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第一話 美少女と最初のクエスト

初投稿です。気楽に読める読みやすいものを書きたいと思います。楽しんでいただけたら嬉しいです。

 ――――はじめに――――

 

 お金持ちのおじいさんが、古い蔵の中で、ボロボロの本を見つけました。

 本は言いました。

 

 「神様が蘇るために、力を貸して?」


 おじいさんは答えました。

 

「うん、いいよ。わし一人じゃ心もとないから、みんなに頼んでみようかのう。」


 おじいさんには、仲のいいお友達がたくさんいました。

 昔から集まって、お話をしたり、お祈りをしたりしていた人たちです。


「みんな神様のために、力を貸してくれるって。よかったね」


 本は静かに、でもとても喜びました。


「じゃあ……命を、ちょうだい」


 何人かのお友達は、干からびてしまいました。


――――――


 小屋を目指して俺は走った。

 なんとかたどり着き、半分朽ちたドアを開け、中に転がり込む。


『バゴン!!』


 振り返ると女がデカい剣を振り回し、ドア枠の上部の壁を吹き飛ばしていた。


「ふざけんな!殺す気か!」


 わめきながら『ゲート』に飛び込む。


『グッ』と腕が掴まれる。




 ……しかしなんとか戻ってくることができた。


「ハァハァ……」


 やはりこのヤバい女がついてきてしまった。

 黒く長い髪、手には腰くらいまでありそうなデカい剣、そして下半身がスカート状になっている青色っぽい鎧?を纏っている。

 片膝をついて剣を床に立て、それでかろうじて体を支えているように見える。

 おそらくこの女はここでは……


「ぐっ……」


 女の手から剣が離れる。


『ガラガラン……ゴトン』


 なかなかの重量を感じる音を立てて剣が倒れる。

 女は四つん這いになり、動けないようだ。



「おい、なんでいきなり襲ってくるんだ。頭おかしいのか?」


 町?村?っぽいところからほど近い街道の、脇道沿いの朽ちかけた小屋。そこから出て少し歩いたところで突然この女が襲いかかってきたのだ。

 生涯でも最高の反射神経を見せて女の剣を躱した俺は、猛ダッシュで小屋に戻り今に至るわけだ。


「とぼけないで!……妹はどこ?ぐっ……ううぅ……」


「とりあえず話をしようじゃないか。ちなみに俺はお前とも初対面だし、妹も知らん。」


 女はしゃべるのもつらそうだ。


「なにを……したの……?マナが……」


「ここにはマナはないぞ。その鎧の重さにも耐えられないだろう?」


 女は周りに目を走らせる。


「ここは……?」


「暴れないと約束するなら説明してやるし、鎧も外してやる。自分で脱ぐこともできないんだろう?」


 女は少し考えていたが、一旦観念したようだ。


「わかった……約束する。」




 なんとか鎧を外していく。

 鎧はパーツの一つ一つがけっこう重い。普通の女の子にしか見えないこの体格であんなものを付けていたら、そりゃ動けないよな。

 女の子を脱がすっていうのはロマンだが、脱がせ方が難しいのといちいち重いのでそれどころではない。

 下には皮の服っぽいやつの上に、鎖帷子くさりかたびらの薄いやつみたいなのを着けている。これもソコソコ重そうだ。

 一応この状態なら動くことはできるようで、壁際に移動して座り込んでいる。たぶん暴れたりはできないだろう。



 あらためて女を見てみる。

 ものすごい警戒されているが、正直かなり可愛い。そしてスタイルもかなりいい……ような気がする。


「おい、なんで襲ってきたんだ?盗賊か何かなのか?」


「盗賊はあなたの方でしょう!妹を返して!」


 そうだ、妹がどうのってさっきも言ってたな。


「盗賊に妹がさらわれたってことか?さっきも言ったが、俺はお前も妹も知らんぞ。」


「じゃあどうしてあの小屋にいたの?」


「あそこに出口を作ったからだ。あの小屋にいたら盗賊なのか?」


 女は怪訝そうな顔をしている。まぁ意味がわからないだろう。


「あの小屋は盗賊団の連絡場所になっているらしい。盗品を受け渡したりするのに使っているって。それで……出口っていうのは?」




「ここはお前がいる世界とは違う世界だ。この世界からお前たちの世界へ行くための『ゲート』をあの小屋の中に作ったんだ。」


「……」


「そのゲートを通ってここへ逃げてくるはずが、お前が手を掴んだからくっついてきちゃったんだ。」


「それじゃ、ここはどこなの……?」


「違う世界としか言いようがない。お前がいた世界とはルールが違う世界だ。ここにはマナはないんだ。だからあんな剣を振り回すとか無理だろう?」


「……ルール……とは?」


「うーん、それはいずれ詳しく話してやってもいいが。妹さんを助けないといけないんじゃないのか?」


「そう!ここであなたと喋ってる暇はないの!」


「お、おう……もう一度あの小屋にゲートを開いて帰してやるよ。」


「うん、おねがい……」




「盗賊から妹を取り返すっていうことなのか?あのへんの警察?とかの治安維持機関に任せたらいいんじゃないのか?」


「そんなことはできないわ。私が助けるしかない。」


「もしかして一人でやるつもりなのか?盗賊ってのは一人二人の話なのか?」


 女はじっとこちらを見ているが、最初の頃よりは警戒を解いてくれているようだ。


「本当になにも知らないみたいね。盗賊はたぶん20人以上はいると思う。正確にはわからないわ。」


 20人以上を相手に一人で戦うのは、いくらなんでも英雄すぎるだろう。


「だったら警察とかなんか、町を守るための組織があるんじゃないのか?そういうのに頼ったほうがいいと思うが。」


「盗賊団はあの町を治める貴族の息がかかっているの。地方の小貴族だけどね。だから町の組織には頼れないし、害が及ぶ可能性があるから友人たちにも頼れないの。一人でやるしかない。」


 貴族。もちろん言葉としては知っているが、実感として貴族ってのがどんなものなのかよくわからん。ただの金持ちとは違いそうだ。


「ん~……よくわからんが、勝算はあるのか?助けた後はどうするんだ?」


 つまりはそこを支配しているような貴族を敵に回すんだろうから、助けたとしてもあの町にはいられなくなるのでは?


「後のことなんか考える余裕はないわ。あの町を出てどうにかするしか……まずは妹を取り戻さないと……」


 彼女は俯いたまま呟いた……


 あれ?おかしいな。俺の楽しい異世界ライフが……なんでこんな人生相談みたいなことになってんだ。

 でも目の前でかわいい女の子が困っているんだからしょうがない。男なんてそんなもんだ。




「……なあ、提案なんだが。」


 女がこちらを見る。きれいな瞳。


「俺はさっきの入口……『ゲート』って呼んでるんだけど、あれをわりと自由な場所に作れるんだ。」


 女は黙って聞いている。


「妹さんが捕まってる場所をみつけられたら、そこにゲートを作ってここへ連れてくればいい。それで一旦は安全が確保できる。」


「本当に?もし協力してくれるなら……妹を助けてくれるならなんでもする……」


 今なんでもすr……いや、その前に……


「俺は『あきお』だ。名前はなんていうんだ?」


 いつまでも謎の女ではやりにくい。


「私は『ミア』。王都の守備隊に所属していた。あっちの?私の?世界では、それなりに剣には自信があるわ。」


「ミアか。よろしくな。妹を助けたら、あっちの世界のことを色々と教えてくれ。」


 こうして俺の冒険は、ミアの妹を助けるというクエストから始まることになった。



「あれ?向きが違うのか?これはどっち向いてんだ?」


 タブレットでミアの世界に置いてある『観測装置』を操作する。なんというか、自由に動かせるカメラ付きのドローンみたいなものだが、操作にクセがあってなかなか難しい。

 今いるここは研究所の一室。俺は研究員なのだ。



 無限に存在すると言われる平行世界。俺の仕事はその平行世界を観測することだ。

 観測する方法が見つかったのが10年ほど前。


 宇宙が誕生するときに無限とも言える数の宇宙のコピーが生まれる。インフレーションと言われる現象だ。

 それらは完全なコピーなので、やがて時が経っても同じものができそうなものだが、宇宙には『ゆらぎ』というランダム要素がある。その『ゆらぎ』によって生じるほんのわずかな違いは、100億年以上を経た今、それぞれの宇宙の『ルール』の違いとなって現れている。

 いわば宇宙ガチャみたいなもんだ。


『ルール』の違い。つまりは物理法則がどうとかではない。もっと根本的なところが違うのだ。

 例えば、ミアの世界には『マナ』というものがある。それによってミアは、肉体の力だけでは到底持ち上がらないような剣を軽々と振り回すことができる。

 過去に観測した世界では、獣人のような知的生物の世界もあった。超能力のようなものが当たり前にある世界もあった。

『ルール』が違うとはそういうことだ。

 そんな『平行世界』を発見した人類が次に考えること。それは『平行世界』に干渉すること。つまりあっちの世界と行き来することだ。今現在、ほとんどの研究者はその『平行世界に干渉する方法』を探すことに躍起になっている。そしてその方法を研究するための新しい『研究棟』に移っていった。結果、ただ観測するなんて地味な仕事を続けているのは俺だけになった。『観測棟』と呼ばれるこの建物にいるのも、いつの間にか俺だけになっていた。まあそれはそうだ。平行世界に自由に行き来する方法なんてのが見つかれば、金も名誉も思いのままだ。



 しかし残念なことに、その方法を見つけたのは今のところ俺だけなのだ。

 観測の中で偶然思いついたその方法は、観測装置を改造するだけで可能で、実はそんなに難しくなはい。しかし最初のとっかかりが思いつかなければどうにもならない。そんな類の話だった。

 機械の専門家ではないのでかなり不格好な改造だが、装置は一応問題なく動いた。

 そして今に至るというわけだが、俺はこの方法を今のところ誰にも教えるつもりはない。未知の世界に干渉するなんてことを人類が知れば、その先はどうなるか、歴史を見れば明らかだ。

 この世界の金や名誉よりも、俺は『ファンタジーがしたい』のだ。魔法を使ったり、なんか……モンスターと戦ったり?そんなことがしてみたいのだ。


 ミアの世界はMMOなんかによくある、中世っぽい世界。魔法っぽいのもある。そんないい感じにファンタジーそうな世界を見つけたので喜んで行ってみたら、いきなり襲われたってわけだ。

 なかなか予定通りにはいかないが、結果としてあちらの世界に頼りになりそうな知り合いができた。もっとも無事にミアの妹を助け出せればだが……

 今のところわかっているのは、ミアの妹が盗賊団にさらわれた。盗賊団は町を治める貴族と繋がっている。だから誰にも頼らず妹を助けなければならない。


 わかりやすいじゃないか。簡単なもんだ。言うだけなら。





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