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70 対話

 地下から元の執務室に戻り、ビアンカはホッと表情を緩ませた。


 それはニコラス達も同じだったようで、安堵の表情を見せている。


「アベラルド様。本当にありがとうございます。もう地下からは生きて出られないかと思っていました」


 ニコラス達が跪くのをアベラルド王太子がやんわりと嗜める。


「いや。そこまで礼を言われるほどではない。それにそなた達には謝らなければならない事もある」


 そう告げられてニコラス達は怪訝な顔をしている。


「それよりも話をするのにどちらに向かえばいいんだろうか?」


「あ、ああ、そうでしたね。それでは応接室に参りましょう。こちらです」


 ニコラスが先に立って歩き出すのをぞろぞろと皆でついて行く。


 応接室に入り、ニコラス達とビアンカ達が向かい合って座る。


「今、お茶でも淹れさせますね。…おや?、誰も居ないのか?」


 ニコラスがテーブルの上にあったベルを鳴らしたが、使用人は誰も顔を出さない。


「あ、そういえば使用人達は皆、使用人棟に閉じ込められているという話だったな。レオナルド、使用人達を解放させるように言ってくれ」


 アベラルド王太子がレオナルドに告げると、レオナルドはニッと笑ってみせる。


「もう伝えてるよ。ほら」


 レオナルドが応接室の扉を指差すと同時に扉が開いて使用人達が現れた。


「ニコラス様、ご無事ですか!?」


 真っ先に声をかけてきたのは執事とおぼしき男性だった。


「おお、ヘラルド。この通り、アベラルド様のおかげで生きながらえたよ」


「申し訳ございません。私ではエリシア様をお止めする事が出来ませんでした」


 ヘラルドと呼ばれた男性はニコラス達が座っているところまで来ると、その場で土下座をする。


「仕方がないよ。それを咎めたりはしないさ。…ところで、義母上は?」


 ニコラスの疑問にビアンカはキュッと心を締め付けられる。


(エリシア様を死なせてしまった事をアベラルド様はどう告げるのかしら?)


 ビアンカがそっと隣に座るアベラルド王太子に視線を移すと、それに気付いたアベラルド王太子がビアンカを見てコクリと頷いた。


「エリシア様に関しては僕の方から話をしよう。エリシア様は僕とここにいるビアンカ嬢に攻撃を仕掛けてきたため、その場で処刑した」


 アベラルド王太子の宣告にその場はしんと静まり返る。


 使用人達の中にはそれを聞いて泣き出す者もいたが、誰も文句を言う者はいなかった。


 ニコラス達も沈痛な表情を浮かべているが、どこかホッとしているようにも見えた。


 しばらくの沈黙のあと、ニコラスが口を開く。


「…そうでしたか。それでは我が家はアベラルド様に害をなそうとした者の身内として何らかのお咎めを受けるのでしょうか?」


 ニコラスの言葉を聞いて、ビアンカは小さく「…あ」と声を上げた。


(王族に手を出すなんて、連座にされても可笑しくはないわ。だとすると、私もその身内と一括りにされるのかしら?)


 ビアンカはドキドキしながらアベラルド王太子の言葉を待った。


 アベラルド王太子はニコラスの視線を受けて、大きくかぶりを振る。


「いや、それはない。ニコラス殿達さえ良ければ、エリシア様は病死として処理してもらえないか? 私はビアンカ嬢と婚約したのでね。彼女の汚点になるような事は避けて欲しいんだ」


 アベラルド王太子に言われてニコラスはホッと表情を緩めた。


「わかりました。ありがとうございます。まさかアベラルド様がビアンカと婚約なさったとは…。おめでとうございます」


 ニコラスが頭を下げると、アウロラとエミリオも一緒になって頭を下げている。


 ニコラス達が頭を上げると、それを待っていたかのようにアベラルド王太子が尋ねた。


「それで? ニコラス殿達はどうして地下に閉じ込められる事になったのか聞かせてもらえるか?」

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