第102話 グロースの町にて
お世話になっている国の国王陛下に顔を見せるという為だけに遠路はるばる王都までやって来て、義理は果たしたし褒美として学校やら何やらと、ご近所や我が家の子供達の将来の為になりそうな施設の約束を頂けたので、今は心置きなく、
「師匠、これなんかどうですか?」
などと、カサールへの帰り道で王都から少し西に位置するダンジョンと冒険者の町であるグロースに来て、エルバート師匠と一緒にゴミ漁りをしているのである。
なぜこんな大都会まで来てゴミ漁りかと言うと、流石は国の中心地にある上級ダンジョンだけありカサールの町ではまず御目にかかれない上物のアイテムが捨てられていて、以前のスラムのあばら屋から現在は新町にカサール子爵様の援助もあってちゃんとした家に住める事になったとはいえ、まだまだ戦争などで大黒柱を失って生活が苦しいカサールの新町在住の新米冒険者達に向けて、
『安くて良いリサイクル品を!』
という信念のカサールの裏路地にあるリサイクルショップのギャンさんの為に壊れた攻撃魔法の魔道具や運が良ければ壊れたマジックアイテムなんかが有れば回収して僕が修復して安く彼の店に卸したり、捨てられている装備なんかも上級冒険者が使っていたものなので、少しの手直しだけでも十分に中級冒険者用の装備として使えるものばかりの筈ということで、無料で仕入れ作業をしているのである。
エルバート師匠のギフトである鑑定は、称号などまで分かる人物鑑定ギフト程ではないし、商品の状態や値段まで詳細に分かる商品鑑定ギフト程ではないが、全ての物の名前や簡単な効果まで分かる為に、僕が見つけた良さそうなゴミを見て、
「やはり、上級冒険者というのは金回りも良いらしいな…まだ『壊れた』という名前になっておらん武器でも捨てておる…」
と、ギリギリまだ使える状態であるが、命を預けるには些か心許ない刃こぼれした魔鉱鉄の武器なんかがザクザクと回収できているのである。
回収のお手伝いをしてくれているテイカーさんも、
「完全に折れた武器なんかの方が少ないですね…」
と不思議そうにしていると、傭兵の合間に冒険者もしていたらしいバルディオさんが、
「完全に折れた場合は無駄な荷物になりますのでダンジョンに捨てて来ますからね…ここに有るのはこの町のリサイクルショップで修理しても上級ダンジョンでは通用しないと判断されて買い取り拒否をされた物でしょう」
と、一見まだ使えそうな少し曲がった剣を鋭い目で品定めしている。
大都会の大量のガラクタの中から師匠の鑑定を使って『壊れた』という名前が出た魔道具の杖も数本見つかったが、しかし、思ってた以上に数が少なく、僕が、
「これだけのガラクタの中で魔道具はこれだけって、少なくないかな?」
と、ボヤいていると、バルディオさんは、
「魔道具は高いですから折れても『もしかして…』と持ち帰ると思いますが…もしかしてこの町には腕の良い魔道具修復師でも居て壊れた魔道具でも買い取っているのでしょうか…機能が使えないマジックアイテムならコレクションや貴重な素材目当てで買い取る商人が居るとは思いますが…」
と、先ほどの剣をマジックバックに押し込んみながら教えてくれたのである。
『そうか…魔道具の修復が出来る人が居るのならばこの量も理解出来る…僕だって魔鉱鉄の鎧や武器を直すより同じ魔力を使うなら魔道具を直すからな…儲かるし…』
と考えながら回収作業をしている僕のマジックバックもそろそろパンパンであり、結局見つからなかったマジックアイテムに、
「そうか…使えるマジックアイテムは高過ぎるから手が出ないが、壊れたヤツはインテリアやコレクションとしての価値はあるのか…」
と納得しながら、
『むかし、パパはあんなマジックアイテムを使う冒険者だったんだよ…』
などと盛りに盛った架空昔話でもする為のインテリアとしてのマジックアイテムを想像しながら僕は、
「えっ、そこならお安く壊れたダンジョン産のマジックバックとか買えないかな」
と閃くと、テイカーさんは、
「旦那様、それなら少しお時間を頂けたら良い店を聞き込んで参ります」
と、商人としての会話テクニックでこの大都会に数ある店の中からお目当ての壊れたマジックアイテムなどを扱う店を探して来てくれたのであった。
そして到着したのが、
『ギャンさんの店なみに散らかってるな…』
と呆れてしまう見た目の、リサイクルショップというよりは骨董品店の様な店であり、店主は、
「死んだ旦那がほとんど道楽で集めた品々だよ…たまに高値で売れたから買い漁ってたけど…」
とボヤいているお婆さんであり、今はダンジョン内でも使えるコンパクトな鍋などの日用雑貨を店の片隅で販売しているらしい、
「あっちはたまに物好きが買って行くだけだから安くしとくよ…」
という乱雑に並んでいる商品をエルバート師匠が鑑定すると、
「壊れたマジックバックか…元は馬車一台程入って時間停止もついた品じゃな…」
と、僕が初めて商品として見るダンジョン産のマジックバックには何か鋭い物で貫かれた様な穴があり、
『直せるかな…これ…』
と不安になる代物であったが、店主のお婆さんは、
「それかい…死んだ旦那が面側でなくて裏に穴が空いていたら小金貨1から2枚にはなったって悔しがっていたよ…そうだねぇ、少し良い酒が飲めたら十分だから大…いや小銀貨7枚で良いよ」
などと、言ってくれたのでとりあえず購入し、その後エルバート師匠の鑑定で、幾つか面白そうな壊れたマジックアイテムも買って一旦は町の宿屋に泊まる事にしたのであった。
このグロースの町での滞在予定は3日間であり、3日後に新たにカサールの町にゴーレム乗りの訓練に派遣される騎士の方々と、今頃はカインお坊っちゃまのお家の方々に、
『息子の師匠の彼氏とは…』
と品定めされているであろうクリスト様達と合流する予定であり、エルバート師匠と僕たちは無理を言って王都から早めに逃げて来たという流れなのである。
そして、エルバート師匠は国の宝とも言える国家錬金術師であり、凄腕の護衛騎士が現在も王家の指示で同行しており、彼は渋々ゴミ漁りに付き合い、もうパンパンで入らない僕たちのマジックバックの代わりに骨董品店のカビ臭い品物を持ちながら、
「では、宿はこちらで用意をしておりますので…」
と彼に案内された宿は、貴族でも泊まれそうなグロースでも最高の豪華な宿で、
『やっと城の居心地の悪さから解放されたかと思ったのに…』
と、ウンザリするほどの広々とした空間を見回していると、エルバート師匠は護衛騎士の彼に、
「すまんがそこら辺に買って来た物を並べて見てくれんか?」
と頼むと、ウキウキしながら僕に、
「ラベル殿から色々と聞いておってな…マジックアイテムが修復出来る可能性を試したかったらしいのじゃが、ラベル殿の手元に壊れたマジックアイテムが無かったそうでのぅ…」
と、マジックアイテムの軽微な傷などはラベル先生のプロトタイプ魔力供給魔道具でのリペアの魔法にて修復出来るのは見た事があるが、ゴーレムコア以外の完全に壊れたマジカルな商品の修復は見た事が無かった為に、
『見せて』
と、錬金術師としての好奇心なのか、僕にリペアの魔法をおねだりしてくるのである。
「ふっふっふ…エルバート師匠のお望みとあらば…」
と、僕は自前のマジックバックから販売促進用に作った自分の魔力供給魔道具を取り出し装置してから、鎧の腕を隠す為の片方だけマントをバサッとひるがえし、駄々っ広い宿屋の居間スペースにて、
「でっきるっかな♪ でっきるっかな♫」
とノリノリで修復実験ショーを開催したのであった。
読んでいただき有り難うございます。
よろしけれはブックマークをポチりとして頂けたり〈評価〉や〈感想〉なんかをして頂けると嬉しいです。
頑張って書きますので応援よろしくお願いいたします。




