き、出せる速度の差により縦長になっていた群がだんだん渋滞を起こして膨らみはじめ、それでも魔物達がジワジワと歩みを止めないのは、大きな肉食系魔物が追いかけてきており、その群の最後尾によく知らないカラフルな恐竜っぽいのが二頭こちらに向かって来ているのがコックピットから確認出来た。
『中間の魔物は前後から挟まれてパニック状態から1周回って落ち着きだしたけど、最後尾集団を倒さないとこのマラソン大会は解散にならないな…』
と判断した僕は、ゴーレムに最後尾集団をロックオンさせて、目一杯コックピット足元に配置してある前進スイッチのペダルを踏み込むと、ゴーレム君は、
『あそこのヤツを目指して突進…了解しました!』
とばかりに左右のパンチで邪魔な中型の草食魔物などを吹っ飛ばしながら魔物溜まりの真ん中をゴーレムは移動をはじめる。
南に走り抜ける魔物の列に合流することも出来ず、前方では僕や集落を守る皆に殺された魔物の群の死体を見た魔物達が、
『わぁ~、マジか…』
と、完全に足を止めて居る中を血飛沫をあげながら前進するゴーレムであったが、後方に行けば行く程に魔物は大型になってゆく、
『パンチ一発では吹っ飛ばないか…』
と悟った僕は、マジックバッグから魔石を取り出し、魔道具用の魔石タンクと、ゴーレムコア用の魔石タンクにその魔石を詰め込むと、
「手前から丁寧に倒すぞ!」
と、僕の言葉を理解して動いている訳では無いと知っているが、愛機であるゴーレム君に語りかけた後に、ロックオンを手前の熊魔物などに合わせ直して、1頭ずつ殴り倒しはじめる。
ゴーレムの頭部から出るストーンバレットを嫌がり顔面をガードする熊のがら空きの腹にゴーレム君は己の判断でゴーレムパンチを炸裂させて倒し、
『どうだ!』
とばかりに一歩前に進み次なる敵に挑む、僕はコックピットから、ロックオンしてから攻撃と防御という格闘技のセコンドの程度しかボタンで指示を出せないので、ストーンバレットにてゴーレム君の攻撃するタイミングを作るのがメインである。
しかし、乗り手の意思を何となく理解しているのかゴーレム君の拳の狙う場所が実に僕好みで、ガードの薄い場所は勿論、眉間やコメカミなど急所と思われる場所を選び体重の乗った一発をお見舞いし、泡を吹いて倒れた魔物には目もくれず次なる魔物を向いて、
『マスター、次はアイツにしましょう!』
と、コックピットの僕にロックオンを催促する様に背筋を伸ばし堂々と突き進むのである。
そんな破れた学生帽に長ラン姿の番長のような闘いぶりに、思わず惚れそうになるが、やはり連続してこれだけの量の魔物を倒し続けるゴーレム君の間接から僕の居るコックピットまでギシギシという異音が聞こえはじめると、あと少しで今回のスタンピードのボスと思われる二頭の恐竜っぽい魔物にたどり着くというのに、ゴーレム君の動きは目に見えて悪くなるのだった。
すると、動きが鈍くなったのを良いことにゴーレム君はガンガンと反撃を食らってしまい、僕の居るコックピットに音や衝撃が伝わる。
「こんな時にカサール子爵様みたいに辺りをビビらせる殺気でも出せたら良いけど…僕にはコレしか出来ないから!」
と、僕は揺れるコックピットの中からゴーレムフレームの金属部品を左手に装着した魔力供給魔道具越しに触れて、頭の中でこのゴーレムの構造をしっかりイメージしながら、
「リペア」
と僕が唯一使える魔法を唱える。
そうなのだ…僕は物を直せる魔法しか使えないが、魂を宿したゴーレム君もボディーは『物』扱いであり、ゴーレムフレームの隅々まで構造を把握した修復師などこの世界の何処を探しても今は僕しか居ない筈である。
つまり、僕は、
『いつでも出荷状態のピカピカゴーレムに回復出来るパイロット』
というチート能力をやっと手に入れた事により、今まで仲間に守られて、どうにかやって来たのであるが、ようやく、
『みんなの為に戦う男』
に成長出来たのである…『いや、ゴーレムに守られているだろ…』という指摘は今は許して欲しい。
という事で新品同様になったゴーレム君は滑らかに動きだし、見るからに毒々しいカラーリングの恐竜との格闘を征して見事にスタンピードを現地解散へと持ち込んだのであった。
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