言葉を話せる魔物は平和を祈る
魔物と人、仲良くできたらいいのになあ。
考えることが好きな異端者狩り(召喚された元高校生)と、『人の言葉』を話せる魔物の少女の話です。
今朝も、聖女は聖堂で祈る。
亡くなった人たちの、安らかな眠り。
生きている人たちの、楽しい生活。
そして、それらは、『魔物』たちにも。
『魔物の聖女』
俺の前で祈る、あの聖女は、『魔物』の少女で、『唯一ヒトの言葉を話せる』魔物なのだ。
「終わったか?」
立ち上がった彼女に、俺は聞く。
「はい、終わりました。ありがとうございました」
聖女は微笑む。
…ヒトの顔をし、ヒトの姿をしている。それが、正直、よかった、と思う。角があるだけ、あとは俺たちと同じ。
「魔物とヒトが仲良くなることは不可能だと思うんだが」
なんとなく、聞いてみる。
暇だったのだ。
高校生だったのに、召喚され、「異端者狩りをしろ」と、王様に言われ。
本もなしに数日経ち。
活字中毒の俺には、暇すぎて仕方ないのだ。
『異端者狩り』
『異端者狩り』と聞いて、「チート能力もなしに」と思ったが、俺の場合、違うらしい。
この少女、『唯一ヒトの言葉を話せる魔物』が暴れださないか見張れ、ということらしい。
チートもなしにか? 魔法も使えないのに?
渡されたのは剣だけ。
この少女は力は少し強いだけ。
いや、知らんし。安全をくれ。
てか、そんなことで召喚するなよ、とも思った。読みかけの本があったのに。
『魔物側じゃなくヒト側でもない』、中立的なヒトが必要だったらしい。
皆、この少女の扱いに困っているらしい。
「俺の世界では、魔物と人類が戦うのが当たり前だったんだ。ああ、作品な、作品。現実にはいなかったが」
「それは、理解がなかったからです」
「理解、理解ときたか。哲学は好きだぞ」
本が好きなのも考えるのが好きだからだし。いいよな、無知の知、ソクラテス。カントは、経験論だったか? 孟子や孔子も哲学者に含めるのは、どうかと思うが。
「人間は、魔物のことを理解することができません。言葉が通じないからです」
牛や犬を理解できないのと同じか。
「そして、襲ってくる人間を、魔物は理解することができません。なぜ、ただ生きてるだけなのに襲ってくるのか。わかりません」
そりゃ、できないな。いきなり歩いていたら襲われて、理解できないし、理解したくもない。
やり返せ、だ。
「戦争と同じだな」
「魔物と人類の戦争です」
「なるほど。
じゃあ、理解は無理だろ。どっちかが支配しないと」
スペインとアステカ、だったか? どうだったかな?どちらかが優しくしても、支配がないと、平和にはならない。支配か、仲直りか、か。
「けど、私は、ヒトの言葉を話せます。
魔物の心を理解する私が、ヒトと同じ言葉を話せるのです」
「ふむ」
「本当は、魔物は戦いをしたくありません。ただ、生きてるだけで、平和に生きたいだけなのです。
それをヒト側がわかれば、この世界から戦いはなくなるのです」
強い目。
確かに、理解はできる。
困る訳だ。前例もなさそうだし。
「俺が異端者狩りじゃなければな」
呟く。
狩ってないのに、狩り?
異端者狩人の方が、まあ、いっか。
「ありがとうございます。
でも、そんなこと言ったら危ないですよ?」
「はあ。
2人でよかった。いや、1人と1体か」
俺らは笑いあった。
平和に。
世界から事件や戦争がなくればいいのになぁ。
読んでいただき、ありがとうございました。




