第100話 静かな戦い
面倒臭い謁見も終わり、後はゴーレムファイトの見物をしてからエルバート師匠と一緒にカサールに帰れば全ての予定が一段落するのである。
しかし、明日に行われる王都の学校の良い子達も見学に来るゴーレムファイトの余興の一つとして魔力供給魔道具のデモンストレーションでカインお坊っちゃまやゼルエルガさんに続いてラベル先生と僕はリペアの魔法を魔力供給魔道具により使用してゴーレムコアを修復する所も披露する予定なのだ。
これは魔力供給魔道具を現役の方々を含め、未来の魔法師や修復師の候補生にアピールする為であり、僕は魔道具が無くてもゴーレムコアの修復は可能であるが、そんな事を知らない未来の修復師達に、
『高名な修復師のラベル先生だけではなくて、見たこともない奴でもアレを使えれば今まで直せないと思われた物でも直せるということは…自分も!?』
と思わせて、魔力供給魔道具を購入して頂くという大事な目的の為に、出発前にゼルエルガさんに魔力操作の訓練をしてもらい、見事に試験にパスして僕用の魔力供給魔道具をバラッドさん達に作ってもらっていたのである。
『ゼルエルガさんが陛下達と相談して免許の件は何とかして下さるから、免許が出た魔法師さんや修復師さんからの注文がジャンジャン来れば我が家も業務提携をしているタンカランやマーチンの職人さん達の生活も安泰だからな…』
と、我が家の命運をかけた明日の晴れ舞台の前に僕は、エルバート師匠にもだが、師匠と共に王都でゴーレムの研究者として頑張って下さっている兄弟子の方々にご挨拶がてらライト兄さんと我が家のイデアさんの件を報告しに、テイカーさんとバルディオさんと一緒に王家のゴーレム部隊の隊長さんの案内で、王都のゴーレム研究と製造エリアに来たのであった。
流石は王都というべきか、カサールのゴーレム工場など比ではない規模で新型のゴーレムが組まれており、団長さんから、
「武器が扱えるカサール型の登場で、初期型のパンチャーゴーレムは型落ちとなり内部構造をカサール型の設計図面を手本に改修となりましたが、先進的な発想のカサールタイプは強敵ですが、作っている数では王都の技術者は負けておりませんし、何より我々も日々鍛錬をしておりますので…」
と、ライバル心に燃えている説明を受けたのであるが、
『正直なところデザインの時点でカサール型が勝っていると感じるので僕としては明日のゴーレムファイトの結果はあまり興味がないなぁ…中身のフレームや機構は似たような物だし…』
というのが本音であったが、明日の為に研究者施設で調整を受けていた王都産の最新型ゴーレムを見て、僕は、
「ぐぬぬっ…」
と、悔しい気持ちになったのであった…それは、改修型ゴーレムは別に思わなかったのであるが、研究施設に並ぶ王都で独自に開発したゴーレムが何だか凄くカッコいいからである。
新型ゴーレムには誰でも乗れるタイプと、ゴーレムマスターが運用するタイプの二通りが現在あり、カサールではゴーレムマスターが乗るクリスト様のボール号には頭部にストーンバレットの魔道具による小規模な遠距離武器の他はボール号のコアのレベルが上がり手下を操れる様になればノーマルな土のゴーレムを壁役として配置して扱う予定にしていた。
しかし、王都ではゴーレムマスター用のゴーレムに魔道具の火力では対ゴーレムや大型魔物には対応出来ないと考えたらしく、グロースのダンジョンから出た中級や上級の魔法が撃てる杖などを手首辺りに仕込み掌から撃ち出せるという独自の機構があり…何より元はポーションなど創薬に長けた錬金術師である兄弟子達は金属の強度を上げるコーティング液剤にカラーバリエーションまで開発し、目の前のゴーレムは昔に僕が兄弟子達にコックピットの話を熱く語った時に、
「隊長機体は違う色や角みたいなアンテナがあって…」
と、言ったセリフを忠実に再現したらしく、カサールと同じコンセプトで将来的に部下の土ゴーレムを従えたときにも風格のある姿なのであった。
『クリスト様の機体はシルエットはカッコいいが、性能と威圧感では負けたかも…いや、しかし明日のゴーレムファイトはカサール型での勝負…まだだ…まだ負けては…』
と焦っている僕たちを見つけたこの施設の長として、エルバート師匠の後を継いだ一番弟子であるオルフェンさんが、
「おっ、やっと来たかジョン!」
と、明日のゴーレムファイトに使う機体の最終チェックの手を止めてこちらに来てくれたのであった。
しかし、オルフェンさんもだが他の兄弟子さん達も作業の手を止めて、集まったかと思えば、
「いやぁ、コアがレベルアップしたら腕パーツを配下のゴーレムに制御させて武器が扱える技術を発明された時にはヤラレタって思ったが…」
と言った兄弟子さん達はニヤニヤしながら、
「昨日見たぜ、ジョンがカサールから運んだアッチの最新型…あれなら王国軍の最新のバルザック型には敵わないかもな…」
などと、自信ありげに語り、
「まぁ、発想力は天才的なジョンが居たとしても、あのライトでは俺たちには勝てないかなぁ~」
と余裕まで見せているのであるが、それもその筈であり兄弟子さん達の背後には最新型のゴーレムである黒地に金の模様がコーティングされた『ニューバルザック』なる機体が静かにたたずみ、この施設のリーダーとなったオルフェンさんが、
「明日の模擬戦でカサール型との勝負に勝てば現在の改修型バルザックに代わり正式採用される予定だ…」
と教えてくれたのである。
『いや、好きにしてくれ…』
とは思うが、ニューバルザックは確かにカッコいいし、元は『僕だけの最強ゴーレム』というコンセプトで作ったカサール型のゴーレムを馬鹿にされた気分であり、いくら兄さん方と言えど、
『イラッ…』
としたのは許して欲しい。
『いや、人生2周目でもまだまだですな…』
など僕が自分をなだめていると、エルバート師匠が奥からゆっくりと登場し、
「ライトをいつまでも弟弟子だと侮っておると足元を掬われても知らんぞぉ~」
などと、兄弟子さん達を注意してくれ、そして僕に、
「いやぁ、死ぬ前に帰れる事が出来そうでホッとしとる…バルザックの墓の件、聞いておるぞわざわさマーチンの領主様の所まで出向いてくれたのだろう」
と労いの言葉をくれたのであった。
それから暫く、皆で新型ゴーレムのこれからの話をして、
「ニルバ王国はリント王国ほど魔法師が居ませんが、魔力供給魔道具をライト兄さんと完成させたので、魔法師が増えると思いますよ」
という僕の話から、兄弟子さん達は、
「魔法師用のバルザックを作るか?」
などと言うので、僕は、
「魔法に集中しながらゴーレムを操るのは大変だから、コックピットを複座式にしてはどうですか?」
などと、話しているとゴーレム部隊の隊長さんまで、
「それならば近接戦闘がまだまだな新米ゴーレム乗りも遠距離から安心してゴーレムの操縦に専念出来ますのでアリですね…」
などと、乗り気であったのであるが、僕がフッと、
「あっ、そうだライト兄さんなんですが、エルバート師匠が戻って来られるので工房を返せる様に現在カサールに夫婦で住む為の新居を建ててまして…」
と、ライト兄さんの近況報告をすると、エルバート師匠は、
「そうか…やっとライトを評価してくれる女性が現れたか…」
と、ホッとしたような表情をされたのであるが、兄弟子さん達は、
「あんなライトに…」
とか、
「まさか、ベルちゃんなんて言わないよな!?」
などと慌て出し、オルフェン兄さんまで、
「いや、めでたい話ではあるが、兄弟子として自分の嫁よりカワイイかどうかの勝負だ…」
と、兄弟子さん達と何やらゴニョゴニョと相談したかと思うと、エルバート師匠はウンザリしながら、
「あやつ等は、下に見て可愛がっていたライトがゴーレム以外の技術で最終的に国家錬金術師に認定されて焦っておるんじゃよ…」
と教えてくれ、兄弟子さん達は、
「よし、ジョンはライトの所に嫁に来る娘さん…いや娘さんじゃないよな…オバサンか何かだろ…ライトは世話したくなるタイプだから…うん…そのオバサンの顔や体型はどんなんだ?」
などと僕に聞いてくるので、僕の隣で気まずそうに座るバルディオさんを、
「嫁になるイデアさんのパパさんです」
と紹介すると、バルディオさんは、
「バルディオと申します…まぁ、娘は少々歳はいっておりますが…主殿の兄弟子というから黙っておりましたが…オバサンという歳では…」
と、微かに殺気を漂わせており、怯えあがるモヤシっ子の兄弟子さん達に、トドメとばかりにテイカーさんが、仕入れ先の商人さんの顔と名前を覚える為に実は昔から得意で描いていた似顔絵にてサラサラとイデアさんの顔や弓を持ち魔物と戦う勇ましい姿を描くと、この静かな兄弟子さん達のプライドをかけた戦いは完全にライト兄さんに軍配があがり、兄弟子さん達は完全に沈黙し、ヒドイ者は、
「ライトだけズルいよ…」
と、涙を流していたのであったが、何があったか聞いたら長くなりそうなので、あえて無視することにした僕であった。
読んでいただいている皆様のお陰で楽しく100話まで来れました。
ありがとうございます。




